姫野を味方に付けた翌日の放課後。俺と姫野と神崎と一之瀬の4人は職員室に来ていた。
「失礼します。星乃宮先生はいらっしゃいますか?」
「はいは〜い。ん?4人も来てどうしたのかな?」
「話の内容的にできればどこか個室とか行きたいんですが、いいですか?」
「いいよ〜。じゃあ…進路相談室に行こっか。」
「はい、ありがとうごさいます」
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「それで?話って何かな?」
そう言いながら手で座るように促す、星乃宮先生。右から一之瀬、神崎、俺、姫野。クソッ、両手に花にはならなかったか。
「今日はSシステムについて答え合わせに来ました。」
なんで答え合わせなんかしようとしてるかというと、交渉する前にどれだけSシステムについて熟知しているかを開示し、口止め料を多くさせる為だ。
ついでに、俺たちは入学して1週間。かなり早く動いたと思う。
原作でそもそも口止めとかしてないので、よく分からないが、入学してからの期間が短ければ短いほど口止め期間が長くなり口止め料が増えるのでは、とも思っている。
「うーん、答えられないこともあるかもよ?」
「ぶっちゃけ大事なのはそこじゃ無いので問題ないです。」
喋る前に深呼吸をする。ちゃんとした交渉なんて生まれて初めてだからな。まあ、ちょっと前まで普通の高校生だったし、当たり前か。
「まず、この学校が月1日に生徒に配布するポイントは生徒1人に付き10万ポイントではありませんよね。額はクラスの授業の態度などによって減らされていく。クラス毎のポイントがそのままクラスに連動しており、Aに近くなるほどポイントが高くDに近くなるほどポイントは少ない。また、この学校で得られる就職率、進学率100%の恩恵を受けられるのは卒業時にAクラスだった生徒だけ。……どうでしょうか?」
俺は顔を上げる。話している内に無意識に下向いてた。やっぱ緊張するわ。
星乃宮先生を見ると目を見張ってた。まあ、そうなるわな。ポイントの変動だけじゃなくてAクラスの恩恵まで気付くって、本来だとヤバすぎる思考回路だ。
「…よく…気付いたね、そんなに…。えっと…ね、えっと…」
引くなよ。俺自身がそこまで見抜けた訳ではないんだから。
「先生、むしろ本題はこれからですよ。俺たち4人は来月までにSシステムについて口外しないので口止め料を下さい。」
そう。大事なのはこれからだ。
だって「えっ?口止め?しないよ。好きなだけクラスに喋れば〜?」
とか言われたら、もうクラスに喋るしかなくなる。え、別によくない?って思うかもしれないけど、BクラスならSシステムのことに触れなくても一之瀬が「皆、授業しっかり受けよう!」とか言えば授業態度はある程度良くなる筈だ。つまり、この口止め料は完全にボーナス。あれ?そう考えるとそこまで緊張しなくなってきたかも。
てか、先生ずっと黙ってる。なんか喋ってよ。怖いだろ。
「この学校は自主性を重んじてますよね。個人が何でも気づいて皆に教えることになったら、その生徒以外成長しないのでは?それは学校として不味くないですか?」
そうかな。星乃宮先生を説得する為に適当に論を出しただけなんだけど、自分で言っていながら疑問を感じる。凄い簡単に言えばただの情報共有でしかない。社会でも大事なことだろ、俺高校生だから知らんけど。
「星乃宮先生、もし口止めする必要がないとしてもですよ?この学校は実力で生徒を測るんですよね。たった1週間足らずでSシステムの全容を知ったこの情報収集能力や観察力、考察力は評価するべきではないのですか。そういう意味では報酬としてポイントをくれても良くないですか?」
元々答えを知っていたのにこんなセリフ言うとか卑怯すぎるなぁ。
「…分かったわ。4人にはポイントをあげる。…それにしても凄いね!こんなに早く気づいたの歴代でも現生徒会長の堀北君ぐらいじゃないかな。それにあの子もここまでは深く気づいては無かったと思うし。気づいたのはやっぱり服部君?それとも一之瀬さん?」
「服部君です」
一之瀬がそう答える。でもそれ、悪手じゃないか?ポイントをもらう理由が口止めじゃなくてSシステムにいち早く気付けたことに対する報酬になってしまったら、俺以外貰えない可能性があるぞ。
