浦原喜一の転生生活   作:わさび醤油

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第三話:浦原喜助の独白

我輩の息子は吸血鬼である。名前は喜一。

……この出だしよりは、『アタシ元死神の喜助。こっちは吸血鬼で息子の喜一』のほうがよかったっスかね?

なんて、夜一さんにどうでもいいわと一蹴されそうだ。そもそも、喜一はボクと夜一サンの実の子ではない。拾い子である。

 

吸血鬼。

人の血を糧として生きる化け物。日光や流れる水に弱く、人ならざる力を持つ。また、魅了や変身能力を持つ個体もいるとされる。

ただの伝承、作り話だと多くの人々は考えているようだが、そうではないことをボクは知っている。

何百年も前に、他でもない死神が滅ぼしたのだから。

 

 

 

昔々あるところに、死神たちがおりました。いつものように現世に降りて虚を倒していたら、なにやら男が暴れているのを見つけます。

 

『何をしているんだ!』

『なぜ人の血を飲んでいるだけなのに捕らえられなければならないんだ』

『お前だって人だろう』

『何を言っている。俺は人じゃない』

 

男は自分をこう呼びました。

吸血鬼、と。

バランスを重んじる死神は、上司に相談しました。これでは世界は吸血鬼に滅ぼされてしまう、と。吸血鬼と名乗る男はあまりに強かったのです。

出された結論は、吸血鬼を殲滅するというものでした。こうして、各地に散らばっている吸血鬼を探し出し、殺し、数十年後には目標は達成されたのでした。

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

最近の子はほとんど知らないが、ボクたちの世代で聞いたことのない者はいないほど有名な実話だ。実際に、過去の資料を見ると『吸血鬼殲滅作戦』『死神40人が吸血鬼1人に挑み壊滅させられた』というような吸血鬼の存在を証明する記述がいくつもある。

ボクが死神になる前の話であるため吸血鬼という存在に遭ったことはないものの、入隊したての頃はまだ殲滅が完了したかわからないから万が一見つけたら戦わずすぐに報告しろと口酸っぱく言われたほどだ。

それが、目の前にいる。

吸血鬼とヒトを見分けるのは簡単である。目の色が血のように赤い、鋭い牙がある、日光に当たると燃える。

喜一もまた、真っ赤な目や未熟ながら鋭い牙を持っていた。吸血鬼としての能力が弱いのだろうか、日光に当たっても目に見えて燃えることはなかったようだが、明らかに人間が日焼けした程度の痛がり方ではなかった。極めつけに、鏡にぼやけて映るその姿。

吸血鬼とみて間違いないだろう。

 

ある日の夜明け前に赤子がゴミ箱から這い出たまま寝ていたのを見つけ、この家に連れ帰った。霊圧が強く独特だったためだ。さらには日の出とともにうっすら肌がチリチリ焼けているように見えたのだから保護するほかない。

育ててみたら育ててみたで、言葉も喋れない頃からこちらの言葉がわかるような素振りをしはじめた。身長などはむしろ低い方だが、同年代と比べて言語野や行動の発達が著しい。何か隠しているのか一人で考え込む様子も見受けられる。

以上のことを踏まえて夜一サンやテッサイと話し合った結果、あの子供は変身能力であの姿になったと仮定した。

乳児の姿になった理由は、恐らく油断させるため。

過去に死神が吸血鬼に苦戦したのは、言葉がわかるからだと教わった。人と吸血鬼は共存できると爽やかに言った吸血鬼が次の日周囲の人間を吸い尽くしていた事例は多数報告されている。

それ故に、吸血鬼の言うことやることはひとつも信じてはいけないというのが中堅〜ベテランの死神の常識だ。ボクたちもそれに則って動くほかないだろう。

 

喜一は騙せていると考えているのか、人間程度簡単に殺せるから慢心しているのか、吸血鬼であることを隠そうともしない。死神と人間の区別もつかないとなると吸血鬼の中でも弱い血統なのかもしれない。

一応ボクたちの名前を使って名付けたが、それで吸血鬼としての力を抑えられているかすらわからないのだ。相手のことなど何もわからない。ボクたちだけで今のうちに殺すことも考えたが対吸血鬼戦を経験していないためそれは得策ではないだろう。

今後しばらくは観察するにとどめよう。

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