異世界ライフは魔女と共に~魔女の嫁として送る、久遠のTS百合生活~   作:オサカナ

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34話 欲しかったもの

「わあ~すご~い。色々ある~」

「気持ちは察せますけど、あんまりはしゃがないでくださいよ」

 

 少々思わぬ出来事があった墓参りから一夜明け、翌日僕たちが訪れた場所。それはセシルさんがこちらにくる大きな目的の一つだった場所、家電量販店。

 

 僕たちの家には向こうの世界には元々ない、この世界やその他文明の発達している世界でセシルさんが買い込んできた冷蔵庫や洗濯機といった便利な家電製品が存在する。

 

 そして魔力を電気に変換してコンセントから利用する技術はあるので今も普通に使用している。魔術だけでも再現できなくはないが、単純にこちらの方が基本的にはずっと効率がいいから。

 だがいくら大事に扱っているといっても、永久に壊れない製品などない。現に今使っているものは結構ガタがきていて、補強し修理を繰り返しているとはいえそろそろ新しいのが欲しいのは確かだ。

 

 それに何より……かなりの型落ち品というのが問題だった。買ったのは相当前だというし、僕たちとはいえ膨大な顧客のデータから快適さを突き詰めてきた、この世界の家電製品を一から作れというのはとてもじゃないが厳しい。

 なので、じゃあもう買っちゃおうと……そういうわけでここにきた。

 

「まずは何からですか?」

「えっ? ああ……じゃあ、初めに冷蔵庫見てみよう」

 

 そういって僕は目移りを始めたセシルさんの手を引き、途中家に寄り母さんからもらったチラシを持って、手始めにと冷蔵庫のコーナーへと歩を進めた。

 

 

「ほ~綺麗だね」

「それはそうでしょ。えっと……僕たち二人だけですし、収納が足りないなら中の空間はある程度いじればいいから、やっぱり小さいのでいいですよね」

「そうだね、どれがいいのかな?」

 

 照明に照らされずらりと並んだ冷蔵庫。爽快な光景だ。いかにも現代的な感じ。

 しかしこの中でどれがいいかと改めて考えていくと結構迷うぞ。さてどうしたもんか……

 

「レンちゃん、これ良くない? 左右どっちからでも開けられるんだってよ!」

「ん~面白いけど、その機能そんなに家で必要ですかね? ほら、これとか棚を取り外せるみたいですよ、こっちのが良くないですか?」

「ああそれいいね! どうしようかな~」

 

 セシルさんもここに来る前にネットで調べてきたというのに、どうにも迷っているようだ。それも仕方ないといえるだろう。僕はほんの七年ぶりのことで、家電の進歩もそこまでの驚きとなることはない。しかし数十年ぶりとなれば話は別。

 ここ最近は魔術主体の世界ばかり移動していたようだし、補強により基本性能はともかく見た目にはかなり古臭い今使っている冷蔵庫を思えば当然だ。

 

「よし……じゃあこれにしよう!」

「いいですね。大きさも丁度よさそうです」

 

 少しばかりの紆余曲折こそあったが冷蔵庫は決まった。サイズ、機能ともにベストな選択ができたと思う。

 

「店員さん呼ぶ前に、他のやつも目星付けときますか?」

「そうしよっか」

 

 

「ねえレンちゃん、あれ凄くない? あの丸いやつひとりでに動いて掃除してくれるんだってよ!」

「ああ……あれは面白いですよね」

 

 冷蔵庫に続いて洗濯機などを見て回り、続いてきたのは掃除機のコーナー。僕が普通の掃除機を手にとって見ている中で、セシルさんが興味を示し始めたのはゴミを自動的に掃除して回るロボット掃除機だった。

 確かに僕もこれはちょっとだけ気になってはいたが……

 

「だよね~普通のと合わせて、一個買ってこうよ!」

「いいですよ。でもこれセシルさんの部屋みたいにあんまり物が散乱してると効果ないんですよね~」

「うっ……」

 

 僕の一言にちょっと言葉をつまらせて顔を背ける。

 捨てなきゃいけないものの分別ができないとか、そういう片付けることが全くできないわけじゃないんだけど、それ以上に散らかすのが上手なんだよな。

 一つのことに熱中しすぎることがあるっていうか……

 

 そして常日頃片付けしなくちゃな~と思いながらも、始めるのはかなりギリギリになってからのタイプなのがまた世話が焼ける要因だ。

 

