物語とは、主人公がいて成立するものである。
 物語とは、主人公を中心に構成されており、その世界において、主人公がいなければ解決されない、という展開が当たり前なのである。

 とどのつまり、誰か助けて。


 

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「拝啓、誰か助けてください。お願いします誰でもいいから助けてください早く何とかしないと世界が滅ひます誰か早くこの原作主j

 

 

 突然だが、俺は転生者である。

 何の変哲もなく、自転車で華麗に一回転し「あ、死んだ」と同時、頭に衝撃を受けて気づいたらおぎゃあしてた。そのくらい、何の変哲もない転生者である。

 前世は普通の一般家庭。そんな奴が生まれ変わったところで何も変わらず、普通に保育園に通い、小学校に通って……とまあ、ある程度人間としての普通の人生を歩んできたわけである。

 そんなこんなで“頭のいい子ども”ムーブを続けてほめられ奉られうっはうはな幼少時代を過ごす中、小学校で、とある男の子に出会った。

 

 

「はじめまして、南雲ハジメです。よ、よろしくお願いします!」

 

 

 ──南雲ハジメという、男の子に。

 

 授業参観で現れるキャラが濃ゆすぎる漫画家の母、ゲーム開発者の父。

 そこで、俺は思い出した。というか、察した。前世で読んだ物語。その主人公が、南雲ハジメであったことを。

 “ありふれた職業で世界最強”と呼ばれるライトノベル。落ちこぼれ、嫌われ者の少年が、どん底から這い上がり、男の夢という夢を叶え欲しいものを手にする──そんな、シンデレラストーリーを(男だが)。

 

 そのことに気づいた瞬間、脳裏に駆け巡るは未来の展望。

 

 召喚されーの、奈落に落ちてーの、強くなりーの、ハーレム。

 

 巻き込まれーの、魔法使いーの、無双ーの、ハーレム。

 

 まさに、男の夢。

 最強、無双、ハーレム、チート。今昔(な○う)より幾度となく描かれてきた夢物語。

 当然俺も、そんな男の夢を目指して、召喚されるであろう未来を夢に描く──

 

 

 

「え、なにそれ怖。近寄らんとこ」

 

 

 

 ──そんなことはなかったッ!!

 

 

 

 いや、だってそうでしょ。

 

 だってー? 落ちたところで助かるとは限んないでしょー? 強くなれるとも限んないでしょ〜? そもそも死ぬかもしれないんでしょ〜? ふざけてんの?

 

 死にたくない。

 という至極当たり前のことを念頭に、俺は南雲ハジメと全力で距離をとった。

 杞憂かもしれないが、もしもということがある。そんな厄ネタ、誰が近づくか。あいつと関わりを持って召喚に巻き込まれてたまるか。幼馴染とか友達なんてなった日にゃアフターで俺編が始まって死ぬ。とんでもねぇ。

 

 だが、これだけでは不安である。

 

 当然である。南雲ハジメが主人公の物語。それにはアフターがあるのだ。全世界同時多発テロが起こったり、アメリカでバイオテロが起きたり……テロ起きすぎじゃね? ともかく! だから、下手をすれば巻き込まれちまう可能性があっちまうのだ。

 

 だから、鍛えることにした。手っ取り早く強くなれる方法として、八重樫道場に通った。なぜか徹底的にぼっこぼこにされて針とか穴抜けを散々させられたけど。

 

 まあ、ともかく。俺は未来に向けて頑張っていたわけである。

 

 死にたくない。ただそれだけのために頑張ってきた。死にたくないが故に、なんか関係がありそうなイベントは徹底的に無視してきた! なんか土下座少年を見かけたとしても徹底的に無視してきた! 余念はない! 余念はない──のに!

 

 ()()()()()()()()、幸せになれるはずだったのに──!

