チート持ってウマ娘なるものに転生した、芝生える   作:白河仁

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なんか週間一位とかになってて読者の多さにちょっと震えますよ(震え声)
みんなそんなに曇らせが好きかい…?
最近主に曇らせてるのはチートオリ主じゃなくて翔子ちゃんの方じゃないのかい…?
チートオリ主より翔子ちゃんをすころう…?(天使の囁き)

こんなヤツ(チートオリ主)がいたら多分一番出てくるんじゃねーかなーと思われているであろうあの人が登場です。


第八話 レコードを大幅短縮すればこういう事になる

 その日、津上あきは上機嫌だった。

模擬レースを走ってからというもの、秘密結社などからの接触は無い。

怪しげな財団や企業、集団からのアプローチも無い。

つまり、この世界では日アサ特撮系のクロスオーバーしている確率は、きっと低い!

 

 それに加え、幼馴染5人を担当にしたチームでの申請も通っている。

そうなれば与えられるのはチーム部室(合法的な推し活ルーム)である。

きっと部室はあきの推しの様々な軌跡で彩られるだろう、素敵な部屋になること間違いナシのゴキゲンな部屋である。

とりあえずどんなウマ娘にでも必ず届くG1レース共通勝負服に身を包んだ五人の写真を撮るべきだろう。

専用の勝負服はとてもとても良いものだしそれも勿論作らせるし唸るほど写真も動画も撮るつもりだが、さりとて共通勝負服とて良いものには間違いない。

さらに共通勝負服はデザインが同じ、つまり五人で着ればそれは正にアイドルユニットである。

 

 ならばそれはもう撮るしかない、撮らないなどと考えられない。

オリジナリティを出したい場合でもちょっとアクセサリーを変えたり帽子被ってみたり飾りつけてみたりでバリエーション豊かである。

つまり共通勝負服とは地味でも凡庸でもなんでもない、無限の可能性を秘めた一つの完成品なのだ。

そのままで良し、飾りつけて良し、ちょっと着崩して雰囲気変えても勿論良し。

こんな素敵なものが共通勝負服だからって必ず出走ウマ娘全員の手元に届くのである。

それはなんと素晴らしい事であろうか、あきはもし存在してても問題無いだろう方の神様に感謝している。

この世界に生まれ変わって間違い無く良いと思える事はウマ娘という全力で推せる存在に出会った事だとあきは思っている。

それ故にこそ、この世界が本当に安全であるのか確証が欲しくて不安で仕方なくもあるのだが。

 

 そんなルンルン気分でチーム部室についたあきは、部室の前に男女の二人組が居ることを見つける。

 

 男性の方は白髪交じりの、もう還暦過ぎた辺りの年代であろうか。

ただそれにしては肌年齢がかなり若い気がする。

もう一人、女性の方は栗毛のウマ娘だ。

何故かだぶついた白衣を着ているが、その服装に、あきは既視感を覚えた。

そう、たしかあれは過去のレース映像で見たものではなかったか、と。

だが、それを思い出す前に目の前のウマ娘から声をかけられる。

 

「やぁ、君が津上あき君だね?」

 

 どこかねっとりした声を耳にした瞬間、あきの尻尾の毛が逆立ち、白衣のウマ娘のどこか濁っているように見える眼を見た瞬間直感が警報を鳴らす。

『やべーぞこいつマッドだ』と。

すわ、こいつが組織の手先かそれとも個人で何かマッドな事やってる個人世界征服業者か隣の男性はその部下かなどと、決定的な瞬間があればすぐ逃げ出せるように準備した。

 

「私の名前はアグネスタキオン。どうだろう、私に君の身体の秘密を解き明かぶっ」

 

 そして直感に違わず、目の前のウマ娘がマッドな事を言おうとしたら隣の男性に頭を叩かれていた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「翔ちゃんの脚の検査、ですか」

 

 『酷いじゃないか助手クゥン!』だの『いいかねこれはウマ娘の未来というものがだね…その両手はなんだい?何をする気だい?(震え声)』だの『いたい…おもにこめかみがいたい…』だの。

秘密結社は秘密結社でもなんかとても緩い方の何かを想起させるようなやり取りを見せつけられ、反応に苦慮していた所。

助手らしき男性がシンボリルドルフ理事長からの紹介だというので、とりあえず用件は聞こうとチーム部室内に招き入れた。

その用件というのが、ディープインパクト達の脚の検査という事らしい。

 

