少年はそこで英雄と出会う。 作:やってやる!やぁ~ってやるぜ!
「だいぶ登ってきたけど...わっ、みんな見てー!ここにおっきなつり橋があるよー!」
南と断定した方向には山があったので三十分ぐらい登ると日菜がぼろぼろのつり橋を見つけた。おいおい!あぶねーな!!所々渡し木がねーぞ!?しかも...俺は崖の下を見渡す。するとカラン、と何かが引っかかて危うく転落するところだった。端的に言ったがマジで死ぬかと思った!一瞬爺ちゃんが川の向こうで手振ってた......まあ、とりあえず下は川とはいえ高すぎて普通に死ぬ。川も浅いし普通に死ぬ。
「うわ~、この先に向かうにはこの吊り橋を渡るか一回降りて川を渡るしか道はなさそうですね」
麻弥の言う通り周りに橋もなくここを渡るほかなさそうだが...落ちたらって考えるとゾッとすんな。
「下りるってことはまた登るってことでしょ?それはさすがにきついかも......」
「それならこのつり橋を渡るしかないわね」
彩の言う通りここからまた下りて登る...となったら時間的にも体力的にも結構きつい。千聖の言う通りここを渡るしかないのだが......
「こ、この吊り橋を渡る......ゴクリ」
「なるほど。見た感じそれなりに補強はされてますけど足場と足場の隙間も大きいですし渡るにはかなり怖い吊り橋ですね......」
まぁそういう反応になるわな......イヴでさえ尻込みしているこの状況、まあ当然のことながら...
「す、隙間から下の川が見えてる......!や、やっぱりほかのルートを探したほうが...こんな橋、無理だよぉ...!」
ふぇぇ...とでも言いそうな感じで彩が嘆く。バイトで移ったのかな?
「確かにちょっと危険かもしれないですね。それじゃあ別のルートを......」
「いえ、ちょっと待ってくださいっ!それは困りますっ!目的地の花畑は、間違いなくこの先にあります!」
ああ、これテレビだもんな。今まで麻弥の予想以上の手際で全く撮れ高がなかったわけか...うん、確かにサバイバルだったら満点だけど砂浜に転がってる漂流物の匂い嗅ぐぐらいしないと数字は取れないってわけか......え、それは男性アイドルが大量に出る自給自足系番組のパクリだって?......勘のいいガキは嫌いだよ。
「困るというのは......?」
「え、えーと......次のミッション、行ってみましょう」
流しやがった。流しやがったぞこいつ......(本人はあまりの頼りなさに敬語を忘れております)
「次のミッションって...こ、こんなところでですか!?ていうか私たちまだ花畑を見つけるっていうミッションの途中のはずじゃ......!?」
やめてよ、ツッコまないであげてぇ!!杜撰なスケジュール管理が浮き彫りになるから!!
「え、えーと.....デーレン! これは特別ミッションです!ミッションの内容は“この吊り橋を全員渡りきる!”です!」
もう何からツッコんでいいかわからない(お前もツッコみはするんかい)......まず効果音ぐらい編集でつけてくださいよ...口で言うなよ......
「や、やっぱり......っ!!」
何かを察していたのか彩は涙目になる。
「わあ~、いーじゃん!いーじゃん!すっごく楽しそー!彩ちゃんっ!早く渡ろーよ!」
日菜が彩の腕を引っ張る。“すっごく”が“スゲーじゃん!”だったら完璧だったのに......
「ま、待ってっ、日菜ちゃん!腕を引っ張らないで~っ!」
「なんで~?いいじゃん一緒に渡ろーよー!」
「ま、まだ心の準備が......」
対照的な二人だな...片方は涙で目を輝かせてもう片方は純粋に楽しさから目を輝かせている......さすがにかわいそうだしとめるか。
「待て日菜。まあたかが橋を渡るくらいだが怖いやつもいる。そういう時は相手の気持ちじゃなくていいから相手の表情やしぐさから文章を読み解くように心情を考えたほうがいいな。ま、俺も人の気持ちとかよくわからんし。客観的にみるって感じだな。」
「よくわかんな~い。でもっ!それが分かればもっとみんなと仲良くなれるってことだよね」
一瞬よくわかんなーいでグサッときたが分かってくれたならいいか。俺は千聖に視線を向ける。
「日菜ちゃん。私と一緒に渡りましょう?(これでいいの?)」
「(サンキュー)さて、彩。麻弥は前にいるし俺もすぐ近くにいてやる。イヴも後ろからフォローしてくれるそうだ。なんか怖いところはあるか?」
俺は彩に言い聞かせるように言ってから怖い理由を聞く。こういうのはこれが一番効果的だ。自分で答えを出す。これが出来なきゃ一生前には進めねーからな...まあ、有悟さんの受け売りだが......
