アルビオンASMR、メリュジーヌちゃんに囁かれたい   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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「問おう、貴方が僕のマスター?」

 

 召喚と共に薄暗い部屋に現れたのは銀甲冑の少女だった。

 月を思わせるような白銀の長髪。子供のような華奢な体躯。召喚の魔力光に負けず輝く琥珀の瞳。纏う鎧は中世欧州のそれではなく、どこかSFらしさを思わせるようなメカニカルなもの。

 一見してどんな存在か、どのような出自か分らない。

 だが、彼女は人にあらず。

 聖杯により召喚された英霊。人類史に名を刻んだ影法師。人を超えたものであり、ただそこにいるだけで尋常ならざる魔力と存在感にて他者を圧倒する人型の神秘。

 サーヴァント。

 聖杯戦争。

 七騎の英霊と七人のマスター。

 それらが命と聖杯を奪い合い、己が願いを叶える為に戦う人と英霊殺し儀式。

 彼女はそのうちの一騎に他ならない。

 そして、彼女を召喚したマスターは息を呑む。

 

「……そうだ、俺が君のマスターだ」

 

 長身痩躯、逆立った薄い金髪以外は特徴のない青年だった。

 少女に圧倒されているのだろうか、少し惚けている男に銀色の英霊は軽く首を傾げた後、薄い笑みを浮かべ、

 

「よろしく、マスター。サーヴァントランサー。召喚に応じて参上した。これより僕は貴方の槍、貴方の翼だ。上手く乗りこなしてくれると信じよう」

 

「……あぁ」

 

「……大丈夫かい? 召喚に不備もであったかな? それとも、お目当てのサーヴァントではなかったかな」

 

「いや、そんなことはない」

 

「……ふふっ、まだ真名も聞いていないのに。嬉しいことを言ってくれるね」

 

 惚けていたかと思えば即答。

 それに対して英霊は気を良くしたのか、鎧を鳴らしながら肩をすくめた。

 

「――――真名をメリュジーヌ。フランスに伝わる竜の妖精だ」

 

 蒼く光る銀の胸甲に右手を当て、左手を緩く広げる。膝を軽くおりながら頭を下げる姿はまさしく夜会の花の如き流麗な所作。騎士甲冑さえなければどこかのお嬢様と言われても信じてしまっただろう。

 

「最も、聊か特異な混じりではあるがそれは追々話して行こうか」

 

 苦笑する様さえ絵画のようだと、青年は思った。

 妖精だと、彼女は言った。

 なるほど人間離れした美しさ。

 完成された美といっても過言ではない。

 少年も魔術師の一人、メリュジーヌという真名にそれに関する知識が浮かび上がるがそれを脳の隅に追いやるほどに彼女から与えらえる視覚情報は逸脱したものだった。

 有体にいえば、見とれていたのである。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……マスター?」

 

 形の良い琥珀の瞳が半目になる。

 

「僕はサーヴァントで君はマスター、そして僕は名乗った。ならば相応の返しがあるものじゃないかな」

 

「あ、あぁ悪い」

 

 一度咳払いし、

 

「――――アウロラ」

 

「ん?」

 

「玲・アウロラ。それが俺の名前だ。フランスとクォーターでね」

 

「―――――」

 

 告げた名に、微かにメリュジーヌは目を細めた。

 微かに驚いたかのように。記憶の中の何かを刺激したかのように。

 だがそれは一瞬で、

 

「よろしく、レイ」

 

「あぁ、よろしく」

 

 聖杯戦争。

 出会った二人はこれから数多の闘争に身を投げ出す。

 召喚されしは埒外の英霊。

 二人で一人、ふたご座の剣士。 

 転輪を背負う憤怒の弓兵。

 伝説の船乗り、鋼の木馬を駆る騎手。

 絶対零度の魔眼を持つ氷結の魔術師。

 可憐さと幸運だけを持つ天使の暗殺者。

 万物を演算しつくす常勝の狂戦士。

 何かがおかしいと、レイを聖杯戦争に送り込んだ万華鏡の魔術師は言った。本来の歴史ではいるはずのないものがいると。

 誰かが仕組んだのか、聖杯がおかしいのか、それ以外の何かが狂っているのか。

 それを看破することもまたレイの役目であり、ランサーの使命でもある。

 

「ふむ……なるほど、勝利以上を求めるか。うん、いいね。それくらいお安い御用だ。生憎僕は最速だ。その程度容易くこなして見せよう」

 

「頼むよ、ランサー。俺も俺なりにマスターとして役目を果たそう。これでも封印指定(・・・・)。蒼の再来と呼ばれた魔術師だ。一撃の火力で言えば―――生憎俺は最高だ」

 

