たった3センチの根性   作:ダブドラ

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 お久しぶりです。
 
 ほぼ1年ぶりの更新になり申し訳ありません。

 更新が止まっている間も読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。

 今日まで他の作品を更新していた影響で書き方が少々変わっていますがご了承下さい。



第22話 タツヤオンザビーチ

 

 

8月某日。とある古びた建物の前に俺はいた。

 

「ここが合宿所か。」

 

 その建物とはとある大学のボクシング部が所有しているという合宿所だった。聞く所によると八木さんの口利きで貸し切ったとか。

 外見は多少古さを感じるが、内装は綺麗に保たれており、尚且つ海はよく見えるし立地は良い。

 

「荷物を片付けたら着替えて一度集合するダニ。諸々説明せにゃならんからニ。」

 

トレーナーとして同行している猫田さんの指示で俺達は練習着に着替える。

 

 

「おい一歩、荷物よこせ。」

 

「えっと、これですよね?」

 

 その間、一歩がやたら重そうな荷物を鷹村さんに渡していた。中身は海で遊ぶ為の道具だろう。

青木から鷹村さんがカバンに色々詰め込んでたのを見たって話を聞いたし。

 

 

「それじゃ、説明するダニ。」

 

「おい猫、遊ぶ時間はあるんだろうな?」

 

「心配せんでもしっかり時間さ取ってあるダニ。けんど、練習を怠ってはいかんダニよ。」

 

「なら文句はねぇ。キッチリこなしてやるぜ」

 

 遊ぶ時間を取ってくれてあるのは俺としても有り難い。正直泳いだりしたいのもそうだし、海に来たからには当然楽しみたいだろう。

 

「改めて、幕之内と鷹村は大事な試合が控えとるダニ。鷹村には源ちゃん考案のメニュー、木村、青木は今渡したワシ考案の新メニューをこなしてもらうダニ。」

 

「あの、猫田さん、僕は何をすればいいんでしょうか?」

 

「幕之内はワシが直接見るダニ。けんどまずは、準備運動も兼ねてロードワークするダニ。自由時間を挟んでから本格的に練習するダニよ」

 

「「はい!」」

 

 

 

 そして砂浜でのロードワーク。土手などの舗装された道とは違い足が沈み込むのでより負担がかかる。

 

(こ、こいつは効くな・・・)

 

 鷹村さんの背に喰らいつくように走り続けていると後ろにいる一歩との距離が開き始めてきた。

 

「おい一歩、ペース落ちてんぞ!」

 

「ハァ、ハァ・・・すみません・・・」

 

 それから終始俺達と一歩の距離の差が縮まる事はないままロードワークを終えるのだった。

 

 

 

 

side:一歩

 

 

いよいよ始まった初めての海合宿。猫田さんの指示でロードワークを終えた僕は・・・・・・

 

「全然追いつけなかったなぁ。一体何が原因なんだろう?」

 

一人砂浜で考え事をしていた。

 

いつもなら鷹村さんにも喰らいつけているのに、今回は青木さんにすら追いつけなかった。

普段のロードワークとは条件が違うと言ってもこんなに差が出るものかと内心衝撃だった。

 

「ここにおったダニか、幕之内。」

 

「猫田さん!」

 

「ロードワークの事さ考えとったダニ?」

 

「はい・・・。全然追いつけなくてどうしてなんだろうって色々考えてたんです。」

 

「合宿所さ戻ったら木村とスパーするダニ。」

 

「スパー・・・ですか?」

 

「ダニ。そうすれば幕之内に足りん物が分かるダニ。」

 

「・・・分かりました。」

 

僕自身何かひっかかる所はある、だから気づくきっかけになるかもしれないと思いながら合宿所に戻ったのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「遊ぶ時間は終わりダニ、練習開始ダニよ!」

 

「「「はい!」」」

 

 

 海を楽しんだ後、猫田さんの指示に従って僕達は練習を始めた。

 

 ウォーミングアップのシャドーを終えた後、鷹村さんと青木さんはそれぞれのメニューをこなしている。それを眺めながら、僕はリングに上がる。

 

「よっしゃ、始めるぞ。俺を速水だと思って打ってこい!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 木村さんとのスパーが始まった。

 

 僕がファイティングポーズを取ると木村さんもオーソドックススタイルの構えをする。

 

 

「行きます!」

 

 

 一気に前進してジャブ、右フックからの左アッパー。だけど木村さんを捉えるには至らず、アッパーの打ち終わりを狙われ右ボディをもらってしまう。

 

 

「っ!?」

 

 予想以上にパンチが重く、思わず声が出てしまった。前よりずっと重い!