「それはわかってるの......でもやっぱり高いのは怖くて......」
萎縮...してんな。別にここ渡んなくても死ぬわけじゃないがこういう大切なものがかかった場面で妥協するとずるずると引き下がっていくしかない。逃げるは恥だが役に立つ...なんて言葉もあるが退いてはいけないときもあるっ!!それが今だっ!!!
「なぁ、お前は何でここまで頑張ってきたんだ......?」
「それは...新曲を発売して有名になってボーダーの活動を広めてこの世の中でネイバーのせいで泣く子をなくすためっ!!」
「そうか......」
こいつの目標に一途なところとか普通に尊敬する。多分言ったら調子に乗るか、空回りするから口には出さんけど。
「じゃあこんな所で足を竦ませてていいのか?そんな高みに登れるのか?」
「......」
彩は自分に自信がないのか俯いたままだ...だが、
「何全部ひとりでしょい込もうとしてんだ?」
「え?」
彩は顔を上げた。
「これは俺の友達の友達の話なんだが...そいつは馬鹿なやつでな。どんなことも一人で抱え込んで全部自分のせいにしてる奴だったんだよ。でもそいつには幼馴染がいてな?そいつらから言われたんだよ。もっと自分たちのことも頼れってな。そして俺は気づいたんだよ、何も全部一人でやる必要はない...ってな」
「そっかぁ...千聖ちゃんたちはすごいなぁ......」
何故に千聖の名前が......?
「なんで...?って顔してる!八幡くん途中で俺って言ってたよ?」
は?マジで?いやマジで!?死にたい...もう現世から
そんな俺を置いて、彩はすっと橋に一歩二歩と近付きそして振り向いて言った。
「千聖ちゃんたちには負けないからねっ!」
そう言った彼女の笑顔が余りにも魅力的で、俺は不覚にも見惚れてしまった。
俺たちは少しずつゆっくりと橋の上を進む。すると橋が風に揺られて思いっきり揺れる。そして思わず彩は手すりのロープにつかまって立ちすくまった。
「うわっ!きゃ、きゃああああ~~っ!な、なんかすっごい揺れてる。やっぱり私...(“何の為にここまで頑張ってきたんだ?”...そうだよね!!)」
すると彩はまたロープから手を放して進みだした。
「すごいです彩さん!あとちょっとですよ!ジブンはもう渡り切りました!」
10m先にいた麻弥が声を掛ける。あと少し......
「彩ちゃーんっ!!頑張れーっ!!!」
後3m...
「あと少しよ彩ちゃん!頑張って!!」
2m......
「アヤさん!ファイトですっ!!」
1m......そして...
「ほらあと一歩だ。よく頑張ったな。」
「うん!八幡くんと...みんなのおかげっ!!」
到着...ふぅこれで一件落ちゃ...っ!!
丸山隊の面々が彩に駆け寄ろうとしたとき、不意にまだ渡り切っていないイヴの足元の渡し木が外れた。そして...
「イヴちゃん!?」
イヴが川に真っ逆さま......って!!
「させっかよ!!!」
俺は橋の四分の一ほどまで走り、急停止。そんでイヴから借りっぱなしだった木刀を右手で抜いてイヴが落ちた所から三本前の木を壊す。そして、そこから滑り込んみその勢いのまま左手をイヴに差し出した。
「掴め!!」
「は、はいっ!!」
しっかりとイヴの手を掴む。そんで......!
「ああ!!このままじゃ崖に!!」
たとえ掴めたとしても足場がなきゃ共倒れ......!だからわざわざ角度つけて飛んだんだよ......!!俺は迫りくる崖に思いっきり木刀を突き刺した。そしてこのままでは慣性の法則でイヴは止まらず崖に激突してしまうので...
