FFX-2 Another After ~薄れゆく意識の中で~ 作:ナナシの新人
幻光河に突如と出現した魔物を討伐し、無事混乱を抑え込むことに成功。観光客に囲まれる前に、幻光河の外れに停泊させておいた飛空艇へ戻った。操縦席に座ったリュックは不機嫌面で、目の前のパネルを操作する。
「リュック。先に、キノコ岩街道へ向かってくれ。アイツらへ向けたスフィアを置いておく」
「りょーかい」
浮上した飛空艇は来た道を遡り、ジョゼ街道を抜け、情報交換に指定された「キノコ岩街道」へ行路を取った。映像スフィアで撮影した動画の編集作業を行っているパインの隣に椅子に座り、幻光河での出来事を思い返す。
「あの人、いったい何者なんだろう?」
「敵だよ、テキ! アタシたちを、攻撃してくるようなヤツだし!」
声を荒げるリュック。あまりの剣幕に、ちょっと困った感じの苦笑いをしてやり過ごす。
「やっぱり、そうなのかな? ねぇ、パインはどう思う?」
「正直、
「なにそれ、テキトーにあしらわれたってこと!? ムカつき~!」
「実際少しの時間足止めを食らっただけで、大したダメージはない。それにもし、ミヘン街道で話した隊長さんが言ってた“辻斬り”みたいな危険な相手だったら、忠告まがいなこと言わないだろ」
活動停止状態から復活した魔物を始末した少年から受けた忠告――異界には、近づくな。
「行ったところで今は、どうすることも出来ないって。どういう意味だと思う? もしかして、今回の騒動の原因を知ってるのかな?」
「もしそうだとしても、行けば分かる。このスフィアを置いたら、グアドサラムへ行って“異界”を調査すればいい。忠告に従う理由はないし、元々怪しいと睨んでた場所だろ」
「その前に、リベンジ! 絶対見つけて出して、けちょんけちょんにしてやるんだから!」
飛空艇の操縦をオートパイロットに切り換えたリュックは、通信スフィアに照合・分析プログラムを走らせ、リベンジのため捜索活動に全力を注いでいる。そうしている間に、情報受け渡し指定場所の、キノコ岩街道の上空に到着。かつて、青年同盟の本拠地があった高台に飛空艇を停泊させ、昇降機を使って谷間道へ降り、更に谷底の奥へと進んだ先の広場へ向かう。
「ここが、指定場所なんだ」
「あんま良い思い出ないんだよね、ここ......」
周りを固い岩盤に囲まれた中の広場。
その一番奥で、厳重に施錠されている扉を見て。以前、この扉の中で起きた出来事を思い出して、思わず気が滅入る。
「知ってのとおり、危険な場所だからな。今は、スピラ評議会の管理下にあるから誰も近づかない。受け渡しには最適な場所――」
封印されたている扉の近くにスフィアを隠したパインは思い出したように、目の前に鎮座する扉に顔を向けた。
「そういえば、この中も幻光で満ちてたよな?」
「ちょっ、やめてよ~。またアイツの、シューインの思念に操られでもしたらシャレになんないって!」
1000年前に勃発した「ベベル」と「ザナルカンド」の機械戦争。物量に勝るベベルが圧倒的に優位と思われたが、ザナルカンドの召喚士を相手に思いのほか苦戦を強いられ、戦闘は長期・泥沼化。膠着状態の戦況を打開を図るべく、科学者が考案した最新の機械を次々と戦場へ導入し、長きに渡る戦争の勝敗は完全に決した。
しかし、勝利の代償として、二つのモノを世界に残した。
ひとつは、“シン”。戦後1000年繰り返される悲劇の始まり。
もうひとつは、“ヴェグナガン”。一発で世界を滅ぼすほどの破壊力を有する機械兵器。造り出したベベルの科学者さえ手に負えず。ベベルの最下層、アンダーベベルに封印された。
機械兵器ヴェグナガンを奪って、ベベルを滅ぼそうと画策していた青年――シューイン。ザナルカンド出身の彼は、恋人である女性レンを目の前で喪い、自らも失意のどん底で命を落とした深い思念が後に、この扉の奥で起きた数々の悲劇の引き金になった。
「もう、大丈夫だろ。レンとふたり一緒に成仏したし」
「そうかもだけど~」
