わたし、アルフィ!
今はいないらしいんだけど、パパとママの大切な人の名前を少し貰って名付けられたの。そんな私の将来の夢は昔のパパやママみたいな冒険者!好きなことは剣術!魔法も使えるけど、やっぱり自分の体を動かした方が私は好き!でも、まだ
だから!私はパパに交渉することに決めたの!
※※※
「パパ!私ね、冒険者になりたい!今すぐ!」
パパは読書を中断してこっちを見てくれる。剣術の稽古もやってくれるし、私はパパが大好きだ。
「これまた突然だね。どうして?」
「だって、幼馴染のみんな全員冒険者になったんだよ?私だってなりたいのに!!」
「うーん、アルフィが冒険者になるためには色々と大人の問題があるんだ。ママもまだダメって言ってるし」
パパはいつもこうだ。すぐママ、ママって、ママの尻に敷かれすぎなの。それにいつも『大人の問題』でごまかしてくる。
「それに、冒険者になったらパパとママとは離れ離れだよ?」
「えっ、なんで?やだ、それはやだ!!」
「だって、ここはメレン。冒険者になるためにはオラリオに行かなきゃいけないんだ」
「う〜……まだ、パパとママと一緒にいたい」
「そうだね。僕もアルフィと一緒にいたいから、もう少し待っててね」
「うんっ!!」
※※※
夕暮れ時、パパに絵本を読んでもらっている途中で扉を開く音がした。
「ただいま〜。すぐにご飯作るから待っててね」
「おかえり、レフィ、」
「おかえりママ!」
ママがお仕事から帰ってきた!ママは料理上手で、優しくて、綺麗!パパが言うにはすたいる?も良いんだって。本当に私にとって理想の完璧なママ!まあ、ちょっとだけ厳しいけど……
「ねえママ!私はいつになったら冒険者になれるの?」
「そうね〜。アルフィが学区でお勉強頑張ってくれたら考えてもいいわよ」
「でもでも、パパはいいって言ってるよ?」
「パパはアルフィにあまあまだからね。でも、ちゃんと学区を卒業しないとダメよ?」
「む……勉強嫌い」
「そんなこと言っちゃダメでしょ?パパでさえダンジョンについてお勉強したんだから」
「えっ、そうなの!?」
私は思わずパパの方を振り返る。だってパパはこれでもかってほど、勉強が苦手だったはずだから。
「でさえって酷いなあ。でも、ママの言う通りだよ。せっかく近くに学区があるんだからしっかり勉強してからでも遅くはないよ。ちゃんとした知識があれは、その分安全になるからね」
「そうそう。冒険者になるのはいいけど、私たちの1番の願いはアルフィが元気でいることなんだからね。怪我したらパパなんて泣いちゃうわよ」
「流石に怪我くらいでは……泣かないと思うよ?誰かに故意に怪我させられたりしたら、持てる限りの力で消し炭にするけど」
「パパ怖い!!!!」
やっぱり勉強は大切なのかな。でも、勉強やりたくないよお。
むーむーと唸ってたら、ご飯が出来たってママがお手伝いを頼んできた。ママのお手伝いは好き。勉強もこれくらい楽しければいいのになあ。
今日のご飯はパパの釣ってきたお魚を焼いたり、ずっと東にある国の食べ方をした。生でもお魚って美味しいんだ。ママの作った普通のとは違うサッパリしたソースをかけるともっと美味しいし、調子に乗って沢山食べちゃった。その後にすぐ眠くなったからベッドにフラフラと歩いてく。
「こら、レフィは牛さんになりたいの?食べてすぐ寝ちゃダメ。ほら、お風呂に入るわよ」
「眠いのに……」
「はいはい。お風呂から出たら一緒に寝ようね。あ、パパ、片付け頼んでもいい?」
「いいよ。ゆっくりしておいで」
そのまま私はママに抱っこされてお風呂に入る。私はママの胸を枕にするようにしてお風呂につかり、気持ちよくてそのまま眠ってしまいそうになる。
「こら、寝たら溺れるわよ」
「ママのおっぱい、大きくて柔らかくて、寝心地いい」
「な、何言ってるの!」
「ほんとだもん……むにゃむにゃ」
私は眠気に負けて、意識はふわりふわりと飛んでってしまった。
※※※
「寝ちゃう前に身体と髪洗ってあげるから。パパ!ちょっと来て!」
「なに?」
「アルフィがもう眠過ぎてダメっぽいから、洗い終わったらパスするから着替えさせてベッドに連れてってあげて」
「りょーかい」
※※※
とある日、私はパパの仕事場に着いていった。学区の宿題で、パパとママのお仕事について調べなきゃいけないから。
「お、来たかベル!!今日は嬢ちゃんも一緒か!」
「はい。今日は娘をよろしくお願いします、ニョルズさん」
「おうよ、任せとけ!ベルもやること多いけど頼むぜ」
「仕事ですから。頑張りますよ」
パパの仕事は漁師さん。パパは元冒険者で凄く強かったらしいんだけど、私がママのお腹にいる頃に転職したらしい。なんでって聞いたら、
「冒険者ってのは危険なんだ。いつ死ぬかも分からない、どんなに強くてもね。でも、それだとママを悲しませるし、アルフィとも会えなくなっちゃう。僕はそれが嫌だったんだ」
って言ってた。私としては冒険者をしてるパパも見てみたかったけど………
あ、そうだ。ニョルズ様に聞いてみれば良いんだ!
