何でも出来る便利な個性:数学で送るハーレムライフ 〜シリアス添え〜 作:きかじひ
「あぁん?」
ダイナマイト。
正式なヒーローネームはもう少し長い。
が、短く呼ぶ人の方が圧倒的に多い。
そんなことはどうでもいい。
インゲニウム、ショート、あと1人くらいは、と想定していたが……これは、最悪の想定に近いな。
「どうして、ダイナマイトが⁉︎」
「インゲニウム、ショートと来れば、もう1人くらいヒーローがいてもおかしくはないさ」
と話していると、
「“閃光弾”」
ダイナマイトの掌が光る。
「どうした?戦場で≪敵≫は待ってくれないぜ」
しまった。プロヒーローの登場とあって、風香との会話に気を取られた。
「リンゴが2人で9個だってな。壊したの入れりゃ10個だ。少しは楽しませてくれよ‼︎」
ダイナマイトが掌から放つ爆破を利用して、接近してくる。
「オラオラオラ‼︎」
オレと風香が後退する。
その時、
『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』
『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』
『タスケテ』『タスケテ』『タスケテ』
と9体のロボットから、音声が鳴る。
どういうことだ。ロボットは≪敵≫じゃないのか?
「ヒーロー様よォ。助けを求める声が聞こえねえのか?逃げ続けて良いのかよ?」
ダイナマイトの猛攻は続く。足技を中心に襲いかかってくる。
「くっ」
「速いな (“アキレスと亀”を発動するタイミングが……)」
おそらく手加減はされている。ダイナマイトは、直接攻撃としては個性を使ってこない。にも関わらず、防戦一方だ。
流石に、学生時代に個性大戦を経験してないってことか。
ダイナマイトの猛攻を避けつつ、風香に話しかける。
「風香。オレを信じてくれるか」
「ここまで来て1人で逃げ出さないわよ」
「ありがとう、その言葉で十分だ。これから個性を発動する」
「何をするの?」
「簡単に言えば、状況を細分化することが出来る。ロボットは任せた、ダイナマイトは任せてくれ」
「分かったわ」
「行くぞ、“行列”発動」
“行列”
言うまでもなく、有名店に並ぶ時の行列ではない。
数学の行列だ。
連立1次方程式ってのは聞いたことあるだろ?
行列ってのは、その数字と文字を分けて考えて、数字の方だけを四角形の形に配置して考えることで、方程式の答えを簡単に求めようって考えだ。
厳密には、そこから始まる壮大な物語なんだけどな。
そして、四角形に配置した際には、横のまとまりに見ていた数字を、縦のまとまりとして見ることがある。
現在の状況で言えば、『ロボットとダイナマイト』と『オレと風香』というまとまりを、『ロボットと風香』と『オレとダイナマイト』というまとまりとして見たってことだな。
さて。
どうなるかというとーー
「行かせるかよォ‼︎」
ダイナマイトが風香に迫る。
その爆風で加速した足技が、風香のローラーブレードを狙う。
「“風……」
「そのまま進め‼︎風香」
「⁉︎ 分かったわ‼︎」
「何をゴチャゴチャと、言ってやが……る⁉︎」
間違いなくダイナマイトの足技はローラーブレードを捉えていた。
しかし、その一撃は何も破壊することなく、空振りしたのだった。
いよいよラストスパートです!