異世界ライフは魔女と共に~魔女の嫁として送る、久遠のTS百合生活~   作:オサカナ

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44話 後輩との談話

「うん……これ買ってくかな」

 

 昨日とは違うゲームの販売店にて、僕はいくつかの商品の中から目に付いた一つを選ぶ。中古のRPGだけど結構面白そうだ。

 

 僕たちは明日でこの世界を去る予定だ。つまりは今日が時間にとらわれず街を見て回れる最後の日なのだが、あえてセシルさんと僕は別々に行動をすることにした。

 昨日はアキラ君に勧められたものだけを買っていったが、今日は自分自身の勘に従って購入するゲームや漫画、小説なんかを選択している。

 

 いくつか既に選び終えた後であるが、ふとカゴの中を見ると王道ファンタジーものの割合が大きいように感じる。いや……実際そうであろう。

 こちらの人々にとっては魔法があり、広がる草原や森を馬で駆ける世界は当然ファンタジーであるが、僕たちにとってはそれが日常だ。

 だからこそ、昔よりもなんとなく興味を引かれるところがあるのだろうか。

 

「こんなもんかなっと」

 

 商品の入るカゴに重量を感じるようになってきた。結構長くここに留まっているし、そろそろ会計に移ろうか……

 

「ん? あ~見つけた」

「……え? えっと……どちらさん?」

 

 カゴを持って移動しようとした僕の肩を突然つかみ、一人の男性が声をかけてきた。

 高校生くらいだけど……いったい誰?

 

「俺ですよ。先輩」

「ああ……アキラ君か」

 

 その人物の第二声を聞いて、すぐに察しは付いた。聞き覚えのある会話のスピードやリズム。知り合いと話すような口調。

 そして何より僕を先輩と呼ぶ人間はこの世界に一人しかいない。つい先日知り合った、僕たちの新たな友人。アキラ君だ。

 

「このくらいの時間にここに行けば、多分いるだろうって聞いたんで」

「なるほどね、この前はおすすめの紹介してくれてありがと」

「はい、お安いご用ですよ」

 

 腕が疲れてきたのでカゴをいったん床に下ろし、アキラ君との会話を続ける。どうやらセシルさんが僕の居場所をアキラ君に伝えていたらしいな。

 

「ところで……あれの調子はどう?」

「問題なく使えてますよ。昨日の夜も親がいなかったので、いろいろと変身して遊んでました」

「ならよかった。そういえばこれから時間空いてる? ちょっと話そうよ」

「もちろん、俺もそのつもりで会いに来ました」

「じゃあ待ってて。これ買ってきちゃうから」

 

 

「それじゃいただきますね~」

「どうぞどうぞ。この前はご馳走しそびれちゃったし」

 

 会計を済ませた僕たちは二人で近くのファミレスへと入った。話すにはちょうどよい場所だ。

 お互いにケーキやドリンクバーなんかを注文し、ゆっくりとくつろいでいる。

 

「前に会った時は呼ばれて帰ったみたいだけど、大丈夫だった?」

「ああ、問題ないですよ。別に無視しても構わない用事でした」

「そう? でもご両親は大切にしないとね」

「むむ……さすが説得力ありますね」

 

 ん~そうかなあ……

 

「そういえば明日で帰るんでしたよね。今日は一緒じゃないんですか?」

「なんとなくね、今日は別行動。それで……なんか近くでやってるとかいうアイドルのライブ見に行くっていってたな」

「はあ~なるほど。そういうの好きそうですね」

「わかる……好きそうだよね」

 

 その言葉に共感を受け、自然とうなづく。

 その通りだ。セシルさん、そういうの大好きそう。

 

「先輩……まず最初にずっと聞きたかったんですが」

「ん~」

「女の子の身体になって……どうですか?」

 

 ああ、そんなことか。でもそれは聞きたいことではあるだろうな。

 ちょうど一杯目を飲み干したグラスのストローから口を離し、僕はゆっくりと間を持たせるようにしてその返事をする。

 

「そんなの……」

「そんなの?」

「最高に決まってるじゃん!」

「ですよね~!」

 

 

 

「はあ~向こうの世界でも、ちゃんと色々あるんですか」

「快適で住みやすくはあるね。セシルさんがそうしたんだけど」

 

