太陽が登り始め、暗闇の世界がゆっくりと輝きを取り戻す頃。
俺は大空を全速力で駆ける。
「グルガアアアアアッ!!!」
ひゃっほぅうううっ!! って言ったんだけどとんでもない咆哮となってしまう。
まあ、もう慣れたけど。
さて、俺が誰かという話なのだが。
なんというか……リオレウスなんだよね……。
吾輩はリオレウスである。
名前はまだない。
って感じ。
気づいたらリオレウスになっていた。
しかも銀色。
つまり希少種。
前世はうっすら人間だった記憶がある。
でも本当に何も思い出せない。
モンハンが好きだったこと以外。
生粋の太刀専だったというどうでもいい記憶はあるのに、家族や友人の顔の一つも思い出せないのだからふざけている。
神のイタズラとしか思えない所業である。
これは俺が望んだからそうなったのか、それともとんでもない悪事を働いたからこうなってしまったのか。
考えても仕方ないか。
絶対に答えなんてでない。
とりあえず、俺は銀火竜に生まれ変わったというわけだ。
とはいえ、リオレウスとしての記憶もないのだ。
というのも親の記憶がまるでない。
今の俺はどう考えても成体である。
だが、気づいた時にはよく分からん遺跡にぽつんと一人であった。
おっといかん。
一匹? 一体? と言うべきか。
ほんと意味が分からない。
最初はふざけんなと暴れ回ったりもした。
行き場のない怒りをいろんなものにぶつけた。
だが、怒りにまかせて思わず火炎ブレスを出してしまったとき、あまりの喉の熱さに落ち着いたのはいい思い出。
リオレウスって火炎ブレス出す時こんなに痛い思いしてたんか。
よくもあんなにポンポン出してたな。
一生慣れる気がしない。
と、最初は思ってたのだが時が経つにつれて自然と慣れていくのだから不思議だ。
モンスターやハンターもいるだろうし、襲われたらヤバいと思い練習しているうちに慣れた。
リオレウスとしての身体が馴染んできたってことなんかな?
まあ、どうでもいいか。
俺がリオレウスとしての生を意外にも謳歌してしまっていることには変わりないのだから。
こうやって空を飛ぶのは本当に気持ちがいい。
でも不思議だ。
誰に教わったわけでもないのに飛び方を知っていたのだから。
風を感じる。
俺は自由だー!! と叫びたくなってしまう。
だが、俺はふと羽ばたくのを止めた。
すると当然、俺の身体は落下を始める。
眼下に広がるのは鬱蒼と茂った森林地帯。
そこに一部開けた場所がある。
目指すのはそこだ。
うん、ちょうどいい。
随分と慣れたものである。
最初は飛ぶことがめちゃくちゃ怖かったというのに。
重力によって俺の身体はどんどん加速していく。
凄まじい速度で迫る地面。
それでも恐怖はまるでない。
いた。
アプトノスが2匹。
水を飲んでいる。
俺にはまるで気づいていない。
いける。
余裕だわ。
アプトノスが眼前に迫り、俺は1度だけ羽ばたいて勢いを少しだけ殺す。
それでも仕留めるには十分すぎる。
落下によって加速した身体をぶつけるように、俺は脚の鋭い爪を突き刺す。
そのまま体重をかけるように押し倒した。
もう1匹の方のアプトノスは悲鳴のような鳴き声を上げながら逃げていった。
俺はそちらには構うことなく、捕らえた方のアプトノスを確実に仕留めるべく毒を分泌する。
しばらくバタバタとしていたが、次第に力が弱くなっていき、終いには全く動かなくなった。
ほんと、手馴れたものである。
朝の狩りはこれで終わりだ。
最初こそ若干の躊躇いがあったが、本能には抗えず食べてみると意外にもアプトノスは美味しい。
慣れるものだな。
俺は仕留めたアプトノスを両脚で掴み、巣にしている遺跡へと持ち帰るべく羽ばたこうとした。
その時───
『兄貴ーッ!!』
という声が聞こえた。
もはや聞きなれた声だ。
声のする方へと目を向ければ、予想通りの奴がいた。
炎のように赤い甲殻には全体的に古傷が多く、コイツの気性の荒さを物語っている。
俺と同じ、リオレウス。
その通常種。
コイツも狩りを終えた後なのか、両脚にはアプトノスが捕まえられている。
しかも2匹。
……よくよく考えたら、アプトノスってほんと可哀想だな。
こんなに狩られて。
バサバサと翼を羽ばたかせながら俺の前に降り立った。
どういうわけか、俺はリオレウスとリオレイアとは意思疎通することが出来る。
同族だからか?
コイツとの出会いは最悪だった。
リオレウスとなり、初めて襲われたのがコイツである。
まあ、今思えば悪いのは完全に俺だ。
知らなかったとはいえ コイツの縄張りに勝手に入ってしまったのだから。
ただ、俺は強かった。
簡単にボコボコに出来てしまった。
殺すこともできたが、同族のよしみでなんとなく見逃したら異様に懐かれ、兄貴ー! と慕ってくるようになってしまったのである。
『兄貴も狩りっすか? お疲れ様っす!』
『あぁ、おつかれー。2匹も捕まえたんか。嫁が居るのも大変だな』
『いやほんとっすよー。これからもう2匹の嫁の分も狩ってこなくちゃいけないんすよね。はぁ……』
そう、こんな感じだがコイツ実は嫁が三匹もいる。
とんでもないプレイボーイだと最初は思ったものだが、割と普通だと教えられた。
未だ慣れないこの一夫多妻制。
『兄貴は嫁作らないんすか? 絶対モテるのに!』
『いや……うんまあ、まだいいかな……』
さすがに、竜の嫁には抵抗がある。
まだ人間だった頃の残滓のようなものが残っているのだろう。
完全に竜にはなりきれていない。
それから、出産の時期が近づいており嫁がピリピリしており巣の居心地が悪いなどの愚痴を聞かされた後、『それじゃ俺はこれで! 失礼します!』などと言い飛び立っていった。
相変わらず子分気質な奴だなー、などと思いながら見送った。
さて、俺も帰るか。
俺は翼をはためかせ、飛び立つ。
風を感じながらふと考えてしまう。
嫁か……と。
だが、結論はすぐに出た。
全くもっていらないなと。
竜と子作りなんてさすがにハードルが高すぎる。
当分は独り身でこのリオレウスとしての第二の生を楽しむとしよう。
俺は少しだけ強めに翼をはためかせ、自らの巣に向かって加速した。
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この時の俺は知る由もなかった。
数日後、最悪にして災厄、だが後に最愛の存在となる金色のアイツと出逢うことになるなんて───。
お読みいただきありがとうございました。