浦原喜一の転生生活   作:わさび醤油

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第十三話:複雑な家庭になってしまった

「あの、御命サン」

牡丹(ボタン)でいいわ」

「え?」

「私の真名よ。御命様というのは村人からの呼び方で、本名は別にあるの」

「御命様、教えちゃって大丈夫なんですか? 僕たち一族しか知ってはいけないって聞いたんですけど」

「信仰している神様が本当は普通の人間みたいな名前だって知ったら幻滅してしまうから教えなかっただけなの。聞かれなかったしね」

「そうだったんだ……」

「意外とドライっスね……」

 

初めて知る事実に、喜助さんだけでなく僕までうへえと顔を歪める。しかしたしかにキリスト教の教祖が山田太郎とかだったら人間らしすぎて嫌だし、実際有効な小技だったんだろうなあ……。

 

「では、牡丹サン」

「何かしら」

「なんで我が物顔でここに座ってお茶飲んでるんスか?」

「私はこの子の近くにいる権利があるもの」

「そうっ……スね」

「諦めるな喜助!」

「いやでも……冷静に考えると我々は他所様のお子さんを勝手に拾って育てていたわけで……」

「思い出せ、お主は昔から非常識なマッドサイエンティストだったじゃろが!!」

 

大人の話に口を挟むのもどうかと思って思考を別のところに飛ばしていたら、いつの間にかヒートアップしていた。

喜助さんは胸を押さえてダメージを受けているし、御命様はそっぽを向いてお茶を啜っている。夜一さんに至っては、鋭い爪と歯が見える気までしてくるほど必死の形相で喜助さんを揺さぶっている。

 

「これどういう状況?」

「一言で言うのならば……牡丹殿と浦原商店での喜一殿の親権バトル、でしょうか」

「テッサイさん、もしかして楽しんでる?」

「はい」

「そっかー……」

 

「大体お主、今までの住処はどうしたんじゃ。仲間とかおったじゃろうが」

「いないわよ。それに、そちらだって私がいないと困るんじゃないかしら」

「困る?」

「観察対象でしょう? 純血の吸血鬼は」

「……やっぱり、知ってたんスか」

 

観察対象……? ああ、マッドサイエンティストだからか。

おおよそ、血を飲ませたりなんだりも検査というか実験というかのためだったんだろう。ちょっと腕もぎっても生えてくる便利な身体、研究者としては気にならないわけがない。

と、思っていたところで僕に話題が降ってくる。

 

「ところで、きーちゃん……カンナギでしたっけ? 彼にも真名が?」

「カンナギは本名ではないけれど、真名はまだないわ」

「代々大人になったら、というかカンナギの後継者が見つかったら名前をもらえるんだよ。カンナギってのは神様に仕える人で、僕の前はお母様がやってたんだ」

「代々といっても、まだこの子で3代目だけれどね」

「ということは牡丹サンも最近の神様だったんスか。結構新しい宗教なんですねぇ」

「ううん。御命様はもう何百年も神様のままだよ?」

「……牡丹サン、何歳っスか?」

「女性に年齢を訊くのはタブーではないかしら。……そもそも、年齢なんて忘れてしまったけれど」

 

うーん、よく考えると何百年も生きている御命様の血族が人間なわけがないんじゃなかろうか。『かみさまだからあたりまえだよなー』とぼんやり思っていたが、なんで今まで気づかなかったんだろう。

吾輩はアホである、名前はまだないって感じだ。

しかし、いつまで話をする気なのだろうか。未だに3人はよくわからないパワーバランスでなにやら言い争っているが……。

 

「……そろそろ図書館行っていい?」

「行ってらっしゃい」

「一緒にはいかんのか」

「外に出たら燃えてしまうわ」

「えっそうなんスか!? 燃えカスいただいても?」

「あげないわよ気持ち悪い」

「癪じゃが同感じゃな。喜助は急に気持ち悪くなるときがある」

「これはまた嬉しくない意気投合っスね……」




登下校中に文章書いてるもんだから春休み入ると全然書かなくなっちゃいますね。
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