FFX-2 Another After ~薄れゆく意識の中で~   作:ナナシの新人

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Mission27 ~生き証人~

 医務室から議長室に戻ってきたバラライは、テーブルを挟んだ向かいに席に腰を降ろすと、さっそく話し出した。異界で襲撃を受けて療養中の三人の容態と、技職の神・アルブの関係者お付きのベドールが去り際に発したと言う「ヴァルム」という名称について。

 

「ヴァルム......ですか。いいえ、初めて聞きました。ユウナレスカ様との話題にも挙がらなかったので、ザナルカンド関連ではないと想います」

「となると、やはり、古のベベル関連と考えるのが妥当か。しかし、アルブの技術と意思を継ぐ後継者が他にも存在していたとは......」

 

 ブリッツボールを模した爆弾は、近接戦闘に重点を置いた三人の物理防御(プロテス)越しに一時的に気を失わせる程の衝撃を与えた。

 

「強化した彼女たちの攻撃を通さない程強力な物理障壁。彼ならば――いや、どうにしても戦えるようになる他ない。遺跡調査の方は如何だろう?」

「実際に何カ所か視て回りました。ですが、いずれも朽ち果てていて人の気配は感じませんでした。絵と文字らしきものが描かれた古代の壁画を録画したスフィアの分析を、モニター班の方にお願いしています」

「そうか、判った。報告ご苦労様。急に呼び出して申し訳ない。彼の食事と部屋も用意したから、今日は休んでくれ」

「ありがとうございます。失礼します」

 

 部屋の鍵を受け取り、ぺこりとお辞儀して、議長室を後にする。見計らったように、バラライが言葉にすることを躊躇った彼――シキが姿を現した。

 

「用向きは済んだようだな」

「うん。行こ」

 

 廊下を歩きながら話し、互いに新しく得た情報を共有しあう。

 

「映像の解析のお願いに行った時に、モニター班の人が話していたんだけど。実際、アルベド族のシドさんって人と意見の相違で物別れしたことが昔あったみたい。対立した相手は、凄く頭の切れる一方で過激な思考の持ち主だったみたいで。名前は、プセマ。そっちはどうだった?」

「機械柱の中に設置されていた機械は、全て破壊されていた。手掛かりになるような痕跡は残っていなかったが、視点を変えれば残っていたとも捉えられる。過激な思考の持ち主という割には、足がつかないよう細心の注意を払い、慎重にことを運んでいる」

 

 魔物精製の技法、兵器開発の技術。防犯目的に設置した通信スフィアをジャックし、あまつさえ利用してしまう程の科学力を持っているにも関わらず、都市への大規模攻撃を仕掛けるようなことはしてこない。しかし――。

 

「だけど、ユウナさんたちの前に自ら現れた。防護服姿の助手が数人いるのに。どうしてだろう?」

「真意は定かではないが、先に対峙した科学者同様何かしらの意図があったと判断して問題ないだろう。プセマと言ったか。十中八九偽名だろうが、ベベルに潜伏していたというのなら調べる価値はある」

「祈り子様にも伺ってみるね」

「失礼。少々お時間いただけますかな?」

 

 正面から歩いてきたヒゲを蓄えた男性に、すれ違い様に声をかけられた。不思議な感覚を覚えた。落ち着きのある物腰、話し方などとは裏腹にどこか若々しさを感じる風貌。何より、声をかけられるまで意識の外にいた。

 

「はい、大丈夫です。えっと......」

「失敬。私は、評議会所属のブライアと申します。滞在していたビサイド島で、あなたの異界送りを拝見させていただきました。形式にとらわれない美しい舞に感銘を受けた所存です」

「あ、ありがとうございます」

 

 五分に満たない短い時間の会話を終え、会釈して去って行った背中を見送り、前を向く。

 

