オモチです。
私は最近気づいたことがあります。
とてもとても重大な事実です。
それは───別に一人称を「ボク」にしたり、語尾に「にゃ」を付ける必要は全くなかったということ……です。
いやー、びっくりですよほんと。
なんで私は真顔で「〜にゃ!」って喋れているんでしょう。
……我ながら恥ずかしすぎです。
でも言い訳させてください。
なんというか、この身体には強烈な“記憶”のようなものがあってですね、私はそれに引っ張られていただけなんですよ。
上手く言葉にできないんですけど……私にとっては普通じゃなくても、“この身体”にとって「ボク」や「にゃ」は普通なんです。
だから、その……仕方ないんです!
私は悪くありません!
……悪くない……ですよね?
まあ重大事実といってもこれだけです、はい。
ただこれそこそこ問題なんです。
だって「ボク」や「にゃ」でここまでやってきたんですよ?
気を遣ってくれてるのか、私が転生者であると知っているソルさんだってこの点には一切触れてきません。
なのに……今更やめれませんよ。
逆に恥ずかしいです。
え、今までキャラ作りだったの? とか思われたら死んでしまいます私。
というわけで開き直ることにしました。
これが普通ですけどなんですか? 的な顔でこれからも「ボク」や「にゃ」って堂々と言っていこうと思います、はい。
「クゥル……」
「あちっ!!」
さて、私のことはこのくらいでいいですね。
もっともっとお祝いすべきことがあるですから。
それは……ついにソルさん達の子供が生まれたのです!!!!
いやぁ〜おめでたいっ!!
名前は紫毒姫の『ティア』ちゃんと、黒炎王の『レオ』くんです!
しかも名付け親は私なのです。
何故かルナさんに猛烈に頼まれ、ソルさんも私に付けて欲しいと言ってくれましたので、僭越ながら付けさせて頂きました!
と言っても深い意味なんかはなくて、お姫様といったら“ティアラ”で、王といったら“ライオン”かなと……。
ま、まあ考えすぎもよくないですから!
こういうのは直感に従った方がいいと思います!
幸い、ソルさんとルナさんもとても気に入ってくれてますし。
『弱っちィ! 弱っちィ!』
『うぅ……やめてよ姉ちゃん……』
それにしても竜の成長速度には本当に驚きですね。
生まれてまだ半年くらいしか経ってないと思うのですが、もうしっかりとした自我があるどころか言葉を喋ります。
走り回ります。
これはなんでしょうか。
過酷な世界を生き残るために成長が早いんですかね?
難しいことはわかりませんが、とにかく凄いなぁって思います。
「コラー! 弟をいじめちゃダメにゃー!」
『アタシ悪くない。コイツが弱っちィのが悪い。ムカつく』
『うぅぅ……オモチ───ゲホッ』
「あちゃァァァァァッ!!」
ちょっと咳をしただけなのに、笑い事じゃないくらいの炎に包まれました。
すぐさま地面を転げ回って鎮火します。
ヤバいです。
本当にヤバいです。
さすが黒炎王。
『あ、ごめん……オモチ。やっぱりボクはだめだめだ……』
「そんなことないにゃ! 誰にでも間違いはあるにゃ!」
この子たちはとってもわかりやすい性格をしています。
姉のティアちゃんは完全にルナさん似。
気性はとてつもなく荒めです。
でもとても器用で、あの世にも恐ろしい『劇毒』を撒き散らすなんてことはほとんどありません。
誰に教わるでもなくすでに制御できています。
そして、弟のレオくんはその真逆ですね。
怖がりでとっても不器用。
くしゃみや咳をする度にちょっとした爆炎が吹き荒れます。
でも心優しい子です。
オモチー、って言いながら私に甘えてくるのでめちゃくちゃかわいいです。
『オモチ、オモチ』
「ん、どうしたにゃ?」
『見てて』
そう言うと、ティアちゃんがぴょんと飛び跳ね、そのまま空中で一回転して着地しました。
「凄いにゃー!!」
『……ふつう』
ちょっと照れくさそうにするティアちゃんもとってもかわいいです。
それにしても凄い運動能力ですね。
さすがというべきですか。
『オモチ、ボクも───イテっ』
「だ、大丈夫かにゃ!?」
『う、うぅ……イタイ……』
お姉ちゃんの真似をして、予想通り失敗するレオくん。
『アンタにできるわけないじゃん』
呆れたようにそんなことを言い放つティアちゃん。
よしよしと、レオくんをなだめてあげます。
「ダメにゃ、そんなこと言っちゃ。ティアはお姉ちゃんだから、弟にいじわるしちゃだめにゃ」
『ふん』
トコトコとどっかに行っちゃいました。
ほんと、手が焼けます。
最近は本当に困らされる毎日です。
いっつもクタクタに疲れちゃって夜はぐっすりですよ。
でも───不思議と今とっても幸せです。
++++++++++
俺は狩り殺したアプトノスと共に自らの巣へと翼をはためかせる。
きっとこれだけでは足りないだろう。
コイツを届けたらまたすぐ狩りにでないとな。
なんたって家族が増えたんだから。
あーもう大変だまったく。
……ふっふっふっ。
おっといかん、気を抜くとついニヤけてしまう。
この世界が弱肉強食の恐ろしい世界であることを忘れそうになってしまう。
ダメだな、より一層の気を引き締めなければいけないのに。
これまで以上に守るものが増えたんだ。
……とは言うものの。
あー、だめだ。
どうしてもあの子たちのことを考えるとニヤけてしまう。
でもどうしよう。
自分で言うのも何だが、俺はあの子たちに甘すぎる気がしないでもない。
まあ、今はまだいいだろ。
だけど今後あの子たちが何か悪さをした時、俺は父親として叱らなくてはならない。
強い子に育てる為には時に厳しく、獅子の子落とし的なことをしないといけないのかもしれない。
……無理だ。
絶対に無理だそんなこと。
不安で俺が死んでしまうわ。
まあ……まだ先の話だし。
とりあえず、考えるのをやめよう。
早くあの子たちに会いたいってことしか今は考えれんは。
───その時。
鼻を刺すようなその鋭い匂いが俺の意識を瞬く間に塗り替えた。
とてもよく知るそれは……血の匂いだ。
しかも匂いのする方向は、巣のある『龍結晶の地』の近くである。
多少ならば無視する。
この世界は血の匂いで溢れてる。
珍しくもない。
しかしそれは、俺くらいの体躯を持つ竜の致死量ほどに濃厚なのだ。
無視できるはずがない。
……確認するべきだ。
なんとしても脅威は排除しなくてはならない。
その結論に至ると同時に、俺は狩り殺したアプトノスを手放していた。
高度を上げながらその地点へと向かう。
近づくにつれて神経がひりつく。
だが、他の匂いはしない。
たぶん狩った側の存在はもういないのだろう。
十分に警戒しつつ、ゆっくりと高度を下げていく。
そして……その血がどの竜のものか分かった。
古代樹の森に住むアイツの“嫁”のものだった。
++++++++++
その後、ソルは周辺に捕食者もしくはハンターがいないことを入念に確認した。
しかしどちらも見つかることはなかった。
不吉な予感を感じつつ、ソルが次に向かったのは古代樹の森である。
確かめなくてはならなかった。
そして、その事実と直面する。
古代樹の森の主であり、友である火竜はもうこの世のどこにもいないのだ。
何の因果だろうか。
第4期団の転生者ハンターであるユウ・タキライ、及び大団長が“仕留めた雌火竜”と共にアステラへ帰還を果たしたのも、ほぼ同時刻の出来事であった。
お読みいただきありがとうございました。