 

 負けじと反撃しようとすると木村さんが足を使い始めた。明らかにスピードが増してる!しかも時折飛んでくるジャブに阻まれて身動きが取れない。

 

 早く脱出しなきゃとパンチを打てばカウンターをとられ、逆に木村さんのジャブを避けて懐に飛び込もうとするとアッパーで顎を跳ね上げられる。

 

 

 そうして、僕の体力はみるみる削られてしまったのだった。

  

 

 

side:鷹村

 

 ジジイからの合宿用メニューをこなし、休憩時間に入った俺様は青木とともに一歩のスパーを見ていた。

 

 

「よう一歩、そんなんじゃ俺は捕まえらんねぇぜ?」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

 

 軽快なステップをしながら余裕のありそうな木村が一歩を挑発している。

 

 対する一歩は顔中に痣を作っており、見るからにボロボロ。まぁタフな一歩の事だ、まだまだ突っ込んでいくつもりだろうが木村を捕まえんのは骨が折れるだろう。

 

 

 「マジか・・・・・・」

 

 ふと、青木がそんな風に零す。

 

 「どうした青木?」

 

 「いやぁ、木村のやつあんなにスピードあったのかと驚いちゃって」

 

 「そりゃ一歩だけじゃなく木村も成長してる。元々持ってたポテンシャルを徐々に引き出してるみてぇだしな」

 

 「猫田さんに見てもらって一歩も俺も強くなったと思ったけどまだまだって事かぁ」

 

 確かに猫が来てから青木と一歩も見違えるように強くなった。だがマンツーマンで扱かれてる木村はもっと先にいる。

 

 「まだまだ強くなるぜ、アイツらは。青木も置いてかれねぇようにしねえとな」

 

 「俺だってやってやりますよ、鷹村さん!」

 

 「お、それなら俺様とスパーでもするか?」

 

 俺様の一言に青ざめる青木をニヤニヤしながら見ていると、スパーの終了を告げるゴングが鳴った。

 

 「鷹村!青木!こっちさ来るダニ!」

 

 猫も呼んでやがるし、一歩をからかってやるとするか。

 

 そう思いながら俺様は猫たちの方へ向かうのだった。

 

 

 

 

side:木村

 

 対速水を想定した一度目のスパーが終わり、講評の時間がやってくる。

 

 ちなみにスパーの間、俺は注文どおり逃げメインで戦った。速水が足を使うタイプだからだ。だが原作じゃ打ち合いに来た上一歩に打ち勝っているので少しばかり前にも出たが。

 

「戦ってみてどうだったダニ?」

 

「結果的に逃げ切れはしましたけど、危ない所もありました」

 

「当たりそうで全然当たらなかったです。それに木村さんのカウンターを何度も貰って、ガードをもっと意識しなきゃって思いました」

 

 ピーカブースタイルにしてからはかなり減ったが、それでも焦るとガードがお留守になり易いのは課題だろうな。

 

 

「全くだぜ。スパーだとしても貰い過ぎだ。」

 

 そう言うのは鷹村さんだ。後ろに青木もいる。

 

「面白いように木村のカウンターが入ってたもんなぁ」

 

 いつもの様に一歩をからかう二人の姿を確認すると、猫田さんの表情が真剣なものに変わった。

 

 

「改めて聞くが、幕之内、何故木村を捕まえられんかったと思うダニ?」

 

「踏み込みが足りないから、でしょうか。あと一歩が届かなかったから。でも次は『無理だな』」

 

 「えっ・・・・・・」

 

 一歩の発言を鷹村さんが遮る。当の一歩は『今なんて言った?』とでも言いたそうな顔だ。

 

「今のままなら何度やっても捕まえられねぇよ」

 

「ど、どうして」

 

「一歩にゃ決定的に足りない物があるんだよ。最大の欠点と言ってもいい」

 

 すると、鷹村さんはファイティングポーズを取り説明を始めた。

 

 原作通りつま先に関する事だ。そこの鍛え方が足りない為に、シフトウエイトを始めとした各動作に遅れが生じる。

 

 だからスパーのみならず、浜辺でのロードワークもついてこられなかったのだ、と。

 

 

 

「俺様の見立てじゃ足は速水より木村の方が速ぇ。手数は向こうが上だろうがとっ捕まえて自分の間合いに入っちまえばこっちのもんよ」

 

「ワシも同意見ダニ。幕之内、早速今日から特訓ダニ。木村にも協力してもらうダニよ」

 

「任せて下さい!猫田さん」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「青木は俺様とスパーだな!」

 

「ま、マジすか・・・・・・」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 そうして一歩のつま先強化及び速水戦に向けた特訓が始まった。

 

 内容としては原作で木村が一歩にしていたテニスボールキャッチの他にも、速水がインファイターの迎撃に用いているショートアッパーにカウンターを合わせる特訓。

 

