彼は正体不明の特殊能力を所持していた。
そんな中、ある日不意に少女二人に拘束され.....。
これは逆張り気質な少年がお約束やら死の運命など色んなものに逆張る物語である。
「ちょっ、放して下さいよぅ!僕が何やったっていうんですか!!ちょっ、誰かぁー!!学内で拉致されてるんすけど!!おい、法治国家でこんな狼藉が許されていいのかよ!!」
「良いから黙って。」
「そーそー、暴れると腕外しちゃうかもしれないしさ?どーどー♪」
腕を完全に固められて、特別棟のとある一室へと連れていかれる。
そこはオカルト研究会と書かれた部室。
....そもそもなんでたかが研究会に部室が用意されてるのかなど色々と突っ込みどころがあるが、それ以上に俺は今自由を奪われてこの場へと連れていかれているのだ。
腕外すとかイカレてるでしょ....。
いくら可愛いからってそんなこと許されるわけないだろ!!?
たとえ世の中全ての人間が許したとしても俺は絶対許さないぞ!!
男が女にやられっぱなしになるとか誰が決めた!
ノイジーマイノリティ上等だコラ!!
なんとか抵抗するも虚しく拘束されたままオカルト研究会に引き込まれる。
そこはまるで書庫のようで、質のいいテーブルなどが揃っていて、そしてその中でも一番豪華な執務机のようなものに一人少女が偉そうに座っていた。
...知らんなぁ、誰だ?
そして俺を見ると、目を細めながら口を開いた。
「よく来たわね、天崎千尋君。」
「いや、誰?てかなんで名前を知っているんだよ?」
俺が問うと、その女は偉そうに胸を張る。
わぁ!お胸がないんだ!!(*^◯^*)
なんで俺はこんなちんちくりんの前で突き出されているんだ。
そもそもコイツ高校生?小学生って言った方が正しいだろ。
「この学園のことで、私が知らないことはないの。」
「で、なんで俺はここに連れて来られたの?この小学生のおままごとにでも付き合わせる要員か?」
背後で腕を締め上げている二人に聞く。
すると、右側の女は癇に障ったのか睨みつけてくる。
そして左側の女はへらへらとした笑顔を浮かべて答える。
「その子、キミの先輩だしなんなら学園長の娘だよぉ?」
「は?マジで!?」
「...あら、気づかないのかしら?よっぽど普段の学校行事に間抜け面晒してただ時間を無為に過ごしているのでしょうね。」
不快といったように目を細める目の前の小学生擬き。
どうやら本当っぽいぞ....。
やっべ....先輩かどうかはどうでもいいけど学園長の娘を小学生扱いしちゃった....。
「すいません、ずいぶんと変わられたようで....そんな幼い姿になることで再度成長しようというのですね、流石は学園長の娘殿、脱帽の限りでございます。気を悪くされたのなら靴でも舐めましょうか?これでも町内の靴舐め選手権で3位の舌使いなんですよ。」
「...私は元々こんなナリだし、私もこの町の生まれだけどそんな選手権とか聞いたことないし、言い訳にするにしてももっとまともな言葉とかあるはずなのに、貴方...馬鹿なの?余計イラつくんだけど。」
目の前の少女は眉根を顰める。
クソ....権威に媚びようとしたのも失敗しちまった.....。
こちらが靴舐めるよって言ってるのに、そこは無条件で許すところじゃないの?
どんな教育受けてるんだよ。
親の顔見てみたいわ。
....学校のパンフ見たら見れたわ。
「...鮮音、この男の度し難き統華様への不敬。やはり腕を折るべきだったか...。」
「まぁ先輩のこと舐め腐ってるしねぇ~、折っちゃおうかぁ~。」
二人は剣呑な雰囲気を醸し出す。
あっ....これこのままじゃマジで折られる!!
「ちょっと待ってくださいよ!ここ日本ですよ!!暴力で分からせようなんて文明的じゃないですよ!!先輩としての模範となるべきではないですか!?俺みたいな下らない男の腕一本で、この場に居る人間が野蛮な人間判定が出るんだぞ!?えぇ!?本当にその統華様とやらを侮蔑してるのはアンタの方じゃないのか!!だから手を放して許してくださいお願いします!!」
なんとかやめてもらおうと思いついた言葉を必死に紡ぐ。
すると、どこかさっきまで険しい表情だった右側の怖い人が呆れ顔になる。
「....貴様、本当にやめてほしいのか??」
「当たり前でしょ!?腕折られて喜ぶ人間なんて居るわけないでしょ!?」
「でも本当は~~~?」
「キモティ...いや、本当に違うから!!」
左側の人が俺の返しを聞いて笑っている。
この人....俺で遊んでる!?