「う~ん、無理に開けることはないんじゃないかな? 厳重に封印してあるんだし。下手に触れて、洞窟の幻光が外に漏れ出したら大変だよ」
リュックはうんうん、と何度も頷く。
「ま、そこまで言うなら別にいいけど」
「それじゃあ早く用事を済ませて、飛空艇に戻ろ。もしかしたら見つかってるかもっ!」
三人へ向けたスフィアを岩場の影に隠し、飛空艇へ戻って行く。その姿を、少し離れた高台からふたつの人影が見つめていた。ひとつは、幻光河に現れた魔物を始末した、袖口に白のだんだら模様をあしらった黒衣を羽織った少年。もうひとつの人影は、純白をベースに繊細な刺繍が施された着物の上からフードと振り袖付きの薄紅色の羽織を着た、同世代の小柄な少女。
「これで、あの人たち......ユウナ様たちは、異界へ行ってくれるよね?」
「行くなと言われれば行きたくなるのが人の性。好奇心が猫を殺すと知っていながらも。現世と比べほんの少し異なる時を刻む異界なら、僅かながら時間を稼げる。手がかりは?」
「まだ何も、欠片すら見つからない。このままもし、何も見つからなかったら――」
悲痛にも似た儚げな表情を浮かべて、拳を握ってきゅっと口を結ぶ。
「1000年前と同じ道を辿っちゃう。血で血を洗う地獄のような世界を――もしかすると、もっと悲惨な未来かも知れない」
「そうならないために今、俺たちは行動している。そう願ったのは、キミだ」
「......そうだね。ちょっとだけ、弱音吐いちゃった。ゴメンね」
――気にするな、と言う代わりに話しを戻す。
「急ごう。魔物の数も増えている。これもシナリオの一部なら、残された時間はそう長くない。俺は、彼女たちのサポートに回る」
「お願い」
二手に別れる。僅かな幻光を残し、姿を消した少年は、グアドサラムへ先回り。高台を降りて、目的地へ歩き出す。目指す場所は――スピラの首都ベベル、スピラ評議会が議会場を置く、聖ベベル宮本殿。
* * *
「リュック、モニターが点滅してるぞ」
異界へ繋がるグアドサラムへ向かうため、飛空艇へ戻ると、飛行艇を降りる前には光っていなかった操縦席のモニターが点滅していた。
「見つかったのかも! あ、違った。不在着信のメッセージだね。え~と、なになに」
操縦席に戻ったリュックは、モニターに記録されていた不在メッセージを読む。
「アニキからだ。しかも、10件近くあるし。ユウナは元気か? とか。ユウナの写真送れとか、そんなのばっか」
「無視でいい。さっさと、異界へ急ぐぞ」
「あ、待って。ワッカとルールーからのメッセージがある。ユウナ、連絡しろってさ」
「ちょっと話して来るね」
「これ、使いなよ。盗聴されないように周波数イジってるあるから」
「ありがとう」
一般に流通しているモノよりも高性能な通信スフィアを借りてブリッジを出る。古代遺跡の発掘・調査をしているリュックが寝泊まりをする居住スペースへ移動し、ワッカとルールーへ回線を繋ぐ。
『そう。じゃあ今回は、召喚士としての依頼なのね。わかったわ。しばらくの間、面会は受け付けない方向で調整しておく』
『ったく、バラライたちのヤツ。でもまぁ、最近また、魔物も増えてきたし、仕方ねーかもだけどよ。そういやぁ、評議会の方から守備隊が来るって連絡をあったぞ。結構、マズい感じなのか?』
「幻光河で戦った魔物は、いままでよりも強力な魔物だった。この間、ビサイドに出た魔物みたいな」
『そりゃあ、なんだ、かなりマズいんじゃねーか?』
音声オンリーの会話だが、二人の顔は見えずとも危機感は伝っている。
「大丈夫?」
『心配いらないわ。そこまで鈍ってないから。ほら、しゃんとなさい』
『お、おう! ビサイドのことは、俺たちに任せとけ!』
「ふふ、がんばって、ワッカさん」
微かに笑って、通信を終えようとした手を止めた。
「重力魔法って、ルールーでも難しい?」
『重力魔法? そうね、難しいわね。基本の四属性から外れているのもあるけど、扱いが難しい割りに使用どころも限られるから、そもそも優先度が低いわね』
「そっか......」
