たった3センチの根性   作:ダブドラ

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遅くなりましたが決着です。
今後は週1、2話投稿を目安にします。


第5話 カウンターへのカウンター

 

第1ラウンド終了後、俺は篠田さんに

 

「いいボディーブローだったぞ。気力も充実している。次のラウンドも押していけ!」

 

と言われた。ボディーブローの手応えはあったがダウンしていないところを見ると、宮田も攻めにくるだろう。

今は俺のペースだ。先手をとりに行かないとな。

 

「セコンドアウト!2ラウンド目始めるぞい」

 

会長の声を聞きマウスピースを咥えて立ち上がる。

軽くジャンプし足を確かめる。

よし、随分回復した。仕掛けることはできそうだ。

 

「宮田にダメージがある今がチャンスだ。逃さず攻めにいくんだぞ」

「いってきます。篠田さん」

 

篠田さんのアドバイスを聞きつつ前に出る。

宮田と向かい合う。宮田は何事もなかったかのような表情をしている。

 

「では・・・第2ラウンド、ボックス!」

 

会長の掛け声と同時に左右を連打する。

宮田はガードを固めているがお構い無しに叩きつけていく。宮田は足にきていて踏ん張りが効かないのか

簡単にロープまで下がった・・・嫌な予感がするがチャンスは今しかない。

 

正直いって俺も宮田も簡単にダウンするだろう。

宮田は今の状態をみれば一目瞭然だが、俺にダメージがあるか疑う割合の方が高いだろう。だが、1ラウンド目のカウンターはマジで効いた。ジャストミートは伊達じゃないと思い知った。

 

カウンターを耐えたというよりはやせ我慢している状態だ。今もダメージが全身にたまっている。

このダメージが前に出てくる前に勝負をつけるんだと手を出しているがガードを崩せる気はしない。

それどころかスタミナが落ちてきやがった。足元がおぼつかない。

 

ハンドスピードが落ちてきたことがバレたらしい。

宮田が前に出てきやがった。こっちが気圧されてしまっている。徐々にリング中央に押し戻されてきた。

距離をとらないと・・・

とっさに右をふりかぶる。

 

ここで焦って出した右ストレートが俺自身の首を締める事になるとはとても気づかなかった。

 

振り抜いた右が宮田の頬を掠めた瞬間、俺の顔面は真上を向いた。カウンターをもらったとすぐに気づいた。

そのまま俺はマットに沈んだ。

 

「ダウン!」

 

会長がカウントを始める。立たなくてはいけないと頭では理解しているが体が言うことを聞かない。

動け、立て、戦え。どんな指令を体に送っても動く気配がない。

 

タイミングも呼び込みも完璧。ジャストミート2発目。

当然効いた。もう終わったかな・・・?

 

 

 

 

いや、違う。

このまま負けるのか・・・・? ここで終わるのか?

 

カウントが進んでいく。はっきりとは聞こえないが誰かの声がする。

 

 

「・・・村!・・・て!!・・・」

 

徐々に鮮明に声が聞こえてくる。

・・・うるさい・・誰だ一体?

 

「木村!立て!!」

「・・・・!! 篠田・・・さん?」

「ここで終わって良いのか!?」

 

 

そうだ。ここで終わって良いわけがない。立て、立て!

篠田さんの叫びを聞いて視界がはっきりとした俺は

自分を鼓舞しながら震える足をロープを掴むことで支え立ち上がる。

 

腕を上げ、構えをとる。

 

「やれるか、木村?」

 

「やれます。まだ・・・やれます!」

 

まだ終わっちゃいない。この手が動く限り戦い続けてやる。

 

 

 

 

side:宮田

 

まただ。ダウンをとれるほどのカウンターなのに。何故立てる、何故立ち上がってくる!畜生、畜生!

俺のカウンターを二度も喰らって立たれたことなんて初めてだ。

 

もうあれほどのタイミングは巡って来ないだろう。

正直、今のカウンターで決めたかった。

だが立ってきたとなれば迎え撃つまでだ。

 

「一郎、まだ木村の目は死んでいない。逆は十分あり得るからな」

「分かっているよ、父さん。何度でも倒すだけさ」

「いってこい、一郎」

 

父さんに送り出され構えをとる。

木村さんの目は強い光を帯びている。俺も負けじと視線を合わせ、徐々に前に出ていく。

 

「ではいくぞい、ボックス!!」

 

掛け声と共にジャブを連打する。

木村さんはガードしながら近づいてくる・・・が、やはりダメージは大きいようだ。完全に防いでいるはずもなく、何発かまともに当たっている。だんだん木村さんの動きが鈍くなっている。だが・・・

 

距離を保ち、ジャブを打ち続けるが効いている素振りはない。それどころか近づかれている気がする。それでもパンチを当て続ける。ジャブ以外にもフックやストレートも織り混ぜるが、出が遅い分防がれやすい。

 

距離を詰められ始め俺の方が下がりそうになる。俺も満身創痍のようだ。体が重い・・・

めげずに打ってはいるがいつまで持つか・・・

いや、スタミナは気にしちゃいけない。とにかく攻めるんだ。

 

ある程度距離が詰まったところで仕掛ける。大振りの右で敢えて懐に入れさせてカウンター。これしかない。

右を打つ体勢になり、横に凪ぎ払う要領で振り抜いた時だった。

 

腕を抑えられている。

ガードされた・・・・のか?ダッキングできるほど足に余力があるようには見えない。狙われた・・・

 

俺の右を抑えた手越しに見えた木村さんの目は、

色濃く輝いていた。

 

下から来る何かに顎を跳ね上げられる。アッパーか!

