作者の都合で半年程空いてしまい申し訳ありません。
何としても最後まで書き切るのでどうぞよろしくお願いします。
8回戦昇格がかかった試合に勝ち、晴れてA級ボクサーになった俺は試合直後に会長の戦友である
猫田銀八と出会い、彼に師事することになった。
それから猫田さんは俺に猫田式トレーニングと題して新しい練習メニューを考案。
およそ2ヶ月経過した今も俺はメニューに則り練習に勤しんでいるし、一歩や青木も時々一緒に練習を見てもらったりしている。
猫田さんが考案した練習メニューはかなりキツい。だが俺の状態を見ながら都度調整をしてくれるので充実感がある。
何より効果的なのが猫田さんのアドバイスだ。会長曰く現役時代から健在のボクシング眼によって齎される的確なアドバイスにより、2ヶ月の間に俺も、青木や一歩も大きく成長を遂げた。
その成果か猫田さんが来てから1ヶ月後に青木も試合に勝利し8戦6勝の戦績でA級ボクサーへの昇格を果たしたのだ。
さらに先週行われた東日本新人王2回戦、
一歩は原作通り小橋健太との試合だったんだが何と2ラウンドKOでそれを勝ち上がったんだ。
小橋はパンチは軽いが徹底した情報収集とそこから練られた作戦で判定勝ちを重ねてきたボクサーだ。
原作じゃ軽いワンツーで動揺を誘いつつクリンチを織り交ぜてリズムを乱し、一歩がパンチを打てばクロスアームブロックで防ぐ、といった具合に策で翻弄し続けて後数秒で一歩が判定負けする所まで追い込んだ。
だが今回は、一歩が宮田とのスパーでクリンチされた状態からボディブローを打った事を思い出し、小橋のクリンチを逆手にとった事で逆転。
得意のボディブローで1ラウンド目からダウンを奪い、続く2ラウンド目はダメージで小橋の動きが鈍った所をすかさず連打で追い詰めていき、二度目のボディブローでついにKOしたという訳だ。
今日は一歩が次に戦う相手が決まったという事で、藤井さんがビデオを持ってきてくれる事になっている。
「よし、ロードワークはこの辺にしとくダニ。」
「ハァ・・・ハァ・・・はい!」
「ゼェ・・・ゼェ・・・」
「青木、大丈夫か?」
俺はというと猫田さんとロードワークに出ていた。青木も一緒に走ってたんだが案の定バテている。
「なあ木村・・・ゼェゼェ・・・お前いつもこんなペースで走ってんの?」
「ああ、もう2ヶ月くらいはこんな感じだな。」
両膝に手をつく青木の横で息を整えていると、猫田さんが俺たちの方を向く。
「ワッハッハ!鍛え方が足らんニ、青木。」
「マジかよ・・・。」
疲労の色など一切なくピンピンした様子で笑っている猫田さんに青木が驚愕している。
実は普段山奥のペンションを経営している傍ら
トレーニングを欠かさない猫田さんの肉体は現役時代からまるで衰えていないんじゃないかと思うほどに仕上がっている。
俺と猫田さんが練習している所を見ている会長の顔が嬉しそうなのも頷けるな。
「源ちゃんから聞いた話じゃそろそろ戻ったほうが良さそうダニな。2人共行くダニよ!」
「「はい!」」
河川敷近くの公園に設置してある時計を見た猫田さんの後に続いて俺たちもジムに向かったのだった。
〜鴨川ジム〜
「おかえりなさい!」
「おう。」
「幕之内、源ちゃんさどこにおるダニ?」
「会長なら奥で藤井さんと話してますよ。」
俺達は一歩に続いて奥のテレビがある部屋へ向かう。鷹村さんも既にいるみたいだ。
ちなみに一歩の試合の直後鷹村さんの試合もあって危なげなくKO勝ち。これでタイトルに挑戦出来るようになったので機嫌も良さそうだ。
「来たか。」
「待たせたダニ、源ちゃん。」
「どうも猫田さん、どうです?木村は。」
「鍛え甲斐のある男ダニ。2ヶ月で目に見えて成長しとるニ。」
「おう藤井ちゃん、本題に入ろうぜ。」
「ああ悪い、じゃ始めますか。」
藤井さんは猫田さんが会長の戦友だと知って以来、良く取材としてジムに来る頻度が増えた。
会長に門前払いにされる事もあるが気さくな猫田さんが良く答えている所を見たな。
「まず、次の幕之内君の相手ですが・・・」
「皆さんも予想している通り、とでも言いましょうか。」
ってことはやっぱりあいつか。
「・・・速水じゃな?」
「ええ。フェザー級期待の新人として注目されていたアマ出身の選手で、新人王戦は大したダメージもなく勝ち上がってきてます。」
「速水といえばワシもボクシング雑誌の新人特集で見たことがあるダニ。」
「そうでしょうね。速水はその容姿から女性のファンが多い。特集を組めば売上も伸びますから。」
