浦原喜一の転生生活   作:わさび醤油

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第十二話:結局そのまま日常は続く

「む。そういえば、どうしていっちゃんは直接言われるまで気付けないくらい死んだと思い込んでたんじゃ? 人間というやつはそんなもんなのかのう」

 

衝撃の事実を知らされて数時間。御命様も交えておやつを食べて落ち着いたころに夜一さんが口を開いた。

 

「ああそれは……とその前に夜一サン。きーちゃんのよく読む本って読んだことあります?」

「え゛」

「ないのう」

「その実に7割が、俗に言う『転生モノ』なんです」

「てんせいもの……?」

「そんなに読んでない!! 5わ……6割くらいだよ!」

「大して変わっとらんぞ」

 

自分で言ってて思ったけど!

しかしなんでこの男は僕のよく読む本を知ってるんだ、図書館で読むだけだからそのときその場にいなければ家に帰ったらわからないはずなのに。

……まさかひっそり隠れて見ていたのだろうか。喜助さんならありえる。家でもよく『これきーちゃんの好きなアニメでしょ?』ってあの人の前で見たことないものを指して言われたことあるし。

 

「転生モノというのは、基本的に平凡な主人公が事故か何かで死んでしまい、気づくと異世界にいるというところから始まる作品の総称っス。生まれ変わった先の世界が知っているものか知らないものかなどは、作品によってまちまちですけどね」

「……なるほど、そういう作品をよく読んでいたから状況把握が早かったということか。それが正解かどうかは置いておいて」

「そーゆーコトっス! ね、きーちゃん」

「ぐぅ……なんだか自分の書いた黒歴史ノートを見られたような感覚」

「昔からそういう本好きだったわよね。変わってなくて嬉しいわ」

「やめて、やめて!! 特別好きなんじゃなくて供給が多かっただけなんだって!」

 

 

 

さて、またしばらくして。御命様と喜助さんがなにやら話をしているので、僕はテッサイさんとお茶を飲んでいた。

 

「テッサイさん」

「はい」

「お父さんとお母さんがお父さんとお母さんじゃなかったじゃん」

「はい」

「自分の子供でもなければ、そもそも2人は結婚してすらなかったじゃん」

「はい」

「だからそうやって呼ぶの、向こうは嫌なんじゃないかなあと思うんだけど」

「そうとは限りませんぞ」

「えー、嬉しかったりする?」

「そうとも限りません」

「どっちなんだよーう」

 

軽く手の甲でなんでやねんしても、テッサイさんの大きな身体はびくともしない。

鍛えたらこうなるのだろうか。家随一の常識人だし実は密かな憧れだけど、たまに真顔でボケるお茶目さんだからわかりづらいこともあるのが少し困る。

 

「どちらとも。直接聞いてみてはいかがですかな?」

「だよねー……」

「なんじゃ、そんなこと気にしとったのか」

「おわっ!? ……そっちが気にしなさすぎなんだよ。僕が初めて名前呼んだときも、下の名前呼ばれたのに『おーなんか喋った』って感じだったし」

「あったのうそんなことも。あのときは儂も一応驚いとったんじゃぞ、あの程度の子が喋るなんてありえんからの」

「えっそうなの!?」

「喜一殿は立ち上がるのも歩くのもかなり早かったですぞ」

「それで『こやつ普通の赤ん坊ではないな』と確信したくらいじゃ」

「そうだったのか……。恥を忍んで赤ちゃんのフリしてたのに」

「あれでか」

「あれでですか」

「2人とも酷いよ!!」

 

結局、2人とも気にしないだろうから好きに呼べという結論になった。解決してなくない?

うーん。じゃあ2人のことは名前で呼ぶことにするか。

てっきり転生してこの世界にはもう前のお父様とお母様はいないものだと思っていたけど、実際はまだあの村にいるのだ。

あの人たちこそ僕の両親。……なんて、別に他人を父や母と呼んだって本当の親の存在がなかったことになりはしないから、単なる僕の気持ちの問題である。

殺されかけはしたものの、お父様とお母様を嫌いになったわけじゃない。なんか謝ってたしきっと事情があったんだろうから。

 

 

 

 

「隠しごととは感心しませんねぇ」

「なんのこと?」

「まだ言ってないこと、いくつかあるんでしょう? 例えば()()()()()()()()()()()()()()()、とか」

「……頭がいいのね。でも、その言葉は自分にも返ってくるはずよ」

「なんのことっスかねえ」

「貴方がそれでいいならいいけれど。なんでもそうやって放っておくと、痛い目を見るわ」

 

──私のように。

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