妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

24 / 32
20.下層の王

 ようやく、待ちわびた“情報”が現れる。だがそれは思ったよりも大きく、(ネギ)を背負った(カモ)(まな)板の上まで歩いてくるような。それも、特段美味な、(たち)が悪い奴だ。

 

 

 

「ロボニャンの録画データを確認させてもらったわ。あれは……あまり心地よいものではなかったけど、ヒントは掴めた。

 

 録画内で最後に言った言葉、なんだか違和感があったの。奴の、『我がウィスパーよ』って言葉に。

 

 自分の姓で呼ぶのは違和感あるでしょ? 予測だけど、ボク達の前に現れるウィルオーウィスプ・ウィスパーは()()のかもしれない。勘でしかないんだけどさ」

 

 

 

 そこに、ふぶきちゃんが言葉を重ねる。

 

 

 

「勘でしかなくても、やれることはやるのよ。

 

 それと、あれからミツマタノヅチの動きを調べたら面白いことがわかったわ。全体が少しずつ、“ムゲン地獄”入口――団々坂西方向に移動してたのよ。何かあるかもしれないわねー」

 

 

「とにかく…………もうエンマ大王から“獄中特殊権限”を借りてるから、ムゲン地獄に行きましょう。それも侵入不可の、第9階層へ! いろいろ調べたこともあるけど、それは『彼』と合流してからにしようか」

 

 

 

 そう言いながら首にかけたペンダントには、白い小さな装飾がひとつ付いていた。形は鬼玉だが、そこから感じるのは妖気とかとはなんだか違う感じがある不思議な物体だ。

 

 

 

「…………あのぅ……申し訳ございませんが、(わたくし)は遠慮させてもらいます」

 

 

 

 この状況での行動拒否。ウィスパーの遠慮とやらは、バスターズとしては褒められたものではない。だが、今はバスターズとしてではなく、個人として、何かに思考を張り巡らせている。

 

 

 ここにいるメンバーは皆、それを察せられない程度の関係ではない。特に、ウィスパーが真面目に頭を働かせている間は馬鹿じゃなくなることを、ジバニャンはよく知っている。これでも彼は(れき)とした『敏腕執事』であるのだから。

 

 

 

「じゃあオレっちが行ってくるニャー」

 

 

「オラも行くズラ」

 

 

「じゃあ行ってく……ニャニャ!? コマじろういつからいたニャ!」

 

 

「ゲンシャさまと一緒に来たズラ。

 

 あの時離れてなかったら、結果は変わってたかもしれないズラ…………オラは、オラが兄ちゃんの仇を取らなければいけないんズラよ!」

 

 

 

 コマじろうはしっかり者であり、いつもコマさんを支える立場にある。だがそれを成せるのは、コマさんの溢れんばかりの優しさがあって、支え()()()いたからだ。その芯は今、凶運に折れてしまっている。彼はその仇を果たさずにはいられない。身に()みる兄の優しさは、弟にも強く刻まれていた。

 

 

 

「じゃあ、行こうか」

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

 罪を犯した者や災いを閉じ込める空間、ムゲン地獄。降り進むに比例して凶暴強力なのが蔓延している。下には第8階層まであるとされているが実際は更に奥が存在し、以下の正式名称はないが便宜上9の番号を振られている。本当の底は誰も知らない、真の意味で無間無限なのだ。

 

 

 第7階層の、第8に下る梯子。それを無視して突き当りの透明の壁に手を当てると、赤い波紋がうねる。

 

 

 「どうするんだっけ」と少し困惑しながら、例のペンダントをかざす。すると、激しめに弾ける音とともに透明の壁が消えた。そのまま落下するゲンシャを追って、ふたりは着地点の見えない亜空に身を投げ込んだ。

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

 想像よりもすぐ、地面に足を着ける。重力が狂っており、落下の衝撃なんてものはなかった。

 

 

 

「もんげー……もの凄い圧ズラ…………」

 

 

「冷や汗が止まらニャい……」

 

 

 

 凶悪で強大な物者がいる場所に入ったからか、逃れられないプレッシャーが呼吸器に溶け込んでいる。ゲンシャも効くところがあるらしく、良い表情はしていなかった。

 

 

 下への重力に囚われないことの副産物か、90度回転している畳の面にも立つことができた。どの方向にも畳はあり、勿論ここ以下にも多く点在している。この空間全てを総括して第9階層であり、どこを見ても壁底無しの無限空間。吸い込まれそうだと言う感想を述べた頃には、既に一手遅れとなっているだろう。

 

 

 

「…………あった、あの檻ね」

 

 

 

 色々な場所に点々と牢獄が建てられ、中でも一際強い漆黒を孕むものが目前にある。

 

 

 中には容姿の乱れた、いつかの男がいた。

 

 

 

「ニャニャニャ、お前は!」

 

 

「キミの力を借りたいわ、“(りん)()”」

 

 

 

 ゲンシャはその妖怪がいる檻の欄干(らんかん)に触れ、高圧的な声色を演じながら話しかける。

 

 

 “輪廻”。()()()()を境に、エンマ大王へ反旗を翻そうとした妖怪。ここムゲン地獄に閉じ込められた、超大な力を持つ“極妖怪”たちを開放し率いて大事件に発展する直前にまで至ってしまった。(極妖怪は極ビックボスとは似て非なるもの。究()の妖力を持ったビッグボスと違い、究()()を持った妖怪を指す。具体的には“極オロチ”、“極ふぶき姫”、“極ツチノコ”、“極ブシニャン”、“極なまはげ”の5体。皆が何らかの過去を背負い、無念と後悔、復讐の為に誰彼の命を奪う。危険な存在とされ、この場に投獄されていた。)

 

 

 だが現在はそれも丸く収まり、全員が罪を受け入れて自らここへ()りた。

 

 

 極妖怪らの武力は並外れており、ひとりひとりが今の赤猫団と戦っても勝敗がわからない程に強い。心に巣食う深い闇が、妖力を底上げているのだ。言うまでもなく、輪廻自身はその極妖怪よりも強力で、まさに次元が違うレベルだ。だからまず彼に声をかけた。まともに戦えるのはブリー隊長のような、バスターズ内でも上澄みの者だけだろう。

 

 

 

「おや。まさかこの私に話を? 面白い、お聞かせ願いましょう――と言いたいところですが……厄介な客が来てしまったようですね」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

 

 3人が後ろに振り向く。そこに浮いていたのは、青い人魂。

 

 

 

「ま、まさか……」

 

 

「ウィルオーウィスプ……!!」

 

 

「御機嫌如何(いかが)か、六道輪廻の(あやかし)。いいや返答の必要はない。我が力で転生術師の洒落頭(しゃれこうべ)に『()』と言うものを刷り込んでやろう」

 

 

「フフ、私は以前言ったでしょう。『運命に二度目はない』と!」

 

 

 

 首に架せられた鎖を難なく破壊し、いざ立ち向かう。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 人魂は姿を変えながら、牙を剥いて(わら)った。

軽いアンケート。良ければ評価や率直な感想もお願いします

  • 面白い(原作プレイ経験あり)
  • 普通(あり)
  • 面白くない(あり)
  • 面白い(原作プレイ経験なし)
  • 普通(なし)
  • 面白くない(なし)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。