浦原喜一の転生生活   作:わさび醤油

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第八話:びじんのおねーさん

喜一が夢を見たという。

(自分ではない別の父親が出てきた時点で、か細く残っていた『喜一は生まれてすぐ捨てられ、直後我々が拾った』という説はさっぱり忘れていいものになった。)

多分あの夢は幼少期の出来事そのままの夢ではないか。父親に首を落とされるも死にきれずに何百年と生き続けた、というように。

そう思い、喜一が不機嫌そうに起きたとき「怖い夢見ちゃいました?」と聞くようにした。少しでも情報を集めるために。吸血鬼を恐れるのはそれの生態がわからないから。確実な殺し方さえわかってしまえば恐れることはないのである。

喜一が語った夢たちの概要はこうだ。

 

①神社の生まれで、父親に殺される

②ゾンビで溢れる学校で逃げ切ろうとするも噛まれる

③強盗と格闘するが本気を出せず負けそうになる

④坂で走っていたら止まらなくなる

⑤階段が途中からなくなり、決死の覚悟で跳ぶ

 

「絶対ほとんどがただの夢じゃろうな」

「どれも妙に設定が凝っててそうとも言いづらいんスよね」

「最悪なのは全部ただの夢でしたオチじゃが……」

「それもあり得ますねえ……」

 

しかし、この少ない手がかりを逃す手もない。

一番まだそれらしい①を深掘りしていくことにした。何も情報がないが、本人にそれとなく聞いたり信仰宗教があったところを調べたりはできるだろう。

ねえ、アナタは何者なんですか。

口に出すわけにはいかない言葉を、今まで何度も問いかけようとした言葉を、心の中で呟いた。

 

 

 

さて、ときは変わっておよそ1週間後の深夜。浦原商店から大して離れていない木の生い茂る山で──ボクは、吸血鬼に遭遇した。

 

「どちら様でしょうか」

 

見た目は背の高い女性。長く美しい黒髪をもち、この現代日本には珍しく着物を見事に着こなしている。顔立ちは人形のように整っており、真っ暗闇のなかでただ一つ宝石のように輝く赤色の瞳からは何も読め取れない。

背筋が凍る霊圧を放つ一方で、発せられた声は心地よい低さだ。

 

殺気は感じない。思わぬところで出遭ったとはいえ、今は家で寝ているだろうあの子供について聞くいい機会じゃないか?

 

「いやぁ、怪しい者ではありません。アタシは画家でね、夜こそ素晴らしい絵が描けるんじゃなかろうかと被写体探しをしてたんスよ」

「そうでしたか。絵で生計を立てるのは大変だと聞きました」

「えぇえぇ! うちにも一人やんちゃ盛りの息子がおりまして、養うのでやっとっス」

 

自分のことではあるがよく舌が回るなと思いながら話していたら、子供の話題をした瞬間に目の前の女性が少し動揺した。

 

「……家族はすぐに離れ離れになってしまうものですから。どうか大切にしてあげてください」

 

そう話す彼女の伏せられた目には、涙が浮かんでいるように見えた。

吸血鬼はバランスを大きく変えてしまう危険な存在ではあるが、彼らにも人間と同じように家族がおり、人間の言葉を解し、生活している。

曲がりなりにもバランサーである死神として、吸血鬼が存在するだけで生まれる害に目を瞑ることはできない。それでも、もっと何か共存できる方法があったのではないか。

今更こんなことを考えたって、すでに吸血鬼はほとんど絶滅しているから仕方のないことではあるが。それに、自分が当時指揮を取る立場でも殲滅という方法を取っていただろう。滅却師が魂のサイクルを止めてしまう存在ならば、吸血鬼は魂のサイクルを非常に早めてしまう存在と言えるのだ。

……基本的にバランサーとしての立場を重んじているつもりだったが、いつの間にか情の存在が無視できなくなっている。情と論理が殴り合っているみたいだ。

最優先事項を思い出せ。

『吸血鬼の生態を隅々まで探る』……ヨシ!

 

「……あれ」

 

ボクとしたことが、会話していたにもかかわらず黙って考え事をしてしまっていたらしい。周りも見えていなかったようで、例の女性は忽然と姿を消していた。

またとないチャンスだったのに勿体ないことをした。まあ、ここを根城にしているなら何度か通えばまたばったり遭遇することもあるはず。今日は吸血鬼の生き残りは他にもいたという情報が得られたのでよしとしよう。




「浦原さんとかの大人の視点と主人公の視点、どっちがおもろいとかあります?」みたいな投票式のアンケしたかったのにやり方わからんくて詰みました。わかったらやると思います。そのときはよろしくな!
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