 

 

 

 俺は、呆然と立ち尽くしていた。

 

 眼前には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どれだけの力が込められていたのだろう。散乱した椅子の一部は脚が曲がっていた。どうやら、必死に叩きつけていたらしい。その力の強さが窺える。

 食べかけの弁当は、箸が突き刺さったままのものもあり、まるで、口に入れかけた瞬間に、その先がなくなってしまったような異質さを感じさせた。

 

 まさに、異常。

 

 阿鼻叫喚の野次馬を押し除け、俺は教室から離れた。その手には、バイブレーション機能をフル活用しながらブルブルするスマホが。

 

 その通知欄を見て、俺は空を仰ぎ見──そんな現実逃避をしている暇はないと、すぐさま応答ボタンを押した……

 

 

『やあリン元気!? 今さ新しいイベント始まっちゃったんだよ。だから今から家に来てくれない? 流石に片手一騎じゃ人手が足りなくてさ〜、パソコンもって集合ね! 一応グラボ持ってきてね動画も投稿しないと行けないし、編集は任せてるからいろいろしちゃっていいからね! あ、あと食料と水ね。そろそろ徹夜しないといけないから買い溜めしときたいんだ。お金は後でだすから好きなもの買ってきていいよ。でもカップ麺はやめてね。あんなのイベントしてる時に食べる暇なんてないから。買ってきてくれるならカ○リーメイトとか一本満足○ーとか片手で食べられるものでお願い、水は軟水で! じゃ待ってる──』

 

 

「てめぇ何してんだ()()()ッ!!」

 

 

 

 ──ああ、どうしてこうなったんだっけ……?

 

 

 


 

 

 

「あ゛〜……タンクぅ、そこちゃんと守ってよ。そこにいられたら射線に入られちゃうでしょ。何やってんのさ、ちゃんと養成所通った? noobかよ」

「てめぇもちゃんと学校通えやぁッ!」

「痛ァ!?」

 

 薄暗い部屋。ずっとブツブツとパソコンを叩いている南雲に向かって飛び蹴りする。その勢いのまま、光っぱなしのパソコンの電源を強制シャット。

 

「あ゛ぁ゛ーーッ!? データがあーーッ!!」

 

「うるせぇてめぇっ! なんで学校に来てねぇんだなめてんのか!」

 

「学校へ行くかどうかは僕の勝手だ! 高校に一年くらい行かないからって死にゃしないもんね! なめてるのはどっちだろうね! ふっふぇ〜ん!」

 

 なんだこいつムカつく。

 続いてでようとする拳を全力で抑えてアイアンクローで抑えておく。八重樫流で鍛えた握力が火を吹いて、拳の中から悲鳴が鳴り響いた。

 

 ……もうお察しであろうが、この引きこもり。こいつが原作主人公、南雲ハジメである。

 

 なぜか関わらないようにしていたはずなのに、あれよあれよと知り合いになり、てんやわんやで腐れ縁になり、ほんやらかんやらでお世話係(不本意)になっちまったわけである。

 まあそれはそれ。関わっちまったものは仕方ない。いや、仕方なくない。親が知り合いだったってところで絶望した。うっそだろお前……

 ともかく、知り合ったにしてもうまく生きてきたわけだが……なぜ、こうなってしまったのだろう。

 

「それよりもリン。いきなり蹴り込みにくるとはどうゆー要件? 僕はコ○ボイの謎を解くのに忙しいんだけど」

 

 なぜか! 高一になりいきなり引きこもり化。漫画アシ、ゲーム開発、ラノベ執筆を手がけるハイスペックヒキニートに進化してしまった。あと買ってきてやったカロ○ーメイト貪りながら手慰みにクソゲーをやるな。

 

「南雲、お前学校来いって言ったよな?」

 

「言ってたね。フルーツ味いる?」

 

「いらねぇ。なんで来てねぇんだ。俺はとにかく、学校に来とけって言ったよな?」

 

「え、嫌だけど」

 

「何でだよっ!」

 

「いや、面倒くさい」

 

「お、まっ……」

 

