たった3センチの根性   作:ダブドラ

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遅くなり申し訳ありません。3000UAありがとうございます。



第3話 アウトボクシング

「スパーの相手は・・・宮田一郎だ」

 

・・・・・は?

嘘だろ・・・俺があの天才とスパーを?

勝てる気がしない・・・・・

 

「宮田と俺がやるんですか・・・?」

「そうだ。カウンターを肌で感じられるし、お前にとってもいい経験になるだろう」

 

カウンターは宮田の十八番だ。

それを肌で感じられるなんて貴重な機会だろう。しかしやるからにはカウンターを破らなければならない。

カウンターにカウンターを合わせるクリス・クロスでもしろというのか?リスクが大き過ぎる。

 

俺は足を使うアウトボクサーだ。対して宮田は自分から近づいてカウンターをとるアウトボクサー。

近づかれてカウンターを喰らいでもしたら足を止められて終わりだ。

どうすればいい?・・・とにかく答えは一つだ。

 

「分かりました。それまで宮田対策を練っておきますよ」

「その意気だ木村。宮田は強いがお前だって最近強くなっている。宮田を驚かせるような一発を入れてやれ!」

「はい!」

 

・・・・・とはいったもののどうするか。

ここで木村達也というボクサーの欠点が色濃くでやがった。宮田にはカウンターという武器がある。

対する俺・・・木村には武器がない。決め手がないのだ。木村は目立った弱点はないが技もないオールラウンダーである。

 

つまり俺は後3週間で宮田に対抗しうる武器を身に付けなければならない。

かなりハードだが、宮田とのスパーで醜態は晒せない。

今日は青木とスパーがある。その時考えよう。

 

「木村ぁジジイから聞いたぜ。宮田とスパーするんだってな?」

「あの宮田とスパーなんて滅多に出来ないぞ?」

「青木、鷹村さんまでどうしたんすか?宮田とのスパーは全力でやりますけど・・・」

「何、貴様が宮田とやるってんなら手伝ってやろうと思ってな」

「鷹村さんが自ら手伝うなんてまずあり得ねぇことなんだからな!感謝sグフェ!」

「何で青木が偉そうにしてるんだ!んであり得ねぇとはなんだあり得ねぇとは!?」

 

青木が余計な事を言って鷹村さんに締められる。

お決まりの光景だ。笑みをこぼしながら俺は、

 

「じゃあよろしくお願いします!」

「おう!早速練習始めるぞ。まずリングに上がれ」

「ちょっと待ってくださいよ鷹村さん。スパーなら俺と木村でやる予定なんすけど・・・」

「何だと?・・・そういやジジイが言ってたな。しょうがねえ。先に済ませちまえ」

「よっしゃ、やるぞ木村ぁ」

「ああ、よろしく頼むぜ青木」

 

というわけで俺と青木のスパーが始まる。

ヘッドギアをつけながら作戦をたてる。

俺は足を使うアウトボクサーだ。フットワークやシフトウエイトは何度も確認している。

青木は変則的なボクサーファイターでどちらかといえばファイターよりだろう。多分近づいて乱打戦に持ち込みにくるはずだ。

・・・・そろそろだな。足を使う練習だ。

 

「いくぜ木村!俺の技を攻略してみろ」

「俺だって負けねえぞ」

 

互いにリングに上がり、ゴングが鳴った。

俺はオーソドックススタイル、青木は手のひらを正面にむけ右手を前に置く独特の構えをとり、リズムを刻む。

俺はステップを踏みつつ左右に動いていく。

青木が前に出てきた。予想通りだ。ガードを上げ、パンチを受ける。

 

左フックからの右ストレート、そのまま左右の連打。

重さは俺よりある。が避けられる。

ある程度パンチを受けたところでバックステップ。

ガードを低くし回避の体勢を整える。

すぐに青木が再び連打を仕掛けてくる。

 

見える。パンチは見えている。

スウェーでパンチを避けていく。フットワークを意識し左を構える。青木のハンドスピードが落ちてきた。

顔に左のダブルを当てる。避けながら確実に左を当てていく。

 

青木が右を振りかぶった。

今だ。

 

右フックを避け青木の背後に回る。

振り向いた直後にワンツー。そのまま距離をとる。

その時だった。

青木が奇妙な動きをし出した。俺に近づきながらのらりくらりと上体を動かしている。

・・・確かに変則過ぎる。

 

 

左を打って距離をとろうとするが捉えられない。

ヒットアンドアウェイとはいかないようだ。

青木が両手を引いた。俺はやや前傾姿勢になり右足に力をつぎ込む。

 

両拳が同時に飛んでくる。ダブルパンチだ。

青木の片手に意識を集中し、踏み込む。

ダッキングしパンチを避け、左足に体重をかける。

上体を捻りボディーブローを放つ。

 

青木の顔が歪む。

同時に顎が開いた。ここだ!

