妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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11.再臨せよ、伝説のバスターズ

 特攻野郎Bチーム。それはいつしか、伝説と呼ばれたバスターズチームの名だ。それ以前も以後も、誰も彼もが“伝説”と認めうるチームは存在しない。

 

 

 ブリー隊長、ふぶきちゃん、ホノボーノさん、そしてでんじん親方。ひとりひとりがその役割内のプロであり、4人揃えば文殊の知恵程度を簡単に超越するだろう。

 

 

 そんな彼らは引退後、様々に暮らしていた。

 

 

 彼らを再び引き寄せることになったのは、落ちこぼれ弱小バスターズチーム『赤猫団』受付のバイトとなったふぶきちゃんだった。

 

 

 ふぶきちゃんが、まだ弱かったジバニャンらを心配し、鍛えられるように協会へ人生を送ったのだ。以降、隊長兼司令官をブリー隊長が(つと)め、適切なメンバー組み換えなどをホノボーノさんが決め、適切な装備開発をでんじん親方が作成するようになり、(またた)く間に一人前のバスターズになっていった――――――

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「クソッ……情報を求めに人間界(あっち)に行ったが妖怪がいなかったぞ……どこかの地域では鬼時間もあったらしいが…………姫、親方の情報はなにか掴めたか?」

 

 

「駄目ね、親方の妖波でレーダー探知しても全く反応がないわ。ホノボーノさんは?」

 

 

「なかなか苦しいボーノー……どの書類にも役立てそうなものは…………

 

 ……どこ行ったんボーノ? でんじん親方…………」

 

 

 

 3人はバスターズ協会地下2階舞台下部屋にいる。理由は勿論、消えたでんじん親方を捜索するためだ。それも、ウィルオーウィスプを探すために必要である。彼の開発力があれば、未確認であれ妖怪ひとりの情報を得るなんて容易い。奴が妖怪であれば、確実に。

 

 

 この部屋は、危険性のある妖怪の情報を絞り出すための部屋だ。この2階上の舞台では、数多くのバスターズが集まり、時に事件解決のためにまとまり、情報の共有を行う。そのため、確実かつ最大限の情報が必要であり、次いで迅速に対応できるように、比較的安全な地下にある。人間界であれば地下だと電波どうこうで難しいだろうが、ここは妖魔界。電波ではなく、()を詠む“妖波(ようは)”を使用する。

 

 

 妖波、ある天才妖怪が見つけ出した、魂から発せられる特殊な波紋(・・)だ。これのおかげで、ご都合主義感の拭えないレベルのちょっとした無茶は通用するようになった。まさに革命のような発見だ。

 

 

 しかしそれを持ってしても、でんじん親方はなぜか見つからない。

 

 

「考えたくないが、やはりそういうことだと、そういうことだと言うのか…………ッ!」

 

 

「そ、それだけは、ありえないボーノ……」

 

 

「だけどそうとしか思えないわ……」

 

 

「だが憶測では埒が明かない…………仕方ないな……“あそこ”に行くぞ」

 

 

 ここよりさらに地下、協会最深部屋には、紅白で対となった巨大像がある。名はそれぞれ、“赤魔寝鬼(あかまねき)”と“白古魔(しろこま)”。赤猫団と白犬隊を司ると言われており、実は、このふたつのチームからバスターズは始まり、約60年間引き継がれ続けてきたのだ。

 

 

 この像は特殊な力を持っていると信じられ――いや、実際に特殊な力がある。それも、0を1にできる巨大な力だ。

 

 

 0を1にする。言葉にすれば単純だが、1を100にするよりも桁違いに難しい。有をただ増やすのではなく、無を有にする。0%(絶対にない領域)1%(可能の範囲)に改変させる。その影響力は神の御業と呼んで差し支えない。

 

 

 その神に求めるは、裏切に対する鎮魂(・・・・・・・・)

 

 

 同時に、引き抜いた存在に対する、罰を。

 

 

 彼らは最悪の場合を、ウィルオーウィスプに(ほだ)された可能性を考えるしかなかった。

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

「なぜだ……なぜ……私にはこいつを倒すことができないと……そういうことだと言うのか…………!?」

 

 

 

 2対の龍を従える妖怪はそびえ立つ巨大な敵の前に膝をつく。妖気が底を尽きかけ、龍は力なく大地に伏せている。

 

 

 傷だらけのオロチへ向けて、低く出の早い《カミソリ足払い》が飛ぶ。

 

 

 

「喰らうニャ! 《アカネコ(ビーム)ランチャー》!!」

 

 

 

 Bスーツ付属の小型ビームランチャーから放たれた橙色のジグザグの軌道を描くビームがレッドJの巨体めがけて多段ヒットするが、頑強な筋肉がそれを跳ね飛ばす。それでも、オロチに対するトドメの一撃(・・・・・・)は防ぐことはできた。

 

 

 

「熱熱熱熱うぃぃぃぃぃぃいっす!!?」

 

 

 

 ウィスパーを襲うのは、直下の地を割って炎が連続的に噴出する《獄炎ストーカー》。高速的で回避の難しい技はレッドJの十八番(オハコ)である。

 

 

 

「オロチさん大丈夫ズラ!?」

 

 

 

 隙を見てオロチを《回復の術》で回復させる。完全に傷を癒せ、尽きかけの妖気を回復させるほど有能な技ではないが、それでも幾分マシにはなる。

 

 

 

「くっ……すまない、コマさん。もう、大丈夫、だ」

 

 

「駄目ズラ! 今の身体じゃまともに戦えないズラよ!?」

 

 

 

 相当消耗したとしても彼らを、レッドJは待ってくれることはない。

 

 

 レッドJの必殺技《地獄の怨念玉》がこちらに向けられる。必中の紫玉は一撃で大型車を廃車に変え、高耐久のタンク妖怪すらも瀕死にする。

 

 

 全員が死を自覚するような、覚悟するような間もない。ただ確実な敗北だけが彼らを襲う――――――

 

 

 と、思われた瞬間。渾沌(こんとん)としたエネルギー弾が凍りつき、目前で地に墜ちた。

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