「よっと」
「きゃっ!」
イヴを引き上げ胸に抱く...いやこの言い方語弊生みそうだな、おい。つーかなんだ『きゃっ』って。いつもならあざとい、却下ってなりそうだがイヴの場合癒しになるわ......
俺は上への反動をつけてから木刀を抜き、崖を駆け上がって上まで登り切った。
「ふう、イヴ。無事か?」
「......ぶ、」
なんだ?下を向いてプルプル震えて......で、『ぶ』?
「ブシドーですっ!!!!!!」
「と、突然大声を出すな!」
鼓膜敗れるかと思ったじゃねーか!!いや、まあ無事ならいいか
「とりあえず......木刀返すわ」
「いえ、いいですっ!!それは修学旅行の時洞爺湖の仙人から通販で買ったんですよね!!」
修学旅行?洞爺湖?俺は修学旅行に行ってなんか......は!まさか!?
「おい...お前......銀〇って知ってる?」
「〇魂ですよねっ!!はいっ!!日本のブシドーは銀〇を見れば分かるって父が言ってましたっ!!」
「何年目まで......?」
「一年目ですっ!!」
だからか~......銀〇からは人生において人として大切なことは学べるけどギャグマンガだからな......銀魂(言っちゃったテヘペロ!)の一年目からはそんな武士道学べないな......いけるとして記憶喪失の時ぐらいかな......俺が一番好きなのは歌舞伎町四天王編である。伝統の背景白黒特殊エンディングじゃなかったがあれはあれで最高だったな...
「うん。それは一回忘れようか」
「どうしてですか?」
こっちをキラキラと見つめる純粋な目!!こっち見るなよぉ...浄化されちゃうよぉ......私できないっ!こんな子から夢を奪うだなんて..私、できないっ!!
「はぁ......はぁ......や、やっと到着したよっ!
......え?みんな......見て...この、景色...」
山頂にたどり着き息を切らしながら彩が言うが......斜面を登り切ればそこは別世界だった。という言葉がぴったりの一面の花畑が広がっていた。
「すごいです!花びらがひらひらと舞っていて...まるでカブキみたいです!ここがミッションで言っていたお花畑ですねっ!」
「ホントだ~っ♪ 見渡す限り...お花お花お花、だね!るるるるるるんってきちゃったー♪」
新型形容詞『るんっ』は、『る』が多ければ多いほど意味が強くなるようだ。イヴちゃんは日本のことが大好きなフレンズなんだね!
「ふふ、こんな素晴らしい景色を見たら今までの疲れを忘れてしまうわね♪」
「はい!ジブンもどこかに疲れが吹き飛んでしまったみたいです!」
二人の疲れも取れたようで良かった良か......ふむ
「これって苦労したから、余計に景色がきれいに見えてるのかな?」
「そんなことないと思います!この景色は本当に美しいですっ!」
確かにひいき目なしできれいな景色だ。近界でもこれほど幻想的な景色はそうなかった。
「皆さん、本当にお疲れ様でした!よくここまでたどり着きましたね!ここが皆さんのミッションのゴールとなります」
「ここがゴールですか?て、ことはつまり......」
「もしかして全部のミッションクリアをってことですか!?」
俺たちはスタッフさんの言葉にそう質問する。
「はい!おめでとうございます!」
「ほ、ホントにっ!やったーーーっ!」
よしっっっ!!!!俺も表面には出さないが喜ぶ。見たか親父!ギャラ頂きだ!!ここまでの苦労を考えると手のひらで弄ばれた感もするが......とりあえず、終わったな。
「それにしても...私たちが達成したミッションと言えば食料探しと吊り橋渡り、そしてこの花畑探し。随分と少ない気もしますけど......」
そのうち一個は特別ミッションだしな。絶対後付けだろ。
「いえ、実はそれなんですが発表する前に麻弥さんと八幡さんが次々とクリアしてしまって......」
「えっ!?そうなんですか!?」
うん。これはテレビだってことを忘れてた麻弥と、早く終わらせたかった俺が悪いな。
「あ、あぁぁぁぁぁ!!!そうだ!!新曲っ!!私たちの新曲って!?」
「ええ、もちろん皆さんとの約束通り発表させていただきます。それについて......最後の特別ミッションを出したいと思います!」
「ええ!そんな話聞いてないですよ!!」
「何しろ今急遽決まりましたんで!」
「え、今ですか!?」
おいおい!ついに隠さなくなったな!
