「さぁーあ始まりました、チャンピオンによるエキシビションマッチ! アローラチャンピオンのヨウはジュナイパー、そして我らがガラルチャンピオンユウリは――おおっとぉ! まさかの伝説ポケモン、ファイヤーだ! これはガラルチャンピオンに有利な展開となったぞぉ! ユウリだけに!」
風の吹き抜ける会場――シュートスタジアムで、二匹のポケモンが空を舞う。ジュナイパーとガラル固有の姿をしたファイヤー……どちらも、二つの地方のチャンピオンのポケモンだ。
アローラチャンピオン、ヨウ。
ガラルチャンピオン、ユウリ。
世界中のトレーナーの憧れにして、全てのトレーナーの上澄み。その二人が、激戦を繰り広げていた。
「ファイヤー!」
「躱せ、ジュナイパー!」
黒い炎が空から降り注ぐ。ガラルファイヤーの黒い炎は決して熱くはなく、そもそもこれは炎ですらない。あくまで炎のように見えるオーラだ。伝説のポケモンとして保有する膨大なエネルギーをオーラとして放出し、それが結果的に炎のように見えているのだ。
だが、炎ではないからと言って殺傷力がないというわけではない。触れた者に苦痛を与えるこのオーラは、生半可な炎よりも危険なものだ。伝説のポケモンの溢れ出る生命力をそのまま受けるのだから当然ではあるが、それ故に純粋な脅威としてヨウとジュナイパーの目に映っていた。
オーラの隙間を縫うように飛び、一息に矢羽根を三連射。熟練したジュナイパーはアクロバティックな動きの中で射撃することも得意とするが、彼はチャンピオンに鍛え上げられただけあってひと味違う。僅かな動きで地面すれすれを滑るように低空飛行し、一般的な個体が一矢射る間に三射は成し遂げる。
攻撃した直後ではあるが、ファイヤーは即座に回避行動へと移ってそれらを完璧に躱す。こちらもチャンピオンに育てられた影響が大きいが、それ以上に伝説のポケモンとしてのスペックの高さを表していた。一度羽ばたくだけで膨大な量のオーラを放出して広範囲を攻撃し、一切のタイムラグ無しで回避を行える。空を飛ぶという行為はバランスを崩した際に立て直すことが困難だが、このファイヤーからすればそれすらも苦ではないだろう。
だが、それはあくまで万全の状態ならという前提の上だ。今相手にしているジュナイパーは通常の個体よりも遥かに高い技量を持つ。隙を見せれば瞬く間に伝説としてのスペック差を埋められ、逆転されてしまう。故に、タイプ相性こそファイヤーに有利だったが、戦術単位での相性は不利だと言えた。
「下がれ!」
「攻めて!」
両者が短く指示を発する。ジュナイパーがバックステップで空いている距離を更に広げるのとファイヤーの羽ばたきによってオーラが解放されたのは、ほぼ同時だった。灼けるような痛みを与えるオーラが肌を舐め、微かな苦痛にジュナイパーが顔を顰める。
一気にオーラを解放する全方位攻撃。攻撃範囲は球状で広さも申し分ない。厄介だが、その分一瞬の溜めがあった。これが伝説の中でも規格外に位置するポケモン達――ソルガレオやルナアーラのような、所謂『禁止級』だったら回避の余地すらなかっただろう。溜めも必要とせず攻撃範囲は更に広い。間違いなく今の一撃でやられていたと考えれば、温情はあったとヨウは分析する。
攻撃の回避に成功したまま、流れるような動きで矢羽根を放つ。一射二射と続け、合計五連射。それに対してファイヤーは大きく弧を描いて空を舞って回避し、今度はオーラを弾丸のようにして射出してきた。ジュナイパーの矢羽根にも劣らない速度。攻撃直後で動作に若干の遅れが生じ、回避は間に合わない。故に、回避ではなく迎撃を選んだ。
何よりも慣れ親しんだ、矢羽根を引き抜く動き。翼で矢羽根を握り、短刀のように構えて次々と弾丸を斬り裂く。射撃を得意とするが、それだけでは終わらない。そう言いたげな鮮やかな動きだった。
「――そこ!」
速度を調整し、時間差をつけて射出された弾丸がジュナイパーを襲う。それだけではない。それらを迎撃しようと再びリーフブレードの要領で矢羽根を構えた直後、膨大な量のオーラがファイヤーから放出される。先程と同じ全方位攻撃だ。弾丸を放つ合間に近づいてきていたのだろう。
