夢の中だけの異世界生活   作:チョコミルク

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静香の告白

「マジかよ·····」

「うんマジ」

俺は五百万人に一人という数字に言葉を無くす。

 

「五百万人に一人って、ははやべー」

「君くらいになれば、ランキング1万位くらいには入るんじゃないかな?」

「ランキング?」

「あーそっか、ごめんごめん、他のプレイヤーの話をしてなかったね」

思い出した!といった表情で何か不穏そうな言葉を発するミラ。

 

「この世界に、俺以外のプレイヤーがいるの?」

「うん、もちろん君以外にも友達を助けたいって思ってる優しい人はいるよ」

「へー、じゃあ今もこの世界にいるのか?」

「そうだね、どこかにいるだろうね、まぁ半径五百メートル以内にはいないけど」

「なんでわかるんだ?」

「うーん、これ以上の説明は長くなるから君が目が覚めてからにするね、もうそろそろ目が覚める時間みたいだから」

そうミラがいたずらっ子みたいに無邪気に笑った後、俺の視界が徐々に不鮮明になってきた。

 

「うぉ、なんだ!?」

「じゃあ、現実世界で会おうか、私は君の家の外で待ってるから」

そう言って、ミラは俺に向かって小さく手を振った。

そして俺はそんなミラを見ながら意識を完全に無くした。

 

「ミーンミーンミーンミンミンミン」

見なれた天井だ。そして聞きなれたクソうるさい蝉の鳴き声だ。

 

「戻ったのか?」

俺は痛む頭を抱え、ベッドから上半身だけを起き上がらせる。

 

「ねー、湊ー!早く下降りてきてー」

すると下の階から母さんの声がした。俺はパジャマのままでいいかと思い、そのまま部屋を出る。

 

「おはよ、母さん」

「もう、おはよじゃないわよ!今日はるーちゃん達が遊びに来る日でしょ?もう九時四十分よ、るーちゃん達が来るのは確か十時って言ってたわよね?」

「あ、忘れった」

「全く、早く準備してきなさい!」

俺は呆れたような母さんの叱責を背に急いで自分の部屋に戻る。

 

「やべ、やべ、やべ、とりあえずこれでいっか」

俺はパジャマを脱ぎ捨て、タンスにしまってあった一番上の半袖とズボンなどが陳列している箱の中から適当に一つ半ズボンを取り出す。

 

そして急いで試着してみた所、上下とも某有名メーカーのナ○キだった。そのお陰でそこまで変な格好という訳ではなかった。

 

着替え終わった俺は再びリビングに戻る。

 

「今日の朝ごはんは!?」

「パンよ」

そして俺は凄まじい勢いでリビングのダイニングテーブルに座る。

そして母さんから差し出されたのは言わずと知れたバターパンだった。

 

俺はそのパンをものの二分程で完食し、そして、暇な時間が訪れた。

 

「ミスった、早く準備しすぎた」

俺が起きてからほんの十分程しか経っていない、俺は急ぎで準備し過ぎて少しだけであるが頭を落ち着かせる時間を手に入れた。

 

そのお陰で、ミラを外に待たせていることを思い出した。

 

(やべ、早く行かねーと)

俺は若干焦り、玄関に向かい歩き始めた。本当に忙しない朝である。その時、インターホンが鳴った。

俺は玄関に向かい歩き始めていたのでその流れで玄関のドアを開ける。

 

「やっほー、昨日ぶりだね」

「おう、るーか先家上がっててくれ、ちょっと俺は外に用事があってな」

「了解致しまた-!、お邪魔しまーす!」

すると玄関を開けた先にいたのはミニスカに、なんか女子に人気らしい肩あけ半袖を着たアホ毛が目立つことで有名な瑠々華だった。

 

瑠々華ことるーの声を背に俺は玄関の前にあるポストの横を通り抜けて俺の家の前にある大通りに出る。

 

すると俺の家を囲んでる高さ一メートルくらいの壁にもたれかかったミラがいた。

 

ミラは俺に気づき、物凄くだるそうに溜息を吐きながら

「はぁーーーー、今日遊ぶ約束してたんだね?じゃあ日中は話せないね、もし話したりしてたら君が気味悪がられちゃう」

「ああそうしてくれると助かる」

「じゃ、今日の夜にまた会おうね、私は夜までちょっとこの町を探索でもしてみるよ」

とミラは手を振ってから、色んな店が並ぶ方向へと歩き出した。

「お、おうそうだな」

このミラとの会話でミラが一瞬彼女なのではと思ってしまった俺は少し強がって顔をそっぽに向けたまま返事をした。

 

本当に自分には恋愛経験が無いんだなと実感する。

 

「いやでもミラが彼女かーーー!ワンチャンあるかな!?いやないか、いやでもでもでもぉ!げへへへ」

と俺は下品な笑い声をあげて、もしミラが彼女だったならばという妄想もしていた。

 

これが俺がモテない理由なのだろう。

 

「お前何気持ち悪い笑い声あげてんだよ」

「うぉ!、お前なんでいつも背後から話しかけてくんだよ!?ビックリするだろうが!?」

俺が油断しているとその油断を見逃さない狼のように俺の背後から話しかけてきたのは坊主頭でイケメンの涼真だった。

 

「えー、そんなこと言われてもな、クセになってんだお前の背後取るの」

「あー、そうですか、なら君はヨーヨーでも回しててください」

俺はカッコつけて言った涼真の言葉に冷たく返す。

 

「あの、おはようございます、湊さん、涼真さん」

「あ、おはよう静香」

「よっ」

そんな俺達の後ろからとても小さくか細い声で静香が話しかけてきた。

 

