FFX-2 Another After ~薄れゆく意識の中で~ 作:ナナシの新人
各地の魔物騒動がいったんの収束を見せていから、数日が経過。騒動鎮圧目的で各地へ赴いていた主要メンバー、ならびに送儀士はベベルへ帰還を果たした。各地に点在していた通信スフィアの稼働を止めた影響なのか、魔物の出現頻度は激減。現世に溢れた幻光は安定を取り戻し、不安定な幻光の影響を受けて不具合を起こしていた機械も正常に稼働するようになった。
「結果的に、あの科学者の言った通りの状況になったってことだよな」
「まーねぇ。シンラは『一生の不覚だし』って言って落ち込んでたけど」
スピラの安全のために設置したハズの通信スフィアが、逆に安全を脅かすために利用されていたことを知り、大きく肩を落としていた。表向きには一連の騒動が落ち着いてきたため、緊急メンテナンスと称し、通信スフィアの回収、改修作業に努め。各地の守備隊の警戒態勢は依然継続中。被害状況調査など、各々の役割を担っている。
「で、わたし達はハッキング元を調べに来たわけだけど。発信源は、やっぱり
「ま、原理は解んないけど、異界のエネルギーを使ってるって言ってたんだからねぇ。それで、アタシが想うにぃ~」
「ヴェグナガンと、あの機械柱だね」
「あー! 今、言おうと思ったのにー!」
「言わなくても分かる。怪しいのは、あれしかないからな」
破壊したヴェグナガンの真下から敷かれていたケーブルは、機械柱の中の部屋に繋がっていた。機械柱の中に設置された数多くのモニターは通信スフィアを介したリアルタイム映像、モニターを稼働させるため、もしくは、通信スフィアをジャックするための装置として使用された可能性が高い。
そして、無差別殺人、拉致事件、墓荒らし、スピラを揺るがす一連の事件の全てが一本の線で繋がった。
「うわっ! また出たよ~」
「想定済み。と言うより、
「来るよ、散開!」
異界の最深部へ続くゲート前、まるで行く手を阻むように待ち構えていた辻斬りを囲む陣形を組み、臨戦態勢に入った直後、剣を抜いた辻斬りが先手を取る。
「こっち来たって、はやっ!」
「リュック!」
「だいじょ......ばない!?」
「防御したっ?」
「武器も違う。アルブが造った人工兵器なら、前とは違うヤツなのかもな!」
パインが振るった剣の横払いを確実にガード、即反撃に転じる。防御無視の以前とはまるで別の戦闘スタイル。それどころか、モデルチェンジされた戦闘スタイルに既視感を覚えた。身近で見てきた戦い方を、今、目の前で繰り広げられている。それは、まるで鏡に映したような戦闘。
「コイツ、ふざけたマネを! 遊んでるつもりか!」
「リュック、援護するよ!」
「おっけー!」
懐から取り出した銃を構えた辻斬りは、短剣を構えたリュックの足下に連射、足を止めるための牽制射撃。これも、先ほどの彼女と同じ戦法。
「銃って。もー! これじゃ近づけないじゃん!」
「私に任せて! パイン!」
声を合図に大きく距離を取った。パインと辻斬りの間に攻め込める空間が生まれた。すかさず、杖を向ける。周囲を囲うように現れた魔方陣、杖に装着された複数スフィアの能力を同時に解き放つ。爆音を伴った爆風が空気を震わせ、閃光がほとばしる。
「逃げ場なし、オールレンジのフレア。直撃だな」
「えげつないよね、実際」
「悪魔みたいに言わないで。それから、油断しない」
以前、不意討ちをもらった経験がある。油断せずに身構えたまま状況を見定める。立ち込めていた炎と熱風が徐々に治まり、発火点の中心には人影。顔を隠していた藁傘は燃え、人を襲う辻斬りの素顔が露わになった。
「こ、コイツ――」
「顔が......」
――人じゃない。
