剣姫が新しくハマったこと   作:衛鈴若葉

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ダンメモで漫画のイベントがありましたね。
アレをここのアイズさんが見てもアホなことしてんなぁとあんまり気にしないでしょうね。
飛び火してきたらぶちギレるでしょうけど。
基本私は気まぐれでございます。


ロキ・ファミリア

少年を作業場に連れ込んでアシスタント契約を済ませた後。

ホクホク顔でホームへ帰ったアイズを待っていたのはお説教であった。

もう夕日も沈み、月が見える頃だ。

遅い時間に、連絡もなしに、遠征から抜け出して。

怒られる理由としては完全に役満である。

 

「アイズさ…」

 

「ほっとけアホ」

 

「バカ狼と同じ意見なのは嫌だけど、私も賛成ね」

 

「さすがにアイズが悪いよねー」

 

軒並みため息。

何故かこんなアイズにも憧れているレフィーヤも微妙な顔だ。

擁護点は一切ない。

戦闘時は頼りになるのはもちろん、普段もオシャレやいい飲食店に詳しいためよく女子会を開いているの非常に頼りになる少女ではある。

だからファミリア内にも、美貌からファミリア外にも、ファンは非常に多い。

しかし趣味、彼女にとってはもはや本業の漫画や英雄譚になると人が変わる。

英雄譚オタクとも言えるティオナでさえも引くレベルである。

それが祟ってファンは多いが憧れるような物好きは少ないと言えるだろう。

 

「ミノタウロスに襲われてた子を追っかけてったんだよね?」

 

夕食時にそういえば、とティオナが切り出した。

 

「そうだっつったろ」

 

近くにいたベートが面倒そうにそれを肯定する。

執務室でリヴェリアにアイズがこってりと絞られているのが今だ。

目撃者はベートのみである。

 

「なんでそんなことしたんだろーね」

 

ティオナもティオネもベートもレフィーヤも。

彼女が優しいことは当たり前に知っている。

しかし、ノータイムで逃げた少年を追いかけるなどそんな決断をするのだろうか。

確かにそうだと4人は少し考える。

 

「自分と同類だとでも思ったんじゃねぇか?お前の時もそうだったろ」

 

いつも色々と押し付けられるベートが思い至ったように口に出す。

女子組3人はアイズの友達だが、ベートは半ば被害者だ。

あらゆる手段を講じてベートに仕事を押し付けようとしてくるのは彼になにか恨みがあるのかと思えるほどである。

そのせいでアイズの奇行はかなりの数見てきているのだ。

 

「あー…確かに」

 

「どういうことですか?」

 

ベートの発言にティオナが同意した時、レフィーヤがそれに疑問を呈する。

 

「あの子ね。ティオナと会った瞬間に英雄譚好きなこと見抜いたのよ」

 

「会った瞬間にですか!?」

 

「うん」

 

思い出されるのは【ロキ・ファミリア】に入ったティオナとティオネが紹介された時である。

この時、アイズは部屋にこもって作業をしていたためにリヴェリアに連れられて直接連れてこられた。

同年代ということもあり、友人になれるかもしれない。

そんな思いがあったからだろう。

 

部屋から出てきたのは丸メガネをかけたアイズ。

背を丸め、厚着をして、目の下には隈を作り。

初めて遭遇した人種であった。

これまでティオナが会ってきた人間とは、確実にまったく異質な存在だ。

 

迷惑そうに、光を鬱陶しがって、目を細めていた彼女がティオナを視界に入れた瞬間に眼光を強めた。

形相が豹変して、ティオナの肩を掴んでこう言ったのだ。

君、英雄譚好きだよね!?と。

 

「ほんっとーに!驚いたよー」

 

「初対面は最悪だったわね。私なんてしばらく近づかなかったわよ?」

 

「あたしもー。でも何回か話したら友達だね」

 

「俺はただの被害者だけどな」

 

「ほへー…。でもアイズさんはなんで漫画に熱心なんですかね」

 

ベートに関しては同情しかないが、レフィーヤはそこから意識を外す。

ティオナの英雄譚好きはティオネはもちろん、レフィーヤ自身もよく知るところだ。

そんなティオナでも敵わないと言うほどにアイズの知識は深い。

英雄譚に留まらず、物語に関してアイズに一を聞くと百が帰ってくる。

となると疑問に思うのがなぜ、そんなにも熱心に英雄譚や物語に耽ったのかだ。

 

「……?そういえばなんでだろうね」

 

「私も知らないわね」

 