長年一緒にいる俺達がそれを聞き逃すはずも無く、すぐさま後ろを向いて挨拶を返す。

 

「その、今日は私の呼びかけに応じてくれてありがとうございます」

「いいってことよ」

「涼真の言う通りだ、だから頭なんて下げなくていい」

 

そう今回いつもの六人組を集めたのは、普段内気な静香だったのだ。

昨日その理由を聞いたが、どうやらそれも含めて今日話すらしい。

そして俺は今日とても嫌な予感がしている。

それはリマインドという世界の存在やミラの言った命をかけた、命を助けるゲームの存在を知ったからだ。

 

「まぁ、とりあえず中にはいろーぜ」

俺がそう言うと二人は大人しく俺の後をつけて家の中に入った。

 

しばらく俺、るー、涼真、静香の四人で翔と立花を待っていたら、インターホンが鳴った。恐らく翔達だろう。

 

出てみると案の定翔と立花であった。

 

「うぃーす、遅かったな、皆来てるぞ」

「ふはは、やってきました!湊の家に!」

「ごめん、結構長引いちゃって·····疲れた」

翔は若干気だるそうに立花はとても元気に俺の家に入った。

 

翔が疲れているのは多分立花に振り回されたからだろうな。ご愁傷さまです。

 

「じゃあ皆が集まった所で、静香、何で俺達を集めたんだ?」

俺は俺達を集めた張本人に話の主導権を渡す。そしてその場に一瞬静寂が通り過ぎた後、静香は口を開いた。

 

「·····私が皆を集めた理由は、私の患っている病気について話しておきたくて」

「「え!?」」

その静香の発言に俺以外の皆が動揺を隠せないでいる。

それもそうだろう、いつも変わらず話してた静香が病気だなんて誰も思いもしないことだ。

 

実際俺もミラからゲームのことを聞いていなかったら、かなり動揺していただろう。

 

「私にはね、子供の頃からある持病があってね、それはどうしても治らないものだった、そして最悪なことに私には余命が後一週間くらいしか無いんだって、だから私は一週間後、この世には居ないの、このことを先に皆に伝えておきたくて」

「なんで·····、やだよ!そんなの絶対にいや!嘘って言ってよ!私ずっと静香と一緒にいたい!静香が居ないと嫌だ!」

るーはいつもは絶対に言わないような言葉をいつにない大声で言った。いや叫んだ。

 

「おい、なんで···」

涼真は何かを言いかけたがそれを言うのをやめ口を紡ぐ。

 

「なんで早く言ってくれなかった、そんな大事なこと、俺達は仲間の筈だろ?」

「おい翔、やめろ」

そして涼真の言葉の続きを言うように少し尖った声色で翔がそう言った。

それを涼真は弱々しくではあるが翔のそれ以上の発言を止める。

「ごめん」

対する静香はただそう言って俯いていた。

 

涼真が言いたくなかったのは仲間という括りで静香を縛りたくなかったのだろう。

そして今静香とぶつかっても何もないということを分かっていたからだろう。

 

そしてしばらく俺達の間に沈黙が流れた。

そして最初に口を開いたのはとても意外な人物であった。

 

「こんな雰囲気やっぱやだ」

その声の調子はどこか震えていた。

声の主、立花は立ち上がり、俺の家のテレビが置かれている所まで行き、テレビゲームの準備をし始めた。

 

「おい!何してるんだよ!立花!空気を読めよ」

翔が突拍子もない行動をする立花を止めに入る。

「だって!後一週間したら静香がいなくなっちゃうんだよ!それなのにこんな空気のままだったら私嫌だよ!」

立花はその翔の手を振り払って、大声で言った。

 

そして立花は続けて言う。

「私のお父さんってね昔失踪したの、大量のお金だけ置いて、けどねお金なんて要らなかった、私は少しでもいいからお父さんと楽しい思い出を作りたかった、だから私は静香と送る最後の一週間を悲しい思い出だけで終わらせたくない、大切な人と送る時間を無駄にしたくない、悲しいのはもう嫌なの·····」

立花は普段見せない必死な表情を浮かべ、その目には涙が浮かんでいた。

 

「っ、そうだな俺達には悲しいことは似合わない」

そう言って次に口を開いたのは涼真だった。

 

「··········、そう、だね、しずしず、これから短い間だけど楽しい思い出いっぱい作っていこう」

「え、あぅ」

そして静香に一番近かったるーが静香の体に優しく腕を回した。

静香はるーのその行動に少し戸惑っていた。

 

「静香がぁぁーーーーーー!」

そしてさっきまで泣いていた立花はその涙を俺の家の床に垂らし、さらに鼻水もだしながら静香に抱きついているるーごと静香に抱きついた。

 

「うっ、うっ」

「あんま泣くなよ」

「泣いてねーよ!」

俺は隣にいた涼真の肩を叩く。

涼真は口ではこう言ってるが目から鼻からとんでもない量の水が溢れていた。

 

「ぐす、ぐすっ」

そして俺の後ろから鼻をすする音がした。

首だけ後ろを向くと翔が目を手で抑えながら涙を我慢していた。

しかし、我慢できなかったのか、手から一筋の涙が見えた。

 

(絶対に救ってやるからな静香·····?)

そして決意を新たに静香の方を見ると、静香はさっきまでの落ち着いた表情ではなく、どこか嫌がっているようにも見えた。

(なんだ?)

 

それは本当に極わずかな表情の変化、現に他の涼真やるー、翔、そして立花も気づいていなかった。

 

そして俺はそんな静香の表情に違和感を覚えながらも今日という一日を終えた。

 

そして迎えるリマインドでの二日目·····

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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