そう、直感した次の瞬間、背後から声が聞こえた。
「お下がりください!」
肩にバズーカ砲を抱えた男の人。咄嗟に横に跳んで開ける。放たれた砲は空中で弾け、ネットが拡がり、辻斬りの身柄を捕らえた。
「確保ー!」
男性の更に後方から、ゴーグルと防護服を身につけた三名が一斉に跳びかかる。攻撃魔法を受けて大きなダメージを負ったためか、辻斬りは大した抵抗もせず、されるがまま身柄を拘束。
「連行しろ。後始末も忘れるな」
拿捕した辻斬りをストレッチャーに乗せると、素速く運んでこの場を立ち去っていく。
「あなた方は?」
「失礼いたしました、大召喚士様。我々は、バラライ評議長の命で組織された支援部隊です」
支援部隊。そんな話は聞いていない。男性の話によれば、部隊が結成されたのは異界へ入った直後。構成メンバーは、彼を含めた計四名。全員が、機械に精通した精鋭。それもそのはず、部隊をまとめる白髪交じりのヒゲを蓄えた男性はゴーグルを取った。見た目年齢四十台前後の年上の男性の深い緑色の瞳には、特徴的な渦巻き模様が刻まれている。
「アルベド族の方ですか?」
「ええ。皆、同じ種族です」
「うーん、でも初顔なんだけど? アタシのオヤジと同年代くらいだよね」
「我らはあなたの父、シドと袂を分かった身」
どちらかといえば過激派のシドと、エボン寺院との融和を唱えた穏健派の彼ら。双方の意見の相違から一族を離れ、ベベル、エボン寺院の機械整備を担当していたはぐれ者の集団だと自虐的に話した。
「そんな話初めて聞いたよ。ま、あのオヤジだし、不思議じゃないけどさ」
「それで、どこへ連れていったんだ?」
「ベベルの研究施設です。おそらく、遺体に機械を組み込んだ人工兵器の可能性が高いと思われます。制作者の手掛かりを掴めるやもしれません。では、もうひとつの手掛かりを調べに行きましょう」
見た目年齢以上に落ちついている男性を先頭に異界の最深部、ヴェグナガンが放置されている広場へ到着。壊れて沈黙するヴェグナガンへ目を向けた後、無数のモニターが設置されていた機械柱の中に入り調査を始めた。ブラックアウトしているモニターを前にして、ノートにメモを取り、ひとつひとつ入念に調べている。機械に詳しいリュックも部屋に残り、邪魔にならないように、パインと一緒に部屋の外へでて周囲の警戒に当たる。
「ユウナ、どう想った? 辻斬りのこと」
「そだね。姿形は同じだったけど、殆ど別人だった」
「身のこなしも、戦闘スタイルも違いすぎだったしな。しかも――」
顔の左半分は機械、人工的な赤い目が不気味に光っていた。
「やっぱり、アルブが開発した人工兵器なのかな?」
「たぶん。チュアミたちが戦ったヤツと前に
その場で、ゆっくり周囲を見回す。生命が還る地・異界の最深部なだけあって、幻光の濃度は濃い。けれど、先日訪れた時と比べて比較的安定してる。何より、ヴェグナガンに吸い寄せられるように流れ込んでいた不自然な動きは見受けられない。
少し考え込んだパインは、新型の通信スフィアを取り出した。
「連絡するの?」
「そう。モニターの電源落ちてただろ、地上がどうなってるかと思って」
念のため、音声オンリーでの通信。加えて現在連絡可能な相手は、同型の通信スフィアを所持している二組に限られる。被害状況を把握するため各地を訪れているチュアミとクルグム、古代の遺跡を調査しているマヤナとシキ。
選択した相手は、各地を回るチュアミたち。
「お疲れ」
『お疲れさまです』
クルグムの畏まった声。パインの肩越しに訊ねる。
「地上の様子はどう?」
『各地共に復興作業が進んでいます。ですが、空に溶け込んだ幻光は依然として通常より高い水準です』
『クルグムとか、他の送儀士が異界送りしてるんでだいぶ落ちついてきました。一段落ついたんで、ベベルに戻ってきたところなんですけど――』