 おかわりした飲み物を飲みながら、彼と向こうでの暮らしについて語り合う。やはり興味津々でその話を聞いている。

 こうして嬉しそうに聞いてくれるとなると、こちらも話しがいがあるというものだ。僕も自然と口数が増えていくのを実感する。

 

「でもやっぱり、ずっと女の子の身体でいると考え方とか変わったり、そういうのは?」

「あんまりそういうのないんだよね。まあ、たまに男の感覚が恋しくなったりするけど……」

「はあ……」

「そんなときは変身して遊べばいいしね。そういうことのための物なんだから。あのスライムは」

「それもありですね~」

 

 

「こっちからも聞きたいんだけど、アキラ君ってもしかして一高だったりする?」

「え? そうですよ。言ってなかったでしたっけ? 俺の方からは先生から先輩が昔通ってたって聞きましたけど」

「だからか……」

 

 そういうことだったのか。確かにそれなら先輩だ。

 一高は僕が昔通っていた、ここらで一番大きい公立高校。まあ可もなく不可もなくといったクラスのところだけど、たまに何かあったわけでもない平凡な高校生活を思い出したりもする。

 多分僕の事故はそういった注意を呼びかける際のいいネタにされているんだろうな……

 

「おっ、アキラじゃん」

「えっ? な~んだお前らか……こんなとこで会うなんて奇遇だな」

 

 突然のこちらに向けられた声にビクリと身体を震わせてから、ゆっくり振り返る。話しかけてきたのは二人の男子だった。

 その内容から察するに、アキラ君の同級生といったところだろうか。

 

「あっ、こんにちは」

「え、ああ……こんにちは。あれ……うちの学校ですか?」

「えっと……」

 

 そういえば僕とアキラ君は傍目から見たらそういう関係にでも見えてしまうんだよな。

 さてさて、どうやって答えようか……

 

「俺の親戚の姉ちゃんだよ。この辺案内してくれって頼まれてさ」

「そうか……わかった。じゃあな」

「じゃあな…………なあ、めっちゃ可愛くなかったか?」

「だよな……」

 

 と、僕が答えるまでもなくアキラ君はそう返答した。

 奥の席に向かいながら小声で話す彼らを尻目に、アキラ君との会話を続ける

 

「意外と嘘が上手いんだね」

「そうですか? でも先輩は苦手そうですよね」

「……当たってるよ」

 

 まあこういうのは元からの得手不得手があるものだろう。僕はとっさのこういった事態を乗り切るのはあまり得意な方ではないし。

 

「そういえば、さっきの二人の左側って……もしかして橋口君? 違ってたらいいけど」

「あっ、橋口のこと知ってるんですか?」

「やっぱ当たってた? あの子の兄さんと昔は友達でね。あんまり本人とは会ったことなかったけど、なんとなく面影あったから」

「へえ~あいつの兄さん、地元に就職して働いてるっていってましたよ」

「ふ~ん、まあ元気でやってるなら何よりか」

 

 あいつもあいつの人生を生きているんだな……いつか機会があったら、こっそり顔を見に行ってみるのも悪くないかも。

 

「じゃあさ……もしかして数学の高木先生ってまだいたりする?」

「ああ~高木、いますいます。今ちょうど習ってます」

「まだいるんだ~あの人のテスト難しすぎない?」

「そうそう! この間のなんかみんなブーブー言ってますよ。もう少し優しくしろって」

「やっぱり変わんないね。それでさ……」

 

 

 

「あっ、すいません。俺もうすぐ塾があるんで、そろそろ帰らせてもらいますね」

「わかったよ。もう結構いい時間だしね」

 

 楽しく過ごす時間という物はあっというまに感じるものだ。

 そんな時間も終わり、わずかに残っていたドリンクをお互いに飲み干して、荷物と伝票を手に席から立ち上がった。

 

「今日はいろいろ教えてもらって……ありがとうございました。本物の人の意見を聞けましたしね」

「楽しかったよ。それじゃまた明日ね」

「はい! 今夜はまたたっぷりあれで遊びますね。ご馳走様でした~」

 

 二時間ほどのアキラ君との談話を終えて、僕たちは別れた。外はもう日が落ち始めようとしている時間帯だ。

 

 今日はこちらの世界で自由に過ごせる最後の一日だ。本当だったら他にもいくつかの場所を回る予定ではあった。

 しかし……これはこれで有意義な時間であったなと、そんな思いが僕の中を巡っていた。

 

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