ゼロから始めるヒロインRP   作:カチュア

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三話

 どうして俺が見ず知らずのジャージ姿の少年についていくのか、理由は一つ。

 訳も分からず異世界転生した中で、彼が唯一の取っ掛かりだからだ。

 

 今でこそ落ち着きを取り戻しているが、右も左も分からない別世界に、目的も使命も無いままに放り出されて。

 それに加えて体はか弱い女の子。文字や言葉は理解できたが、それだけじゃ釣り合いが取れない程状況は酷く。

 これで冷静でいられる方が異常ってもんだろう。

 

 そんな中、目に入ってきたジャージ姿。世界観にそぐわないその『特別感』は、何かあると思わせるには十分で。

 

 要するに、希望に縋りつきたかったってだけの話だ。深い理由は無い。

 

 今まさに、助けてくれた銀髪の少女を追って飛び出した彼の少年と似たような思いではなかろうか。

 だったらその気持ちは分かるけど、落ち着いてくれ。

 

「動くなって忠告されたばかりでしょ。また倒れても知らないわよ」

 

「うぐ、悪い。でも無理してでも動かなきゃいけねぇって思っちまったんだ」

 

 ふーん、ちょっとかっこいいこと言うじゃん。なら、成り行きを見守らせて貰おうかな。

 

「あなた達、何?話は終わった筈よ。これ以上は私もちょっとしか付き合ってられないんだから」

 

 少年が呼び止めた銀髪の少女は、胡乱げな目をしてこちらを見ていた。

 それでもちょっとは付き合ってくれる辺り、やっぱり人の良さが隠しきれていない。

 

「大事なものを探してるんだろ?俺にも手伝わせてくれ」

 

「でもあなた、何も知らないって……」

 

「確かに、盗んだ相手の素性も名前もどこ中かもわからねえ。けど、顔とか特徴は覚えてる。何も知らないって情報よりも有益だと思うけど、いかが?」

 

「そんなことされても私、何のお礼も出来ないわ。治療した分の対価はさっき貰ったし……」

 

「それはそうだけどそうじゃ無いって言うか……とにかく、お礼なんかいらない。これは勝手に納得いってない俺の我儘だから。例えるならそう、路地裏で倒れてる見ず知らずの男に、つい手を差し伸べちゃうようなそんなノリだ」

 

「でも……」

 

「おっと、これ以上何言ってもダメだぜ。俺、君、手伝う。OK?」

 

「おーけー?」

 

「よろしいですかの意。分かったらはいか良しかOKで答えてくれ」

 

 勢いで押そうとしてるのかただテンパってるのか、早口でまくしたてる少年。若干ウザい気もするが大丈夫か?ヤバい奴って思われたりしない?

 

「分かった、分かりました。手伝ってもらいます。まったくもう、強情っ張りなんだから」

 

 根負けしたのは少女の方。強情なのは二人ともだが、今回は少年の意地に軍配が上がったみたいだ。ウザがられて遠ざけられる、とかならなくて良かったね。

 

 それはそれとしてこの子、押しに弱いというか純粋というか、どうにも心配になるな。コロっと言いくるめられて変な壺とか買わされそうな危うさがある。

 元からこの少年には付いてくつもりだったし、旅は道連れってことで。

 

「私も一緒に行かせてもらっていい?あなた達二人だけだとそこはかとなく不安で」

 

「お、助かるな。探し物するなら一人より二人、二人より三人。三人寄れば文殊の知恵って言うからな、これはもう見つかったも同然だぜ!」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」 

 

 俺も分からない。頼むから落ち着いてくれ、本当に。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 かくして、少女の無くし物及び盗っ人探しに乗り出した俺達だったが、捜索は早々に滞っていた。

 

 ――誰も、土地勘が無かったのである。

 

 俺と少年は異世界召喚直後なので当然として、少女もこの辺りの地理には馴染みが無かったようで。互いが互いにアテがあるものだと思ってしばらく歩いた結果、何の成果もなく立ち尽くしている現在である。

 

 ただでさえ探し人するには広すぎるこの王都で、道も分からないようなこのメンバー。はっきり言って絶望的です。物探す前に今日を生きる術を見つけたほうがいいと思います。

 

「結果的に振り出しどころか足踏みしちまってた訳だが、どうよ、お二人さん」

 

「あなたが分かるって自信満々に言うからついていったのに……」

 

「調子乗ってすいませんでした、から聞こうかしら」

 

「そうだよね俺が悪いよねごめんね!」

 

 いやまあ、大した考えもなくついていっただけの俺も悪いんだけど。ただ、いざ人に聞こうとしたときにコミュ障発揮したのは流石に反省してくれ。

 

「でも、ここで燻っててもしょうがないし、切り替えていこうぜ。そだ、自己紹介とかしとく?お互いをもっと知っておけば、さっきみたいな悲劇を回避できるかも」

 

 ふむ、一理ある。そもそも一緒に居るのに呼び方が分からないのは不便だしね。

 

「では俺から失礼して。――俺の名前はナツキ・スバル!無知蒙昧にして天下不滅の無一文!ヨロシク!」

 

 ポーズまで決めて堂々たる名乗りを上げる少年改めナツキ・スバル。内容とテンション合ってないよね絶対。

 にしてもナツキ・スバルね……ちゃんと日本名っぽいな。この世界の他の人の名前は知らないけど、珍しい類の名前だろう。

 

「珍しい名前ね。その黒髪も見慣れない服もだけど、スバルってどこから来たの?」

 

 補足助かる。やっぱり珍しい名前らしい。そうなると俺、この姿の名前考えなきゃいけなくなるな。見た目完全にこの世界の住人だし、二人にもそうであるかのように振舞って来たから、そこは演じ通さないと。

  

「王道的な答えを言うなら東のちっさい島国かな」

 

「ルグニカは大陸図で見て一番東よ?」

 

「テンプレが通用しない……だと……?」

 

 名前…どうしような……あんまり安直なのもアレだし……てかこの世界の一般的な名前ってどんな感じだ?

 

「じゃ俺はそんな感じで、次の方どうぞ」

 

「自分の居場所も分からなくてお金も無くて文字も読めなくて目つきも悪い不審者に教える名前なんて無いわ」

 

「急激な好感度ダウン!?」

 

 違うんだよ、もうちょっと考えさせて。ここで安直に決めて後悔したくないんだよ。良いのが浮かんだらちゃんと教えるから。

 

「でもクソっ、事実だから強く言えねえ……切り替えて次!」

 

 残るは銀髪の少女。純粋な異世界人の彼女だから、後学の為にちゃんと聞いとかなきゃ。

 そう思って視線を銀髪の少女に向けた。――見えた表情は、酷く痛ましげで。

 

「私は――サテラ。家名はない。サテラと、そう呼ぶといいわ」

 

 数秒の沈黙の後、俺達から視線を外したままそう名乗った。

 自分で名乗っておきながら、まるでそう呼ばれるのを拒んでいるような、そんな雰囲気を感じる。もしかして偽名か?何か名乗れない理由でもあったのだろうか、俺みたいに。

 

 まあ深く突っ込むことじゃないかな。サテラね、参考にしよう。……どっかで聞いたこと有るような無いような名前だな。

 可能性とすればこの世界の有名人の名前を騙ったとか。後々調べてみようか。




以下没セリフ

「あとは君に名乗ってもらえれば完璧なんだけど」
「キスショットアセロラオリオンハートアンダーブレードとでも呼ぶと良いわ」
「長い長い長い!」

 筆も展開も思った以上に進まなくて絶望してる。書きたいことが書けるのはいつになるやら……。
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