妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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22.反撃の()

 立体的な地の獄を飛んで走って、3人は白き人型の悪魔から逃げ惑う。その間は約20メートル、立ち止まれば一瞬で埋まるほどの小さな差だ。

 

 

 

「駄目ニャ! もう終わりニャあああ!」

 

 

「まだチャンスはある! それまでは逃げるのよ!」

 

 

「なにか案でもあるのですか? あれ(・・)は私にはどうもできませんが……」

 

 

「チャンスは絶対ある……はず!」

 

 

「無理ニャああああああああああっ!」

 

 

 

 チャンス。ゲンシャはそう言うが、頼みの綱である輪廻は妖力を激しく消耗している。合流のために自分を妖術の勢いで飛ばしたが、そもそもムゲン地獄で分断された仲間と合流できた事自体が奇跡。残り(かす)も残さず力を使い切った輪廻は、そう長い時間逃げられないだろう。

 

 

 ゲンシャは桁違いの妖気を持っている。回復妖術もある。だが戦闘経験の練られていない攻撃は「下手な妖怪より強いね」程度で、同時に回復の隙もくれない状況。ジバニャンはひとりでは強く出れず、仲間がいてこそ全力を発揮する。今までそうして難敵を撃破してきたのだ。今やそれが(あだ)となっていた。

 

 

 戦闘開始から5分も経っていない。しかし、彼らの限界は目の前にある。

 

 

 

「影……進行方向の先に誰かいますね」

 

 

「挟み撃ちされニャああああああああああっ!!」

 

 

 

 輪廻は今更進行方向を変える余裕もなく、ジバニャンは最悪の想定に泣き叫ぶことしかできない。ただゲンシャだけは、違う者を見ていた。

 

 

 

「コウ……ちゃん…………!」

 

 

「――人前ではやめてくれって、いや、それより。よく耐えてくれた……ここからはオレが戦う、反撃の時間だ!」

 

 

 

 遠くの影の正体――エンマ大王は両(てのひら)に、山吹色に光る弾を創る。妖気を圧縮したエネルギー弾《エンマ玉》だ。自動追尾能力を兼ね備えた高威力の弾。それをウィルオーウィスプに投げた。

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

 奴は長い手足を駆使し、()()()ギリギリで避けながらも距離を近づける。

 

 

 敵意をエンマ大王に向けるため、ジバニャンたちと奴の間に瞬間移動し、肉弾戦へ移行した。

 

 

 

「こいつ何者だ、全く隙がない……!」

 

 

 

 攻撃のリーチはウィルオーウィスプにある。それでも防御に徹するのではなく、受け流してカウンターのチャンスを常に狙っていた。

 

 

 隙ができたその時、エンマ大王が奴へ一撃を与えるその時。

 

 

 

「な――――――ぐあっ!!」

 

 

 

 奴はわざとらしく避けていたエンマ玉を右足で蹴り、それに気を取られた瞬間に、鉄のように重い左足の薙ぎ払いを受けた。回転により勢いを増した攻撃は、様子見に近かったお互いの流れを変える。

 

 

 

「来い! “魔笛(ブレス)”!」

 

 

 

 エンマ大王の言葉に反応して、どこからともなく“覚醒閻魔魔笛(ブレス)”が飛んできた。妖怪ウォッチによく似た形状の周りには青いオーラを模した修飾があり、笛ながら丸いシルエットをしている。風を切りながら音を響かせ、それに合わせてエンマ大王の姿が変わっていった。

 

 

 髪は白く、(ひたい)に第三の目を開眼させ、赤い服はグラデーションがかった紫に。そして炎のような形をした領巾(ひれ)を纏う。

 

 

 

「見せてやるよ、本気の“覚醒エンマ( オレ )”の力! ハァァァッ!!」

 

 

 

 さっきのように、両手にエンマ玉を創る。だが威力・密度は比べ物にならない。赤を経て紫にまで変色した《覚醒エンマ玉》がものすごい速度で放たれ、ついに奴の守備を突破した。

 

 

 

「オ、オオォ……!!」

 

 

「フッ! まだまだァ!」

 

 

 

 ただのパンチ、ただのキック。それすら必殺技に劣らぬ威力に強化され、余すことなく振るうその力で圧倒していく。

 

 

 

(ブレード)!」

 

 

 

 呼びかけに応え、またどこからか“エンマブレード”が飛んでくる。埋め込まれた3色の宝玉が赤い刀身に力を与え、どれほど邪悪な闇でも断ち斬るのだ。

 

 

 

「《獄滅エンマブレード》ォォオッ!!!」

 

 

 

 縦横無尽に斬り刻み、最後に左胸に投げ刺す。

 

 

 少し離れ、即座にエンマ玉を創り出した。全力、必殺のエンマ玉。紫よりも黒く、黄金の妖気を纏って輝く。

 

 

 

「消えろッ! 《魔眼獄滅波》ァァァァァッッ!!!!」

 

 

「ガァァァァァッ!!」

 

 

「だァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 奴は強い光に呑み込まれる。その余波は大きく、ムゲン地獄を眩しく照らす――――――

 

 

 

 

 

 それが止む頃、光の中心にはボロボロのウィルオーウィスプがいた。損傷を負っていない箇所を探す方が大変なくらいにダメージを与えた。畳は用意周到に重ねられていたようで、最下の1枚がかろうじて形を保ってくれている。

 

 

 時を同じくして、力尽きて“覚醒”が切れる。肩を上下させて呼吸する動きが、体力の消耗を表していた。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……粉々にしたつもりだったんだがな…………」

 

 

「あれが、エンマ大王の本気……圧巻ですね」

 

 

「ニャはぁ……助かったニャーン…………」

 

 

「これが…………コウちゃんの……」

 

 

「あ……ぐぁっはあ…………」

 

 

「「「「!?!?」」」」

 

 

 

 ウィルオーウィスプが体――パックプキスから出る。また随分と小さく、弱々しい。

 

 

 

「くそ……倒し切る力も出てこねぇ……」

 

 

「クク、お互い様だな。痛み分け――と言うには少しこちらの()()を取ってしまったが…………さすがの我、我々も限界だ。やはり貴様も実に素晴らしいなァ……!

 

 また会おうか、閻魔ども……!」

 

 

 

 炎が揺らめき、吹かない風に乗って消えた。パックプキスも、液体のように地に吸われて消える。激闘の末の、余韻ひとつ残さない終幕。とりあえず危機は脱した。かに思えたが、それは全くの見当違いである。

 

 

 

「すまない、みんな。逃しちまった………………ああ、そういえば…………()()()()()()()()()()()()()()()()? 2人も来たと聞いてたんだが……」

 

 

「「…………え?」」

 

 

「まさか、『こちらの有利を取ってしまった』、と言うのは……」

 

 

 

 ジバニャンとゲンシャの困惑。そこには、微妙で奇妙で大きすぎる違いがあった。

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