「私としては是非とも君の身体を調べてみたいところだがねぇ。だが、理事長に頼まれたのは彼女達の方だ」

 

 助手だという男性の膝の上に座り、まだじんじんしているのであろう頭の両側面を擦らせながら、アグネスタキオンが言う。

あきは反応にとても困った。

 

「ウマ娘の力は強く、脚は速い。だが、その速度に身体が耐えきれないこともままある。特に、コースレコードを走った後なんてのは、特にねぇ」

 

 もういいよ助手君、と手を離させて、おろそうとした両手をだぶつかせた白衣の袖がしっかと掴み、自分のお腹の上に回して組まさせた。

あきは反応にとてもとても困った。

 

「そんなウマ娘の脚について、私は心得があってねぇ。心配した理事長が私に連絡してきたというわけだ」

「とりあえず、いいですか」

「おや、なんだい?」

「真面目な話をするかいちゃつくか、まずどっちかにしません?」

 

 助手という男性の顎に頭をくりくり押し付けていたアグネスタキオンは、何を言ってるんだろうという不思議そうな顔をした。

あきは反応にとてもとてもとても困った。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「ふゥむ。異常無しか」

 

 トレセン学園医務室にて、レントゲン写真などを見ながらアグネスタキオンは呟いた。

検査の結果、ディープインパクトの脚には異常は無い。

2400mをレコードを数秒単位で縮める走りをしてみせたというのに、健康体そのものだ。

勿論、異常が有るよりも余程良い、それはたしかであるが。

 

「しかし素晴らしい。彼女の脚の骨は強く太い。筋肉もしなやかでバネがあり、柔軟性もとても高い」

 

 詳細な検査をしなければわからないが、おそらくディープインパクトの骨の強度は他のウマ娘と比べてとても高い。

強固な骨という土台に、執拗なまでに丹念に造られた筋肉が搭載されながら、その上で成長を阻害せぬよう丁寧に丁寧に仕上げられている。

そんな脚をなんと評すべきだろうか。

蛮用に耐える芸術品、多少欠けてもすぐに完全に埋め直して修復できる精緻な彫像、そんな矛盾した表現が姿を成したような、ウマ娘誰もが羨むような脚。

ディープインパクトは幼少の頃より津上あきからトレーニングを受け、食事の栄養管理についてもそうらしい。

『あきちゃんの手料理はとても美味しい』と、トレーナーの手料理を毎日食べている事にシンパシーを感じた。

このような脚は彼女自身の才覚もあるだろうが、決してそれだけでは作れない。

ならばこれは超一流の素材で、超一流の職人が、年単位の時間を掛けて作り出している未完成の完成品とでもいうものか。

 

 自分の現役時代にこんな脚があれば、などと。

アグネスタキオンは考えてから頭を振った。

自分は現役の時から、恵まれている。

理解者にして己の背中をどうしようもなく押したトレーナーと――今では助手として――出会い、駆け抜けてきたあの時に勝るものはないと思える。

ただ、『もしも』を羨むなどと、年甲斐も無くレースの熱にあてられたのか、それとも。

 

 津上あき。

ディープインパクトのトレーナーにして、この奇跡のような脚の作成者。

そして、そのディープインパクトより圧倒的に速い、まさに『奇跡』としか呼べない体現者。

ただトレーナーというだけで、ただ情熱を捧げただけで、このような脚は作れない。

ただの情熱では無理なのだ。

夢も執念も祈りも願いも、およそ未来の全てを賭けるような、そんな執念と情念が無ければ、こんな脚は作れない。

津上あきは、誰よりも何よりも速いという彼女は、一体何を思ってこのような脚を作り上げたのか。

彼女は一体何が見えていたのか、彼女は一体何が見たいというのだろうか。

『ディープインパクトの脚の作成者(かつての己の理想の体現者)』にして、『それを容易く超える者(かつての己の理想の破壊者)』。

彼女が見ているものは、一体何なのだろうか。

答えてはくれないのだろうが、アグネスタキオンはそれが知りたくなった。

 




まぁ、モルモット君と新婚生活n十年もしていればいろいろ丸くなってんじゃないんですかね(適当)

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