「お二人でもですか…」

 

「…なんで俺を見るんだ。知るわけないだろ」

 

「まあ好きな理由なんてわざわざ聞かないしね」

 

「そーだね。気にしたことないや」

 

「それはそうですけ…まあそうですね!」

 

「テメェはさっさと腕磨け。アイズの補佐でもできるようにな」

 

「あらベート。珍しく素直ね」

 

「うるせえ!色々鬱陶しいんだよ!」

 

「ははは…頑張ります」

 

「お前はポテンシャルあるんだからやりゃできるんだ……。ごちそうさま」

 

「素直じゃないわねぇ」

 

「ツンデレ狼〜」

 

既に食器を返却口に置いていたベートからうるせぇという声が聞こえてくる。

きっと、その顔は赤くなっているだろう。

 

「ま、私もベートと同意見。魔力ならリヴェリアとタメ張れるんでしょ?」

 

「今でもすごいけどさらに成長するともっとすごくなるだろうねぇ」

 

「そんなことないですよ」

 

「あるわよ」

 

「うんうん」

 

「やめてくださいよぉ。今はアイズさんの」

 

「呼んだ?」

 

「おわぁ!?」

 

アイズの声が頭上から聞こえた。

周りに気を割いていなかったレフィーヤはそりゃもう大きいリアクションをとる。

 

「レフィーヤ?」

 

アイズは首をかしげ、少し笑いが起こる。

 

「アイズさんでしたか。驚かせないでくださいよぉ」

 

「呼んでなかった?」

 

「そういうわけじゃないですけどぉ」

 

「何の話してたの?」

 

レフィーヤの隣に持ってきたお盆を置いてアイズは座る。

そして伸びをしたところを見ると、説教からは解放されたようだ。

 

「アイズのこと」

 

「私の?」

 

「噂してたら本人が来た」

 

「へー…」

 

二人の言葉に耳を傾けながら食事にも舌鼓をアイズは打つ。

美味しいと頬を綻ばせるところはとんでもない美少女である。

 

「そういえばさ。昨日何してたの?」

 

「昨日?」

 

「あ、そうね。帰りとはいえ遠征が抜け出したんだもの。助けた子となにしてたの?」

 

「あ、私も気になります!男性なんですよね!?」

 

「英雄譚について私より詳しかったから…アシになってもらった」

 

「え?」

 

3人の動きが止まる。

アイズより英雄譚に詳しい男の子、その事実に固まったのだ。

 

「アイズより?」

 

「詳しい?」

 

「ホントですか?」

 

「うん。英雄譚以外は勝ったけど」

 

それでも、と3人の口から溢れ出る。

英雄譚は特にアイズの得意分野だ。

ティオナは英雄譚を読むために共通語を習得し、幼少の頃からずっと、様々な英雄譚を読んできた。

故に知識量はとんでもないのだが、アイズはそれを簡単に超えている。

英雄譚オタクとも呼べるティオナより知識量が多いアイズよりとんでもない少年。

果たしてどんなやつなんだと身体を震わせた。

 

「でもまあ……そこまでだと逆に心配いらないかも…」

 

「どうしたの?」

 

「いや!なんでもないです」

 

「この子ホントアイズのこと好きね」

 

「そうだね」

 

ボソッとこぼしたレフィーヤの言葉にアイズが話しかけ、そんな2人を微笑ましそうに見守る双子。

なんともまあ、いい光景だ。

 

「アイズさん!」

 

「なに?」

 

「なんで漫画を書いてるんですか?」

 

「なんでって?」

 

「すごく熱心で、どこからその情熱が湧くのかなって。言いたくないなら言わなくてもいいのでっ!」

 

「うーん…」

 

もっきゅもっきゅと少し遅い朝食を食べながら、アイズは考えているようだ。

レフィーヤからの質問は難しいものであるらしい。

 

「大切な人から教えてもらったから…いや、楽しいから。かな?」

 

迷いながら、言葉を紡いだ。

 

「大切な人、ですか?」

 

「長い間、一人ぼっちだった時があって。その時に一緒にいてくれた人…だね」

 

「あららぁ?」

 

「ティオネ?どうしたの?」

 

「いやぁ?ちょっとね」

 

ニヤニヤと、アイズの顔を覗き込んでくるティオネ。

恥ずかしさを感じたのかアイズは目を逸らしていた。

それがピンとくるのはティオネとアイズだけのようでレフィーヤとティオナは顔を見合せて首を傾げる。

 

 

 

 

 

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