「ねえニョルズ様」
「ん?どうしたんだい」
「なんでパパは冒険者やめてここで働いてるの?」
「ん?ん〜、そうだなあ」
ニョルズ様は難しい顔をして考え始めちゃった。
「アルフィのパパはね、オラリオで1番強い冒険者だったんだ。それはもう、メレンにまでその名声が轟くぐらい」
「1番!?凄い凄い!」
「そう、アルフィのパパは凄い人なんだ。でもね、今ここで働いてるのはもっと凄いことなんだよ」
「なんで?」
「パパはオラリオにいれば、なんでも望むものは手に入った。好きな物も食べれるし、豪華な家に住める。でもね、それでもアルフィとアルフィのママを選んだんだ。いつ死んでもおかしくない、危険な場所に身を置いているより、少しでも安全なとこで家族と暮らしたいってね」
「それって凄いのかなあ」
私はパパとママが大好きだし、お菓子とかぬいぐるみを沢山あげるって言われてもパパとママを選ぶ。だから、ニョルズ様が言う凄さってのが分からなかった。
「アルフィもいずれわかるよ。ほら、パパのお仕事見なくていいのかい?」
「あ、見なきゃ先生に怒られる!ありがと、ニョルズ様!」
「聞きたいことがあったらなんでも聞いて」
「うん、ありがと!」
ニョルズ様に言われて、パパのお仕事を見に行く。パパは海の中に潜っていた。
「これ、何してるんだろう」
武器を持って海の中にって、なんで?パパは漁師じゃないのかな?
「ベルさんは今、船が出るためのモンスター狩りをしてるのさ」
「あっ、レイスさん!」
「よっ、アルフィ嬢ちゃん。久しぶりだね、学区の宿題?」
「うん!」
レイスさんはパパの友達の1人で、よく家に来てくれるお兄ちゃんみたいな人。ニョルズ様のファミリアの団長、ロッドさんの……なんだっけ?多分子供だった気がする。
「ねえ、パパって漁師だよね?お魚釣らないの?」
「漁師って言っても魚を釣るだけじゃないんだよ。特にここメレンでは、他の場所よりモンスターが多いからね。前まではモンスターのいない時期を狙って出航してたんだけど、ベルさんが来てからその必要が無くなって大助かりだよ」
知らなかった。漁師さんのイメージは、沿岸で釣り竿を持ってじーっと待ってるイメージだった。それを言うと、レイスさんは笑いだした。
「もう、なんで笑うの!!」
「い、いやあ、ごめん。嬢ちゃんが言ってるのは趣味で釣りをしてる人だよ。そんなんじゃ一日にみんなで頑張ってもちょっとしか釣れないだろ?俺たちはもっとたくさん釣ってくるんだ」
「へえ、そうなの?」
「そうさ。あっ、ベルさんが上がってきたからもう出航だ。嬢ちゃん、こっちこっち!」
※※※
「うわあ………凄い!」
目の前に広がる大海原。ぴょんぴょん跳ねる魚と共に凄いスピードで船は進んでゆく。空も青く、海とどちらが美しい青かを競っているよう。
「でも、パパは本当にお魚釣らないんだね」
「そうなんだ。でも、ベルさんがこうやって船を動かしてくれるお陰で、俺たちは一日で釣り場まで行けるようになったんだぜ」
「それまではどれくらいかかったの?」
「2日、3日はかかったな。本当、ベルさんには感謝しかないんだよ」
早く娘と妻に会いたいから早く帰れるように頑張れるって毎日言ってるんだ。と、更に付け加えられた言葉はとても嬉しくて、仕事中なのにパパのとこに走って抱きついてしまった。
もちろん、その後に船体が揺れに揺れて怒られちゃった。でも、パパはやっぱり凄いんだな。私は凄く誇らしかった。早く学区のみんなに自慢したい!
