アルビオンASMR、メリュジーヌちゃんに囁かれたい   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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タイトル分かり易いやつに変えました


メリュジーヌちゃんにえっちって言われたい

 ぎらりと光る日差しに、湖面がきらりと反射する。

 日中の日差しは少しづつ強くなり、日向にいればかなり汗ばむようになる。初夏にこの地に訪れ、気づけば夏の盛り。

 湖の畔で釣り糸を垂らした玲はサングラスの奥で目を細めた。

 湿度はないから極東の夏のような不快感は少なく、日陰に入ればかなり涼しくなるが釣りは忍耐が大事だと白混じりに赤髪の魔術使いは深々と頷いていた。

 

「しかし、ほんとに釣れるのか?」

 

 釣り糸を垂らしはや30分。動きはない。 

 湖に魚がいるのは間違いない。それは確認している。

 だが、釣れない。

 或いは岸に近すぎるのだろうか。

 釣り初心者の玲にとってそのあたりの判断を下すには経験が足りないから、とりあえず試してみるしかないのだ。

 魚そのものは好きだ。 

 特にマグロやカジキが。

 フォルムがいい。空気よりも抵抗力の強い水中で高速で動くために適した形をしている。

 流線形、素晴らしい言葉だ。

 

 ―――――ばしゃりと、目の前の水面から人影が飛び出した。

 

「――――」

 

 思わず、その一瞬に目を奪われる。

 周囲には玲たちしか住んでないのだから、当然その人影はメリュジーヌだ。

 水竜としての性質を持つ彼女は水中でも呼吸が可能であり、高速遊泳が可能である。だからこそ、玲とは違い釣りではなく自身が水中に潜って狩りに赴いたわけなのだが。

 彼女の白銀の髪が宙に舞う。

 浮上と共に仰け反るように体をそらしたのだ。

 その光景に、時間が止まったかのように目を奪われる。

 陽光に照らされた銀髪は輝きながら広がり、飛び散る水滴も喜んでいるかのように。

 濡れた髪の隙間から覗く琥珀の瞳は薄く開かれ、ぞっとするほど美しい流し目が光を帯びていた。

 湖上の妖精。

 まさしくその言葉の通りに。

 

「―――ふぅ」

 

 吐いた息にさえ魔性は宿っているかのようだった。

 何度か髪を揺らし、湖の中から歩いていく。小柄な彼女は水がひざ元あたりまで来たところで、

 

「マスター! マスター! 一杯捕れたよ!!」

 

 先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、笑顔が弾けた。

 万歳した両腕には手甲と合一した特殊な双剣が装着している。メリュジーヌの姿を見てSF要素を感じる理由の一つだ。

 加え、戦闘時は目元を追うバイザーも。これがまた外すと胸元に装着可能な一品。

 このあたりが滅茶苦茶かっこいいなと、玲は常々思っていた。

 これまで多くの英霊やマスター、時にそれ以外の常識外の存在を貫いてきたそれは今、両方の刃に魚を数匹ずつ貫いて銛代わりになっていた。 

 まぁ槍みたいなものである。

 

「どーよ! 惚れ直したかしら!」

 

「―――あぁ、滅茶苦茶な」

 

 快活に笑うメリュジーヌに見惚れつつ、思わず苦笑する。

 初め会った時、大人しそうな、冷静な少女だと思った。だけどそれは彼女の一面に過ぎない。どこか仕事人気質なのだろう。英霊として、槍兵として戦う時とそれ以外では人格や一人称を意図的に切り替えている。

 普段は私で、英霊としては僕だ。

 玲としては僕もかなり可愛いと思うので、たまに使って欲しいのだけれど。

 何はともあれ、普段落ち着いて、控えめなメリュジーヌが楽しそうに破顔する。

 ギャップ萌え、と極東では言うらしい。

 確かに普段との差で、ただでさえ輝く笑顔がさらに輝いている。

 俺のサーヴァント、可愛すぎ……? と玲は真面目に思った。

 あれで意外に負けず嫌いで、感情の起伏自体は激しいのだ。

 

「どしたの、レイ」

 

「ん、あぁ……」

 

 隣まで来て、双剣を振りぬいて魚を引き抜く。既に絶命しているらしく、周囲に散らばり、双剣が魔力の光と共に消失し、

 

「―――――ぬぅ!」

 

「?」

 

 改めて見るとメリュジーヌの恰好が問題だ。

 戦闘時の騎士姿から胸や腰、肩の装甲を取っ払っている。

 鎧の下のインナーは体の大半は包み張り付きつつ、背や腰には何本かのスリットが。普段は腰の鎧と手甲剣とのジョイントパーツを前掛けが繋がって鼠径部を隠しているが今はそれすらない。

 形の良いしなやかな足を包むニーハイはどういうわけか前部分にスリットが。

 言ってしまえば競泳水着とニーハイのコンボである。

 一体誰がデザインを考えたのだろうか。

 妖精か? 神か? 