「ちゃんと片付けるからさ」

「はいはい、いいですよ。そんなに気に入りましたか」

「このフォルムとちょっとぎこちない動きがいいよね。ただあんまり愛着がわくってのも少し考えちゃうところもあるけど……」

「ふ~ん……」

 

 その気持ちはなんとなく理解できる。

 僕たちの技術ならば擬似的な人格を物に付与することだって、そんなに困難なことではない。

 しかしそういうことしちゃうと普段使うにも躊躇しちゃうだろうし、捨てるときもなかなか感情にくるものがある。

 

 もちろん僕たちは道具を大切に扱うことは心がけている、だがそれとこれとは違う。物は物として扱うべきであると、セシルさんはそういう考え方を多少なりとも持っている。魂の在処というものを理解しているゆえの考えだろう。

 だからこそ、このようなものに思うところがあるのかもしれないけど……

 

「まっ、いいでしょ。買っていこう!」

 

 そんなことは些細なこととばかりに、あっさりと購入は決定された。

 僕もちょっと欲しかったし、こういうのをヒントにして何かしら研究に役立てることができるかもしれないし、いいんだけどね。

 

 

 その後は電気スタンドなど小さめの家電を見て回り、やはり多少は迷いながらもとりあえず購入するものを決定することはできた。

 買い物メモを見た限り、後は買うようなものはないけど……

 

「ん? どうかしましたか?」

「いや……ちょっとね」

「もう店員さん呼んじゃいますよ? 何か他に買いたいものとか?」

「ん……ゲーム少し買いたいなって思ってね」

 

 ゲームか……ふむ、それは賛成だ。たくさん新しいのも出てるだろうし、だけど……

 

「今のゲームってたくさんありますからね。やっぱりそういった専門のお店に行った方がいいと思いますよ」

「うん、そうだよね」

「それにやっぱりちゃんと下調べをした方がいいですね。選んだのが変なのだったらいやですし」

「なるほど……」

 

 今のゲームは携帯、据え置き問わずオンラインが主流で、僕のころもそういった風潮はあったが現在はより強くなっているらしい。

 本体とソフト、モニターを買っていけば向こうの世界で据え置きのゲームはできるが、そういった通信がメインのゲームではやはり意味がない。

 

 そうなると全てオフラインでプレイでき、なおかつボリュームが多いゲームが理想だと言える。

 だが僕はここ最近のゲームのことについてよく知らないので、やっぱりもっとよく調べてきて、品揃えのいい店で買うのがベストな選択だろう。

 

 本当はネットの評判に加えて、ゲーマーの人の意見とかも聞きたいが、父さんはあんまりゲームやらないからなあ……

 

「それじゃ、もういいですね」

「いいよ~」

 

 それからすぐに店員さんを呼び、僕たちは会計へと移った。

 

「これまとめ買いするんで値引きしてくれませんか?」

「そうですね、これくらいでどうですか?」

「ん~これから他の店にも行こうと思ってるんですけど、もう少し頑張ってもらえたらこの店で全部買っちゃうつもりなんですが……」

「むむ……仕方ないですね。じゃあこれで!」

「ありがとうございます!」

 

 そんな値引き交渉も済ませて、ようやく支払い。

 結構値引いてもらったみたいだけど、やっぱりこういうのは得意なのだろうか。

 

「こちらにお届けの住所を記入してください」

「はいはい、えっと……」

「あれ? それうちの住所じゃないですか」

「ちゃんとお母さんには許可もらってるよ。ちょうど空いてる部屋があるから帰る日まで置かしてもらっていいって」

「うちにそんな部屋……あっ」

 

 ああ……空いてる部屋あるわ。ピッタリの部屋が。

 

「はい、これでお願いします」

「了解しました」

 

 

「ふ~終わった、終わった! くたびれた~」

「そうですね。でも大事なことですし」

「まあね~」

 

 これで家電の購入は完了だ。ここに来てから結構時間使ったなあ……

 

「それにこういうことを終えた後って、なんかすっきりした気持ちになれるよね」

「一仕事終えた達成感って感じですか」

「そうそう、いい買い物だった!」

 

 そう言ってお互いに顔を見合わせ笑い合う。

 そんなこんなで一つ大きな目的を終えた僕たちは、なんとなく軽やかな足取りで帰路へとついた。

 

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