「やっぱり反則でしょ……!」
「レギュレーション違反じゃないので!」
自らで放った弾丸すらも呑み込んで、ファイヤーのオーラがジュナイパーへと迫る。一瞬の溜めを上手く消化した一撃に、ジュナイパーが回避することはできなかった。それでも、せめてもの抵抗としてヨウは距離を取らせようと指示を出す。
翼から矢羽根が嵐のように吹き荒れる。リーフストームだ。前方に放出することで突風を生み出し、どうにかダメージを軽減することに成功する。灼けるような痛みがジュナイパーに苦痛を与えるも、チャンピオンのエースとしての意地と誇りが即座に態勢を整える。そのまま低空を滑るように飛行し、大きく距離を空ける。
――それはファイヤーの弱点を見抜いた立ち回りだった。オーラに指向性を与えずに放った方が命中させやすいが、その場合射程距離に難が出る。弾丸のように放てば射程距離は稼げるが、対処されやすい。それに対し、ジュナイパーは遠距離攻撃が得意だ。攻撃手段もオーラのような拡散しやすいものではなく、明確な形を持っているものであるため威力の減衰も発生しづらい。
ファイヤーが飛行し、ジュナイパーに接近しようとする。それに引き撃ちで対応しつつ、ヨウは次の手を考えていた。若干――否、焦りを抑えるのに苦労する程度には劣勢ではあるものの、勝ちの目は十分残されている、寧ろこの状況は逆転勝ちのお誂え向きの状況と言えた。
(鍵はどう引き付けるか……かな。しかし、流石に伝説だ。厄介だな……!)
接近を目論み速度を重視しているためか、ファイヤーに矢羽根が掠る。しかし傷をつけられる程ではなかった。身に纏うオーラが防壁のようになり、威力を減衰させているのだ。まずはそれを剥がす必要がある。
初見殺しをぶつければ防壁を剥がせるだろう。他にも札はある。十分に手はあるのだが、一度奇襲に成功すれば相手は初見殺しを前提に動いてくるはずだ。それこそ、あちらの初見殺しをぶつけられる可能性すらある。防がれては意味がないのだ。基礎スペックでは劣っている以上、確実に決めなければならない。
――そう。決めれば良いのだ。
「ジュナイパー!」
指示に応え、フェザーアロー――速射を行う。コンマの時間さえも消費せず、続けざまに射られた矢羽根が防壁に遮られながらもファイヤーに突き刺さる。確かにダメージを与えたが、その代償としてファイヤーに接近を許してしまう。
オーラの解放による攻撃の範囲内に入る。それを両者ともに理解し、ファイヤーが若干溜めを行う様子を見せた。
その瞬間を見計らい、黒い矢羽根がファイヤーの影に突き刺さった。
低空を飛行するジュナイパーに近づきすぎたのが仇となった。地面に影ができ、そして影を射抜くまでのタイムラグも限りなくゼロに近かった。それ故に、ほんの僅かな一瞬の間に、ヨウの狙い通りへと状況が移り変わる。
本来のかげぬいという技は影を固定して相手の交代を防ぐ為のものだ。しかし、ヨウとジュナイパーはこの技の特性を利用し、新たな付加価値を生み出した。
ユウリとファイヤーの驚愕した表情を横目に、即座に大技へと移行する。アローラ地方のトレーナーにのみ許された、最強の攻撃手段の一つ――
「――シャドーアローズストライク!」
大量の矢羽根を降り注がせると共に突撃し、全身全霊の体当たりを見舞う。オーラの防壁に阻まれこそしたが、それでも確かな手応えを得られた。ファイヤーはその身体を大きく吹き飛ばされ、地面へと激突する。大地に裂傷が刻まれ――追撃として、降り注いだ矢羽根が炸裂した。
土煙がスタジアムを満たす。狙撃手であり、狩人でもあるジュナイパーにとって視界不良の場は庭のようなものだ。ゴーストタイプであるが故に生命の反応を感知することができ、迷わず矢羽根を射出する。何発か直撃を与えることに成功したらしく、ファイヤーの呻き声がヨウの耳に入る。
それを聞いて、迷わず上方への攻撃を指示した。ジュナイパーもそれを疑わず、即座に矢羽根を射る。その直後、逃げるように空高くへと舞い上がったファイヤーへと突き刺さった。一瞬バランスを崩しかけるも、ファイヤーもまた伝説としての意地かコンマ数秒もかからない内に体幹を掌握し、オーラを周囲へと解放する。その勢いは先程とは比べ物にならない。明らかに出力が上昇していた。