「どうしたの?」

「......今の御仁、隙がまったく無かった。おそらく、彼女たちと同等以上の実力者」

「ユウナさんたち以上の? そんな風には見えなかったけど。でも......うん、気配は独特だった」

「ブライアと言っていたな、身辺を探る。あれ程の実力者が上層部に名を連ねていないのは些か疑問が残る」

「あたしは、祈り子様にお会いしてくるね。部屋を用意してくれているみたいだから――」

 

 預かった部屋のカギを、彼に差し出す。すると、思った通りの反応が返ってきた。

 

「預ける。明朝、グレート=ブリッジで」

 

 そう言い残して、反対側へ歩いて行った。

 改めて前を向き、祈り子像が安置されている祈り子の間へと向かう。試練の回廊を抜けて、祈り子の間に通じる控えの間に入ると、幼さがの残る祈りの歌が奥の部屋から聞こえて来た。ひとつ息を吐いて、心を静めて、祈り子の間に入った。

 

「来たんだね、マヤナ」

「はい。お伝えしたいことがたくさんあります」

「僕も話したいことがたくさんある。ユウナたちの意識は戻ったみたいだね。大丈夫そう?」

「命に別状はないそうですけど、後ほどお見舞いにお伺いします。犯人は、数十年前からベベルの技術者として生計を立てていたアルベド族の方だそうです。心当たりはありませんか?」

「ゴメンね、判らないんだ。僕たち祈り子は大半の時間を、エボンの夢のザナルカンドで過ごしていたから」

 

 加えて、いつの時代でも寺院と距離の近いアルベド族は存在していたため、特別気に止めることはなかった。

 

「祈り子様、お力をお貸しいただけませんか?」

 

 フードを深く被った半透明の少年の姿をした祈り子は、すっと前に出る。

 

「祈り子の成り立ちは聞いたよね。二人の祈り子じゃない僕たちには、本当意味では力にはなれないんだ。それにキミには......ユウナも、もう僕たち祈り子の力は必要ないと思う。機械戦争でも、ザナルカンドの召喚士と召喚獣はベベルの機械兵器に負けちゃったから。出来る限りの協力はするけど、僕たちには止められない。人を狂気を止めることが出来るのは、やっぱり同じ人なんだと思う」

「判りました。必ず止めます」

「ありがとう。だけど、気負い過ぎないで。強い絆は、強い想いの力は使い方を間違えると取り返しがつかなくなるから......それを忘れないで」

 

 その言葉を最後に姿を消し、祈りの歌も聞こえなくなった。けれど、どこからか見守ってくれている。召喚士であるが故なのか、何か確信めいたものを感じていた。

 祈りの間を後にして、医務室へ向かう途中で公認送儀士のクルグムと出くわした。用事があったらしく、モニタールームへ出向くようにと伝言を受け取った。

 

「今日は、お一人ですか?」

「チュアミは、先に行っています。僕は、伝えて欲しいと伝言を頼まれて」

「そうでしたか。ところで、崩していただいて構いません。年下ですし、送儀士としても」

「あはは、そうなんですけどね。でも、急に先輩風を吹かせるのも何だかカッコ悪いかなって思って。あ、着いた。失礼します」

 

 ドアを軽くノックすると、ドアノブに手をかけた。初めて入ったモニタールームは、もっと殺伐とした空気が漂っているのかと思えば、どこかリラックスした空気。

 

「ギップル技術統括長、マヤナさんをお連れしました」

「おう、ご苦労さん。あのガードは一緒じゃないのか?」

「シキは、例のアルベド族の一派の調査に出ています。夜には一度戻って来ます」

「了解。おーい」

 

 ギップルに呼ばれ、奥でモニターに向かっている防護服にガスマスクを付けた小柄な少年、シンラがやって来る。彼の近くでは、クルグムのガードのチュアミがダチと武器の改修について話し合っている。

 

「シンラだ。ここの責任者だ」

「初めまして。マヤナでいい?」

「はい。初めまして」

「ん。さっそくだけど、お願いがあるし」

 