急に青木と鷹村さんが不機嫌そうな顔になった。全く男の嫉妬ってのは醜いぜ・・・。
「とはいえ実際に見たほうが早い。ビデオデッキ使わせて貰いますよ。」
そう言いながら藤井さんはビデオを再生する。
「小僧、良く見ておけよ。お主の次の相手じゃからな。」
会長の言葉に一歩以外の俺たちもテレビに集中する。
映像が始まった。速水の相手はインファイターだ。速水が先制してワンツー。段々と左右の連打になっていく。
だが相手はそれを難なく捌き距離を詰める。
ある程度距離が詰まると相手は一気に懐に入りボディーへ2発当てて後退。速水の表情が一瞬歪むが直ぐに笑みに変わる。
再び速水が相手に接近し連打。それも最初より速い。徐々に捌ききれなくなってきた相手がヤケクソ気味に突撃するが、そこに速水の左ショートアッパーが炸裂。
怯んだ相手へ追撃の連打。一瞬で20発以上のパンチを顔面に叩き込まれた相手は力なく倒れ、試合は終わった。
「す、凄い。パンチが見えなかった・・・。」
「相手も巧いと思ったんだがなぁ。」
戦慄する一歩とガックリしている青木。確かに速水は強い。一歩じゃ少し厳しいだろう。少なくとも、
「あの連打は"ショットガン"と呼ばれている。速水に勝つにはこれを攻略しなければならない。」
「でも、どうしたら・・・。」
「まあまて小僧、猫ちゃんは今の試合を見てどう思った?」
「巧いボクサーだと思ったダニ。けんど幕之内の勝てない相手ではないとも思うニ。」
「儂も同感じゃ。速水との試合まで2ヶ月ある。その間でどれだけ練習を積めるかじゃ。儂は猫ちゃんと相談しメニューを組む。少し待っとれ。」
そう言って会長は猫田さんと八木さんを連れて部屋を後にした。
「それじゃ、俺もこの辺で失礼するよ。」
「藤井さん、ビデオありがとうございました!」
「おう、試合頑張れよ。幕之内君。」
そう言って藤井さんがジムから出た後、10分程で会長が戻ってきた。
「今から貴様らに大事な話をする。心して聞け。」
いきなりの発言に場が一気に締まる。一体なんだ?
「鷹村の日本タイトル挑戦の日取りが決まった。」
ついにか・・・!
皆の表情も明るくなっている。
「頑張って下さい、鷹村さん!」
「勝ってくださいよ!」
「おうよ!」
鷹村さんは不敵な笑いを浮かべている。確かに原作でもこのくらいの時期に日本タイトルを取ってたな。
もうそこまで来たのか・・・。
「この事と、小僧の新人王戦準決勝を加味して来週から特殊な練習メニューに取り組んでもらう。」
・・・特殊っていうとまさかアレか?時期的には有り得るがいよいよなのか?。
「特殊な練習メニューって何ですか?」
「それはすなわち──合宿じゃ!」
一応転生した身である俺にとっても初めてのイベント。
楽しみにならない訳がない。
「1週間、海辺の合宿所で儂と猫ちゃんが考案したメニューをこなしてもらう。」
「っしゃあ!海だぜ!」
「へっへっへ、待ってたぜジジイ!」
鷹村さんがタイトル挑戦が決まった時より露骨に嬉しそうなのは置いておいて・・・
「会長、いつから行くんですか?」
「来週じゃ。ただ儂は同行できん。諸々打ち合わせがあるんでな。じゃから・・・」
「源ちゃんの代わりにワシが一緒に行くダニ。」
鷹村さんが少し不満そうな顔になった。俺のトレーナーなんだからそりゃそうだろう・・・。
「メニューの詳しい説明は合宿所でワシがするダニ。」
「小僧、合宿が終わったらどれ程成長したか見てやる。鷹村はタイトル挑戦が控えとるんじゃ。あまり気を抜くなよ。」
「けっ、わかったよ。ついでに一歩も鍛えてやるぜ。」
「良いんですか!?よろしくお願いします、鷹村さん!」
「ああ、気になった事があるんでな。覚悟しとけよ?」
「はい!」
鷹村さんの気になった事か・・・。何となく察しはつくがどうせ俺も巻き込まれるんだろうな・・・。
「木村も、メニューを考えてあるダニ。青木もまとめてしごいてやるニ。楽しみにしておくダニよ。」
俺は青木と目を合わせ、互いに頷く。
望むところだ。やってやるさ。
「猫田さん、よろしくお願いします!」
「俺も負けてらんねぇ、やってやりますよ猫田さん!」
こうして、鴨川ジム恒例の海合宿が幕を開けた。
お読み頂きありがとうございます。
拙作は木村が主人公の作品のためそれ以外のキャラの試合はダイジェスト形式になることがあるとだけお伝えしておきます。
次回は海合宿回と速水戦の前くらいまで書く予定です