『それが、どうかしたの?』
幻光河での出来事を、ルールーに伝える。しばしの沈黙の後、彼女は真剣な声色で返した。
『いい? 僅かでも危険を感じたら、すぐに逃げなさい』
『おい、ルー、そんな脅さなくたって......』
『脅し? 冗談じゃないわ。重力魔法は、定めた場所に一時的な重力場を創り出す魔法。ユウナの話しを聞いた限り、扱いが難しい重力魔法を無詠唱で唱えたあげく、その場を離れた後も一定時間同じ効力を持続させられるほどの使い手、並の相手じゃないわ。下手したら、死んでいてもおかしくないのよ』
『マジかよ......! ユウナ、すぐに逃げろよ!』
「う、うん、わかった。気をつけるね」
通話を終えたところへ、リュックから着陸態勢に入ると艦内放送が入り、着陸が完了してからブリッジへ戻る。
「何か言われなかった? 戻って来いとか」
「平気。気をつけなさいって」
「なら、問題はないな」
簡単な旅仕度を調えて、異界を管理するグアド族の族長トアメル=グアドを訪ね、未だ不安定な状態の異界へ入る許可を特別に得た。異界へ続く参拝道を抜け、異界の門を潜る。無数の幻光が舞う中異界の調整作業を行っているグアド族の邪魔にならないように移動し、死者と面会を行う岸壁の下、美しい花々が咲き誇る大地に降り立つ。
「また、ここへ来ることになるなんてな」
「あんま好きじゃないんだよね、アタシ。大切な人に会えるっていっても、やっぱり幻想なわけだし」
「うん、そだね」
目を閉じてそっと、胸に手を添える。
一定のリズムを刻む鼓動が、手に平に伝わる。
「想い出は今も、これからも心の中に残り続ける。いつでも思い出せるから」
「そーゆーこと」
「大人だな、二人とも。さて、これからどうする?」
閉じていた目を開けて、周囲の様子を注意深く観察。
「どんな感じ?」
「異界なだけあって幻光は多いよ。でも、地上にまで影響を及ぼすほどじゃない、かな? とりあえず、もっと奥へ進んでみよ」
「行くなって言ったんだ、何かあるはず。目指すは、ヴェグナガンがあった異界の深淵だな」
「よーし! って、さっそくでたよ」
花畑から異界の奥へ進んだところで、異界を漂う幻光が集まり形を紡ぎ出した。
「聖獣!?」
「いきなり大物だな。腕が鳴る」
「かったいんだよねぇ~」
「二の轍は踏まない、硬いなら叩き切るまでだ」
兜・袴姿に早替わり、背丈ほどある太刀を構えたパインは、現れた魔物に切り掛かった。
* * *
「あのさ、ちょーっち休憩しない?」
異界に入って数日が経ち、既に10体近くの魔物を倒した。
しかし、数を重ねる度に魔物も強力になっているため、疲労は確実に蓄積されていく。そして、追い打ちをかけるように、再び幻光が集まり出した。
「残念だけど、そうはいかないみたいだ」
「うへぇ~」
「あともう少しがんばろ。この先に、休めそうな場所があるから」
比較的幻光が少ないエリアを指して励ました、が――。
「う、うそ?」
「コイツは......!」
「ウェポン!?」
現れた魔物のは、全種族の中でも最上位にランク付けされるウェポン種族。朱色の鈍い光を放つ「アルテマウェポン」。反逆者の汚名を着せられ処刑されたエボンの僧官「オメガ」の思念が魔物化した「オメガウェポン」とも別種、黒紫色の不気味な閃光を放つ身体。今までとは明らかに抜き出たチカラを有する魔物を相手に、予想以上の苦戦を強いられた。
「くっ、刃が通らない! アーマーブレイクも効かない!」
「魔法もビクともしないよ、耐性ハンパない! こんなの反則だって!」
「いったん退こう、リュック!」
「目、閉じて!」
アルベド印の閃光弾を地面に叩きつけ、一時戦線を離脱。
花畑まで半分のところまで一気に戻り、上がった息を整えながら水分補給をしたり、食べ物を口にしたりして休息を取る。
「ハァハァ、
「いや、わたしたちの腕が鈍ったのもあるだけど。前に来た時より、強力になってるのは間違いない。少なくとも、さっきの魔物はいなかった」
「やっぱり、何か異変が起きてるんだ。異界の奥で――」
