たった3センチの根性   作:ダブドラ

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遅くなり申し訳ありません。(投稿主の都合です)
彼が初登場です。


第9話 主人公

side:???

 

はあっ、はあっ、急がなきゃ、母さんに怒られちゃう!

今日は家の手伝いがあるっていうのに・・・。また梅沢君達に絡まれてしまった・・・。何時もの事とはいえ今日は不味い。いつも以上に予約が入ってるらしくて、母さんに負担をかけられないから。

 

僕はまた梅沢君達に絡まれないよう道を変えながら家へ向かう。普段通らない道を走っていると、見慣れない建物が目に入ってくる。この辺りはスポーツショップとかがあるのか・・・じゃなくて、早く帰らないと!

 

急ぎ足で角を曲がり交差点の方を向くと、そこにはボクシングジムがあった。

 

「鴨川・・・ボクシングジム?」

 

こんな所にボクシングジムなんてあるんだな。

古びた建物の窓から中の様子が見える。何人か人がいて何かしているいるようだ。練習かな?すごい迫力だなぁとつい見入ってしまったことに気づき、家へ向かおうとしたときだった。

 

「お前、そこつっ立ってなに見てんだぁ?」

 

大柄な男の人が僕に話しかけてきた。ど、どうしよう・・・。まさか見られてたなんて・・・

 

「あ、あの、その・・・中の様子が気になって、見入ってしまって」

「お前、ボクシング興味あんのか?」

「興味あるって訳じゃないですけど、つい」

「その様子からして、急いでんだろ?なら早く行け」

「あっ、はい。失礼しました!」

「入門する気があんならまた来いよ!」

 

男の人にお礼を言って、僕は家路を辿った。

入門する気があんならまた来いよ・・・か。

ボクシング、やってみようかな?

考え事をしながら走っていると、家についたみたいだ。今は手伝いに集中しなきゃ。急いで玄関を開け、母さんに声をかける。

 

「ただいま!母さん」

 

side:木村

 

試合が終わって3日が経った。ダメージを抜ききった今は、青木とスパーをしている。試合で使ったある人物のファイトスタイルに似せたスタイルの練習だ。その人物のことは、直接会長から聞かされた。

 

~試合直後~

「木村よ、少しいいか?」

「いいですけど、どうしました?会長」

「先程の試合でお主がつかっとったスタイル。ノーガードで回避と攻撃重視のスタイルじゃ。あれがどうも儂のよく知る男に似ておってな」

「会長のよく知る男・・・ですか?」

「うむ。名を猫田銀八という。あやつの現役時代によう似ておった」

「似てたとしても、試合で使ったのは俺が自分で考えたスタイルですよ?」

「それは分かっておる。今日は懐かしい物を見せてもらったわい。しっかり休めよ」

「は、はい。ありがとうございました」

 

という流れで俺はあのスタイルの事を聞かれた。実際猫田さんのスタイルを参考にしたが、猫田さんは桁違いに強い。俺は野生なんぞ持ち合わせてない人間だからな。

 

回避をより早く且つ感覚で行えるようにする、変則的なスタイルに対応できるようにするため青木とスパーをしているというわけだ。ガードを下げているだけでこうも不安が募るとは思わなかった。試合じゃまるで気にしなかったからな・・・

 

「にしても避けるセンスがとんでもねえな木村は。捕まえんのに苦労するぜ」

「それでも避ける瞬間頭で考えちまうんだ。鷹村さんみてえな野生ってのが俺には無いからな」

「理屈っぽいのも木村らしさじゃねえの?俺はいいと思うぜ」

「ありがとよ青木。続けようぜ」

「っしゃあいくぜ木村ぁ!」

 

そう言って再びスパーを続ける。青木の手数が徐々に増えてる事に加え出鱈目な技を出してくるお陰で避けづらい。本当に避けづらい。次は青木の試合があるって言ってたし当然か。

 

ガードをなるべく使わないようにジャブを回避し、隙を見てカウンターを入れる。右クロスが入ればかなりの有効打と言えるくらいには武器として仕上がってきたと思う。飛び込みつつボディーを打ち、すぐ後退を繰り返す。青木も俺の引き際を狙っているのが分かる挙動を繰り返している。

 

後退した瞬間青木の右フックが顔面に来た。上体を左へ捻り狙いを外す。そのまま前屈みになりつつ右ボディーアッパーを入れる。振り切った所ですぐ後退し体勢を立て直す。直ぐ様コーナーに下がった青木目掛けてダッシュ。ジャブをかわして連打を浴びせる。コーナーからの脱出をさせないようにボディーを中心に攻め足を奪いにいく。

 

瞬間俺のフックが空を切った。隙を突かれて青木のアッパーが直撃する。続けての連打を数発もらいながら捌くが感覚が鈍ってきやがった。だがそれは青木も同じだ。互いに打ち合って距離を縮めていく。

 

至近距離に差し掛かったところで青木が拳を握り込む。コークスクリューが来ると踏みリズムを刻む。うねるような風圧を伴いパンチが飛んできたタイミングで右を構える。上体を捻りつつパンチへ被せるように右を打ち込む。クロスカウンターだ。

 

青木のコークスクリューと俺の右クロスが同時に当たる瞬間、俺は首を捻る。原作では伊達英二が最初に用いたダメージを殺す技術。

俺の右は青木に深々と命中し青木のコークスクリューはギリギリ有効打にならなかった。

 

