(言い訳ですが投稿主が骨折したり受験だったり色々ありまして)
一歩が宮田に負けた後、2日が経過した。入門したばかりの新人が経験者にカウンターを貰ったんだ。ダメージ抜きは必要だろう。会長の指示で一歩は安静にしているらしい。
俺はというと猫田さんリスペクトの新スタイルを煮詰めていた。原作通りの木村のスタイルより攻撃的な方が俺には合っているからだ。鷹村さんとのスパーで回避を磨き、青木とのスパーでパンチを磨くのが最近の練習になっている。
「木村君、ちょっといいかな?」
「どうしたんすか、八木さん」
練習中に八木さんに会長室へ連れられた。
何だ一体?
「会長室に来るということは、重要な話ですか?」
「ああ、君の試合の事でね」
「俺の試合ですか?」
「木村君は次勝てば8回戦になる。只、その試合が遅れるかもしれないんだ」
「延期、ですか」
「相手側が怪我らしくてね。別な相手を探さなければいけなくなったんだ」
「分かりました。俺は大丈夫です」
「ありがとう木村君」
八木さんに頭を下げ、練習に戻る。
延期か・・・。仕方ないよな。当分試合はないか。取り敢えずは今するべきことをするか。
──次の日
「こ、こんにちは!」
「おう一歩、来たか」
「鷹村さん、今日から改めてよろしくお願いします!」
「へっ、この俺様についてこられるよう頑張るこったな」
「よろしくな、一歩」
「木村さん、よろしくお願いします!」
一歩がついにジムに通うことになった。
初日ということで今日は普段のトレーニングメニューの説明などだ。
俺と青木でジムでの基礎トレーニング、鷹村さんはロードワークの説明だ。
実践ということで今はロードワーク中。
鷹村さんが先導し、俺は一歩と並走する。やはり主人公らしいな、身体が出来ている。俺達のペースについてこれている時点で持ってるモンが違うと察した。
青木のヤツは鷹村さんに追い付こうと飛ばしている。ありゃバテるな。
「そういや一歩は鷹村さんと何時会ってたんだ?」
「最初は僕がジムを覗いてた時で、二度目はいじめられていた僕を助けてくれた時です」
「あの時の視線はやっぱり一歩だったか」
「な、なんかすいません」
「構わねえさ。俺も神経研ぎ澄ましてたからな。普通は気づかねえって」
「そうなんですか・・・。あっ、鷹村さん達離れていきますよ!」
「鷹村さん俺達のことガン無視じゃねえか・・・。よし、俺達もペース上げるか」
「はい!」
そんなわけで、他愛もない会話をしつつ俺達はロードワークを終えた。
ジムに戻ると、宮田の親父さんと入れ違った。会長が中にいるのが見えたからおそらく話していたんだろう。
会長は何やら考え事をしているようなので取り敢えず基礎トレの用意をしようとすると、やはり鷹村さんが会長に話しかけていた。
「おいジジイ、なに話してやがったんだ?」
「戻ってきたかお主ら」
「とっくに戻って来てたぜ」
「木村と宮田がスパーした時同様、小僧との再戦まで宮田はジムにくる日をずらすそうじゃ。手の内を見せんつもりじゃろう」
「かーっ、ストイックだな、あの親子は。ってかジジイはどうすんだよ」
「儂は小僧の特訓に付き合うわい。宮田親子がいる時は宮田に任せることにした。それよりお主はさっさと練習せい!」
「チッ、わーったよ」
話の内容を聞くに、一歩に一発貰ったのが相当悔しかったんだろうな。終わったあとも俺の時とはうって変わって険しい顔してたし。
サンドバッグを叩いていると一歩が会長にリングに上がらされているのが見えた。いよいよ本格的にしごかれるかな。
side:一歩
「小僧、リングに上がれ」
「何するんですか?」
「今から説明する。しっかり聞けよ」
「分かりました!」
リングで何をするんだろう・・・?
会長に言われた通りグローブをつけてリングに上がる。リングに上がるのは宮田君とのスパー以来だ。気を引き締めないと。
「今からミット打ちをする。儂が構えたミットめがけてパンチを打ち込むんじゃ」
「は、はい!やってみます!」
「先ずはジャブからじゃ。鷹村に教わったことを見せてみい」
「はい、お願いします!」
僕は会長の持つミットを見ながら構えをとる。そして狙いをつけてジャブを打っていく。単発から二連続、さらにスピードを上げていく。凄くいい音がして気持ちがいい。キツいけど楽しいな。
「次はワンツーじゃ。ジャブとストレートのコンビネーション、これも鷹村に教わったじゃろう」
「ジャブの戻り際に拳を出しつつかかとを外側に捻って腰を入れるんですよね、やってみます!」
鷹村さんに教わった時の言葉を繰り返し呟きながらジャブを打ってリズムをとる。タイミングを見てストレートと合わせていく。混ざった途端に難しくなったぞ・・・でも少しずつ掴めてきた。
「今じゃ思い切り打て!」
「はい!」
会長の掛け声に合わせて全力で右ストレートを打ち込む。皆が驚いている。会長が尻餅をついたと同時に空気が変わる。静かになってしまった・・・
「か、会長!大丈夫ですか!?」
「儂のことは大丈夫じゃ。それより重さのあるええパンチじゃったぞ。」
「見たかジジイ!俺様の見込みも間違って無かっただろ?」
「ふん、それは認めてやる。ええ拾い物をしたかもしれんな」
なんか鷹村さんと話してるけどなんだろう?
