たった3センチの根性   作:ダブドラ

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お久しぶりです。本日より投稿再開です。


第14話 再戦 

side:一歩

 

 

ゴングと同時に僕は飛び出していた。

 

 

宮田君が動く前に接近戦を仕掛ける為だ。

距離を取られれば僕じゃ到底捕まえられないから、それなら宮田君を逃がさなければ良い。

射程距離に居る宮田君目掛けて左を2度振り抜く。

 

1度目をガードされ、2度目のパンチが空を切ったと気づいた時には、宮田君は目の前にはいなかった。

 

(な、え、消えた!?)

 

「一歩後ろだ後ろ!」

 

木村さんの声を聞いてガードを上げながら振り向く。

すぐに鋭いジャブが突き刺さった。前とは段違いのハンドスピードだ!このままじゃ逃げられる!

 

円を描きながら動く宮田君の足元を注意し左を打ち返す。躱されたけどバランスを崩している。すかさず左右のフック、更に追いかけながら連打。段々宮田君がガードを多用するようになってきた。

 

(今なら、アレに繋げられる!)

 

ガードの上からストレートを叩きつけ、仰け反った宮田君へ前進する。右を溜めておいて、左ロングフックを振りかぶる。

 

宮田君が僕のフックに右を被せてくる。僕は踏ん張りつつダッキングしてカウンターを避け、そのまま右を顎目掛けて突き上げた。

 

 

 

side:藤井

 

「見たか木村!?一歩のやつやりやがった!」

 

「ああ、けどあんなアッパー貰いたくねぇ・・・」

 

「た、確かに・・・。悶絶もんだぜ」

 

 

 

木村と青木の会話をよそに、俺は開いた口が塞がらなかった。宮田の動きは当然良かった。しかしあの幕之内という彼、破壊力とダッシュ力共に本当にノーライセンスか疑うレベルだ。

 

とても新人のスパーのレベルじゃない。面白いじゃないか。世界戦の会見に行かなくてよかったぜ。

 

「なあ木村、一つ聞かせてくれないか」

 

「藤井さん、何すか?」

 

「幕之内が宮田からダウンを奪った事に対して、あまり驚いていないように見えるが?」

 

「実を言うと俺、一歩のスパーリングパートナーで。これからのスパーであんなパンチを打ってくるとか考えただけでも寒気がしますよ」

 

「それは心中お察しするよ・・・おや?」

 

木村と話している内に宮田が立ったようだ。足が揺れる程に効いているか。だがいい表情をしている。

 

まだまだ面白くなりそうだな。

 

 

 

side:鴨川

 

小僧めやりおった!

宮田にアッパーを当てダウンをとりよった。宮田が自ら接近戦を仕掛けてくるアウトボクサーであることが幸いしたか。

 

「会長、一歩君やりましたよ!」

 

「喜ぶのはまだ早いぞ、八木ちゃん」

 

「えっ?・・・ああっ!」

 

「宮田め、立ちよったか」

 

浅かったように見えたが、案の定立ってくるか。

さあ小僧、ここからが本番じゃぞ。後1分、戻ってきさえすれば勝機はある。

 

 

「一歩君、押されてますね・・・」

 

「何やっとる小僧!もっとガードを上げんか!」

 

 

宮田が小僧のパンチに慣れてきよったか。小僧も空振りが増えてきた。何よりガードを忘れておる・・・。

これでは長くは持たん、いつ倒されてもおかしくない。

 

 

ワシの予感は当たった。焦った小僧の右に合わせて、宮田のカウンターが炸裂したのだ。鷹村がカウントをし始める。

 

「起きろ小僧!戻ってこい!立つんじゃ、諦めるな!」

 

立ちさえすれば次のラウンドへ繋がる。まだ勝機がある。小僧を信じて叫ぶ。しかし動かない。鷹村が判定を下す前に立ち上がれるか?

 

いや、悩む必要などないわい。セコンドが選手を信じないでどうするんじゃ。

小僧、ワシはお前を信じるぞ。立ち上がりコーナーへ戻ってくると、信じておるぞ。

 

 

 

side:木村

 

「「一歩!!」」

 

 

宮田のカウンターをまともに貰い沈んでいく一歩へ俺と青木は叫んだ。がら空きの顔面に綺麗に入っちまったらしい。ピクリとも一歩は動かない。

 

「攻めることに必死でガードを忘れていたんだ。そこを狙われた・・・」

 

「宮田に翻弄されてたってことか・・・」

 

「なあ木村、一歩が立てたとしても・・・勝てると思うか?」

 

立てたとしてもという辺り、薄情なヤツだぜ全く。

俺はリングの方に目をやりながら青木の質問に答える。

 

「一歩が冷静さを取り戻せれば勝機はあると思う。立てたとしてもってのはどうかと思うがな。あいつは、一歩は立つさ」

 

「何だよ?どうかと思うがなって・・・なっ!?」

 

 

青木も気づいたらしい。少しづつだが一歩は立ち上がろうと踠いている。その姿に何を感じたか、俺は思わず叫んでいた。

 

 

 

「立て一歩!宮田に勝つんだろ、練習を思い出せ!」

 

 

よろめきながら立ち上がりファイティングポーズをとった一歩を見て、青木と共に胸を撫で下ろした。

 

