少年はそこで英雄と出会う。   作:やってやる!やぁ~ってやるぜ!

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エース①

 

 

『ここで時間切れ!6対5対1対0で玉狛第二の勝利です!!......さて、振り返ってみてこの試合どうでしたか?』

 

「そうですね、終始玉狛の二チームの作戦勝ち、という印象でしたが、相手の得意な陣形を崩す。エースの空閑をうまく当てる。この2つを徹底して実行できていたことが 玉狛第二の勝利に繋がったと思います。」

 

「ただ、玉狛第四があそこで市ヶ谷隊員も一緒になって空閑隊員を倒していたらだいぶ展開は変わったものになったと思います。が、結果として市ヶ谷隊員が4点取ってますし、あそこで空閑隊員が負けていれば、市ヶ谷隊員のしかけていた炸裂弾(メテオラ)はまだありましたし、玉狛第四の作戦も良かったと思います。」

 

『さて本日の試合が全て終了!暫定順位が更新されます!玉狛第四が10位、玉狛第二が同率9位に浮上!! 早くもB級中位のに立った!諏訪隊が13位荒船隊は16位にダウン!!次回の対戦の組み合わせも出ました!!注目の玉狛第二の次の相手は......暫定15位那須隊と暫定11位鈴鳴第一、そして暫定同率9位弦巻隊です!』

 

 

————————

 

 

「じゃあ、玉狛大勝利に~、かんぱ~い!!!」

 

宇佐美の号令とともに祝勝会が始まった。騒がしいのは苦手だが偶には悪くないし、いつもの玉狛もこんなもんだろう。

 

「ありしゃ~!!!!」

「やめろよバカスミ!!抱き着くな!!!」

 

......こ、こんなもんだろう。

 

「肉、上手い」

「これが...すてーきというものか」

 

......なんか遊真がステーキに死ぬほどタバスコかけちゃったけど、こんなもんだろう。

 

「あら、あなたいい笑顔ね!一緒に歌いましょう!!」

 

......だめだこりゃ、いつの間にか弦巻とお供の黒服さんたちがいる時点でもう詰んでるまである。

......薫の話では弦巻の家は相当の金持ちらしいが、それでも......

 

「船上パーティーって...マジかよ......」

「ふっ......儚いね八幡」

 

 

―――――

 

 

船上パーティーは本人曰くノリと勢いだったそうでわりとすぐに戻って来た。

 

「八幡先輩!どうでしたか?私のスコーピオン!!」

 

すると戸山がすごい勢いで聞いてきた。そうだな...

 

「そこそこだな。狙いは良かったしきっちり決まったが結果的には遊真を落としきれてない。例えばこんなことを言ってもきついかもしれんが、あれが遊真の足に入ってたらあそこで足を削って機動力を削ぎ、牛込の狙撃で勝てたからな。」

「そう...ですか......」

 

すると戸山はシュンと猫耳(本人としては星らしいが、絶対猫耳)をうなだらせたので、俺は戸山の頭にそっと手をおき、撫でた。

 

「勘違いすんなよ、別に俺と有吾さんが育てた遊真だから対応しきって勝ったんであって普通にいい作戦だった。次も頑張れよ」

「あっ、ありがとうございます......」

「......?なんでそんなに静かに......!」

 

今気づいた。俺は戸山の頭を反射的に撫でていたのだ!......やべ...

 

「わ、わるい!セクハラで訴えるのだけはやめてくれ!!なんでもするから!!!」

「な、何でもですか!?じゃ、じゃあ今度私たちにお昼奢ってください!」

「そ、そんなことでいいのか?」

 

まあ、こいつが犯罪まがいな命令をするとも思えんが、

 

「はい!!」

 

まあ、こんな笑顔だしいいか。

と、そういえば

 

「遊真、緑川とランク戦の約束があるって言ってなかったか?」

「ああ、まだ時間あるしこれからやる予定だよ。兄さんも来る?」

「暇だし行くわ。薫もまたな。」

「いや、私も行こうかな。それよりも八幡、さっきのはどういうことかな?」

 

あ、見られてた。やめて!ハイライトの消えた目で見ないで!!

 

 

―――————

 

 

「あ~だめだこりゃ、やればやるほど勝てなくなるな~」

「よしよし、だんだんわかってきた。」

「よねやん先輩、トータル何対何?」

「21対9だな。」

「それって十本だとどのくらい?」

「ちょうど7対3だな。」

 

俺たちはランク戦ブースに移動してきて遊真と緑川の個人ランク戦を観戦していた。大分緑川の動きもよくなってるな。

 

「7-3か~......まあ前よりはマシだけど......」

「成長したな、ミドリカワ」

「前半は割と五分ってたじゃね~か」

「そこそこ対応もしてたしよくなってると思うぞ」

「ホント!?はちやん先輩!!」

「おい、俺もほめたぞ」

 

すると、

 

「おや、荒船さんじゃないか。ランク戦かい?」

 

荒船先輩が現れた。

 

「お、瀬田に米屋、緑川それと...空閑にあのA級単騎狩りの比企谷じゃね~か。お前らもいたのか?」

 

ちょっと待て、なんだA級単騎狩りって俺の二つ名?だせぇ......そう思っている俺のことはつゆ知らず、荒船先輩は緑川にヘッドロックをかけている。すると

 

「なんだ、この雰囲気?」

 

遊真たちの次の相手(薫たちもそうだが......)、鈴鳴第一のエース攻撃手、村上鋼先輩がきた。

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやあって遊真たちの十本勝負を見守っていた俺たちだが......