よく考えてみればこの人笑顔からまったく表情変わんねぇなぁ....。
もしかしたら、右側より左側の方がヤバいかもしれない。
「....ごほん、いいかしら?」
目の前の学園長の娘がこほんと咳き込んでいる。
気づけば彼女だけ置いてけぼりになっていた。
忘れてた。
後ろの二人との会話が案外子気味よかったのだ。
実は相性が良い説がワンちゃんあるでしょこれ。
「あっ、はい....えーと質問とかしちゃって良いんすかね?学園長の娘さん。」
「我修院よ、我修院統華。さすがに苗字くらいはおじいさまの名前から知ってるでしょ?」
「いや、知らない...。我修院って名前なんだ....。」
正直、誰も彼も校長ならまだしも学園長の名前なんか誰も知らないでしょ。
なんなら俺なんかクラスの女子生徒の名前すら噛み合わないぞ。
人の名前を覚える苦手なんだよなぁ....。
それにしたってなんだこのちんちくりん先輩。
仕草も偉そうだと思ったら名前まで偉そうじゃないか。
すると我修院は溜息を吐く。
「はぁ~~、貴方筋金入りの腑抜けね。普通自分の学校の責任者の名前とか気にならないの?...まぁいいわ。貴方が私に質問したいことと言えばただ一つ。なぜここに呼んだのか....そうでしょ?」
「えぇ....まぁそうですけど。....あのっ、流石にこの程度はだれでも予想できそうですよね?そんな風に得意げになられても反応に困るんですけど....。」
目の前の彼女は無い胸張って、したり顔をしていた。
はえ~、かわいい子でもしたり顔見たらイラつくすんねぇ~。
「黙ってろ。」
「はい....。」
右から殺意籠ってそうな声色の囁きが聞こえてくる。
流石にしゃべり過ぎたか。
しかし、当の本人は気にしていない様子だ。
「出来た時にはどのような簡単なことでも誇るべきよ。それが自分を大切にすることの簡単な第一歩なんだから。...そんなことよりも、私があなたを連れてきた理由。それは....。」
それは.....?
俺が我修院の言葉を待っている間、独特の間が開く。
そしてその瞬間が訪れた。
「それは...あなたが私たちと同じであるということが分かったからよ。」
「同じ?」
「えぇ。...昨日、もしくは二日前の6時半から7時40分にかけて貴方裏山で何をしていたのかしら?」
う、裏山!!?
彼女の言葉を聞いた瞬間、背中に嫌な汗がじっとりと流れる。
な、なんで....あの時、誰も居なかったはず....。
「な、何のことっすかねぇ?ぼ、僕は昨日も二日前のその時刻も家で過ごしていたような....。」
とりあえず誤魔化すことにする。
すると、彼女はポケットからとあるものを取り出す。
それは一枚の写真を取り出した。
「あら?じゃあこれは何かしら?最終地球ガーディアンさん?」
そこにはぐったりとしている異常にデカいトカゲのような生き物を前に、したり顔でその生き物の写真を取る俺の姿。
ア”っ”っ”!!!
これは、間違いない確実にバレて....いやでもなんで.....。
「にゃ、なんのことだか分からぬな....人違いではござらんか?」
「うわぁ~♪目に見えて動揺してるねぇガーディアン君。」
左側の人はめっちゃいい笑顔でそんなこと言ってくる。
まずいぞ....もしかしてまさか....。
「あ、あんたら....まさか、見たんすか?俺が....森でやってること...しかもその名前知ってるって...見てるだけじゃなくて聞いてるじゃないか!!」
「えぇ、そうね?アレはとても面白かったわ、貴方。」
目の前の偉そうなちんちくりんも良い笑顔してやがる。
そんな....。
今にも膝が震えて、地面に付いてしまいそう。
それほどまでにこれは、俺にとって致命的なことだった。
だってそうだろお前....人目がないと断定した状態でやってるイキリなんて見られたら頓死ものだわ。
しかも写真の場面はあの時。
あんな...あんなところ見られたら俺は、.....死ぬしかない!!