「いい啖呵だ。期待しよう」

 

 最速飛翔、銀光と共に天を駆ける妖精騎士。

 最高火力、極光にて地を焦がす封印指定。

 聖杯戦争の勝利は最低条件。

 勝ち、この異聞とも言える組み合わせの謎を暴くのが本命である。

 

「それでは我がマスター、よろしく。この一時、僕は君の為に翼をはためかせよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、聖杯戦争に勝利して万華鏡爺の依頼も完了していい感じに絆もカンストしてメリュジーヌも受肉したので後はもういちゃつくだけである。

 

「行くよレイ! 極光充填! スラスター全開!」

 

「うおおおおおおおAランク宝具並みの魔力を推進剤にして! 空を駆けるメリュジーヌ! 目指せ成層圏突破!!!」

 

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱ何も考えずに加速度だけ増すのは難しいのか……」

 

「姿勢制御が厳しいね。加速すれば速度任せにできると思ったんだけど」

 

 フランス某所、湖の畔、周囲が森に囲まれた木のバンガロー。

 そのテラスにて手製のグレープフルーツジュースを飲みながらレイとメリュジーヌは嘆息した。

 間に小さなテーブルを挟み、椅子を目前の湖にそれぞれ向けてリラックス。

 レイは飾り気のない白のTシャツとデニム、メリュジーヌにしてもかつての甲冑やナイトドレスではなく白のワンピース姿。

 聖杯戦争から三か月、二人は周囲に何もないこの地に居を構えていた。

 近くの街まで車で一時間、それまでにこんな僻地に住んでいる物好きもいない。

 レイとメリュジーヌが誰の邪魔をされることもなく2人で暮らす為だけの住処である。

 

「大気圏突破、思ったよりも難しい」

 

 自分で焼いたクッキーながら、少し焦げているのに眉を寄せつつメリュジーヌが呟く。

 

「通常の飛行とは違って、空気抵抗や温度、大気圧、思った以上に色々計算しないといけない。ある程度なら英霊としてのスキルで総括してくれるんだけどね」

 

「俺の魔術もぶっ放すことに特化しすぎて、そういう調整できないからなぁ」

 

 玲・アウロラは「極光」の魔術師だ。

 指向性を持った光を無限に加速させることで理論上は無限大の破壊力を生み出せる。

 それは騎士王の聖剣に近い性質を持ち、純粋破壊力でいえばそれに匹敵し、物理法則や空間すら歪めるが故に魔術協会から封印指定を食らった理由でもあった。

 

「私の炉心と接続すればエネルギーそのものは尽きない。……が、問題は人間であるレイが大気圏突破の加速に耐えきるのも大変だということだね。普通に私もGがキツイし」

 

「うぅむ」

 

 生命体としての純粋な問題に頭を抱える。

 或いは、もっと速度を落としゆっくりと上昇すれば不可能ではないのかもしれないが、

 

「―――最高速度でぶちあがらないと、面白くない」

 

「全くだ」

 

 玲・アウロラは加速キチであった。

 とにかくアクセル全開、ブレーキ大嫌い。速ければ速いほうがいい。

 一種性癖とさえ呼べるものであり、最速たるメリュジーヌもまたその毛色があった。或いは、それが二人が仲を深める最初のきっかけでもあっただろう。

 

「……むぅ、ちょっと苦い。それに甘みも足りない」

 

「どれどれ?」

 

「んっ」

 

 クッキーをかじったメリュジーヌに顔を向ければ、彼女は自分が半分ほどかじったクッキーをそのまま玲の口元に突き出した。

 その指は、白魚のように、なんて表現も生易しいほどに美しい。

 背丈は子供のソレ、体重に至っては20キロほどしかないがその絵画の如き美しさはまさしく妖精といったところか。

 視界に一杯に広がる日光を反射し輝く湖、その向こうに広がる青空、振り返ればある穏やかな森。

 その全てをひっくるめたとしても彼女の美麗さには劣るだろう。

 

「どうしたの?」

 

 見とれていたら―――それを解っているかのように、彼女は微笑んだ。

 かつての闘いの中、その琥珀の瞳は冷徹鋭利、あらゆるものを切り裂く爪牙の如き光であったのに、今のメリュジーヌは自分に見惚れている青年を揶揄っているそれだ。

 メリュジーヌはどこかそういう性質がある。

 妖精であり、英霊であり、そしてそれ以外の要素も秘めているからだろうか、上位種としてどこか高い視点、しかして玲と寄り添っているがために距離離れず、結果として母性と魔性が入り混じったものが宿っている。

