妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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19.流れぬ停滞前戦

 ミツマタノヅチの大群を蹴散らしてから、ほんの(わず)か数分が経過した頃。

 

 

 

「ニャにが……あったのニャ…………?」

 

 

 

 突然ロボニャンの通信が完全に途切れたことで、ある程度の事態は想像でき、ある程度はそれらを飲み込める脳になっているはずだった。だがある程度、から逸脱し過ぎていれば、飲み込むどころか吐き戻す場合がある。

 

 

 場所は、おつかい横丁最南西部に建てられた団地の前、パンダ遊具がひとりでに動くなどと噂される以外の特色がない小さな公園。今も尚、そこ()()に異常は一切見られない。ましてや、戦闘の跡など。

 

 

 ジバニャンの前で、自身によく似た容姿の機械が廃品になっていた。首元の赤い玉は粉々に散り、腹巻き以下は確認できず、内部の機構やパイプ類が破壊・ショートしている、目に余る惨状だ。頭部左の表面装甲が剥がれ、メカメカしい面が露出。目がチカ、チカと点灯消灯を繰り返していることからも、明らかに中が駄目になっているのがわかる。他部分も細かい傷や塗装剥げ、動作不良等……それをロボニャンであると判断するのは、多少の葛藤を必要とした。

 

 

 ベンチでは白い狛犬の妖怪が、小さな傷ばかりを全身に作って寝伏せている。ガラクタや食べ物が散乱した状態と風に吹かれる風呂敷を見るに、打つ手は全て出したらしい。深い痕は見当たらない。ただ、起きる様子もない。赤猫団に並ぶバスターズの白犬隊隊長(コマさん)の回復が間に合わず脱落、タンクやヒーラーではないにせよ相当の戦闘力を持つと言うのに、考えにくいことだ。考えたくもない。

 

 

 簡素な滑り台下に腰を預けて力尽きている、宇宙服のナメ吉兎。その肝心の宇宙服が意味を成さなくなっていた。銃はパーツ単位で(ひしゃ)げており、異様な力のかかり方をしたことが(うかが)える。特に背中のタンクは今すぐにでも暴発しそうな、まともではない形状に変形していた。どのような無茶をしたのか。それを聞こうにも、いつになればUSAピョンが口を利けるまで改善するのか。

 

 

 幸いなことに、誰も事切れてはいない。と言うよりは情けをかけられ生かされた、と考えるべきだろうか。ホノボーノさんらヒーラーによる、急場を凌ぐ為の回復作業を進める。

 

 

 だが一瞬の心的休息は無情にも踏み(にじ)られた。現状、心の余裕すら許されはしない。

 

 

 

「誰か! 今すぐヒーラーを手配して!」

 

 

 

 切羽詰まった表情で飛んできたのはふぶきちゃん。妖怪にとってのワープはそこまで特別な能力ではないが、落ち着いた心身と妖気の多量消費が必須となり、彼女は前者ができなかったようだ。それ程までに焦らされる原因は、背負った重傷者が想像以上に残息奄々(ざんそくえんえん)となっていたからだ。

 

 

 

「隊長が! ブリー隊長が!!」

 

 

 

 震えた声で叫ぶのに感化されたか、全体の冷静さが一気に欠けた。魔王討伐に向かった最強の勇者御一行がほぼ壊滅して戻ってきたのを眺めることしかできない無力な村人のような感覚に(さら)されている、好きで手を出さないわけではない者を責めることはできない。

 

 

 

「わ……(わたくし)、なんだか目眩(めまい)が…………」

 

 

「オレっちも……さすがにしんどいニャ……」

 

 

「もうみんな限界ボーノー…………」

 

 

 

 とっくに、限界は超えていた。

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

 バスターズハウス屋上。妖怪ガシャの前に、迷彩柄のヘルメットを被ったナメクジがいる。“ナメクジ軍曹”、彼はブリー隊長の親友だ。

 

 

 

「隊長のおかげで、あれ以降ウィルオーウィスプやビッグボスによる被害情報があまり耳にしないであります……早く…………帰ってきてほしいのであります……!」

 

 

 

 約1週間が経過した現在、異様な数の極ビッグボスはおろか、鬼時間すら起きていない。平和そのものだと言えよう。

 

 

 ロボニャンは現在修復中だが、そもそもが未来のテクノロジーゆえ現代技術では時間がかかってしまう。“うんがい三面鏡”の力を借りて未来へ行きそこで修復をする方法もあったのだが、そのうんがい三面鏡が調子が優れないらしい。現代と行き先の境目が乱れる程、タイムスリップは難しくなる。ではどうして乱れるのか、それは過去や未来が急激な変化をしている場合の現象だ。しかし向こう側は見えない、何が起きているのは完全に把握することができないので判断は不可能。

 

 

 コマさんは体の傷に関しては完治、だがまだ目覚めず。USAピョンも同じで、いつ目覚めるのかはまだわからない。2人してまるで植物状態のようになっている。

 

 

 そして、ブリー隊長。腕の怪我は治療が進まず、悪化を防げてもなぜか回復を促すことができない。傷口からはウィルオーウィスプの悪意が滲み出ている気がしてならず、そしてやはり目は覚ましてくれない。

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

 

 あまり良いとは言えない空気に足を踏み入れたゲンシャ。右手の手提げ鞄の中には大量の書類が入っている。彼女は時間を犠牲に、色々なものを独自に調べていた。そして、何かを掴んだらしい。

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