東京喰種 KNIGHT   作:天羽風塵

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投稿しといてなんだけど、今後の展開によっては若干書き換えるかもしれない。大筋を変えるつもりは無いけど。

※2021/7/26加筆


第零話 嵐の前の静けさ

〜イギリス・某所〜

 

町外れの場所で二つの勢力が戦いを繰り広げていた。

 

片方は人間で、もう片方は喰種。

 

いや、戦いと言えるものではない。これは———

 

「クッソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「はい、おしまい」

 

「ゲボッ!?」

 

「ボスッ!?」

 

「クソったれが!なんでこんなとこに喰種(グール)がいやがんだよ!?」

 

「知るわけねぇだろうがっ!」

 

「喋ってる暇あんのかよ」

 

「え?ガヒュッ!」

 

———蹂躙だ。

 

たった二人の喰種に蹂躙される人間たちだ。

 

「ふう……終わりか?」

 

「そうだな。いやーしかし助かるな、犯罪組織(こういう奴ら)がいると。殺して食っても心が痛まない」

 

白髪の喰種と黒髪の喰種が死体の山の中で話している。

 

「ホントか?」

 

「ホントだよ?」

 

「いくら取り繕っても人間だろうが。確かに俺らとは違う。だが———」

 

そこで白髪の喰種が言葉を一瞬飲み込んだ。

 

「———お前は別だ。お前は元人間だろ。日本にいるって言う恋人はどうするつもりだ?今のご時世、喰種を怖がらない人間なんてほとんどいねぇ。」

 

「……大丈夫でしょ、あいつなら」

 

そこで黒髪の喰種は日本に居る恋人の姿を思い出す。

 

出会いは喫茶店だ。

 

一目惚れだった。

 

喫茶店に通い詰めて彼女と仲良くなった。

 

年下の子だったけど、思いの外息があった。

 

そして数回のお出かけ(デート)を重ねた末に俺が告白してOKを貰った。

 

(嬉しかったなぁ。でも、そんな俺が留学先でこのザマだ)

 

留学先のイギリスで事故に遭った。何を考えているかは知らんが俺の手術を担当した医者、あろうことか喰種の赫包を移植しやがった。

 

嘉納とか言ったっけ、あのヤブ医者。

 

幸いにも一緒に留学していた親友が喰種だったのもあって、比較的簡単に喰種の生活に慣れた。

おかげさまで今や立派な喰種の仲間入り。

 

(会いたいなぁ……そうだ)

 

そもそもイギリスを拠点にしていたのは()()をある程度強くするためだ。広い地続きの土地で()()()を続けて力を付けたかった。散在して狩りをしていれば本拠地がバレるリスクも減るからな。

 

力を付けたかった理由は俺たち組織の理念にある。

 

その理念とは()()()()()()

 

元々は俺が恋人と一緒に生活したいという私欲から立ち上げた組織だったが、その組織も当初の目標まで強くなった。

 

故にこれ以上、イギリス(ここ)に留まる理由もない。

 

「なあ、シュウ」

 

白髪の喰種、シュウ———親友である紅月(こうづき) 終一(しゅういち)に話しかける。

 

「なんだ」

 

「ウチの組織も結構大きくなったしさ、日本に戻らない?」

 

「へぇ、良いのか?」

 

「ああ、みんなに伝えてくれ。できるだけ早くイギリスを出るぞ」

 

「了解した、()()()

 

「よせよ気持ち悪い」

 

「ちょっとした冗談だよ。気にするな」

 

シュウが他の構成員に連絡をしに離れた。

 

首から掛け、服の内側にしまってあるロケットを取り出してチャームを開く。

 

中には写真が収まっており、写真には黒髪の青年と片目が隠れた黒髪の少女が写っていた。

 

「今から会いに行くよ、()()()

 

 

 

〜sideカネキ〜

 

ある日、「あんていく」店内の掃除をしていると妙なものを拾った。

 

「ロケット?」

 

またの名をロケットペンダント。

チャームが開閉式になっていて中に写真や薬などを入れられるようになっているペンダントだ。

 

「誰のなんだろう?」

 

「おや、それは」

 

横から店長が覗き込んできた。

 

これのことを知っているのだろうか。

 

「トーカちゃんのだね」

 

トーカちゃんの?

 

「店長!」

 

突然店の奥からトーカちゃんが店長を呼びながら飛び出てきた。

 

「あたしのペンダント知りませんか!?」

 

「ちょうどカネキくんが見つけてくれたところだよ」

 

「返せ!」

 

凄まじい勢いで僕の方に突っ込んできた。

 

「え? あ、はい!」

 

ここで渋る理由もないので素直に渡す。

 

「あ〜、よかった〜。……中見てねぇだろうな」

 

「見てない見てない!」

 

さすがにそんなデリカシーの無いことはしない。

 

「ならいいけどよ」

 

すごい必死だけど、そんなに見られたく無いのだろうか。もしくはそれだけ大切なもの?

 

「トーカちゃん、それってそんなに大切なものなの?」

 

「……うるさい」

 

えぇ……?

 

すると、店の奥から入見さんが出てきた。

 

「それねぇ、トーカちゃんが彼氏くんから貰った大事なものなのよ。今は留学していていないけど」

 

「入見さん!?」

 

「へー」

 

驚いた。トーカちゃんって彼氏いたんだ。やっぱりその人も喰種なんだろうか。

やっぱり馴れ初めとか気になっちゃうなぁ。こういうのを野次馬根性と言うのだろうか。

 

「言っとくけど人間だぞ、純粋な」

 

「えっ!?」

 

人間の彼氏!?

 

「トーカちゃんに彼氏がいること自体不思議なのn「ぶっ飛ばすぞ!」ぐほっ!」

 

もうやってるじゃん……。

 

「名前は?」

 

「やっぱりイケメンなのか?」

 

僕と西尾先輩がほぼ同時に質問する。

 

「名前はシオンだ。天喰(あまばみ) 星隠(しおん)……見るか?」

 

「え、良いの?」

 

「別に良いよ、それぐらい。見るならもっと大きい写真がある」

 

ちょっと待ってろという言葉を受け、店内で待つ。

 

少しすると、トーカちゃんが戻ってきた。

 

「写真って持ち歩いてるの?」

 

「悪いかよ。ほら、これだ」

 

全員で質素な木のフレームに収まった写真を覗き込む。

トーカちゃんと黒髪の青年がツーショットで写っていた。

 

「おお、なんつーか……」

 

「なんて言うかこれは……」

 

「普通だな」「結構カッコいいね」

 

「テメェ後で覚えてろよクソニシキ」

 

「こらこら、人の恋人を貶めるのはやめなさい」

 

店長が西尾先輩を嗜めた。

 

「トーカちゃん」

 

「何ですか?」

 

「人間の恋人なんだろう? 私はね、人間と喰種は手を取り合えると思っている」

 

「……はい」

 

「その絆は、大切にしなさい。以前から見ていたが、彼はきっと、君を幸せにしてくれる」

 

「……はい!」

 

トーカちゃんは元気よく店長に返事をした。

 

今日も、「あんていく」は平和だ。

 

……この時はまさかあんなことが起きて、この平和が崩れるとは思ってもいなかった。




・あんなこと
ヤモリ襲来とか「あんていく」襲撃とか。

・原作との相違点
原作でのトーカは「トーカちゃんが死んだら悲しい」というセリフでカネキに惚れているが、今作ではオリ主という恋人がいるため友情を感じた程度。

・次回の時系列
トーカvsアヤトから始まります。

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