 ロリとバブみのハイブリッド。

 それがメリュジーヌである。

 揶揄われているのを自覚しつつ、

 

「ぁむ」

 

「んふっ」

 

 差し出されたクッキー、そして指ごと玲は口に。

 メリュジーヌも微かに吐息を漏らす。

 

「んー、確かに。甘さが足りないなぁ」

 

「ふふっ……だろう? 次焼く時は気を付けよう」

 

 笑みを浮かべ、自分の指を舐めたメリュジーヌは楽しそうに次を語る。

 可愛いなぁと、玲は思った。

 二週間ほどの聖杯戦争を超え、それから時計塔やらに報告し、老け顔で過労死してそうな教授とその弟子やら義妹やらと相乗り感覚で怪事件を解決し、それ以外にもいくつか問題を解決して果てに、互いの絆は凡そカンストしているし、彼女がどういう存在で、どういうイレギュラーで、どうこの汎人類史のメリュジーヌと違うのかも聞かされている。

 有体にいえば玲はこの少女にぞっこんだった。

 どこから、と言われれば召喚した時、一目見た時から。

 機能美を追求したといえる彼女に目を奪われ、そしてその飛翔を見た時から心を鷲掴みにされた。

 あれやこれやら色々経て、そうして彼女に惚れ直す限りである。

 元々とにかく速度の出る乗り物が好きだった趣向も相まって、何もかもがドストライクであった。

 概ね、二人の前に広がる問題は大体全てが解決した。

 その為の二か月半、あの手のこの手をまわし、この住居とそこに住み続ける時間も手に入れた。

 

 そして、この世界はとっくに救われている。

 

 4年ほど前、世界は滅び、3年前、世界は漂白されたらしい。

 玲も、それ以外の大半の人間もそのことへの自覚はなく、ただそうであったという記録だけは知っている。

 南極のある魔術機関、そして人理焼却と人理再編に立ち向かった唯一のマスターがいるらしい。メリュジーヌという特異なサーヴァントが召喚できたのもそれの余波ということは判明している。

 時計塔で出会ったそのマスターとサーヴァントだという銀髪の少女は、別のメリュジーヌを知っていたらしくて目を丸くしていたのを覚えている。

 何にしても、一魔術師と一英霊、世捨て人二人に大いなる使命はなかった。

 だが、今度生きていく上で何か指針を作ろうと思って、

 

「――――空の果て、思ったより遠いな」

 

「だからこそ、やる価値があるでしょう?」

 

 二人で空を飛び、最高速度で大気圏突破――――天地の境へ至る。

 それ玲とメリュジーヌ、二人の約束だった。

 とにかく速く飛びたいと玲が言って、それならばとメリュジーヌが応えたのだ。

 二人で一つ、一心同体で。

 一つのオーロラを空のかんばせに描きながら。

 地平の境界線へとたどり着こう。

 それこそが、とりあえず今の二人の目標だ。

 それを叶えた後は―――その時に考えようと思う。

 

「ま、今日のチャレンジは終わりだな。また改善策を考えよう。買い物も行かないとだし、メリー、好きなもの好きなだけいいんだぜ」

 

「それなら態々出かける必要もないかな」

 

「ん?」

 

「好きなものなら目の前に――――わざわざ言わなきゃいけない?」

 

 それはとろけるようなほほ笑みで。

 玲の心を奪うのにはあまりにも容易いもの。

 顔面宝具とさえ言ってもいいものである。

 

「くっ……!」

 

 あまりに可愛さに胸を押さえた。

 ちょっとずる過ぎるこの妖精騎士。

 ある程度仲を深めたと思ってから、彼女は凄くぐいぐい来るのだ。

 貴方は私のものなのだから、私が愛して、私に従うのは当然でしょうと言わんばかりに。

 夜になれば体温恋しいからと布団に潜り込んでくるのは即死のそれである。

 

「ふっ……改めて心しておくことね、玲」

 

 そんな玲に、いつの間にか背に回ってきたメリュジーヌは耳元に口を近づけながら囁いてくる。ダイレクトに吐息が耳に触れ、

 

「私は竜。貴方だけの翼。この世に唯一無二、最速の妖精。貴方はそれを誰よりも知っているのだからそう扱って欲しいし――――私も、そう扱うわよ?」

 

 

 




好き

カルデア式だと慣性やらなんやらガン無視できるしなんなら成層圏余裕で行けるぽいけど
受肉したり召喚式の違いやらということで一つ。

あと無駄に最高速出してたりとか。
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