異世界ライフは魔女と共に~魔女の嫁として送る、久遠のTS百合生活~   作:オサカナ

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31話 お墓参りにて

「面白かったね」

「よかったですね~」

 

 ぞろぞろとした人の流れに混じり、映画館から出る僕たち。

 近頃話題だというアニメ映画を見に来たわけだが、その前評判に違わない面白さだった。

 

 家を出てから服を見て回ったり、雑貨店に行っていろいろと買い物したり、こうして映画を見たり、結構行き当たりばったりのプランではあったが、なかなかに満足できる時間。

 そしてそれはセシルさんも同様の気持ちのようだ。

 

「なんか私のリクエストばっかりになっちゃったから、今度はレンちゃんの行きたいところでいいよ」

「そうですか? でもちょっと時間が中途半端か……」

 

 時計を見ると、時刻は午後二時をちょうど回ったころ。お茶でもしようかと思ったが、微妙なところだ。

 それなら少し予定を変更して……

 

「じゃあ夕方ごろでもいいかと思いましたけど、先に行きましょうか。そうすれば時間もちょうどよくなるでしょう」

「了解っと」

 

 

 

「お母さんから聞いた話だと確かこの辺だったよね」

「そうそう、何とな~くですけどやっぱり見覚えありますね。もう少しだったはずです」

 

 そうしてバスに乗り、僕たちが今日初めて明確な目的地として向かった場所、それは町の外れに位置する墓地だ。

 これから行うのは無事を報告するためのご先祖様への、そして僕自身への墓参り。今日が僕の命日というわけでも全然ないのだけれど、せっかくこちらに来たんだから一応行っておこうと思って、母さんから詳細な場所を聞いて、二人でここまでやってきた。

 

 もちろん僕もここに来るのは初めてなんてことはなく、先祖のお墓参りに子供のころから何度も訪れているので大体の場所は把握してる。

 水が入った手桶とひしゃく、線香を持ち、こうして歩いていると子供のころはお盆のお墓参りなんて面倒なイベントで、終えてからおばあちゃんや両親と行きつけのお店であんみつやらを食べ、その後おもちゃ屋やゲームセンターなんかに連れて行ってもらうことがむしろ楽しみだったと考えていたことを思い出す。子供だから仕方ないよね。

 

 それに人が死んだらこの中に入るなんて、親に聞かされても現実感がなかった。中学に入る頃おばあちゃんが亡くなって、それからなんとなくそういうものだとわかった。

 そして今は昔の自分があの中にいて……さらにはそこに行くなんてなあ。

 

「確かそこ曲がって……ちょっとそっち側見てみてください」

「はいはい」

 

 墓地には多くに家系のお墓があり、なかなかに入り組んでいる。大まかな場所はわかるといっても、さすがにここだという明確な位置までは覚えていないので、一つ一つ見ていくしかない。

 

「あれ、ここらのはずだけどな……あっ」

「どう、見つけた?」

「見つけましたけど……」

 

 二人で手分けして探していた僕たちだったが、少ししてようやく我が家の墓を見つけることができた。

 しかし僕は一度、ここを通りかかったときそのお墓を見逃してしまっていた。結構注意深く探していたつもりだったが、そんなことをしてしまったのはある予測していなかったことがあったからだ。

 

「……えっ! ああ、すいません。こちらのお墓にご用ですか?」

「あっ、はい……」

 

 そのお墓の前には、青い服を着た一人の腰の低そうな中年男性が座り、線香をお供えしていた。当然母さんからは今誰かがお墓にきているなんて話は聞いてないし、事故から七年も過ぎた中で、誰も命日でもないし、お彼岸でもない何の変哲もない日にお墓に訪れる人がいるなんて全く考えてもいなかった。

 その男性がいたことで僕はここのお墓を我が家のものではないと目線から外してしまっており、見つけるのに時間がかかったというわけだ。

 

 しかし、そんなことは本当はどうでもよかった。結局もう一度引き返して見たらすぐに見つかったわけだし、僕たちは急いでいるわけでもないのでこの人が終わるのを待っていればそれで済むことだ。

 だが僕がお墓に他の人がいたという事実の他に、もう一つ首をかしげるようなことがあった。それは……

 

『レンちゃん……あの人、親戚とか?』

『それが全然知らない人なんですよ』

 

 セシルさんは前の男性には聞こえないよう、念話を用いて僕に話しかけてきた。普段はそんなにやる機会はないが、小声でも聞こえてしまいそうな距離なのでこうした方がいいと判断したのだろう。

 そして同時に軽い目配せをしてきたセシルさんの方に横目で目線を送りながら、同じく念話で返答をする。この男性に……僕は全く面識がないということを。

 

『え? じゃあ、どちらさんだろうね?』

『さあ……』

 

 いくら何年も会っていないとはいえ、親戚などならばさすがに完全に初対面といった感覚にはならないはずだ。

 赤の他人がわざわざお墓参りまで来るなんてそれはそれでおかしいし……

 

「はい、終わったので。ところで、あなた方はこちらの家の方ですか?」

「いえ、私は以前こちらで事故で亡くなった子の友人だったものです。丁度近くに寄ったもので」

「そうですか……」

 

 男性の問に対して、セシルさんは息を吐くような自然な嘘で返答をした。いや確かに年齢的には違和感ないし、僕もその連れということにすればいい。そもそも半分は嘘でも半分は本当みたいなものか……

 まあとにかくそれに対して、僕は何も言わずただ黙っていた。

 

「それじゃあ、私はこれで」

「ちょっとすいません。あなたはこちらの家とどういうご関係なんでしょうか?」

「……!」

 

 立ち上がり、この場を後にしようしようとした男性に向けて、セシルさんはこれまたとても自然に問いかけた。それは僕自身がその言葉を発そうとした、まさにそのときのことだった。

 唐突なことにやや気をとられながらも、男性の次の一声に僕は意識を集中した。

 

「ええと私は……いやなんでもないです」

「はあ……」

 

 その問いかけに対し、男性は何かを言いかけた後、顔を背け口ごもるように曖昧な返事をした。

 こうして話しているのを見ていても、やっぱりこの人の姿も声も僕の記憶のどこにもない。この後ろめたいものがありそうな口調、何だか無性に気になるけど……あんまり詮索するのはよくないか。

 

「ねえ、もういいですよ」

 

 既に背を向けて歩き出そうとしている男性を、未だ怪訝そうな目で見つめるセシルさんに僕はそう伝えた。

 しかしその瞬間……

 

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