◇◇◇
<回想>
暗い森の中。
普通であれば、こんなところに居るのは肝試しをしているウェイかガチ不審者くらいだろう。
しかし、俺はそのどちらでもない。
それは、俺が真実に近いから。
目の前にはまるで普通ではあり得ないサイズのトカゲが鼻から血を流しながら倒れている。
そして、この手にある能力。
これが俺が見つけた非日常。
代り映えのしない日常にふとして湧いてきた劇薬のようなスパイス。
それは、誰も見やしないという事実から俺の心を大きく躍らせた。
「地球防衛完了....ってな。へっ、なんかいかつい見た目してたからビビっちゃったけど、オラ!こんな風にあっけなくてやられて恥ずかしくないんすかぁ~アッハハハハ!!」
その死骸を足蹴にしつつ、写真を撮る。
すると、足蹴にした死骸がバラバラと崩れて消えていく。
「...毎回これ、なんで消えてるんだろ?やっぱ普通の生き物とは違うよなぁ....。いやっ!んなことどうせわかんねぇし、どうでもいいか!!まっ、とにかく俺の勝ちってことでガハハハハ!」
そう言って思考を放棄して、高笑いを上げた。
この現代社会、ゲーム以外ではこんな風に完膚なきまで勝つことなんかあり得ない。
だからこそ、今めっちゃ楽しかった!
どのくらい楽しいのかと言えば、ついテンション上がって他人に聞かれたら恥ずかしい名乗りを考えてしまうほどに。
「これにて、一件落着!最終地球防衛ガーディアン帰投!!」
ガキの頃に特撮の防衛隊を見て、考えていた名前。
それを使うと童心に変えることが出来る。
まっ、こんな森の奥地で言っていることなんか誰か身近な奴に聞かれている可能性ゼロだし、楽しまなきゃ損だよなぁ!!?
◇◇◇
何が損だよなぁ、だよ馬鹿か!?
森の中で叫ぶとか正気じゃねぇだろバーカ!!
ガキの頃の思い出に浸るとかきっしょいし、それよりにもよって同じ学校の女子に見られているとかきっついわ!!
普通に自殺物なんだよ!!!
「くっ....殺せ!!」
「ほう....良いだろう。お望み通り殺してやる....。」
「やっぱやめてください。死にたくないです。」
右側の人が俺を珍しく笑みを浮かべる。
はえ~、笑顔って本当は攻撃的な表情ってのは本当だったんだぁ~。
恥ずかしいところがバレた所で本当に殺してくれとか思うわけないだろ!!
それだったら今まで俺何回も死んでるわ!!
黒歴史なんか腐るほどあるしね!!
「あんな生き物の形したものにイキリ散らかして本当に傑作だったわ。それにネーミングセンスも小学生が考えてそうなセンスのない物で、久方ぶりに笑ったわね。何を食べて育ったらあんな人間に育つのかとても興味が湧いたわ。喜びなさい。」
「そんなことで喜べねぇ....。」
そら名前自体、小学生の時に考えていた物だし....そもそも盗み見ているのに勝手じゃないか?
中々の皮肉飛ばしてくるじゃないか、このちんちくりん。
「...すぞ。」
「えっ、なに!!?さっきからこの人怖いよぉ!!あなた、俺と初対面でしょ!!」
殺意込めてるならせめてちゃんと大きな声で言えよ!?
小声の分、怖いんだよぉ!!!
「あはは~、八千代ちゃんは統華ちゃん第一だからねぇ~。」
なんだよクレイジーサイコレズかよ。
それにそれは初対面の俺に辛く当たる理由にはならないでしょ!?
なんで当たってくるんだよ、意味わかんねぇよ!!
「落ち着きなさい。...そんな貴方をここに呼んだのは、私たちが貴方が能力を使っているのを見たからよ。ちょうど、こんな風にね....。」
そう言うと、手を翳す。
すると、目の前で彼女の手の平が白く雪のような粒子を微かに放ち始める。
そして、それをまるで頭から体にかけて擦り付けるようにする。
「....いない。」
すると、その瞬間俺の目の前から彼女が端から居なかったかのように存在を消失する。
...いや、まさか同じと言った時からもしかしてと思ってたけど....。
「俺以外にも、...能力を使うことのできる人間が居たのかよ。」
「えぇ。そういうことね。」
「おわっ!?」
俺が言葉を述べると、急にお互いの鼻が付いてしまいそうな距離に彼女が現れる。
驚き、仰け反ると彼女はどこか満足げに執務机の方に身を引いた。
透明人間的な能力なのか....。
....そう考えていると右側の締め上げる力が強くなった。
せめてなんか言ってもらえませんか.....?