青木が倒れたと同時にゴングが鳴り、俺は拳を突き上げる。

 

「っしゃあ!危なかったぜ」

「嘘つけ狙ってたろあの右クロス!」

「俺も賭けだったさ。青木が普通のコークスクリュー打ってくるなんて予想できるかよ」

「それにカウンター合わせてこられるとは俺も思わなかったぜ」

 

青木と反省を述べている時、篠田さん達が入ってきた。

スパー見てたのか。

 

「木村、いい右クロスだったぞ。青木もコークスクリューの判断は良かったと思う」

「ありがとうございます。何で八木さんも?」

「いや、鷹村君が新しく入門してくれそうなヤツを見つけたって言うからてっきり中で見学してるのかと」

「見学はいないっすよ。俺と木村のスパーを覗いてたヤツはいましたけど」

「そうなのかい?それじゃしょうがない。二人ともお疲れ様」

「「ありがとうございます」」

 

覗いてたヤツがいたのは確かだ。スパー中に視線を窓の方から感じたからな。見覚えのある髪型だったので推測はできるが・・・マジかよ。時期的には丁度今くらいだったのか。この物語の主人公である「彼」が入門してくるのは。

 

──2日後

 

「鷹村はどこじゃ!?」

「会長どうしたんすか?」

「青木村、鷹村を見なかったか?」

「いえ、見てないっすけど」

「あやつ、もうロードワークに行って2時間は経つぞ。話があると釘を刺したというのに・・・」

「2時間もアイツがロードワークするわけねえからな・・・怪しいな」

「青木の言う通りだな。なにか油売ってるんだろ」

 

この時俺には心当たりがあった。何故鷹村さんがロードワークに行ったきり2時間も帰ってこないのか。

 

 

 

 

 

side:鷹村

 

──会長が怒る2時間前

 

「んじゃ俺様はロードワークに行ってくるかな」

「なるべく早く戻ってこい。木村とスパーじゃ」

「木村とスパーやらせんのか」

「グズグズせんではよう行かんか!」

「チッ、仕方ねえ。行ってくらあ」

 

木村とスパーか・・・。先ずはさっさとロードワークを済ませちまうか。俺様は早速ジムを出てロードワークコースの河川敷へ向かう。

 

ここ最近木村の成長が目まぐるしい。ロードワークでも俺様に追いついてきやがるしスパーでも中々捕まらねえ。テクニックに磨きがかかっているのは分かるが気に入らねえ・・・気に入らねえんだよ・・・。

 

何より八木ちゃんが言うには木村の試合の観客数やらチケットの売上やらも上がっているらしい。俺様ほどじゃないがそれも気に入らん。それと次の試合ももうじき決まるそうじゃねえか。俺様のような減量もなければ王道のアウトボクサーだ。組みやすいんだろうが何故木村なんだ!畜生木村め、あとでみっちり絞めてやる・・・。

 

と木村への愚痴を溢しながら河川敷を走っていると高架下で人が殴られているのが目に入った。高架下へ近づき様子を見ると、どうやらいじめの現場らしい。高校生の連中が1人を殴りつけている。クソガキ共め、こらしめてやるか。

 

 

「おうお前ら何やってんだ?」

「あん?誰だアンタ邪魔すんなよ」

「弱いものいじめたあだっせえことしてんな」

「何だと?てめえも同じ目に合いてえか?」

「やってみろよ。やれるもんならな」

「何だとこの野郎!」

 

軽く挑発したらすぐのってきやがった。見たところ弱いものいじめていきがってるガキだ。たいしたヤツじゃねえ。連中のパンチをかわし軽く背を押す。3人の内2人はあっさり倒れやがった。主犯のガキのパンチを避け大振りを受け止める。

 

「喧嘩に拳は使わねえ。さっさと失せろ」

「舐めてんじゃねえぞコラ!」

 

ガキの左を受け止め足払いで転ばせる。上から睨みつけてやると、捨て台詞も吐かず慌てて逃げ出しやがった。

 

「まあ、この程度だろうな」

「あ、あの・・・」

「大丈夫か?もういじめられんじゃねえぞ・・・ってお前!」

「2日前はどうも・・・って今もなんですけど。本当にありがとうございました」

「前からか?あいつらに殴られてんのは」

「はい。言い返せない僕も悪いんです。誰にも助けを求められなくて」

 

ウジウジしてるガキだな・・・早く戻らねえと。

さっさと行くか。

 

「俺様が通りがかって良かったな」

「本当にそうです。ありがとうございます」

「それじゃ俺様はもう行くぞ?」

「あ、あの!」

「何だよ?」

「2日前に入門する気があったらまた来いって言いましたよね?僕入門したいんです。ボクサーになりたいんです」

「軽はずみな気持ちでなれるほど楽じゃねえ。やめておけ」

「軽はずみじゃないです。本気で悩んで決めたことなんです。だから・・・お願いします!僕にボクシングを教えて下さい!」

 

そう言ったコイツの目は、強え意思を感じさせる光を放っていやがった。おもしれえ、いいじゃねえか。

 

「なら後悔するなよ?ボクシングは厳しいぞ?」

「承知の上です!」

「よしわかった。んじゃついてこい。俺は鷹村守だ。お前の名前は?」

 

覚悟を決めた表情でコイツはこう名乗った。

 

「僕は・・・幕之内一歩です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう一話書き溜めてあるので明後日投稿します。
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