「それは......『山頂でCDの告知を叫ぶ』です!」
え?
「いや、それ俺はどうすればいいですか?」
「八幡さんは給料の使い道を叫んでいただければ!」
プライベート!超プライベート!!
「叫ぶのは一隊につき一人だけ。なるべく遠くまで聞こえるように告知してくださいね」
「1人で叫ぶ姿を想像してみましたけど......なかなかに恥ずかしそうですね。さて誰が言ったものやら......」
俺は確定だけどな!
「こういう時はもちろん......ねー!」
そう言って日菜は彩の方を見る。というか、みんなで彩の方を見る。
「......て!?なんでみんな私のほうを見てるの!?」
「「「「お願いね。(おねがーい!)(お願いしますっ!)」」」」
「え~~~~っ!わ、私!?は、八幡くん......」
「高みに行くんじゃないのか?」
「そういうんじゃないってば~~~~っ!!」
うるさい!こうなりゃ道連れだ!!
「それでは丸山彩さん!本番まで、3,2,1......」
「ま、丸山隊の新曲CDの発売が決まりました~!!やったぁぁ~~~!!ボーダーはみんなの入隊と協r、協力を待ってるよぉぉぉぉ!!!!」
噛んだな。完璧に嚙んだぞこいつ...本番に弱いな......
「次、比企谷八幡さんどうぞ!!」
カウント無しかい
「あ~...俺がいない間にやってたシン〇エヴァとプリキ〇アを借りにツ〇ヤの会員証更新費に使う!!!!」
「......それだけですか?」
なんだよ。あとは貯金すんだよ。はぁ...じゃあ、
「それからボーダーはネイバーの脅威に対抗するため、対等な立場に立つために戦力を欲している!!第一次大規模侵攻、そしてこの前の第二次大規模侵攻で大切な人を失った人も多いと思う!!そんな目に二度と会わないために、そして合わせないためには君たちの協力が必要不可欠だ!!ボーダーは君たちの入隊を待っている!!以上だ!」
ふむ、親父が渡してきたボーダー勧誘用カンペを覚えさせられたことが初めて役に立ったと思う今日この頃...
俺たちは収録も終わり帰りの船に乗っていた。
「いや~...今回は疲れましたね。」
「でも丸山隊のみんなとハチくんと一緒に行った無人島にはるんってしたよ♪」
それにしても...疲れたなぁ
「あ!そう言えば八幡くん私の頭撫でたときに何でもするって言ってたよね?」
いや、言いましたけど...それ今言う?ここで掘り返す?
「だからさ。私頑張ったでしょ?だから頭撫でて......?」
そんなよられて上目づかいされたらもう男に断るなんて選択肢ないじゃないですかヤダー
すると麻弥が
「みなさん頑張ったと思います!彩さんだけ撫でられるのは不公平です!」
「あ、そうだよね......じゃあ」
よしっ。ナイス麻弥、これで彩もじゃあやめるって「みんなで撫でてもらおうよ!」は?
「みんなで八幡くんに頭撫でてもらったらいいんじゃない?」
いいわけないだろこの脳内ピンク野郎!(疲れと動揺のあまり口が悪くなっております)
「それは良いですね!」
「うん!るんってする」
「それはいいと思いますっ!」
「ね?だからさ......」
はぁ...まったくこいつらは......
「じゃあ私からねっ!」
わぁ~めっちゃワクワクしておられる~......俺は彩の頭をそっと撫でた。彩が気持ち良さそうに撫でられるので心臓に悪い。急にあっ、とか、んっ、とか言うので本当に心臓に悪い。まぁでもこいつは頑張ってたしな...今この瞬間くらい自由にさせてやろう。帰ったらpt根こそぎもぎ取ってやる。
「次は私ですねっ!」
ハーフだからなのか三つ編みだからなのか彩とは手触りがだいぶ違うな。なんてことがわかってしまうようになってきた自分が嫌だ。まぁでもイヴの表情は可愛いし癒される。役得だな。
「次はあたしだね!るんってする♪」
日菜の髪はふわふわした感じでいいにおいがする。っていかんいかん。
「へぇー..いい匂いする~?嗅いでいいよ~」
やっぱりエスパーかこいつ!?