がら空きの顎めがけて渾身のアッパー。

 

青木の体が浮き上がり、マットに沈んだ。

 

 

 

「だーっはっはっはっは!負けてんじゃねえか青木ィ!」

「鷹村さん・・・そんなこと言わないで下さいよ・・・木村いつの間にか強くなってるんですもん」

「言い訳じゃねえか!」

 

青木と鷹村さんが口論している。

スパーは俺の勝ちで、さっきまで青木は伸びてたんだ。アウトボクシングに徹し、最後に至近距離で渾身のボディーを叩き込む作戦だったが青木を倒すには足りないと感じアッパーを追い討ちで入れたというわけだ。

 

それと余裕に見えたが実は違う。

青木の変則的なスタイルに途中惑わされていたずらに左右を振り回すところだった。

漫画で見るのと生で体験するのとではまるで違うプレッシャーがあった。

 

宮田対策として青木とのスパーである策を思い付いた。

宮田のカウンターにカウンターを合わせる事だ。

 

クリス・クロス

 

やっぱりこれしかない。俺がアウトボクサーだからできる事。

青木にボディーを入れる前に踏み込んだとき、

もっとダッシュ力があれば連打の隙をついて距離を詰める事もできる・・・・と俺は思った。

そうと決まればやるしかない。

 

それから俺はロードワークを普段よりキツくし、ダッシュ力をつけるトレーニングを始めた。

鷹村さん曰く、宮田のハンドスピードは鷹村さん以上らしい。なので鷹村さんの剛打を避け続け、スタミナと動体視力を強化するスパーをこなしている。

宮田とのスパーは4日後だ。

 

 

 

 

side:宮田

 

木村さんとのスパーまで後4日。

俺はカウンターとハンドスピードの強化に努めている

今回のスパーは俺から申し出たんだ。何たって来年プロテストだからな。経験はあるに越したことはない。

 

「一郎、練習の調子はどうだ?」

「バッチリさ。父さん」

「しかし珍しいこともあるものだ。一郎の方から木村とのスパーを申し出るとは」

「俺と同じアウトボクサーと一度は手を合わせてみたくてね」

 

父さんとスパーまでの練習について相談する。

元プロボクサーの父さんは俺のトレーナー兼セコンドだ。俺は父さんにボクシングを教わっている。

 

「木村は一郎とはタイプの違うアウトボクサーだ。一郎、お前は前にでて乱打戦もこなせるカウンターパンチャーだが、木村は足を使い距離をとり堅実に攻める王道のアウトボクサーだ」

「分かっているよ父さん。足を使い逃げるアウトボクサーを攻略するために木村さんとのスパーを申し出たんだ」

「木村はプロのリングで場数を踏んでいる。一郎とて一筋縄ではいかんぞ」

「分かってる。でも、俺は負けないさ」

 

そうだ。俺のスピードなら木村さんを捉えることは容易い。

ハンドスピードで圧倒し、カウンターで沈めるだけだ。

只、プロの経験が俺にはない。そこだけは警戒するか。

 

「一郎、聞くがわざわざ木村と練習時間をずらしてまでカウンターを鍛える理由は何だ?」

「木村さんに手の内を知られたくなくてね。木村さんは学習能力も高いから、見られれば俺の対策を固めてくるはずさ」

「確かに、木村の洞察力や学習能力は高い。その判断は間違っていないだろう」

「ああ。俺はこのカウンターで、父さんのカウンターで上を目指す。その為に色々と学ばせてもらうよ」

 

俺が普段スパーをしている練習生達は決して足が早いとは言えない。

その点木村さんはスピードがある。

スパーが楽しみだぜ。スピードのあるアウトボクサー同士のスパー。今までとは勝手が違う。

俺はどう攻略するか考えながら練習を始めた。




次回から木村VS宮田の開幕です。
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