※※※
今日はパパの知らない一面を沢山知ることが出来た。興奮の熱がまだ抜けきっていない。
パパは他の人からの挨拶を終えたあとに、ベンチに座る私の元へと走ってきてくれた。
「お待たせ。パパの仕事を見てどうだった?」
「すっごくかっこよかったよ!」
「そう?アルフィにかっこいいって言って貰えるなら、これからもお仕事頑張れるよ」
「えへへ」
私とパパは手を繋いで、海に沈んでく太陽を背にして家に帰って行った。
※※※
「ええっ!ママのお仕事見に行けないの!?」
パパのお仕事見学から数日後にママのお仕事を見に行く予定だったのだけど、パパと一緒に帰ってきた時にママから告げられた。
「なんでなんでなんで??」
「ごめんねアルフィ。お腹の赤ちゃんがそろそろ大きくなるから、お仕事はお休みって言われたの」
私はショックでポカンと口を開けて棒立ちになる。ママは頭を撫でてくれるが、正直ショック撫でられることよりの方が大きくて辛い。
「その代わりに、ママのお仕事のことを教えてあげるからね」
赤ちゃんが生まれてしばらくするまで家にずっといるから、とも言われて私は少し気分が上向きになる。でも、やっぱり残念……
でも、そんなことは言ってられない。切り替えが早いのが私の良いとこ!
「じゃあ今すぐ教えて!」
「はいはい。書くものの準備はいい?」
「うん!」
「最初はどうして今の仕事を始めたのか、からね。ママはパパと同じように冒険者を引退しました。でも、引退はしたけどまだまだお金はいるし、冒険者の頃に買った装備の借金をまとめて返したりでお金もあんまり無かったの。だから、リヴェリア様に少し協力してもらって今はギルドの下級冒険者サポーターをしています」
「あれ?でも、この前のお仕事はロキファミリアって……」
「それは、たま〜にロキファミリアからもお仕事の依頼が来るの。事務仕事を頼みたいーって。それを手伝いに……って、ああっ!!!!」
ママの素っ頓狂な声に私はぴょんと跳ねて尻もちをついてしまった。ママはと言うと、慌てて様子を見に来たパパをじっと見て口をあうあうさせている。
「パパ、どうしよう……?」
「ど、どうするって?レフィ、そんなに動揺してどうしたの?」
「明日、オラリオ行かなきゃ……!」
「えっ?」
「ロキファミリアの生誕祭のこと!私、まだロキファミリアに籍を置いてるから行かなきゃダメなこと忘れてた!」
どうしようかと2人して黙り込んでしまった。私はママのお仕事の話を聞きたいのに………
結局その日はパパとママはずっと喋ってて、私の言うことなんて聞いてもくれなかった。
でも、次の日の朝。
「アルフィ、起きた?」
「おはよ、パパ。眠いからまたね」
「いつもはそうさせたいが今日はだめだ。外用の服着て支度して」
よく分からないままパパに手を握られてフラフラとベッドから離れて、ママに預けられる。ママはパパ譲りの私のくせ毛を綺麗に整え、外行用の服を着せる。支度が終わってからようやく目が冴えてきてよく見たら、パパもママも見た事ないドレスコーデに身を包んでいた。
そして、何も分かってない私の疑問に対してママが一言。
「アルフィ。今日はお祭りと、ママの仕事場。それにパパの前居たお家に連れてってあげるからね!」