「え、嫌だって学園から妬まれてる上に嫌われてて、野獣みたいな奴らに追われるし、家にいたらリンがお世話してくれるのにどうして出る必要が?」

 

「完全にヒキニートの発想じゃねぇか」

 

「うるせぇっ!」

 

「なんで!?」

 

「黙って僕のカロリーメイ○フルーツ味を、食えッ!」

 

「あっぶねぇ!?」

 

 唐突にフェンシングが如く繰り出された刺突(○ロリーメイト)を全力で回避。脈絡が無さすぎて、わけがわからん。

 

 本当に、もうっ……どうしてこう……!

 

 完全に引きこもり属性(+○チガイ)がついてしまった原作主人公に、俺は絶望する。

 

 そもそも、俺が南雲を学校へ行かせようとしていたのにも理由があるわけで。

 

 南雲ハジメは主人公である。それはつまり、南雲ハジメを中心に物語が展開されていく。

 それはヒロインとの出会い然り、戦い然り。さまざまな出会いと別れが主人公を中心に巻き起こる。それが物語のど定番である。

 

 何が言いたいかって?

 

 ()()()()()()()()……!

 

 原作では、ラスボスが地球で遊ぼう(侵略

としていたことが明かされていた。つまり、原作通り南雲がラスボスを倒せなければ……つまり、そういうことである。

 そうなる可能性は大いにあるわけで、さすがに高一で引きこもり始めてこりゃヤベェってなって幾星霜。ついに()()()()()()()()()()()()()……

 

 あ、オワタ。

 

 そんなわけで、南雲に殴り込みに来たわけである。理由はない。八つ当たりです……(半泣き)

 

 そんな俺を知ってか知らずか、南雲はパソコンを立ち上げ直してゲームを開いていた。

 

「そんなことよりも、早く手伝って。今回のイベントやばいんだ。復刻イベントでさぁ、急がないと収穫され尽くしちゃう。知ってる? 毎秒44──」

 

 

 ──拝啓、トータスに召喚された皆々様。そちらの天気は如何ですか? こちらは快晴です。こちらのことはお気になさらず。

 あなたたちもいろいろとあるかもしれませんが、こちらの世界とどちらが先に滅びるかのレースが始まってしまいました。

 僭越ながら、ご自愛させていただきたく思います。

 

 P.S.助けて。俺ごと世界が滅ぶ。

 

 

 





・リン
原作とは関わらないはずだったのに親が知り合いで原作主人公と出会うことになってしまった。原作イベントとは接さないようにしてたのに何故か南雲が引きこもりになって目が死んだ。
生きるためならわりと何でもする。八重樫流に通ったのは最初っから強かったもんなーと軽く考えていたから。剣士娘とは顔を合わせる前にステルスした。
性別は決めてません。女でも男でも、好きな方をお選びください。ただオリ主くんちゃんが女の子だったらツンデレの如く世話してくれる人いたらダメになる理由付けできるし楽だなt


・南雲
原作主人公。引きこもり。キチガ○。
なぜかプログラマー、アシさん、ラノベ作家、動画投稿者、マルチタスク可とかいう謎の廃スペックヒキニートになってしまった。
青春の高校時代を引きこもって過ごしているが、学校に連れ出そうとしてくる以外だいたい何でもしてくれるリンがいるから、こんままでもいーやー収入あるしと満喫中。

・トータス召喚御一行様
南雲がいないため、原作通りだとどこかで詰みそうな気がする……けど、わりとコメディな世界線のため大丈夫かもしれない。

学園○ンサムネタ入れたのは趣味です。
設定ガバガバです。
本当はアフターの情報から異世界に行けると思い至ったオリ主くんちゃんがトータスに行くために世界を飛び回る話を想像してた。多分、天空の世界とかわりと終わってる世界とか突っ込んで終わる。無理だった。

ある程度経ったら作者自らの手によって削除されてしまうので、ご安心ください。


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