それと同時にゴングが鳴り響いた。

 

 

 

 

side:宮田

 

「見事にやられたな。幕之内に」

 

「アッパーをまともに貰うとは思わなかったよ。足がまだ揺れてる」

 

「次のラウンドはどうする?幕之内は柔なファイターじゃない。そう簡単に倒れてはくれないぞ」

 

「問題ないよ。次のラウンド、幕之内の破壊力が幕之内自身に牙を剥くことになるさ」

 

「そうか・・・。一郎、どうなろうと油断だけはするなよ」

 

「OK、父さん」

 

父さんと話し終えて息を整える。残りの時間で少しでも足を回復させなければならないからだ。

 

幕之内には驚かされた。3ヶ月前とはまるで別人だ。

しかしあのアッパーまでの流れ・・・とても幕之内が思い付いたとは思えない。

 

おそらく木村さんの入れ知恵だろうな。俺のカウンターを利用しようなんて考えるのはあの人くらいだ。ますます負けられない。それを実行し成功させた幕之内にも当然だ。

 

 

「インターバルは残り僅かだ。考えは今のうちに纏めておけ」

 

「分かったよ父さん。見ていてくれ」

 

 

2ラウンド目の策を纏めながらゴングを待ち、目を瞑る。足はまだ完全じゃない。すぐには腰を入れて打てないだろう。ならやることは一つだ。それが成功した時、幕之内に隙が生まれる。

 

 

 

 

side:一歩

 

「小僧、よく立ち上がった!よく戻ってきた!」

 

「心配させやがって、ヒヤヒヤしたぜ」

 

「す、すみません・・・。」

 

 

まだ意識がハッキリしない。今分かるのは次のラウンドへ繋がったってことだ。もし会長と木村さんがいなかったら、僕は立てなかったと思う。

 

 

「・・・会長、木村さん」

 

「何だよ?一歩」

 

「何じゃ小僧、言ってみろ」

 

「僕が戻ってこられたのは、お二人のおかげなんです」

 

「会長の声で僕は意識を取り戻せて、木村さんの声が僕の背中を押して、立たせてくれたんです。だから、ありがとうございます」

 

「まだスパーは終わってないんだ。お礼は終わってからだな」

 

「はい!」

 

 

段々視界がハッキリしてきた。頭もクラクラしなくなってきた。僕の目には宮田君がハッキリ写っている。

次のラウンド、何をしてくるんだ?何を狙っているんだ?

 

カウンターは間違いなく狙ってくるはずだ。また倒されれば立てるかどうか分からない。今の僕のダメージじゃ追い付けるか分からない。僕に残された選択肢は一つじゃないか。

 

 

「して小僧。次のラウンドはどうする?」

 

「ゴングと同時に手数で攻めようと思います。・・・僕にはそれしかない」

 

「カウンターのダメージがまだ足に残っているからか。距離を取られれば今の状態だと追い付けるか危ういな」

 

「ワシはそれでええとと思うぞ。小さく細かく連打するのがお主のスタイルじゃからな」

 

「俺からのアドバイスはガードを上げろってとこかな。さっきもガードが下がりぎみだったからな。意識出来てなかったろ」

 

その通りだ。宮田君に打たせまいと手数を出すことを意識しすぎてガードが疎かになってたんだ。ジャブの被弾が多かったのもそのせいだと思う。

 

拳を握り全身に力を込めてみる。まだ腰を入れてパンチを打つことは出来る。体も動く。足も力は入る。

まだまだ戦える。

良く見ると宮田君がこっちのコーナーを睨み付けている。な、何だろう?僕が立ったからかな?

 

 

「俺を睨んでやがるな宮田の奴」

 

「宮田君が木村さんを?」

 

「一歩が宮田からダウンを取ったアッパーまでの流れを俺の入れ知恵だと気づいたらしい」

 

「さ、流石宮田君だ。なんて洞察力なんだ」

 

でも視線が僕に向いているような気がしてならない。こ、怖い・・・。でも負けないぞ。

 

「2人共第2ラウンド始めるぞ」

 

そろそろか。マウスピースを咥えてリングに上がる。

コーナーから前に出て、木村さんに言われた通りガードを上げて構えを取る。

 

その瞬間回りがザワついた。何だろう?

宮田君の方に向き直ると、そこにはこれまでとは違う構えの宮田君が立っていた。

 

顔つきも変わっている。何よりあの構えは確か・・・ヒットマンスタイルだ。ということは宮田君も攻めに来るみたいだ。先に打たせるわけにはいかない。

 

 

「それじゃ始めるぞ。ラウンド2、ボックス!」

 

(いくぞ、宮田君!)

 

ゴングと共にガードを固め、宮田君目掛け突進する。

間髪入れずパンチを繰り出した僕は目を疑った。パンチを避けながらどんどん距離を詰めてくる。

 

そしてついにほとんどゼロ距離まで近づいた宮田君は、僕に組み付いてきた。

 

宮田君の狙いは、クリンチだったのか!

 

 

 

 

 

 

 

 




再開が遅くなり申し訳ありません。
スパーの決着はその次の回まで書きためて投稿します。アンケートもありがとうございました。
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