何でも出来る便利な個性:数学で送るハーレムライフ 〜シリアス添え〜 作:きかじひ
「なんで⁉︎」
リンゴを斬られたロボットが火を噴いている。
彼女に端正な顔が歪む。
「どうしてなの?ちゃんとリンゴだけを斬ったはずなのに……」
そう、彼女はリンゴだけを斬っていた。
到着したオレは個性を解除し、スケートボードを脇に抱える。
「見てたぞ。おそらくリンゴを破壊すると、ロボットが半壊するように作られていたんだ」
「そ、そんな説明なかったじゃない…」
「確かに。だが、質問をするチャンスはあった。深く考えなかったオレたち受験生の落ち度だ」
「じゃあ、リンゴを傷付けないようにすれば良いわけね」
「そうなるな。試してみるか」
オレたち2人は横に並び、ロボットたちの方を向く。
「ねえ、何が出来るの?」
「オレの個性は“数学”。やろうと思ったことは、なんでも出来る。あんたは?」
「また、あんた呼ばわり……私は、水流風香。個性は“流体”よ。よろしくね」
「オレは氷城風樹だ。よろしくな」
「あのロボットたち、止められる?」
「うーん。ある程度広さもあるし、30秒程度なら」
「十分よ」
「なら、任せときな。合図するからよ。“円のベクトル方程式”、“循環小数” 発動」
“循環小数”
突然だが、1÷7の答えを知ってるか?
そう、0.142857142857…の小数点以下の部分が繰り返すんだ。
つまり、循環小数というのは、ある桁から繰り返しになる小数のことなんだ。
この話の繰り返しという部分から、「範囲内にいる対象の数」÷「範囲を決めるまでの時間(秒)」×10 =「拘束(繰り返し)時間(秒)」という効果を生み出した。
ちなみに、単位計算バグってるとか、小数にならないじゃん、とかのツッコミは野暮だ。出来たんだから使ってるんだ。
閑話休題。
今回は、ロボットは9体。
ちなみに、範囲を決めるまでの時間とは、対象の周囲を1周するまでの時間だ。
スケートボードに乗り、“円のベクトル方程式”を制御しながら1周する、きっかり3秒。
「今だ、風香‼︎止まっている時間は30秒だ‼︎」
「馴れ馴れしい。風香さんでしょうが‼︎」
ローラーブレードを履いた風香が空を走る。
マジで、走っている。“流体”で固めてるのか?
「受け取ってよ?」
ロボットの頭上にあるリンゴを傷付けないようにそっと手に取る。
手に取る瞬間、まるでリンゴが取られたがっているかのように、ロボットから自然と離れる。
「あら、簡単に取れたわ」
と言うと、オレに渡し、次のロボットへ。
そうして、オレたちは9個のリンゴを獲得した。
「ありがとう」
「こちらこそ」
「さて、リンゴの分配はどうしようかしら」
「うーん。これからもロボットに遭遇するだろうし、とりあえず持って歩けば良いんじゃないか?」
「モブ共、試験会場で仲良しゴッコとは……」
ババババババ
連続した爆発音と共に、不意に声がかけられる。
「テメエら、プロ舐めてんのか?あぁん?」
“円のベクトル方程式”ってのは、円を描く移動をすること。
良い名前のアイデアあったら、教えて下さい!
ちなみに、“単位ベクトル”は真っ直ぐ進む移動をすること。