考えられるのは一つ。
「ぎゃくじょうか……!」
「ご名答!」
アローラ地方ではジジーロンに見られる特性。体力が削られると自らの攻撃力を上昇させる性質を持っているのだ。このファイヤーの場合は、オーラの防壁を剥がすことがそのままぎゃくじょうの発動条件を満たすように育成されているのだろう。序盤は防御重視で、ある程度互いに削れてきた中盤は火力を上げてダメージレースで優位に立つ。シンプルではあるが、良い手だった。
今は攻撃範囲もまた拡大されており、オーラが猛烈な勢いでジュナイパーへと迫る。仕方がないと判断し、ヨウは一つの指示を出す。
その内容は影へと潜るというもので……それ故に。
――オーラが晴れたスタジアムには、攻撃を完璧に避けた様子でジュナイパーが佇んでいた。
「嘘でしょ……!?」
「お生憎様、嘘ではないさ」
広くなった攻撃範囲を考慮し、再計算しつつ再び先程と同様の立ち回りを見せる。しかし、今回は隙を突きにくくなってしまっている。一度嵌められていることで警戒しているのもそうだが、それ以上にオーラの出力が上昇したことが大きい。その分攻撃速度もまた上がっているのだ。ヨウはユウリに笑いこそしたものの、戦況は少しずつ不利になっていた。
次々と放たれるオーラの弾丸を速射で撃ち落とす。撃ち合いでなら負けない自信があるが、今のファイヤー相手に距離を取りながら全ての弾丸を正確に撃ち落とすことは流石に難しい。足を止めて固定砲台の如く連射するが、その間にファイヤーの接近を許してしまっているのは痛手である。スペック差が如実に表れていることを理解し、新たな打開策を練るも、相手が新たな動きを見せる方が速かった。
「決めて!」
繰り出されるのはぼうふう。全方位への無作為な攻撃ではなく、前方のみに絞った広範囲攻撃。風によって微細な砂が叩きつけられ、吹き飛ばされるジュナイパーのその身体に無数の小さな傷がつく。それに加え、それが追い風として機能したことでオーラの弾丸が加速し、逆に射た矢羽根の勢いは削がれる。その影響を考慮し、再計算した上で立ち回るが、それでも全ての弾丸を撃ち落とし切ることはできず、その何発かが掠めるようにして後方へと流れていく。
だが、ぼうふうを放ったことによって弾丸の追加は途切れた。その間に態勢を整え、矢羽根を構える。一拍遅れてファイヤーが再度オーラを放出しようとしたその瞬間、
「――そこだ」
ジュナイパーの姿が消える。否、消えたのではない。攻撃へと意識が向いたその一瞬の間に接近を果たし、握る矢羽根をファイヤーの喉へと食い込ませていた。
ふいうち。相手の意識が攻撃に向いた時にのみ成功させられる、確実に先手を取れる――優先度の高い一撃が直撃し、不意を衝かれたユウリとファイヤーの思考がコンマにも満たない僅かな時間だけ停止する。しかし、それだけあればヨウとジュナイパーには十分だった。
頭に乗り、矢羽根を突き立てたまま尾羽まで駆ける。大きな裂傷が刻まれ、苦悶の声を漏らしたファイヤーに対し、そのままとんぼがえりの要領で飛び退いて宙にいる状態で矢羽根を次々と放ち、追撃を仕掛けていく。しかし、それも何度も続けられるものではない。即座に平静を取り戻し、ファイヤーの肉体から放たれたオーラが周囲を満たす。射た矢羽根はオーラに呑み込まれ、その身体に突き刺さることなく落ちていった。
攻撃と防御を兼任できるオーラの存在が厄介だ。そのことは変わらず、だからこそオーラの勢いが増した後半の方が苦しい戦いを強いられる。戦いづらいこと極まりなかった。
――ユウリがボールを手に取るのが見えた。
「っ、来るか……!」
「行くよ、ダイマックス――!」
ファイヤーがボールの中へと戻っていく。その直後、ボールが巨大化し――ユウリが、全力で投擲。
中から、その姿を何十倍にも巨大化させたファイヤーが現れた。
ヨウが先程使ったZワザがアローラ地方のトレーナーの特権ならば、こちらはガラル地方のトレーナーの特権。巨大化し、シンプルに強くなったパワーとタフネスで殴り合いを制す。バトルの競技性を重視したガラル地方に相応しい、プロレスのような戦い方――ダイマックスだ。