「何か伝えることありますか?」と、チュアミ。ちょうどいいタイミング。
「じゃあ、バラライに伝えてくれ。辻斬りを拿捕した、今、使いがベベルに連行してるって」
『マジですかっ!』
『スゴい......! わかりました、すぐにお伝えしま――あ、いえ、やっぱり取り次ぎます。そのままでお願いします』
「了解、ありがとう」
通信をオンにしたまま、通信スフィアをバッグにしまう。
「マヤナたちにも伝えた方がいいよね?」
「そうだな、バラライに頼むか。ここからより安定するだろうし。それにしても、あのいけ好かない科学者の障壁を一振りで切り裂いたんだろ?」
あの後、緊急に開かれた臨時報告会。「待てと言われて待つヤツなんていない。足を止めにかかるのは至極当然」というヌージの見解に、バラライとギップルが異論を唱えず同意したため、相手に斬り掛かったシキの行動は不問になった。加えて、有効打を与えられる重要な戦力して改めて協力を求めた。
「シキは否定したけど、アソオスの方は彼のことを知ってるみたいだった。それに、私たち召喚士の存在を気にかけてる」
「解決の鍵は――幻光。それとも、召喚士?」
それは、分からない。
けど、騒乱の中心には必ず召喚士が存在していたこともまた紛れもない事実。
「おーい!」
機械柱の中から、リュックが出てきた。
「聞いてよ、聞いて! 大発見!」
「どうしたの?」
「もったいぶってないで話せ」
「ふっふーん、なんと! 機械の動力源を特定したんだよっ!」
どや顔で大々的に公表。
「動力源って......ヴェグナガンじゃないのか?」
「そうなんだけど、ヴェグナガンはあのモニターのエネルギー供給に使われてただけで、えっと~」
説明に詰まる彼女から少し遅れて外に出てきたアルベドの男性が、分かりやすく要点をまとめて話す。
今まで未知だった飛空艇等の機械戦争当時の古代機械は、全て幻光をエネルギー変換して稼働していることが調査によって判明。そのため、地上の幻光のバランスが崩れると航行に異常をきたすことも。それを聞いたパインは一瞬目を落とし、真剣な眼差しで話に耳を傾けた。
「地上の魔物騒動は、幻光のエネルギー変換を応用したともの思われます。手動か、自動かまでは断定しかねますが」
「で、入り口付近で壊れてたモニターがあったでしょ? あれが、ルカとジョゼ寺院付近の通信スフィアとリンクされてたんだ」
入り口を広げるために使用した粘着爆弾の爆発で壊れたモニター。正直まさか――とは、通信スフィアが原因と事前に聞いていたためあまり思わず、やっぱりという思いが勝る。
「未確定情報ですが、ビサイド島から微弱な電波が放出されています」
「ビサイドからっ!?」
「そうそう、魔物が現れる前触れみたいな感じ」
ナギ平原の動乱、魔物騒動、再び訪れるかも知れない危機。
それも今度は、第二の故郷――ビサイド島。調査を切り上げ、地上へ戻る予定時刻を繰り上げる。準備が進める途中でパインが小声で話しかけてきた。その内容に耳を疑う。
「では、私は詳しい調査を続けます。お気をつけください――」
そう言って背中を向けた男性に対し、パインは切りかかかった。
まさかの行動に、驚きのあまりリュックが声を上げる。
「ちょっ、パインっ! 何すんの!?」
しかし、彼女の剣の刃はアソオスと同種の障壁に阻まれる。
「......な、何をするのです――」
「見え透いた猿芝居は辞めろ。誰だ? お前は――」
上空を見上げ、ゆっくりと息を吐いて振り向く。
「......勘のいい小娘だ。いったい誰の入れ知恵だ?」
先ほどまでの落ちついた雰囲気は消え失せ、憎悪に満ちた鋭い顔つきに豹変した。