妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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【第3章】囁く火の人魂(たま) −ウィルオーウィスプ−
15.過去からの手掛かりと……


■■を嫌う(ヘイトピー)記憶保管所(アーカイブス)

 

 

 

 見つかった妖怪ウォッチは、破損箇所があった。

 

 

 レンズが右半分割れ、それを開くボタンは壊れて撥条(ばね)が露出している。ベルト部分が引き千切られ、全体的に擦ったような傷が刻まれ、熱で少々変形していた。血液が付着してないのは唯一の救いであるが、これ程の惨状では何があっても不思議ではない。むしろ何をすればここまで酷くなるのか。

 

 

 

『抜け殻、綿すらない縫包(ぬいぐる)み。貴様からは何も得れない、故に何も与えない』

 

 

 

 一帯には毛の末梢すら痕跡が残されていない。頼りの綱は始めから繊維が解けている、御粗末な事態。

 

 

 

『“我が名”と“記憶”を剥奪する。(ただ)し……』

 

 

 

 しかし誰がどう口を出し、胸倉を掴み首を振り、絶望の淵へ手繰り寄せるとしても、ケータが確認されるまでは止まることを知らない。例え最悪な終焉を迎えることになろうが、助けられる可能性がゼロでない限り、世界中の全空間を踏み歩いてでもどうにかする。

 

 

 

『但し相応の貢献に基づき、返して()らぬこともない』

 

 

 

 どうにかしなければいけない。

 

 

 ケータの代わりなんていない。ケータでないといけない。ケータを失うなんて、有り得ない。

 

 

 

『堪えない事実は(うま)い真実で塗り替えろ』

 

 

 

 バスターズは今、

 

 

 

『天野 景太を見殺せ』

 

 

 

 人間と妖怪の未来をこれからも紡ぐため、

 

 

 

『偽れ、ヘイトピーアーカイブス・ウィスパー。我が霊よ、隷よ。令に従え』

 

 

 

 これ以上ない終末の手前に立たされている。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「ぎゃあぅええぇぇぇええうぃいいすぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 悪魔が叫ぶような断末魔をあげたのは、ウィスパーだ。

 

 

 主のいない部屋にひとり、恐怖を織り込む悪夢だけに満たされる。同時に、記憶の小分けられた棚の鍵が、幻の中に現れるようになった。

 

 

 それは、ウィルオーウィスプに関する重要な鍵となる。

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

「何かあったかニャ? ウィスパー、顔色が悪いニャン」

 

 

「あ、えぇ……少し気分が良くありませんが…………大丈夫です」

 

 

「ウィスパーがまともな口調になるのはかっこいい時か何かある時ズラ」

 

 

「うぅむ……」

 

 

 

 夢は記憶に定着しにくい。他の要因に意識が持っていかれている場合は尚更だ。無理に記憶を抉じ開けようとするが、生憎ウィスパーはそこまでハイスペック妖怪でないのは察しの通り。

 

 

 “記憶を思い出させる妖怪”は存在する。が、そう都合良く出てくるのは()っすい物語の世界だけだ。妖怪ウォッチがあれば話は別なのだろうが…………

 

 

 その時だ、ロボニャンを介し送られてきた連絡。USAピョンからの救援要請だった。「ミツマタノヅチの大量発生」、まさに地獄と呼ぶに相応しい響きである。

 

 

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

 

 

 “ミツマタノヅチ”。3つ首のビッグボス。首頭のどれかに弱点の目玉が守られているが、下手な攻撃ではびくともしない頑強な皮膚に覆われており、効率良くダメージを通さなければ倒すのに苦労する相手だ。

 

 

 それ自身の出没頻度は多く、場所によれば結界に閉じ込める等の対策がされる程だ。が、以前に、幸運を呼び寄せる妖怪“ツチノコ”が関わることにより対策を無碍にされたことがある。

 

 

 バスターズを一度は半壊させた凶悪なビッグボス、ウィスマロマン特製の謎のお菓子“魔シュマロ”を3体のツチノコが接種した瞬間、それがミツマタノヅチへ変貌する奇妙なマジックに東奔西走、それはそれは見事に翻弄されていた。

 

 

 とにかく、今回もそれに近い現象が引き起こされたのだろうと推測できる。場所は現在いるさくらニュータウン、その西の団々坂、更にその南のおつかい横丁。そこら一帯に大量発生したと言う。

 

 

 

「どこにもいないズラよ?」

 

 

 

 犬も歩けば棒に当たる。コマさんも角を曲がればビッグボスに当たる。

 

 

 

「もんげー!!」

 

 

 

 咄嗟(とっさ)に脇道に逸れる。その先に待つは、同じく。

 

 

 

「も……もっ…………」

 

 

 

 気付けば、いつの間にか孤立してしまったコマさんは既に囲まれていた。

 

 

 纏うのは例に漏れず紫の濃ゆいオーラ。極玉をふんだんに盛り込んだ贅沢極状態フルコース祭り−ミツマタノヅチ編−開催。どうやら、簡単に合流することは許されないらしい。

 

 

 

「もんっもっもんげええええええええええ!!!」

 

 

 

 一斉に吐き出された火炎放射がコマさんを襲う。

 

 

 しかしこれでも、バスターズチーム白犬隊隊長なのだ。この程度の炎攻撃なら正直どうとでもなる。同じ火属性を持つので尚更だ。だが当然そんなに甘くはなく、大滝・雷・竜巻・地割れ・吹雪、目まぐるしい数の妖術が田舎の狛犬妖怪一匹に向けて猛威を(ふる)う。

 

 

 この妖術の異様な多彩さは恐らく、属性(こん)によるものだろう。

 

 

 そもそも、ここでの(こん)と、一般的な生命エネルギーの塊である(たましい)とは少し違う。妖怪の形態のようなものだ。

 

 

 厳密に言えば、妖術を練れる稀有(けう)な人間が妖怪に対して外部的に《(こん)へんげ》と呼ばれる術を使うことで、拳ほどの大きさの物質に変化した状態。その元となる妖怪の特性により、特殊な効力を持つ。元の姿に戻すことは可能とされてはいるが、基本的には一方通行である。本来は強制成仏の最終手段として用いられていたとの話が有力だが、実際は不明。

 

 

 その(こん)の中でも、複数種を混ぜ合わせることで稀に完成する“レア(こん)”があり、属性(こん)はその一種。込められた妖気の属性に応じて、自身の妖術属性が変化する珍しい能力がある。

 

 

 だがそれがこれだけ使われているとなると、相当数の妖怪が下敷きになったと思われる。この程度のことのために……これは悪魔の所業そのものだ。

 

 

 

「こんなの……あってはならないことズラ! ありえないことズラ! こんなひどい妖怪は、オラがバスターズとして粛清してやるズラーッ! 《ひとだま乱舞》!!」

 

 

 

 極ミツマタノヅチは、未だ大量の仲間を抱えて()()()へ移動している。

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