ファイヤーがオーラを放出する。巨大化しただけあってその攻撃範囲も相応に拡大されており、瞬く間に周囲を覆い尽くしていく。ボールに戻った一瞬のタイミングで羽を休めて多少の回復を済ましたジュナイパーは躱そうとするも、あまりの範囲に回避し切れず、その足を絡め取られる。
じわじわと広がる灼けるような痛み。それだけでなく、細胞一つ一つに針を刺されたような、骨に直接杭を打ち込まれたような激痛が襲い来る。そしてその全てをエースとしての意地と執念で捻じ伏せ、迷うことなく矢羽根を放ち続ける。
放出されたオーラの残滓が漂う中、今度は膨大な量のエネルギーがそのまま放射される。曲線軌道を描いて進む二本の黒いエネルギーだったが、突如としてその軌道が僅かに歪んでジュナイパーの後方へと着弾した。
「スプリットアロー……!」
ヨウが笑う。エネルギーを逸らしたのはジュナイパーの射た特殊な矢羽根だ。一見すると何の変哲もない矢羽根だが、一定距離を進むと分裂する性質を持つ。できればまだ隠しておきたい札ではあったが、ダイマックス中の攻撃を一手防ぐことができたのは大きい。
一度晒した以上、最早出し惜しみはしないと言わんばかりに矢羽根を射る。
ダイマックスのタイムリミットは近い。短時間しか維持できないが故に非常に強力ではあるが、だからこそそれは相手の最も強力な札を切らせたことを意味する。凌ぎ切れれば、戦局は間違いなくヨウとジュナイパーへと傾く。
これがダイマックス中に行える最後の攻撃になるだろう。ファイヤーが嵐を巻き起こし、暴風が奔流となってジュナイパーへと迫る。直撃すれば叩きつけられた風によって身体の自由を奪われ、大きく吹き飛ばされた上で地面に激突する――それを直感的に理解し、回避に全リソースを回すことを決意する。
それは即ち、再び影に潜るということ。
――嵐によって巻き上げられた砂が消えた時、そこにいたのは無傷のジュナイパーだった。
「っ、また――」
ユウリの悔しげな声が聞こえてくる。それに不敵な笑みを見せ、ダイマックスが終了して元の姿へと戻っていくファイヤーに追撃を行ううよう指示を出す。再び、速射でのスプリットアローを曲射で。大きく弧を描きながら囲むようにして降り注ぐ矢羽根だったが、しかしそれらは一本も命中することなく潜り抜けられる。
ファイヤーの反応速度と移動速度が上昇している。先程の嵐……ダイジェット。あれが原因だろう。今のファイヤーはすばやさが上がっている状態にあるのだ。生半可な攻撃では見てから回避を成功させられてしまうだけだ。どこかで一度、反応速度を焼き切る必要がある。
(ダイマックスへの対処はできたけど、大局で見れば不利なことには変わりない。確実に決めるには……カウンターでの
だが、失敗すれば敗北するのは自分であるとヨウには断言できた。極めてリスキーな選択肢。可能な限り取りたくはない。しかし、
「ここぞという時に決められなければ、チャンピオンとしての資格はないよな……!」
そう。自分はチャンピオンだ。土壇場で『決める』戦いを。観客を『魅せる』バトルを。その上で勝たなければ意味はないのだ。
凄まじい速度で飛翔するファイヤーに矢羽根を放ち続ける。しかし、偏差射撃ですら対応される。一度仕切り直す為に、今度は地面に向けて矢羽根を射た。
砂埃が大きく舞い上がる。その後も矢羽根を射続け、砂埃はフィールド全域を覆い尽くすまでになった。無論、ただ舞い上がらせただけではオーラと風のどちらかで即座に吹き飛ばされるだけだろう。故に、バックステップによって後退を続けながら、スプリットアローの応用で攻撃も同時に行っていく。分裂した矢羽根の片方をファイヤーに、もう片方を地面に。
そして、矢羽根を射る中、微かな呻き声がヨウの耳へと入る。
「今だ――穿て!」
呻き声を発する。それが意味するのは、反応速度が焼き切れたということ。視界不良の中、砂埃を突き抜けて飛来する矢羽根を躱すことができなかったということに他ならない。だからこそ、ユウリとファイヤーの次の一手は考えるまでもなく理解できた。