 特殊な出自のメリュジーヌであり、それに関して普段口を開こうとしないが今は彼女を生んだ何某に感謝したかった。

 出会って四ヶ月、生まれたままの姿だって何度も見たことあるがこの組み合わせは初めてであり、ずぶ濡れという質感も相まって視線を奪われる。

 身体に張り付いた髪をかき上げることにより、細い腕と脇までもが視界に飛び込んできた。

 果たしてあのインナーはどんな素材でできるのだろうか。

 光に照らされて透けているようでもあり、くっきりとへそが浮かんでいる。

 

「…………くすっ、どうしたの? レイ」

 

「んっ、あぁ……」

 

 ごくりと生唾を飲み込んだことに気づいているのだろうか。

 快活な破顔は消え、蠱惑的な笑みが浮かぶ。

 魔性を浮かべが琥珀の瞳が細められた。

 ぱしゃぱしゃと、人離れした、実際に人ではない美貌の笑みを浮かべメリュジーヌが歩み寄る。

 身動きができなかった。

 身も心も奪われたと思っていた。

 だけど、今その瞳に体の自由まで奪われている。

 近づいてくるメリュジーヌに何のアクションも取れなかった。

 蛇ににらまれた蛙ならぬ、竜に見つめられた人間。

 妖しく光る琥珀の瞳。

 弧を描く小さな唇。

 時間が止まった世界の中で、銀の妖精だけでゆっくりと迫ってくる。

 そして、そのまま玲の胸元にしな垂れかかる。

 シャツ越しに胸元を人差し指がなぞり、その口元は耳元に近づいて、

 

「―――――えっち♡」

 

 

 

 

 

 

 メリュジーヌ。

 原典を『メリュジーヌ伝説』。或いは『メリサンド伝説』とも。

 フランスにて古くから伝わる人と人ならざるモノの恋物語、いわゆる「異類婚姻譚」である。

 泉の妖精とスコットランドの王の間に生まれたメリュジーヌは、成長した後父親を幽閉。だがそれを見た母に呪いを掛けられてしまい、週に一度腰から下が翼を持った蛇になるという呪いを掛けられてしまう。もしもその変身を見られれば一生そのままに。

 そして後に人間と恋に落ちた彼女は土曜日は決して自分を見ないという約束の下に結ばれ、富を生み、子供をもうけた。夫は彼女の助けで城や街さえも手に入れたという。

 だが、夫は悪意ある噂を聞き、変身するメリュジーヌの姿を目撃してしまう。 

 そうして、誓いは破られ竜の姿になった彼女は城を飛び出してしまった。

 

「……」

 

 愛する少女の原典、それを読み見つつ玲は息を吐く。

 もう何度も読み返したフランスの童話をまとめたものだ。

 所書斎、ある意味では玲にとっての工房である。

 この小屋と周囲一帯は玲の結界であり、最も厳重なのがここだ。

 玲自身とメリュジーヌは好きに移動できるが、それ以外にとっては天然の要塞に等しい。仮にも封印指定、あの手この手で方々から手を打って不自由な自由を勝ち取っているとはいえ、極光の魔術と受肉した英霊は魔術師にとって喉から手が出るほどに欲しい研究材料なのだから。

 書斎壁いっぱいに書物や魔術の媒体があり、普通の魔術師らしくないのは現代的な機械類があるということだろうか。

 機能美という点では魔術世界はいまいちだ。

 装飾過多というか、物理法則・物理学的にデザインが最適化されていない。その装飾に関してはそれはそれで魔術的な意味があるのだろうが。

 樫材、落ち着いた色合いの机に本を置きつつ、軽く伸びをする。

 気づけば夜は更けていた。

 日中にメリュジーヌが捕った魚は、彼女自身がしっかりと調理して二人で味わい、シャワーも浴びて後はもう寝るだけ。

 二人で大気圏突破するための術式調整・研究が一段落して、休憩混じりに読んでいたのだ。

 メリュジーヌはリビングで家事とかしてくれているだろう。

 意外にというか、あの竜の妖精は家庭的なのだ。

 

「ふぅー」

 

