首尾よく明城学院付属高校に入学し、初の夏休みを迎えたシンジ
いつもの3人~鈴原トウジ、相田ケンスケ、そして渚カヲル~が偶然にも全員別の用で、久々に一人ゆっくりしようとしていたところに、母の大学の後輩が訪れる。

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毛色を変えまして、貞本版のシンジとマリの物語です。年齢の設定が原作とずれてるのは、補完後の世界ではちょうどそれくらいの時期に産まれたということにしてください…


夏色のエデン、の東~貞本エヴァアフター

 ミーソミーソ

 

 蝉がうるさい。

 

 飲みかけのアイスティーに付いた水滴は、宿題のプリントを置く気を失わせるほどに机を濡らしている。

 

 そう、やっと夏休みだ。

 高校に上がって父に家を追い出された僕は、先生の家の離れで一人で住んでいる。

 今日に限っていつも入り浸っているケンスケはアスカとデート、トウジは妹と買い物、渚は加持さんの畑の手伝い、とやっと一人でごろ寝できる筈だ。

 

 だというのに、落ち着かない。

 

 心拍数が上がる。

 

 それはきっと、父が部屋に置いていったピアノで、昨夜渚が勝手に徹夜でX JAPANの”Art of Life”のピアノソロパートを練習してロクに眠れなかったからではなく

 

 「碇~麦茶くらい用意したら?」

 

 さっきから僕のベッドを占領する無防備な肢体と、強烈過ぎる既視感のせいだ。この部屋には母を含めて女性を挙げたことからして全くないはずだ。しかし何故か女の同居人を、二人も世話を焼いていた時期があったように思えてならない。

 

 「はいお待たせ、アイスティーしか無かったけど、いいですか?」

 

 「紅茶嫌いなのよね…」

 

 「よくイギリスに行くことにしましたね」

 

 彼女、真希波マリは僕より一歳年上でしかないのに、何と飛び級で既に大学生で、9月から留学という。

 母さんの後輩にあたるそうで、僕の様子を見るよう頼まれたらしい。しかしTシャツにカットジーンズというラフな格好でヘソを無防備に露出して寝転び、難しそうな英字の本とにらめっこしている姿からは、色んな意味で宿題の邪魔に来たとしか思えない。

 

 「碇こそ何で夏休みなのに家閉じ籠ってるの。ナンパにでもいかないの?孫の顔見れるのかしらって、ユイさん心配してたよ。ま、碇みたいなの、相手してくれる女の子いると思えないけど」

 

 「そうなんですよ。女の子は皆、渚って友達についてっちゃうんです。そいつが女興味なくて皆袖にしちゃうんで、こっちもとばっちり喰って避けられる。もういいですよ」

 

 嘘だ。

 存在しない記憶の中、だらしない女同居人以上に胸に焼き付いた

 

 学生時代の母に良く似た短髪の少女

 

 紅茶を淹れてくれたと、「碇君を待っている」と言ったと、「覚えている」

 

 だから紅茶ばかり飲んでいるのだ。夏はアイスティーにして。

 

 ふとベッドを見やると、マリさんは僕を睨み付けていた。

 

 「何なんですか」

 

 「君、何で男臭いのよ」

 

 「そりゃ男だかr」

 

 言い終える前に、僕の頭は電源を落とされた。

 

 再起動した直後に知覚したのは、白桃に似た女の子の香りと、唇を塞ぐ柔らかい感触

 

 突き飛ばされた。

 

 きっとマリさんの方が、僕より顔を赤くしていた。

 

 「い…碇が悪いんだからね!卑怯よ!男の子なのに!ユイさんにそっくりなんて!」

 

 そのまま自分の鞄を掴むと、駆け出していってしまった。

 

 それが半年前のことだ。

 両親の仕事に付き合い、雪深い冬のロンドンに行く羽目になった。今実家で旅支度をしている。

 

 母さんは何故か、僕とマリさんを会わせるのが楽しみらしい。父さんは非常に嫌がっている。母さんのやることを嫌がるなんて、本当に珍しいものだ。

 

 写真の中、マリさんはいつの間に目を悪くしたのか赤縁の眼鏡をかけ、紅茶のカップを手に取っている。

 

 「気を付けてあげてね、あの子素直じゃないから。好きな人に悪態ついたり、その勢いで好きなものまで嫌いと口を滑らせたり」

 

 「何を期待してるんだよ、母さん」

 




 ツイッターで突如巻き起こった、貞本エヴァのシンジとマリってどうよ?な議論に触発されて妄想してしまいました。

 ただ、前から思っていたのですが貞本版だとツンデレなのでアスカとの区別がつき難いですね。シンジへの呼びかけを「碇」としたのは差別化を図るためですがうまくいったか正直不安です。

 シンエヴァ以降の世界とはまた違った魅力のある二人なので、またネタ思いついたら投稿します。

 読んでいただき、本当にありがとうございます。

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