駄目だ、力が入らない・・・

 

今度は俺がマットに沈められた。

 

 

 

side:鷹村

 

「やりやがった!木村のヤツ!」

「宮田め気圧されたな?木村ごときに」

「このままもう一度倒せば木村の勝ちですよ!」

「バカ野郎!そりゃ宮田も同じだ!先に倒した方が勝つってことだ」

「そ、そうでした」

「でもここまでみる限りまるでインファイターの試合みたいっすよ」

 

青木め・・・ちゃんと見てなかったのか。

木村も宮田も2度ベストショットを喰らっている。

両方ともボロボロだ。どう転んでもおかしくねえ。

ダメージだけなら木村の方がでけえ。カウンター2発それもジャストミートだ。立っている事が奇跡に近い。

インファイターの試合に見えても仕方ない。何せ互いに足を使えないほどダメージがあるんだ。残った選択肢は打ち合いだけだからな。

 

「宮田立ちますかね?鷹村さん」

「綺麗に入っちゃいるが木村が満身創痍な上に木村のパンチ力なら立つだろう」

「木村ぁ!勝て!試合前に負けてちゃ縁起悪いだろ!」

 

青木が叫び出した。縁起悪い・・・か。へっ、ここはこの俺様が応援してやるとするかな!

 

「木村ぁ!俺様の前座で恥をさらさんように、宮田なんぞぶっ飛ばしてこぉい!」

 

木村に向けて渇を入れてやる。まあ、こんなことしなくても木村は諦めてねえだろうがな。

お前の目を見りゃわかるぜ。呆れるほど真っ直ぐな、前しか向いてねえような目だ。カウンターを喰らっても死なねぇ闘志を感じるぜ。

 

宮田が立ち上がった。木村もそれに応えるように構える。木村も宮田も打たれ強いボクサーじゃねえからな。これが最後になるだろう。

 

見届けてやる木村。てめえが俺様とのスパーで何を得たのか、どこまで強くなったか。俺様に見せてみろ!

 

 

 

side:木村

 

 

やった、これで同点ってとこかな・・・立たれたけどな。

俺も宮田も1ダウンずつ。多分これで決まる。今までやって来た事を信じて、一か八かいくしかねえ。

もう力ものこっちゃいない。あるだけの力をかき集めて足に込める。

 

「ボックス!」

 

掛け声に合わせて飛び出す。腰の入ったパンチは一発打てるかどうかってとこか・・・まだチャンスは残されている。

 

宮田とミドルレンジで向かい合う。宮田の手が出るより先に飛び込んでクロスレンジの打ち合いに持っていく。

喰らい喰らわせ何発当てて何発喰らったかもわからないまま打ち合う。

 

大振りを打ちそうになる所をこらえて細かく連打する。

すでにスタミナもギリギリだ。いつヤケクソになってもおかしくねえ。宮田も大振りを餌にカウンター狙ってたくらい疲弊してるんだ。まだこらえろ・・・!

 

宮田の脇腹にボディーブローが突き刺さり、動きが止まった。すかさず俺は左フックを宮田の顔面へ打つ。

フックが入る直前宮田が体重を右足にかけた。右に体を傾けながら右ストレートのカウンターを当てに来る。

 

今だ!

 

足にかき集めた力を振り絞りダッキングをする。俺の後頭部を宮田の右ストレートが掠める。そのまま俺は十字を描くように右フックを宮田の右手の上から顔面へ振り抜く。

 

クリス・クロス。

 

そのまま宮田をマットへ叩きつけた。とても綺麗なカウンター返しとは言えないが、渾身の一発だ。これでどうだと思いながらコーナーへ下がると、

 

「勝者、木村!!」

 

会長が両手を交差した後、ゴングともに勝敗が告げられた。そういや2ノックダウン制だったっけ。

っていうか・・・・・・勝ったのか?俺が・・・宮田に?

・・・やった・・・やったんだ!勝ったんだ!

 

「・・・よっしゃー!」

 

俺は両手を掲げて叫んだ。

篠田さんが近づいてきて俺に話しかける。

 

「やったな木村!見事なカウンターだったぞ!」

「篠田さん、ありがとうございました!実感わかないですけどメチャクチャ嬉しいです!」

 

続いて青木と鷹村さんも近づいてきた。

 

「やったじゃねえか木村ぁ!俺ぁ信じてたぜ。お前なら勝てるってな!」

「疑ってたくせに言うんじゃねえ青木ィ!」

「鷹村さん言っちゃだめっすよ・・・」

「まあこれで木村も俺様の前座をしっかりKOで飾ってくれること間違いないだろうからなあ」

 

鷹村さんにプレッシャーをかけられたが祝ってくれてはいるようだ。ありがとうと礼を告げてシャワーを浴びにいこうとする。

 

「木村、少しいいか?」

「宮田の親父さん・・・いいですけど、何ですか?」

「今回のスパーで、一郎も私も学ばせてもらったよ。素晴らしい闘志だった。ありがとう」

「それは俺もですよ。宮田とのスパーがなきゃここまで練習しなかったですから。自分の限界を超えさせてくれたことに感謝しています」

 

そうだ。今まで俺が決めていた限界の先へ宮田のお陰で進めたんだ。感謝するのはこっちの方だ。

 

「一郎にそう伝えておこう」

「そういえば宮田は?」

「どうやら帰ったようだ。おそらくショックだったのだろうな」

「分かりました」

「今日はゆっくり休むといい。ではお疲れ」

「ありがとうございました」

 

宮田の親父さんと別れた後、俺は家でスパーの事を振り返っていた。

 

次は本番の試合だ。俺にとっては初めての試合でもある。鷹村さんの前座として、勝ってみせる・・・KOで!




2ノックダウン制はこのはじめの一歩の時代の頃採用されていたルールで今はどの団体どの試合もフリーノックダウン制だそうです。
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