 

「...強い、が前半までと動きが違いすぎんな。」

「それは彼の副作用によるものさ。」

 

遊真は前半の五本では4-1で圧勝していたが後半に入り一本も勝てていない。

 

「......マジかよ」

 

こうなった理由を説明するには十分前に遡らねばならない。

 

 

 

 

 

鈴鳴の村上先輩はどうやら遊真の対策がしたくて戦闘ブースに来ていたようで、同じグラスホッパーを使う緑川との模擬戦を望んでいた。

 

「それなら俺とやろうよ、こっちもあんたの動き知りたいし」

 

確かに、遊真対策なら直接遊真とやるのが一番早い。だが、薫たちの反応が微妙だ。

 

「......あまりオススメはしないよ。彼と戦うのは試合まであずけておいたほうがいい」

「俺も瀬田に同意だな。鋼さんとは今やらないほうがいい」

 

すると遊真が笑った。

 

「なら、尚更やりたいな。せた先輩もよねや先輩も噓は言ってないってのはわかってるけど......」

 

すると村上先輩は少し考え込むようなしぐさをしてから

 

「分かった。ただ条件を付けさせてもらっていいか? 10本勝負の5本目が終わった時点で 15分休憩を取らせてくれ。」

「別にいいよ。」

 

そして、冒頭に戻るわけだ。

 

 

「ここまで戦況がひっくり返るほどの副作用(サイドエフェクト)ってなんだ?」

 

村上先輩は前半戦で遊真の動きを確認しながら戦っていた感じだったが、後半では対策に迷いがなかった。まるで何日もかけて遊真の動きをおぼえこんだような......

 

「人間は起きている間に学んだことを睡眠によって少しずつ身体に経験として定着させるだろう?彼の場合それが少し特殊でね。強化睡眠記憶、それが彼の副作用(サイドエフェクト)さ。」

 

成程、それならあの対応にも頷ける。ブースから遊真二人も出て来た。

 

「遊真にとってかなりきつい相手になりそうだな。」

 

すると薫が言った。

 

「私を忘れてもらったら困るよ?遊真、次は私とやろうか。」

 

 

 

 

 

 

薫と遊真のランク戦が始まった。

まず、遊真はグラスホッパーで攪乱している。

 

(隙がないな、切り込めん)

 

薫の動きには隙がなく、遊真は踏み込めずにいた。実際、何度か切り付けてはいるがことごとくそらされてしまっている。

 

(なら、作るまでだ)

 

遊真はグラスホッパーを使い一気に上に飛んだ。

 

「ここだ。」

 

そして、下向きにグラスホッパーを踏み加速しながら真下の薫へと迫った。当然薫も迎え撃とうとするが、

 

(そんで......右!)

 

遊真はグラスホッパーを使い右に方向転換、着地し迎撃でがら空きになった薫の胴を切ろうとするが......

 

「それじゃあ、まだ私には届かないな。」

「......!」

『戦闘体活動限界、緊急脱出』

 

薫はそこに来るのがわかっていたかのようにモールクローで遊真の胸を貫いた。

 

 

 

 

 

十本目が終わり、遊真はベットに横たわっていた。

 

『個人ランク戦、十本勝負終了、8-2勝者、瀬田』

『私の副作用(サイドエフェクト)について教えようか。私の副作用は視線誘導、手品師などが使うこの技法の上位互換だ。八幡が使うこともあるんじゃないかな?他人の意識を別の方向にそらすことも出来るのさ。ああ、後ちなみに......』

 

そう、一本目の遊真の奇襲、それは遊真が右に行くように右に意識を向けさせその位置に予めスコーピオンを仕込んでおくことにより、勝利したというわけだ。

だが、この副作用(サイドエフェクト)が真価を発揮するのは個人戦では無い。この副作用(サイドエフェクト)が存分に生かされるところ、それは乱戦である複数人いる中でその中の1人にヘイトを向けたり、 自らから意識を逸らし攻撃を受けないようにしたりなどの戦場のコントロールが可能なのである。

この副作用(サイドエフェクト)、そして長年ボーダーで戦ってきた経験それが......

 

『私の攻撃手個人ランクは三位だ。君の師匠であると聞いた桐絵がスコーピオンで本部のランク戦をする時よりも上だよ。』

 

彼女を最上位の攻撃手たらしめるのである。

攻撃手ランクの五位と三位がいる第三ラウンド......さらに言えば、玉狛第二は順位的にもマークされる側である。

 

「こりゃ......手ごわいな......」

 

遊真は不敵に笑った。

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