「いいわ!次だ次!」
「え~」
このままいくと犯罪者になりそうだったので次の麻弥に移行する。
「じゃ、じゃあ八幡さん!お、お願いします!」
麻弥の髪の手ざわりも二人とは全く違っていた。つやつやした髪でとても触り心地がいい...ってこれじゃ変態か。あ、顔に泥がついてる。
「は、八幡さん。くすぐったいですよ」
「いや、お前にはホント助けられた。俺一人じゃ多分無理だったと思うしこいつらまとめるの」
「ははは...みなさん一癖も二癖もある方々ですし...でもみなさんジブンなんかよりほんとにすごくて...私は丸山隊にいていいのかなって思ったりしたこともあったんですよね」
「いや、そんなことないだろ」
「へ?」
そんなもん...
「あいつらがそんなこと一度でも言ったことあったか?今日もかなり頼られてたしお前はオペレーターだろ。むしろ私のフォローのおかげでお前ら成り立ってんだ!感謝しろよ!くらいでいいと思うぞ」
あいつらの顔を見れば麻弥に全幅の信頼を置いていることくらいわかる。
「あはは...そっか、ジブンここにいてもいいのかな......あれ?す、すいません!なぜか涙が......」
俺が言うと麻弥はポロポロと涙をこぼしてしまった。これはアレだな。周りにはスタッフもいるし麻弥も泣いてるとこあんまいろんな人に見られたくもないだろ...
「まあ、話聞いてやる...とかはできんが壁になることぐらいできる。」
すると麻弥は今まで芸能事務所で芸能人を目指していた三人、そして圧倒的な才能をもった日菜の中にいてずっと気を張っていたのだろう。心のダムが崩壊したように感情があふれ出しそれに体がなじめてないだけだ。すぐに収まる。俺にできることはせいぜい見せないことくらいだ。
麻弥が泣き止むころにはもう船は港についていた。
私はほかのみんなが下船した後もボーっと船のデッキで星空を見ていた。
「あれ?白鷺さん?もう下船しないと......」
「あっ、すいません」
私はスタッフさんに声を掛けられ急いで下船する。しかしあまりにも急ぎすぎていたためか下りる時に足を少し捻ってしまった。ちょうどあったベンチに座って傷を確かめる
「痛......」
周りを見ても私を助けてくれる王子さまはいない。思えば今日はその鈍感王子のせいで気が散ってばっかりだ。食料調達から帰ってきたと思ったら麻弥ちゃんたちと名前で呼び合ってるし吊り橋では日菜ちゃんと先に行っていたから会話までは聞こえなかったけど彩ちゃんといい雰囲気になってるし...小屋では、私には可愛いって言ってくれなかったし......
分かってる。ハチくんを責めるのはお門違いなくらい。ハチくんは私と薫に救われたって言ってくれたけど...本当に救われたのは私たちだ。薫の引っ込み思案なな性格もハチ君のひねくれたアドバイスで自分の意見を言えるくらいには改善したし、私が役として徹して失敗しかけた時だって彼のおかげで戻ってこられた。彼はヒーローなのだ。面と向かって言っても否定するだろうが私たちから見たら間違いなくそうだ。彼は何かとそのひねくれた視点で私たちのことを見ていつの間にか助けてくれちゃうのだ。そんな彼を私は縛り続けているのではないのだろうか?でも彼は麻薬みたいなものだ。今更離れることなんてできない。
彼は...いや、三人のあの時間は今でも私の宝物であり居場所だ。そこを失うのはとても怖い。この関係は誰か一人が欠けただけで簡単に崩れ去る。彼にとっての親友というポジションまで失うことになるかもしれない。彼と一緒に話したり、軽口叩いたりすることだってできなくなるかもしれない......
だから......
「あきらめるしか..ないのかな......」
「何をあきらめるって?」
「ひゃっ!な、何で...」
なんでここにいるの......?
