浦原喜一の転生生活   作:わさび醤油

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第四話:おさんぽ!(挿絵有)

大体こんな生活を送ってしばらく。

 

「お、今日は早いっスねきーちゃん」

「おはようじゃ、いっちゃん」

おあよう(おはよう)、おとうさん、おかあさん」

 

僕は立つことも喋ることも少しならできるようになった。

転生して半年のことである。

人間の成長って早いんだな……。いや、立ったり喋ったりという経験があるから早いだけなのか? 普通の人は三年かかることだったらどうしよう。

夜一さんも喜助さんも若干鋭い目で見ている気がするし、もっと子供っぽく振る舞わなければならないか。

 

「いつも言ってるけど、アタシのことはパパって呼んでくれていいんスよ?」

「うーん、それはちょっとやだ」

 

喜助さんがそうっスか……と肩を落とす。が、あんま知らん人をパパと呼ぶ勇気はない。元々父親のことはお父様と呼んでいたので、お父さんでも違和感バリバリなのだ。

喜助さんと対照的に、夜一さんはお母さん呼びでも名前呼びでもなんでもいいらしい。最初頑張って言葉を喋ろうとして『よぅいちぁん(夜一さん)』と言ったときも『おお、今の儂の名前か!? 喜助ー! 喜助ー! いっちゃんが喋ったぞ!』と喜ぶだけで、名前を呼ばれたことは気にしてなかったようだった。

 

そういえば、この半年で別の気づきもあった。

僕のは、転生前と転生後で見た目が変わらないタイプの転生だったらしい。黒髪なのはわかっていたが、鏡のぼんやりした像を見たら顔立ちも前世と同じようなものだった。つまらん、緑髪とかになってみたかったのに。

そして、特殊能力系の世界観ではないことも気づいたことの一つだ。

外出ても戦う描写はないし、喜助さんも夜一さんも胡散臭い格好ってだけで特に能力を使う感じではなかった。戦いが身近にある世界よりは青春満喫〜みたいなものに憧れがあるのでありがたい。……ありがたい?

 

「じゃあ今日は久々に散歩に行くか!」

「うん!」

「ちゃんと帽子被るんスよ〜」

 

ご飯を食べ終わったまったり時間、夜一さんがすっくと立ち上がってそう言った。

散歩は好きだ。あのクソ田舎と違って、建物がたくさんあるこの街は目新しいの連続なのだ。

ドアを開けかけたとき、喜助さんに大きい麦わら帽子を渡された。危ない危ない。日差しは幼児の天敵とはよく言ったもので、なんの防具も身につけず散歩に行ったときえらい目に遭って以来ちゃんと帽子をすることを心に誓ったのだった。

 

「行ってらっしゃいませ」

「い、いってきます。てっさ……おにいちゃん?」

「テッサイでよろしいですぞ、喜一殿」

「……わかりました。いってきます、テッサイさん」

 

デカい上に属性盛りすぎのテッサイさんに少し苦手意識はあるが、唯一僕の今の名前をちゃんと呼んでくれる貴重な存在である。だからサービスだ! と思ってお兄ちゃんと呼んでみたが、表情は一ミリも変わらなかった。僕の心は折れた。

 

 

「いっちゃん、楽しいか〜?」

「うん! きょうはあっちいきたい」

 

夜一さんの腕の中で指差す方向はデパート。夜一さん曰くここいらではそんな大きくない部類らしいが、大きくて二階建ての建物しか見たことのない僕には地下があるだけでお城だ。

現在、昨日はコンビニ、一昨日は公園と、本で読んだことはあるが実物は知らない場所を毎日の散歩で聖地巡礼のごとく巡っている。既に、アイス売り場の近くは寒いとか、他の人のショッピングカートとすれ違うのは難しいとか、やはり本では補えない知識はたくさんあることを知った。

面白い、面白すぎるぞこの世界。

 

「うーん、疲れてきたのう。なんか食べて帰るか」

「かいぐい?」

「そうじゃ。買ってすぐ外で食べるアイスは格別じゃからの」

「……おとうさんにおこられない? おなかいっぱいになるなって」

「あー……。ま、まあ黙っとればバレんじゃろう」

 

夜一さんはこほんと一つ咳払いをして、結局棒アイスを2本買った。あーあ、また喜助さんに勝手におやつ与えないでくださいって怒られてしまう。

なんて、そんな考えもひんやり美味しいアイスの前では一瞬で崩れ去る。頭の中はもう美味しいしかない。この口の幸せ感で、暑い帰りの道のりも乗り越えられるというものだ。……帰りも夜一さんに抱えられることになるけど。

 

こうして、僕の日課である散歩は今日も無事に終わるのだった。

あー、早く学校始まらないかな!




お出かけのときの喜一はこーんな感じ
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