「忠告したはずです。異界には近づかないように、と」
不意にかけられた声に、視線が向く。
そこには、幻光河で出会った少年の姿があった。
「キミは!」
「ああーっ!」
「お前!」
立ち上がったパインはすかさず剣を構え、臨戦態勢に入る。
ワンテンポ遅れて、リュックと共に気を張る。
「今は、アレを始末することが最優先事項です」
警戒しつつ後ろを振り返ると、先ほどまで戦っていたウェポンの影が迫っていた。
「くっ、こんなところまで」
「しつこいってのっ」
「退いてください」
前に出た少年は、左の腰に差した脇差しに手を添えた。
「手を貸してくれるの?」
「あなた方を今、ここで失うわけにはいきません」
迫り来る魔物と一瞬で距離を詰める。ウェポンは、前方へ無数の閃光を放ち、牽制攻撃に出た。しかし、その攻撃はまるで自ら避けているかのように軌道を変えて当たらない。間合いに入り、刀を抜く。垂れ下がっている腕を一本、肘の辺りから切り落とし、続けざまに刀を振るい、原形を留めないほどバラバラに切り裂き、静かに刀を鞘に収めた。
「すっご......!」
「私たち、あんなに苦労したのに」
「格が違うってことか」
バラバラにされ、再生が追いつかず幻光が飛散する魔物に背を向けて戻ってくる。目の前で起きたことの警戒心から、身構る。
「敵対する意思はありません」
「幻光河じゃ、攻撃してきたっしょ!」
「先に敵意を向けてきたのは、あなた方の方です」
痛いところを突かれた。あの時、忠告を残して立ち去ろうとした背中を力づくで止めようとして返り討ちにされた。
「話しは後ほど。一度、ここを離れましょう」
釈然としない想いを抱きながら、異界の入り口付近の花畑に戻ってきた。さっそくパインが、問いただす。
「聞かせろ」
「聞かずとも、既に自覚があるのではないですか? 今の戦い方に限界があることを」
反論、出来なかった。
ドレススフィアのチカラで常時特徴を変化させながら臨機応変に戦闘を繰り広げてきたが、今回のような明らかな格上相手に対しては、その広く浅くの戦術の限界を感じていた。
「詰まるところ、この先へ足を踏み入れるにはまだ早いということです」
彼が手をかざし、突如現れた光の柱に包まれる。
「なにコレ!?」
「光りの壁!? ここから出せ!」
「ご心配なく、地上へ送るだけです。害はありません」
光りの柱が消えると同時に、二人が異界から姿を消した。
「待って! キミは、いったい何者なの......?」
「――シキ。彼女からは、そう呼ばれています。新しいチカラを身に付けたあかつきには、再びここでお会いしましょう。それでは、ご武運を」
「彼女? 待って、まだ――!」
言い切る前に、異界から飛ばされてしまった。
そして気づいた時には、先に飛ばされた二人と一緒に、異界の入り口に居た。
「どうする? 戻る?」
「戻ったところで、また飛ばされるだけだろ」
「だよね~。とりあえず、飛空艇に戻ろ。ユウナも」
「うん......」
意気消沈のまま、停泊中してある飛空艇へ。
「癪だけど。アイツの言う通り、戦い抜けるだけの新しいチカラを身に付けるしかない」
「けど、どうやって?」
「そうだな。シンラに頼んで、ドレスフィアを改良してもらうとか?」
「それだっ!」
操縦席に座ったリュックは、モニターの電源を入れる。すると、異変に気がついた。表示されている日付が、体感よりも一日以上のズレが生じていた。
「アタシたち、二日以上異界に居たはずだよね?」
「異界は、現世とは違う世界だからじゃないかな? 時の流れが、少し緩やかなのかも」
「どうでもいい。とにかく、ベベルへ向かおう」
「了解! 思い切り飛ばすから、しっかり掴まっててよね!」
浮上した飛空艇は、異界で起きた数々の疑問を残しながらも、シンラが居るベベルへ向かって進路をとった。
オリキャラ設定。
マヤナ、小柄な少女。三年前から召喚士として修行に励んでいる。
シキ、ガードの少年。マヤナのガードとして共に旅をしている。