「そうそう、私とかはこんな細腕なのに本気出せば大木とかへし折れたりするんだよぉ~?すごい~??」
「そんな人に締め上げられていると考えると怖くて漏らしてしまいそうです。」
なんか左の先輩がしきりに褒めてほしそうに言ってくるが、俺は正直に自分の気持ちを吐露した。
大木へし折れるなら人の腕なんか勝手に折ることが出来るだろうしな。
怖いよ...ただ怖い....。
「えっ、えっ...あ、貴方はどうなんですか?右の先輩?」
俺は怖い左の先輩から視線を逸らして、右の先輩に視線を向ける。
すると、先輩は不快そうに眉根を寄せると視線を逸らす。
「....貴様なんかに教えてやる必要ない。」
どうやら、本格的に嫌われてる様子。
嫌いで構わないからせめて能力教えてよ...。
もう片方も肉体派な能力だったらと考えると怖いよ....。
「それで貴方は確か....足とか腕に纏っていたわね。どういう能力なのかしら?」
我修院先輩は俺にそう聞いてくる。
俺の能力。
確かにこういうの聞かれた時はかっこいい感じで答えたい。
だけど、それは叶わない。
なぜなら....。
「....わかんないっす。」
「それは、言いたくないってことかしら?」
「いや、純粋になんかすごいからだ動くしって感じでどんな能力かとかよくわかっていないんですよ。自分でも。」
マジだった。
なんかいい感じに体が動いたりするけど、これは身体強化なのか?
いや、でもなんか前牡蠣食った時とかは腹の辺りが光ったし、よく分かんねぇんだよなぁ。
「...彼は本当のことを言っているのかしら?」
「...えぇ、統華様。この男の言っていることに偽りはないです。」
なぜか、俺ではなくて右の先輩が頷いている。
「えっ、それがあなたの能力なんですか?」
「黙ってろ。」
「はい....。」
もはや会話すらできないよ。
その余地すらないよ....。
でもどうにもなんか左側のムキムキ能力お姉さんとは違って腕力とかには関係ないみたいなのでそこは安心だった。
「...そう。まぁ別にどんな能力かは重要じゃないし、構わないわ。貴方にはこのオカルト研究会に入ってもらいます。」
「なんでっすか?正直こんな風に腕決められてて入りたくないんですけど...それに初対面じゃないすか俺たち。それとも俺が能力を持っているからですか?何のために??」
俺が首を傾げていると、彼女は薄笑する。
「あら、そんなこと同じ能力を持っている貴方なら分かっているものと思うのだけど?」
なんかわかるよな?的なニュアンスで言ってくる我修院先輩。
いや、そんなこと言われてもわかんない物は分からないんですが....。
「はぁ....察しの悪い男ね。私の口から言ってあげるわ。...私たち能力者は、自分の未来の死が見えるの。」
....はい?
