反撃開始の瞬間、レッドJの左脚が凍りついた。表面だけでなく、芯から凍っている。ふぶきちゃんの足元から拡がる、連山状の氷属性の妖気に触れたのだ。
「もんげー! ビッグボスの足がかちかちになっちまったズラー!?」
「これが、《
妖術には、段階がある。全属性に例外なく、三段階の妖術があり、例えば火属性には《火花の術》、《火炎の術》、《れんごくの術》があるが、さらに各“秘術”と呼ばれるものがある。妖気の量が多いと可能な、通常より広範囲に出せるようになる技術だ。
レッドJの《獄炎ストーカー》は、《れんごくの秘術》の一種である。対象の真下に連続で炎を吹かす、広範囲で使用できる秘術ならではの使い方だ。
だがその上で、超高密度の妖力を持つ者だけが使える“真術”がある。火属性のそれは《
ふぶきちゃん以外で使用できる妖怪が数少ない《零凍の真術》。それは《あられの術》、《氷結の術》、《ふぶきの術》とある氷属性内での最上位妖術。真術の前には、誰もが熱を持っていられない――――――
「糞牝がァーッ!」
レッドJが暴言を発する。簡単には潰せないと理解すると同時に、その力が奴の逆鱗に触れたらしい。
コマさんが「もんげー! 喋ったズラ!」と喚いている。それほどの元気があるのならまだ戦えるような気もするが、余りある元気と底尽きた妖気、それらは比例するとは限らないらしい。
周囲に、肌に突き刺さるような冷気が
魂を喰らう紅き獣は、圧倒的な差を前に、けたたましく
その瞬間を見逃すはずもなく、奴の全身に極低温を滲み付ける。が、ジバニャンが、
「待つニャ! ……レッドJ、誰から極玉を与えられたのニャ? 黒鬼と連続的に自然の極進化が起きるなんてありえニャい」
「ふっ……! 負けたからとそれを言うほど、我らは良心的でない」
「じゃあケータは、ケータは知らないズラ?」
「変な寝癖の付いた、ふっつーの人間でウィッス」
「なんだ貴様、ケータを
返答はない。だが否定しないのは、つまりそういうことなのだろうと考えられた。
だがそれに異を唱えるのは、ゲンシャだった。
「違うよ……この妖怪は違う。多分、極玉を流している奴が攫ったと思う。まあボクの勘なんだけど、自分で言うのはあれだけども正直よく当たるんだ。もしそうだとしたら、犯人はウィルオーウィスプ…………!」
「――閻魔の血族サマは味方してくれるのかァ? 嬉しいねェ」
瀕死に限りなく近い状態でありながら、全筋肉を奮わせ、大きく跳ぶ。火属性の妖気、それで時間をかけ
「やばっ逃したら隊長に怒られる」
「ガハハッ! 良いぞ……閻魔の血族に免じて教えてやろう……! ウィルオーウィスプには関わらねェほうが身のためだ! そしてあれは妖怪なんてちゃっちい存在じゃない……奴こそ始祖の――ッ!?」
前触れもなく、強大な青い炎が、レッドJの内側から爆した。
「野郎が……俺の極玉に細工してやがったかッ!」
「何だと!? ふざけるな! 貴様にはまだ聞くことが――」
「糞ッ! 元から利用するためだったってのかッ! 糞がァッ!! あの方に手出すのだけは許さねェぞ! ウィルオーウィスプ!
断末魔とともに、レッドJは消滅した――――――
「あの方…………恐らくマイティードッグだろう。奴はその部下だ」
「ってか何よあいつ? ウィルオーウィスプ・ウィスパー? ウィスパーあんたまさか……」
「何でぇーっ!? ケータきゅんに誓って、ワタクシが犯人なんてありえないでウィス!」
「もしかしてゲンシャ様もわからないわけ?」
「ウィルオーウィスプ……奴に“ウィスパー”なんて
「よ、よくわかんないことになってきたずら……」
「ああ。それに、結果的に奴を討伐したと言うのに、
鬼玉は、鬼時間内の定着型妖気の結晶だ。鬼時間に活動するビッグボスがそれを吸収して自分の妖気とした時に出る結晶の絞りカス……討伐の際にそれが出ないだなんて、見たことも聞いたこともないぞ……!」
いつの間にか開始していた鬼時間は、これまたいつの間にか終了していた。
まだ何ひとつ解決していないが、謎だけが無限に増えていく。
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