「ふわーよく寝た! なんか昨日は異能バトルの末僕の身体が人間のそれじゃない感じだったことに気づきそうになった気もするけど全部気のせいだよねー!」
「なわきゃなかろう」
「現実を見たほうがいいっスよ」
「気のせいではないわ」
「なんでみんな揃って僕を攻撃するの!?」
目の前にいる御命様を見ないふりしたらバチが当たった。ひどい。
しかし、みんな落ち着いてお茶を啜っているが……僕が寝ている間に仲良くなったのか?
「さて、きーちゃん……カンナギさん? が起きたところで話し合いしましょっか」
「……そうですね」
「ちょっっっと待って! 先に、本当はもっと多いけど……とりあえず一つ、質問していい?」
「よいぞ。そこの……御命といったか? 御命もよいじゃろう?」
「ええ」
「あの……なんで前世での知り合いというか家族というか、とにかく前世の人間がここにいるの? 神様だから……?」
「……はい?」
「うーんと、僕は一度死んで今世に浦原喜一として生まれ変わったわけじゃない? なのになんで御命様がここにいるのかがわかんなくて」
沈黙。恥を忍んで厨二全開にも聞こえる質問をしたっていうのに……。みんな『何言ってんだコイツ』みたいな顔でこちらを見てきて非常に気まずい。
これぞ本当の『あれ、俺何かやっちゃいました?』ってか! 言ってる場合か。
「今世……前世? 生まれ変わ……?」
「……何を言っとるんじゃお主は」
「え、え!? なんで? お母さんがわかってくれないのはわかるけど、なんで御命様にわかってもらえないんだ? 触れちゃいけないことだったの?」
「私にはわからないわ……。ごめんなさい」
「あ、謝らないでください! え、でも本当に一度死んで産まれ直したんだけどな……?」
「あー、なるほど! ハイハイようやく見えてきましたよ」
「なんじゃ喜助、急にデカい声出しおって」
「お父さん、わかってくれたの!?」
「ええ、九割ほど!」
喜助さんが扇子をバタンと音を立てて閉じる。それは大抵の場合、区切りをつけたいときだったり頭の整理がついたときだったりの合図だ。
ついに僕の言葉を理解してくれる人が現れた! 現れたっていっても目の前にずっといたわけだけど、心象的には知ってる人たちが急に外国人になったような感じだったから、救世主が今この瞬間現れたのとほとんど同じ気持ちである。
「では御命様サン、ご自分ときーちゃんの正体をズバッと言っちゃってください!」
「……私は純血の吸血鬼で、貴方はその末裔よ。正確には、人と鬼のあいの子だけれど」
「えっと……そう、なんだ」
「なーんかアッサリっスねえ」
「どういう反応していいかわかんないんだよ……」
僕が吸血鬼……いや、ヴァンパイアハーフってやつなんだっけ? だとすると、やはりこの世界は
今思うとたしかに、昔から他の子供より日光が苦手だったし、傷が治りやすいほうだった……のかな? 自分以外の子供を知らないからピンとこないけど……。
……昔から?
「ん、んん? 結局なんで前世の知り合いがここにっていうのはまだ解決してない、よね? それは僕の血筋というか正体というか、その辺とは関係ないし」
「ハア、まーだきーちゃんは勘違いしたままなんスねぇ」
「え?」
「アナタのお父様はアナタをどうやって殺したんです?」
「こう……首を、刀でえいって」
「あのねえ。上半身と下半身が分断されたり腕が切り落とされたりしてもたちまち回復するアナタが、不死身と呼ばれる吸血鬼の末裔のアナタが、首チョンパされた程度で死ぬと思います?」
やれやれ、といった表情で洋画っぽく肩をすくめる喜助さんはめちゃくちゃムカつくけど、それを抑えて頭をフル回転させる。
あのときお父様にされたことは、人間であれば即死間違いなしの純粋な殺害だ。だけど僕は昔から──前世から日光が苦手で、僕の先祖にあたる御命様は吸血鬼。つまり、人間じゃない。
「……もしかして僕、死んでないの?」
「やーっと気づきましたか。いやぁ、みんなわかってたのに当事者だけわかんないんスもん。そりゃ前世とか言っても伝わりませんよォ。人生2回目なのに全然察しよくないっスねー」
「う、うるさいな。まだ15+5年しか生きてないんだからわかんないよ! って、そもそも人生2回目じゃなかったんじゃん!」
すぐ言ってくれれば……いや、どう言われてもわからなかったかもしれないな。
人と会話する機会が他の人と比べて極端に少ない自覚はある。本の中でしか知らないことのほうが体験したことよりもたくさんあって、歳だけとってもわからないことだらけなのだ。
20歳の普通の人の知識や経験と、幼少期を二回繰り返して20年生きただけの僕の知識や経験では質も種類も全然違うってことだろう。
「あれ? なんで僕、赤ちゃんの姿になってたんだ?」
「それは、力を失ってしまったからね。私たちの中には、大きな怪我を負うと現在の肉体を保てずに幼児のようになってしまうものもいるから」
「省エネモードってことなんでしょうね」
「そんな現代社会に即した感じの特性が……!?」