オーラを解放して周囲一帯を薙ぎ払う――その寸前、再びふいうちが成功する。今確かに、ユウリは伝説のスペックに依存した。手玉に取られている状況を覆す為に、伝説のポケモンとしての力で強引に切り抜けようとした。
これが、今回のエキシビションマッチでヨウが伝説のポケモンを……カプを使わなかった理由だ。伝説は強い。一切育成されていなくとも、そのポテンシャルを発揮するだけで生半可なトレーナーでは太刀打ちできない程の一方的な試合運びを行える。それ故に、伝説のポケモンを扱うということは、トレーナーにも相応の覚悟と技量を求められる。
――伝説の力に頼った戦い方は、見切られやすい。
個として強すぎるが故に、単調になりやすいのだ。ファイヤーは先程からオーラばかりを使用している。精々必要になった時に風を扱うくらいのものだ。確かにそれだけでも強力だが、できることはそれだけではない。寧ろ、このポケモンの真価は多彩さにあるとも言えるだろう。しかし、オーラの扱いに幅がある程度で、多彩さという強みは見る影もなかった。
ふいうちの為に近づけていた身体を離す。とんぼがえりの要領でもう一度距離を取り、着地しつつ矢羽根を射て追撃する。一瞬怯んだことでオーラの解放が不発に終わったファイヤーだが、すぐに動き出して追撃はしっかりと回避していく。この立て直しの速さも伝説のスペックの高さを表していると言える。
「撃って!」
オーラが収束し、レーザーのように放射される。これまでの中でも間違いなく最速の攻撃。しかし、距離があったためにジュナイパーはギリギリで回避に成功する。ユウリにも焦りがあるのだろう。弾丸よりも速く、しかし攻撃範囲としては線でしかない攻撃だが、連発することでその問題を強引に解決していた。
身を翻し、宙にいる状態で矢羽根を射る。分裂した矢羽根の片方が収束レーザーと相殺し、もう片方がファイヤーへと迫る。互いに回避しながらの攻撃。レーザーと矢羽根が空を駆ける中で動き回るその様は、まるで踊っているようだった。
ひたすらに距離を空ける。攻撃は余裕があればファイヤーにも向ける程度に留め、あくまで相手の攻撃を捌くことを意識する。矢羽根を射て宙で収束レーザーとぶつけることで、回避できるだけのスペースを作り出すことを目的とする。
距離が開いていて有利なのはジュナイパーだ。故に今は攻撃よりも防御に重点を置く。捌き、躱し、余裕を作ることに専念する。
消極的な戦い方に違和感を覚えたのだろう。ファイヤーの動きが変わる。届かないことを承知でオーラが解放され、レーザーと矢羽根とが止んだ一瞬の空白が生まれた。
「今!」
それと同時に――いや、それよりも前からファイヤーは既に動いていた。飛翔しながらのオーラの放出。空白が生まれたその瞬間には、既にジュナイパーへの急接近を成功させていた。
ファイヤーのその身体が、通常よりも大きな肉体が衝突する。突然のことに対応し切れず、ジュナイパーは大きく弧を描いて後方へと流されていく。
そして、それでもファイヤーの攻撃は止まらない。一度捉えることに成功し、もう逃がさないと言わんばかりの速度で飛翔を続け、再びジュナイパーに迫る。
至近距離でのオーラの解放。流石にこれには耐えられるはずがなく、
それ故に、笑った。
「……は?」
ジュナイパーが、そして一拍置いてファイヤーの姿が
――
影から、ファイヤーが姿を現す。傷だらけで、既に戦闘不能なのが一目見て取れる。
いちげきひっさつ。文字通りの必殺技が決まり、一撃で瀕死へと追い込まれたのだ。悠々とジュナイパーが影から出てきて、一礼する。
その姿で、誰もが試合の決着を――勝敗を、理解した。
「し……試合、終了ぉぉぉぉっ!!! 相性差を覆し、勝利を手にしたのは……アローラチャンピオン、ヨウ――そして、ジュナイパーだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヨウ - 伝説使って負けるとかどんな気持ち?
ユウリ - ムゲンダイナァァァァァァ!!!
ジュナイパー - 超頑張った。
ファイヤー - 割と不憫。