 シンラの願い、それは――シキの武器の解析及び技術提供。

 

「魔物の中でも最上位種のウェポン、パインが弾き返された同系統の障壁を簡単に切り裂く刀。興味あるし」

「俺からも頼む。ぶっちゃけ、今の俺らじゃ時間稼ぎが精一杯だ。情けねぇけどな」

「すみません、あたしの一存では。本人に訊いてみないと。代わりと言ってはなんですけど、あたしも多少ですが使えます」

「使える? マヤナの杖にも同じ性能を積んでるの?」

「いえ、あたしの杖は召喚士用の杖です。アルベド族の知り合いもいませんので。えっと、武器の性能うんぬんという話しではなくて......力の使い方のコツと言いますか」

「オーケイ、論より証拠といこう。チュアミ」

 

 武器を預けたままやって来たチュアミに、ギップルは訓練用の模造刀を放り投げた。モニタールームから訓練場に移動し、模造刀を手にした彼女と向かい合う。

 

「急に呼び出されたと思ったら模擬戦って。武器は?」

「自分の杖でも構いませんけど......」

「これ、使って。ユウナのニルヴァーナベースの杖。まだデザインだけで何も搭載してないからただの棒と同じ」

「判りました、お借りします」

「勝敗は、相手に有効打を与えること。ただし、頭部と急所への攻撃は御法度だ。いいな?」

 

 ギップルの確認に、二人揃って頷く。

 

「――始め!」

 

           * * *

 

 医務室のベッドから降りて、回復魔法(ケアルガ)で負傷を負った身体を癒やす。治療中に気がついた二人のケガも癒やし、三人揃って医務室を出る。

 

「裏でアルベドが関わってたなんて......」

「あのいけ好かない科学者がアルベド族じゃなかったから油断してた。だけど、技職の神はアルベド族の先祖。ベベルは機械都市、内部に入り込んでることも想定して然るべきだった。わたし達の落ち度だ」

「判ってるけどさ。アタシ、オヤジに会ってくる。話、聞いてくる」

「わたしは、シンラのところへ行く。もっと出力上げてもらう」

「さすがに危なくない? 今でも結構ギリギリじゃん」

「危険でも、かすり傷ひとつ付けられないんじゃ意味ないだろ」

「ま、そーだけど。ユウナんは?」

「私は――あの科学者を、アソオスを捜してみる」

 

 向こうから交換条件を持ちかけてきた。ひと癖もふた癖もある人物だけど、あの二人は志を共にしてはいない。もし仮に、互いを快く想っていなかったとすれば――。

 

「上手く立ち回ればいろいろ聞き出せるかもしれない。望み薄だけどね」

「ゼロよりはマシだな。じゃ、ここで」

「またねー」

 

 ベベル本部のエントランスで、三方に別れる。

 リュックは建物の外へ、パインはモニタールームへ。

 

「あれ? あれって......」

 

 議長室へ向かう途中で、見覚えのある羽織を着たシキの後ろ姿を見つけた。救助してもらった礼を伝えるために後を追うと、書物庫に入っていった。

 

「何か?」

「あ、えっと......」

 

 奥の本棚で調べ物をしている彼に振り向かれずに訊かれ、驚いて言いよどむ。気にすることなく続けた。

 

「ご無事で何よりです。お二人は?」

「別件。何を読んでるの?」

「......出ましょう」

 

 手に持った本を閉じ、書物庫を後にする。廊下の突き当たりで向き直し、訊こうとしていたことを話し出した。

 

「歴代のエボン寺院要職者の名簿を調べていました。ブライアという名の男性に心当たりはありますか?」

「ブライアさん?」

「そうですか」

 

 何かを察したような声色。

 

「その人が、どうかしたの?」

「まだ確定情報ではありません。ですが、おそらくあの御仁は――」

 

 この後に続いた彼の言葉に驚愕することになる。

 

 ――1000年前のベベルを、機械戦争を生き抜いた人物だと思われます。

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