「何で...って、ほら紅茶好きだろ?」
「す、好きだけど...何でここがわかったの?」
「
あ、確かそういうのあったわね...
「お前はどうしたんだ?うずくまってたみたいだけど......」
「ちょっと足をくじいちゃったのよ」
すると彼はそうかと言ってしゃがんで私に背中を向けてきた。どうしろというのかしら?
「どうした?足くじいてんだろ?乗れよ」
「え?」
私は一瞬混乱してしまったが彼の背中におぶられる。あの頃よりずっと広く、たくましくなった背中はいとも簡単に私を持ち上げてしまった。思わずその背中に垂れかかってしまう。こうなってしまってはどうしようもないことを知っているのに......
すると突然ハチくんが思い出したように言った。
「そう言えば前にもこんなこともあったよな。お前は覚えてないかもしれないけどさ、薫が熱だしてさ。俺たちで見舞いに行こうってなったんだけど俺は薫の家知らなくてさ。」
覚えてる。あれは確か7歳のころのことだ。私たちはかおちゃんのお見舞いに行こうとしていた。でも私が道に迷って二人とも迷子になってしまった。そして子供の足だ。そう長くは歩けない。すぐに私はへばってしまい座り込んでしまった。そんな私に彼はこう言ってくれたのだ。
「そんでさ、俺お前相手に俺自身だってもう限界近かったのに意地張ってこういったんだよ」
「「ちーちゃん、俺が背負うからのって?俺が家まで送るよ」」
思わず、口に出てしまった。すると彼は意外そうな顔をして言った。
「お前も覚えてたんだな!?結局俺はほとんど動けなかったんだけどな......」
そう言って彼は苦笑した。私はその姿につい、クスッと笑ってしまった。
「あ、笑顔。お前はその笑顔がかわいい」
思わず顔が熱くなってしまった。今の私は真っ赤になっているに違いない。
「あと髪もきれいだし、犬と遊んでる姿可愛いし、実は方向音痴なとこもギャップがあって可愛い。」
「な、何で急に!?」
「いや、あの小屋で言えなかったからな。」
そう話す彼の耳は真っ赤だった。全くこの男は...
「そう思ってるならあの時言えばいいじゃない。傷ついたわよ私は」
「お前に傷つくハートなんて...な、何でもないです。」
余計な一言を言いそうになる彼を視線で止める。
「はぁ...じゃあ話すよ。嫌だったんだよ!お前の良いところ他人の前で話すの!たとえ彩たちでも知られたくなかった。なんでだろうな?でも多分薫のことでも同じになると思う......」
.........もう!何なのよ!そんなこと言われたらますます好きになっちゃうじゃない!!ずるいのよ昔っから!無自覚独占欲って、どんどんどんどんうれしくなっちゃうじゃないの!!!
いつの間にか...私の家の前についていた。
「ほら、歩けるか?」
「ええ、ありがとう」
すると彼は目をそらしながら話し出した。
「これはな、こっちに来る前からずっと言おう言おうと思ってて、今日もタイミングをうかがってたんだが今が丁度いいと判断した。」
まさか、告は......
「お前の髪飾り壊しちまった!すまん!!」
なわけないわよね。このヘタレ鈍感が自分からそんなことするわけない。
と、いうか...
「髪飾り?」
「あの俺がネイバーに攫われた日に公園でおばあちゃんにもらったって自慢してただろ?あれがお前らを庇う為に突き飛ばしたときに俺の上着のパーカー部分に引っかかったみたいで...何とか三年は壊さずに保管できたんだが...その...」
しどろもどろになりながら話す彼を見ながら薫に謝る。ごめんなさい。一つ目、私ハチくんを本気で落としに行くわ。二つ目、あなたとの関係が壊れてしまうかもしれない。三つ目......
「いや、あの時は戦闘が激し...んぅ!?」
ファーストキスは、私がもらうわ。
「な、何して......!」
「キスよ。ほっぺにだったらあなた、適当に理由つけて気づかないふりするでしょうから。言っておくけど私、本気だから」
そう言って真っ赤になってるハチくんを残して家に入った。
「こんなの、疑う余地ねーじゃねーか......」
取り残された八幡はしばらくそのままだったという...