まあ今はとにかく練習しよう。
グローブの紐を締めてサンドバッグを叩き始める。木村さんが叩いている横で僕なりに叩いていく。
すると木村さんと青木さんが話しかけてきた。
「さっきいいストレート打ってたな」
「あ、ありがとうございます、木村さん」
「しかしパンチ力があるってのは羨ましいもんだな」
「青木はもっと真面目に練習しろ」
「なんだと木村ぁ、俺は真面目だぞ?」
「お二人ともやめて下さいよ」
「ケッ、次のスパーでぶっとばしてやるからな」
「青木にできるか?」
木村さん達が揉めている事も普段通りなのかな・・・。そう思っていると会長に呼び出された。
サンドバッグの前に立たされる。何が始まるんだろ。
「今からアッパーを教えてやる」
「アッパーですか?」
「下半身の踏ん張りを効かせ体ごと拳を突き上げるイメージじゃ。やってみろ」
「ええと、はい、やってみます!」
肘を引いて構える。下半身を意識するんだよな・・・。右足から前に踏み込みそのまま全身で拳を突き上げる!
凄まじい風切り音がした。
・・・・・・スカした?は、恥ずかしい・・・。振り返って回りを見るとやっぱり静かになっている。
・・・・・・あれ?会長も呆然としてるぞ?
「まあ上出来じゃろう。後はミット打ちで感覚を掴め」
「あ、ありがとうございます」
上出来か・・・嬉しいな。でもまだまだだ。もっと頑張らないと。僕はサンドバッグを叩きに戻った。
side:鴨川
幕之内一歩か・・・。あのパンチ力にアッパーのフォーム。ええモンを持っとる。素質はあるじゃろうな。鷹村が見つけたと言うておったからおそらく鷹村が指導しようとするじゃろうが・・・やはり宮田対策にはあやつが適任じゃろう。
会長室で八木ちゃんと小僧のスパーについて話し合う。日取りは3ヶ月後。相手は宮田一郎。
「ノーライセンス同士のスパーですから、口外は出来ませんね」
「それは当然じゃ。小僧にはあらかじめ伝えておこう」
「その一歩君ですが、大丈夫ですかね?良いパンチは持ってますが、宮田君が相手となると・・・」
「そこは心配いらん。儂に考えがある」
「なら会長を信じましょう。ではこれで」
八木ちゃんが会長室を去った後、小僧の言っていた事を思い出す。
──僕は、ボクサーになるんだ。その為に頑張って来たんだ!──
宮田にやられる前の傷ついた状態で己を鼓舞するために発した言葉。その時の小僧の目は輝いておった気がするわい。見てみたい。小僧の行く末を、どこまで駆け上がるかを
儂も出来ることをしよう。宮田とのスパーが楽しみじゃ。
side:木村
練習を終えて青木と鷹村さんと着替えている時だった。
「お前らさっきの一歩のアッパー見たか?」
「綺麗なフォームでしたけど、当たらなかったんじゃ意味ないっすよ」
「ああ?何も分かっちゃいねえようだな。何を教わってきたんだ青木ィ」
「青木、気づかなかったか?あのアッパーのフォームは、教科書通りの形じゃねえか」
「木村の言う通り、あれはアッパーの理想の形だ」
「理想の形ィ?」
「強靭な足腰があるからこそ成せる技だぜ」
アッパーについて話しながら着替えて上がろうとした時だった。突然会長に呼び出された。会長室には一歩がいたんで何事かと思ったが、会長がゆっくり話し始める。
「宮田との再戦が、3ヶ月後に決まった。その為明日からは宮田対策を重点的に行うこととする」
「3ヶ月後・・・分かりました!」
「ところで何で俺も呼ばれたんすか?」
「それをこれから説明する。宮田対策には、小僧を鍛えるスパーリングパートナーが不可欠じゃ。そこで・・・」
「宮田とスパーした経験がある俺に一歩のスパーリングパートナーをしろと」
「そういうわけじゃ。これからは共に切磋琢磨するように。では上がってええぞ」
「「ありがとうございました」」
一歩と二人で事務を出た後、一歩に話しかけられる。
「あ、あの木村さん」
「何だよ一歩?」
「明日から、スパーよろしくお願いします!」
そういいながら一歩は深々と頭を下げた。俺は一歩に顔を上げるように促しこう告げる。
「これからよろしくな、一歩。言っとくが本気で打ちにいくからな」
「本気ですか・・・望むところです。よろしくお願いします」
「望むところか。楽しみだな」
覚悟を決めた顔つきの一歩と握手し互いに帰路を辿った。
ここから、俺と一歩のカウンター特訓がはじまった。
次回は来週更新です。