 他にも猫田さんがメニューを改良した基礎トレにより一歩は着実に成長していった。

 

 俺も定期的にスパー相手をしているが、一歩は戦う度に打たれ強くなっていると思う。何故ならカウンターのショートアッパーを堪えて打ち返してくるようになったからだ。

 

 

 

 そして今日は合宿最終日。やる事は勿論総仕上げと称したスパーリングである。

 

 ちなみに現在は2ラウンド目。1ラウンド目はというと、一歩のパンチは何度か掠るもクリーンヒットはなし、対する俺はカウンターを二度取っている。

 

 とは言っても変わらないペースで攻めに来るあたり相変わらずのフィジカルだ。

 

 

 「っ、貰った!」

 

 こちらへ飛び込んでくる一歩に合わせて右ショートアッパー。

 

 迎撃がモロに入り一歩の顎が跳ね上がる。続け様に左ボディを、と思ったが突如襲ってきた大振りの左フックがそれを許さなかった。

 

 (ウソだろ・・・・・・!)

 

 もし俺があのままボディを打っていたらカウンターが成立していた。勿論大きなダメージを負うのは俺の方だ。

 

 正直ゾッとしたが反射的に避けられたという事は、どうやら俺も成長しているらしい。

 

 

 勢いに乗った一歩のラッシュが続くが、距離を保ち回避していく。しかし程なくして自分の背中がロープに触れた。遂に捕まったのだ。

 

 そこで速水ならどうするか、と考えた俺はオーソドックススタイルの構えを取り直し打ち合いに出る。超至近距離のため流石にガードをしつつだが確実にカウンターを当てる。

 

 すると徐々に一歩の動きが鈍ってきたのでここぞとばかりにフック中心の連打。そのままリング中央まで押し返すとあえて少し距離を取る。

 

 そこを見逃さずにいてくれた一歩が打ってきた右ストレートにカウンターの左を合わせる。

 

 

 俺は伸び切った左拳にここまでで一番の手応えを感じた。ドンピシャだ。

 

 

 (っ!!)

 

 しかし一歩は倒れない。歯を食いしばり耐える一歩の目は紛れもなく生きていた。

 

「ぐううう・・・・・・っ!」

 

 そして上体を傾け、お手本のような捻りから繰り出されるのはリバーブロー。一歩の得意技だ。

 強化されたつま先により以前とは比べ物にならない程の破壊力を持つ一撃が炸裂音を響かせる、と同時にゴングが打ち鳴らされた。

 

 

 

 

 

 「そこまでダニ」

 

 猫田さんがリングに入り俺達を引き剥がす。

 

 

 スパーの終わりに気づいた俺は深呼吸をしながら自らの右前腕を見つめる。そこには大きな痣が出来ていた。

 

 (本当、末恐ろしいパンチだぜ)

 

 

 「幕之内、よくぞここまで力をつけたダニ。予定では4ラウンドするつもりじゃったが、ここまでにするダニよ」

 「ありがとうございます、猫田さん。結局僕のパンチは当たりませんでしたけど、木村さんを捕まえる事は出来たので一先ずホッとしています」

 

 「上出来だ。一歩の気迫は確かに木村を追い詰めていた。良いスパーだったぜ」

 「あの左フックなんてゾッとしたぜ。避けた木村にも驚いたがな」

 

 俺は鷹村さんと青木に揉まれている一歩に近づくと、グローブをしたままの拳を一歩へ突き出した。

 

 

 「やられたぜ。最後なんてジャストミートだと思ったんだがなぁ。いいリバーブローだったよ」

 「木村さん・・・・・・」

 

 一歩は目の前にある俺の拳を見つめて数秒思案した後、真剣な顔で自身の拳を合わせた。

 

 「本当にありがとうございます。木村さん。それと、見ていてください。絶対に速水さんに勝ってみせます」

 

 

 自信に満ちた一歩の言葉に一瞬驚いたが、すぐに微笑んで応える。

 

 「おう!頑張れよ、一歩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほいじゃ、練習はここまでにしてパーッと騒ぐダニよ!」

 

 「てことは、コイツ(花火)だな!」

 

 「良いっすね!鷹村さん」

 

 「うっし、行くぞ!一歩」

 

 「木村さん、ちょっと速いですって!」

 

 

 そして一頻り海を遊びつくし、俺達は鴨川ジムへと帰還したのだった。

 

 

 

 





 作者の多忙と現在の流れから木村対間柴にどうやって繋げるかを熟考していたため更新できずにおりました。

 ただその甲斐あって本作の流れは完成しました。
また、不定期ではありますが地道に執筆しますので、応援していただけると幸いです。


 今後ともよろしくお願いいたします。
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