 息を吐きつつ、本の表紙をなぞる。

 最愛なる妖精の物語。

 彼女の前世と言ってもいいもの。

 ただし、今の彼女はこの汎人類史だけではなく――――異聞帯の要素も交じった特殊個体であり、汎人類史と異聞帯、どちらも情報があるらしい。

 ありえざる歴史。

 行き止まりの妖精郷。

 そして境界の竜の左手。

 人理再編。

 玲は知りえない、愛と希望の物語が彼女の一部を構成している。

 かつての聖杯戦争で召喚された英霊はそういう特異例によって召喚されたものだった。バーサーカー項羽なんてちょっとおかしかった。どう見ても人間じゃない。

 何があったのか全てを知るのはかつて世界を二度救ったマスターとその仲間たちだけ。

 メリュジーヌの一部を生んだブリテン異聞帯のことをマスターとサーヴァントの繋がり、夢として一端は見ているが、

 

「んー……」

 

 決して玲には立ち入れない。

 多くのことがあり、彼女が生まれ、得たものと失ったものがあるそれはメリュジーヌにとってそれでも極光のようにきらめている。

 それは、なんというか、

 

「――――妬いてるの、玲?」

 

「っと」

 

 背に軽い重み。

 いつの間にかメリュジーヌが後ろから首元抱き着き手を回していた。

 ふわりと、澄んだ甘い香りが漂う。

 

「ふふっ」

 

「…………なんか嬉しそうだなぁ」

 

「それはそうよ」

 

 ころころと自分の頬を玲に擦り付けながらメリュジーヌは笑う。昼時、玲の時間を奪った魔性のソレとは違う可愛らしいものだ。

 

「確かに私はかつて人と結ばれたメリュジーヌだし、ブリテン異聞帯で生まれた妖精騎士で、人類最後のマスターに召喚された英霊でもある。―――けど、今ここにいる私は貴方だけの翼。英霊とはそういうもの。それを玲だって知っているでしょう」

 

 だけど、

 

「それを理解しているのに、私じゃない私に焼きもち妬くなんて、人間らしい感情だわ。可愛い」

 

「むぅ」

 

 男の小さな嫉妬。

 愛する女が自分だけのものでいて欲しいという全く馬鹿らしい個人的感情だ。

 

「だけど、それだけ貴方が私を愛してくれてるってことでしょう? 私という存在はそもそも唯一無二だけど、それ以外の理由で貴方にとっての唯一無二である。そういう風に扱ってくれる―――あぁ、ふふっ、それ、凄く良い」

 

 耳元から囁かれる甘い声。

 「貴方が私のことを好きすぎるのが可愛い」と彼女は言う。

 それは間違ってはないし、否定する気もないけれど。

 直球で耳元で吐息と共に吹きかけられると聊か恥ずかしい。 

 

「―――ぇれろ」

 

「っ」

 

 小さな舌が玲の耳を舐め上げた。

 耳の淵をなぞり、口に含み、水音を立て、耳孔を舌先が蹂躙する。

 思わず息を呑み、体が震えた。

 そんな玲の反応に、メリュジーヌは笑みを濃くし、それでも止まらない。

 耳への愛撫はたっぷり数十秒。

 自身で見ることはできないが、今玲の片耳はメリュジーヌの涎でどろどろ(・・・・)だろう。 

 

「ふふっ……気持ちよかった?」

 

「…………あぁ」

 

「えっち♡」

 

 昼間言われた言葉と同じことを、短く吹き込まれ、脳髄が震えた。

 身体は小さいのに、時としてぞっとするような母性と色気がある。

 

「今の私は、貴方だけのメリュジーヌよ? 逆もまた然り。妬きもち焼いてくれるのは可愛いけれどそれはちゃんと覚えていないとだめよ

「この翼は貴方だけの為に

「この腕も、この舌も、この声も、この体も

「全部、ぜーんぶ♡

「分かっている? えぇ、そう。なのに嫉妬にかられるなんて。

「私の気を惹きたいのかしら?

「それなら大成功ね、マスター。

「そんなあなた、放っておけない

「ついつい構いたくなっちゃう

「こうして、貴方の耳を舐め回して、

「抱きしめて、あまぁい吐息を吹き付けたくなっちゃうんだから。

「ねぇ、マスター。

「私だけのマスター。

「貴方の槍、貴方の翼――――貴方だけの(・・・・・)メリュジーヌ

「それを忘れたら、だめよ?」

 




このあと滅茶苦茶魔力供給した。


評価の要求文字数が50以上とか訳の分らんアホなミスをしていたのでコメ無しでも入れられるように修正しました。

感想評価いただけると幸いです。
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