妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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12.髪留めに映る記憶

 “ウィスマロマン”。多くのバスターズを叩きのめしたビッグボス。その生命力は凄まじく、分裂・縮小した存在である“ミニマロマン”から別個体を生み出すことすら可能とする。

 

 

 それは度々『ムゲン地獄』に()とされるが、時が経てば、当然のように底から這い上がってくる。たとえ、閻魔の目が向いていようとも、何故か確実に脱出される。

 

 

 だからと言って放っておくわけにもいかず、だがこればかりはどうしようもない。できることと言えば、毎度、強力な封印妖術とともに地獄に堕とし続けるだけ。しかしバスターズには鬼時間の対処があるため、そこまで余裕がない。だからこそ駆り出される頻度をある程度抑えるため、マスターニャーダ直々に、最大出力で封印するのだ。

 

 

 だが誰もが認知する通り、マスターニャーダは歳を重ねすぎてしまっている。そこで軍配が上がったのが、特攻野郎Bチーム結成前の、単独でバスターズをするブリー隊長であった。それが、30年以上前の話。

 

 

 

「そのメタボボディはいつになれば引き締まるんだ!」

 

 

「ブリーよ、あれは封印しきれん大きさじゃ……一体どれほどの妖力を吸ったと言うか……!」

 

 

 

 一定の条件下にある妖怪の妖力を吸い上げて肥大化する、ウィスマロマンの能力のひとつだ。その条件がわかれば対処は容易いが、そう簡単ではなく、赤猫団・白犬隊や仲間たちの尽力により月へ吹き飛ばした今現在でさえ判明していない。ミニマロマンにも同じ能力が備わっており、いざ追い詰めたとて分裂、散乱されれば一瞬で元通り……時には強化さえして返り討ちにあう可能性もある。ジバニャンたちが倒し、宇宙に飛ばすことで再起不能にさせることができたのは、本当に奇跡としか言いようがなかったりする。

 

 

 

「うぃっすっすっすっす…………まだ足りない(・・・・・・)……足りないでうぃっすぅ〜〜〜!!」

 

 

「っ! まずい!」

 

 

 

 ウィスマロマンが見据えた先、マスターニャーダとブリー隊長の遥か後ろには、少女――“ゆきおんな”がいた。彼女は『進化する妖怪』の中でも特異な種類に位置しており、『白銀の髪留め』と呼ばれるアクセサリーを所持することで“ふぶき姫”へと進化し、手放せば簡単に元に戻る。進化は基本的に一方通行である中でのイレギュラーだ。

 

 

 

「うぃっすううううううううう〜〜っ!! 奴の妖力も喰らうぃすううう〜〜〜!!!」

 

 

 

 振りかぶった腕から、野球の投手のように、数十数百体のミニマロマンを高速で放出させる。狙いは勿論、ゆきおんなの妖力だ。進化のイレギュラーゆえか、彼女自身、相当の妖力を持っている。それを奪ってしまえば超強化してしまい、ビッグボスにとっての邪魔者、バスターズを壊滅させることになるだろう。

 

 

 

「マスター!」

 

 

「わかっておる! 《無限のホースパワー》!!」

 

 

 

 杖から電撃のような妖術が放たれる。その攻撃は敵に応じ、ほんの少し軌道を自動的に変えることで、多数の雑魚敵を簡単に撃墜させる。しかし、あまりにも数が多すぎた。少数のミニマロマンを通してしまう。

 

 

 だがミニマロマンの動きより早く、ブリー隊長は走る。怯える少女の前に立ち、最大限の渾身の一撃を放つ!

 

 

 

「ビクトリアーーーンッ!!」

 

 

 

 轟声で気合の入ったその拳は大気を揺らし、波動を生む。触れなかったミニマロマンでさえ耐えず消滅した。

 

 

 

「全く……不用意に出歩くのは危ないぞ、嬢ちゃん。バスターズ協会から注意令が届いてるはずだしな。何? 気になっただ? だったら眼鏡か双眼鏡を買って、遠くから見ることだな」

 

 

「妖力の半分を使うのが悪かったか……油断したうぃす……だがまだ誰かの妖気を奪えば…………ワタクシはまだ終わっ――」

 

 

「終わりじゃよ。封印される可能性があることを、一向に学ばんのう……それはそれは楽で良いのじゃが。できるだけわしっちを(いたわ)ってほしいわい」

 

 

 

 人間が使うのとはまた違った文字が刻まれた紙札に、妖力を込める。『強封妖術式札(きょうふうようじゅつしきふだ)』、一時的に対象の肉体を封印し、数時間後に肉体は開放されてしまうが、同時に妖力の99%を強制封印する札。数ある封印妖術式札の中でも特に強力で、妖気の洗練された妖怪でしか扱えない高等なものだ。

 

 

 

「マスター。俺はこいつを送るから、後は頼みます」

 

 

「うむ」

 

 

 

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「――なんか懐かしいのを想い出す光景ね。違うのは、私が護る立場ってとこかしら?」

 

 

 

 仲間を背にして、レッドJの前に立ちはだかるのは、いつか少女だった妖怪だ。

 

 

 

「ふぶきちゃん! なんでここにいるニャ!?」

 

 

「ふぶき……か。油断するな、奴は予想以上に強い…………あの紫の弾には気をつけろ……」

 

 

「別の調査をしていたはずでうぃすがなぜここに!? それにいくらふぶきちゃんでも……」

 

 

 

 ジバニャンは驚いている様子を見せる。ウィスパーの言うように、別行動をしていたからだ。状況を飲んだオロチは、早々に《地獄の怨念玉》の注意をする。

 

 

 

「あなたたち、せっかくの休暇なのにね…………全く……不用意に出歩くからこーなるのよ。それにウィスパーは忘れたわけ? 私は元特攻野郎Bチームの“キラ雪姫”よ」

 

 

 

 眼鏡のレンズを丁寧に拭きながら、ふぶきちゃんは豪語した。

 

 

 透き通る美しい氷が、周囲を凍結する。

 

 

 掛け直した眼鏡の角度を調整し、一言、呟く。

 

 

 

「私たちと相対したことを後悔させてあげるわ、ビッグボス」

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