O5-11になるはずだった彼は今日も息を続ける   作:ryanzi

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Want Forget

自宅にようやく帰ってきた。

今日はかなり疲れた。だが、まだ終わりではない。

というか、犯人を突き止めない限り永遠に終わらないだろう。

寝ている間に使い魔に食われて死ぬのはごめんだ。

もちろん、魔女に殺されるのだってごめんだ。

 

「・・・ただいま」

 

声は返ってこない。当たり前だ。

両親は仕事の都合でしばらく海外を周回している。

この前の電話では、あと296周くらいしなくてはいけないらしい。

当然、聖は両親と同じような仕事に就くつもりは毛頭なかった。

いくら成功している企業だからといって、世界300周ビジネス旅行は御免被る。

 

(まずはコーヒーを淹れて、部屋で一息つかねば)

 

カップにコーヒーを注ぎ、二階に上がっていく。

自室のドアを開けると、二人の少女が寝転びながら漫画を読んでいた。

いいや、そんなことはありえない。一人は魔女化して、一人は死んだはずだ。

目をこすると、二人の姿は当然消えていた。

なぜ、今、あの二人の幻覚を見てしまったのだろうか?

もうとっくに頭の中から追い出していたはずなのに。

更紗帆奈、瀬奈みこと・・・彼女たちは『理解者』だった。

 

「・・・今さら許してくれだなんて言わないさ。

でも・・・お願いだ、忘れさせてくれ」

 

壁にもたれかかってコーヒーを啜る。

忘れたかった記憶が、彼を襲ってくる。

どうしてこんなことになったのだろうか?

自分はただ、忘却して、この世界で一生を謳歌したいだけなのに。

でも、誰かがそれを邪魔してくる。

それが誰なのか、まったくわからない。

まあ、推測ならできる。あの戦争を生きていた人間の誰かだ。

聖と同じように、この世に再び生を受けたのだろう。

第一に思いつくのは壊れた神の教会の信者だ。

あの魔女や使い魔も、金属が仕込まれていたからだ。

しかし、RPC Authorityとは何だろうか?

彼らだったらBrokenなどと名乗りそうなものなのだが・・・。

肉の崇拝者たちか?いや、彼らだったらもっとおぞましい方法でやってくるはずだ。

では、百歩譲ってダエーバイト?無理がある。

考えあぐねていると、スマホの着信音が鳴り響く。

SNSにひめなからのメッセージが来ていたのだ。

 

やっほー☆今電話できる?

 

すかさず返事をする。こういうのは衣美里に鍛えられているのだ。

 

ああ、大丈夫だ

 

「それで、何の用だ?」

 

「いやー、まずは生存確認かなって。

あの後、すかさず襲撃されてたかもしれないじゃん」

 

「確かにな・・・だが、それに関しては大丈夫だ」

 

「何がどう大丈夫なの?」

 

いったん、部屋を出て階段に座る。

聖の部屋は衣美里の家の側にある。

しかも、窓を開ければ目の前は衣美里の部屋だ。

会話を聞かれては困る。

 

「・・・衣美里は魔法少女だ」

 

「うん、さっきSNSで教えてもらったから知ってる。

指輪してたし、訊いてみたんだよ。そしたら正解ってわけ☆」

 

「そうか・・・まあ、向こうは私が知っているということを知らないんだがな」

 

「やっぱり?いやー、言わないでよかったー」

 

「ありがたい。あまり知られたくはないからな。幼馴染でもあるし・・・」

 

すると、ひめなの声色が変わった。

 

「ねえ?自分の立場自覚してるの?」

 

それではっとさせられた。

犯人は当時の人間とは限らない。

何らかの手段で1901年以前の知識を得た魔法少女かもしれない。

 

「・・・何を言いたいかはわかるよ。

だが、それを言ったら、君すら信用できなくなるぞ?」

 

「その方がいいよ?私チャンが黒幕かもしれないし」

 

「味方と思わせて、後ろから・・・確かにありえなくもないな」

 

「そういうこと☆だ・か・ら、できるだけ一人で動いてほしいんだよね☆

私チャンにばっかり頼るようになっても困るしー」

 

「・・・わかった」

 

「じゃあ、いったん切るねー!

・・・絶対に生き延びること!」

 

「ああ、もちろんだ」

 

電話を切る。そして、溜息をつく。

もう魔法少女も、それも幼馴染までもが信用できない状況となった。

聖は再び自室に入り、ベッドに横になる。

眠ることはできないが、体を休めなくてはいけない。

夜になったら、出かけなくては。

考えていても埒が明かない。考えても何も出ないなら、行動だ。

瞼を閉じると、ある記憶が蘇ってきた。

それはあのHMFSCP(超常現象の確保収容に関する王立財団)のリーダーと世界を回った時のこと。

彼と一緒に空を飛ぶ機械(飛行機とも熱気球とも違う何か)である場所を訪れたのだ。

それは天に浮かぶ直径約5.45kmもの巨大な都市であった。

実に壮麗な都市であった。当時の聖の傷ついた心もそこで癒された。

・・・なぜ、あんな都市がロシアの極北上空に浮遊していたのかは不明だったが。

とにかく、悪い記憶しかないというわけではなかったのは確かだった。

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