突然の突飛な発言につい目を丸くする。
そんな俺をさておいて、先輩は口を開く。
「えぇ。いくら回避しようとも私たちは一日の終わりに夢でいつかも分からない自分の死を見るのよ。それは貴方の後ろの二人も一緒。....だからこそ、私たちはお互いにその死の運命を回避するために支え合う。それがこの部活の目的よ。」
死の運命とか....。
いまいち信じられなくて、左側の先輩を見る。
「ホントだよ~。まぁ、みんなが居るから不安じゃないんだけどねぇ~。」
「そう...すか。」
俺がどうにも言えず、当たり障りのない返事をする。
すると、目の前の先輩は手をこちらに差し伸べる。
そして不敵に笑っている。
「今まで、一人で戦っていて怖かったでしょう?だからあんな風に何かに当たるしかなかった。...でも、安心なさい、私たちがそばに居てあげるって言ってるのよ?天崎千尋君。オカルト研究会に入りなさい。そうすれば、この能力について分かっていることを教えてあげるわ。」
...どうにも彼女がここに呼んだのは少なくとも俺のことを考えた上だったらしい。
しかし、そうなるとどうしよう。
俺.....、そんなん知らないんだけど....。
少なくとも今まで生きていて、夢で死の運命とか見たこともなければ感じたこともない。
つまりは不安に思ったこともないのだ。
「あ、あの....死の運命....ですか?」
「えぇ、私たちの部活ではまずグループラインでその内容を張り付けることになるわね。」
先輩が活動について説明をしだした。
なんかやる気だなぁ....。
これからすることが悪い気がしてきた。
「あの...俺、今まで生きてきた中で死の運命とか見たことないんですけど。」
「またまた....八千代、本当?」
俺の言葉を笑って流しながらも、右の先輩に聞くちんちくりん。
すると、どうにも言いにくそうな顔をしながらも八千代先輩は答えた。
「そのっ...統華様。どうも....奴の言葉は真実のようです。この男は....私たちが見ていたはずの死の運命を見ていないと....。」
「えっ、なにそれ。じゃあここに呼んだことどころか、私たちの能力者の前提が崩れちゃうわ。」
どうにも予想外だったらしく、ちんちくりん先輩は面食らっていた。
「えっ、嘘よね?死ぬまではなくてもなんか危ない目に合う夢とか....見たことあるわよね?ね?」
「えっ、いやマジないっすよ。」
「そんな....あり得ないわ。....どうしましょ....?」
ちんちくりん先輩はこちらを見て、聞いてきた。
いや、そんなこと俺に問われても....俺が聞きたいくらいだし。
「死の運命を見ないということは、この男を入れる必要はないと思います、統華様。決断を....。」
「えぇ~、それって八千代ちゃんが統華ちゃんの近くに男近づけたくないだけでしょ~?もしかしたらまだ見てないだけかもだし、なんならこの能力についてなんも知らなそうだし、とりあえず入れてあげたらいいじゃん~?」
あの超然としていた先輩が狼狽え、しまいには右側と左側の先輩の意見が食い違い始める。
そこから言い合いが始まり、状況はカオスの様相を呈し始め、その中で何もわかっていない俺は置いてかれているのだった。
◇
「まだ腕が痛いんだけど....。」
家の前。
外はすっかり暗くなっていて、虫が鳴いていた。
あの後とりあえず能力については教えたいし、時間も遅いから明日また部室に来いとか言われてオカルト研究会からは解放された。
確かに能力については興味があるけど、右の先輩も左の先輩も怖いので正直行くわけないでしょって感じなんだが。
鍵を取り出して、ドアを開ける。
すると、おいしそうな匂いがほんのりと俺の鼻腔を刺激した。
誰か....俺の家でごはんを作ってるのか.....?
もし、そうだとしたら心当たりがあるのは一人くらいしかいない。
俺は、リビングへと歩みを進めて扉を開いた。
「あっ、お帰りなさい!遅かったですね....今日も森の方に不思議探検へ?」
キッチンでエプロンを付けた少女はこちらに笑顔を向けたかと思えば、呆れた表情で見つめてくる。
そんな彼女に対して、俺は疲れた表情をありありと見せて返答した。
「なんか先輩に部活に入れって絡まれてさぁ.....。明日も来いとか言われたんだよ.....。」
「まぁ、それは大変でしたね...。ごはん出来てますけど、先にお風呂にしますか?」
笑みを浮かべて、彼女は俺に聞いてくる。
見れば、料理ももう完成寸前だ。
であれば、風呂に入ると待たせることになってしまうな。
「いや、先に飯にするよ。....いつも料理ありがとな、梢。」
そう言って、俺はわざわざ両親が出張で居ない俺の為に料理を作ってくれる幼馴染にお礼を言う。
すると、彼女は笑顔で返答した。
「いえ、一人だと寂しいでしょうから。...食器とか出してもらってもいいですか?」
「良いぜ、料理は出来なくても食器を出すことなら褒められたことあるんだ。」
冗談を飛ばしながらも、棚から食器を取り出す。
すると、不意に背後の梢が口を開いた。
「千尋さん、....今日も十全に一日過ごせました?身体とかに何か違和感とか。」
「別にないけど....その心配の仕方なんか母ちゃんみたいだな。」
俺が心に感じたことを言うと、彼女は微笑む。
「フフッ....そうかもしれませんね。」
何がおかしいのか分からないけど、彼女はそう言って笑っていた。
むろん、彼女は俺の能力のことなどは知らない。
だからこそ、身体のことなどを聞かれると少しびくついてしまうのだった。
能力物の癖に自分の能力知らないし、その癖人目のつかないところではイキってる。
なんだこの男.....。