「ねえ、服部君。どうやってSシステムの仕組みに気づいたの?」
「普通に監視カメラとか無料コーナーとか見て気づきましたね。」
「それでもなかなか気づけるものじゃないよ。」
「早く契約の方をお願いします」
「も〜。せっかちな男はモテないよ」
うるせえ。俺がモテないのは、顔と運動神経が良くないせいだ。大学行って社会に出れば、持ち前の頭の良さで高学歴高収入になってモテる筈だから今は関係ないんだよ!(必死)
そんな心の現実逃避を無視して、星乃宮先生が紙とペンを用意する。
「じゃあ、契約内容は
『服部春秋、一之瀬帆波、神崎隆二、姫野ユキ。以上の4名は5月1日までSシステムの仕組みについて一切の言及を禁じる』
『4名には50万ポイントを渡す』
でいいかな?」
「50万ポイント?!」
「そんなに貰っていいんですか?!」
安心しろ。一之瀬、神崎。50万なんか1年後とかには端金になるから。龍園なんか月に約80万も貰ってるぞ。葛城手に入れる為に契約破棄したからもう過去の話だけど。あっ、まだ未来の話か。ややこしいな。
「まあ、ちょっと多いかもね。でもその50万は皆に対する期待も乗せてその額だから」
いいのか〜そんなことして〜?と思ったけど、担任はできる範囲でクラスの味方をするのが普通か。茶柱が異常なだけか。
「へぇ〜ありがとうございます。あと、契約内容は問題ありません」
「オッケ〜。じゃあ、契約成立ね。50万送るからちょっと待ってね。」
先生はそう言って学生証?を操作する。モノとしては多分学生証と同じなんだろうけど、果たして教師用の学生証を学生証と呼んでいいのか。
そんなくだらないことを考えてると、俺たち4人の学生証に通知が届く。見ると50万ポイント振り込まれていた。これで俺のポイントは865600。
「イェーイ!」
そう言って隣にいる姫野とハイタッチしようと手を挙げる。チラッとこっちの方を見た姫野は、
「うっざ」
と言いつつもハイタッチしてくれた。このツンデレめ。
「イェーイ!」
反対にいた神崎と、神崎越しに一之瀬ともハイタッチする。
「ああ、そうだ。一之瀬」
「にゃにかな?」
「週明けからクラスメイト達の授業態度が悪くなったら注意してくれ。ただし、Sシステムについては一切触れないようにな」
「え?でもそれって」
「問題無い。Sシステムには一切触れないのなら契約には反していないからな。一之瀬はあくまで皆の授業態度が悪くて授業に集中できない時に文句を言うんだ。一之瀬は他人に遠慮するような人間じゃ無いからな。」
作った設定をペラペラと喋っていく。こんな簡単に契約の穴がつけてしまうのは問題かもしれないけど星乃宮先生は悪くないだろう。当たり前だ。だっていくら契約でも行動の全てをコントロールする訳にはいかないからだ。
「で、でも……」
「やれ。契約の穴を上手く突くのも実力だ」
バレないように暴力を振るうのも実力。証拠がないのをいいことに事件を捏造するのも実力。他人の過去を暴いて追い詰めるのも実力。
まったく酷い学校だぜww
「現に星乃宮先生も苦い顔をするだけで何も言ってこないだろ?」
俺がそう言うと、3人は一斉に星乃宮先生を見る。星乃宮先生は更に顔を顰めたのだった。
星乃宮先生からポイントを貰った翌週。
週明けの学校が憂鬱なのは前世もよう実世界も変わらない。早よ特別試験来い。
登校すると、一之瀬が壇上に立って皆に向かって授業を真面目に受けるように言ってた。
これで少しはクラスポイント増えたらいいな。
まあ、本番は特別試験始まってからだしあんまり現時点でのクラスポイントは気にしてないけどな。
俺は自分の席に向かう。そこで俺はとあることに初めて気がついた。
「あれ?俺の隣の席って姫野だったんだ」
よう実って特別試験ばっかだし、授業とかどうでも良くね?みたいに考えてたせいで周りが誰か確認すらしてなかった。
「気付いてなかったの?」
「悪いな」
「……あんたってさ、なんか抜けてるとこあるのね」
隣の人把握してなかっただけでそこまで言う?
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