妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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24.鋤焼会議

 『妖怪は死なず、病気もない』との認識は間違いである。妖怪は死に、重篤な病気にも罹る。人間界に蔓延るインフルエンザから、他者との繋がりを消滅させる妖怪特有の奇病グデングデン熱まで。

 

 

 中には、対策できる病もあろう。そこで建てられたのが、妖魔界の数少ない病院“ひらひら病院”。回復に徹した妖術を扱う妖怪たちが、病も怪我も治療してやる場所だ。

 

 

 多くの妖怪がそこを使うとなると、あまりにも規模が大きくなりすぎる。なのでこの病院は、廃れたひとつの妖魔界全域(・・)を基盤に造られた。魔界議長イカカモネ・ソウカモネの支配から開放されたおおもり神社御神木の妖魔界が、高級料亭「妖楽」に改装されたのと同じイメージと考えればわかりやすい。

 

 

 その病院に、コマさんはいた(・・)

 

 

 

「大変ねぇ、コマさんが脱走したわ」

 

 

「もぉうバカ! 何かあったらコッチの責任なのよ!?」

 

 

 

 小さな雲の上に座る色黒のご老妖怪“(しん)オバア”と、虹色のグラデーションがかかった羽を持つ蝶の妖怪“アゲアゲハ”がそう話す。こと後者に関してはここの最高責任者でもあり、それゆえに問題を大きく見ていた。

 

 

 コマさんが無断で外に出た件。そもそも目覚めていたことすら確認できておらず、運ばれてからずっと各所に包帯を巻かれて点滴を打たれていた状態だった。肉体的な傷はほぼ全回復してはいるが、精神的部分を診ることすらできていない患者を外に出すのは危険が多すぎる。

 

 

 

「探しに出るついでに警察にも連絡を入れるわ! ここの指揮はセーラーニャンとヤマオカミに任せるからね!」

 

 

「了解ニャ〜」

 

 

「あたしたちに任せて……」

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

「ニャあ……つまりコマさんの弟“コマじろう”の存在がオレっちの中から消えて…………ムゲン地獄に来てないはずのウィスパーが来てるとエンマ大王さまは伝えられていて…………?

 

 あーもー意味分かんニャい! 何が起きたのニャ!」

 

 

「俺たち“王族”に効いてないだけで、コマじろうの消失は全妖怪に起こってるのかもな……」

 

 

「コマさんに聞けばわかるかも……」

 

 

「しかしまだ昏睡状態なのでしょう? 他の策を練るしか……」

 

 

 

 地獄を脱して一度帰還したジバニャン・ゲンシャ・エンマ・輪廻は、ニュー妖魔シティを歩きながら状況を整理しようとしていた。

 

 

 バスターズハウスから歩いて最も早く目立つ建物、KJが主役を張るクラブMONGEE。それが()()ことに()()()()()()()()()()()()通り過ぎ、更に奥の店「SUKIYAKI 浄土」へ入る。

 

 

 SUKIYAKI 浄土は、60年前の事件の首謀者“トキヲ・ウバウネ”が経営している店である。理由は罪を償うため、言葉を変えれば刑罰。しかしそれが成り立つのは、ウバウネを取り巻く環境――想いの変化の賜物なのだ。ちなみにここら一帯のことをグルメエリアと呼び、近くにある「TEMPURA 大往生」「SUSHI 輪廻」はイカカモネが仕切る店だ。理由はウバウネと同じ。

 

 

 

「いルァっしゃァ!」

 

 

 

 巨大な角と薄赤紫のマフラーが目立つ《怒り》の上級怪魔“破怪”により畳座敷に案内され、丸机を囲んで座る。

 

 

 

「いつものすき焼き4……いや5人前で頼むニャ〜♪」

 

 

 

 机の中央の蓋を外し、コンロが露出する。そこに鍋を置き火を付け、牛脂を引いて長ネギを焼く。香りが出る頃に『限界を超えた肉』の薄切りを焼き、火が程々に通ったところで『伝説のしいたけ』・『黄金の大豆』製豆腐を入れ、『世界一の割り下』を回しかけて煮込む。全体に火通り味染みたなら、溶いた『幻想の卵』にくぐらせ、『究極スキヤキ・怪』を心ゆくまで召し上がれ――

 

 

 

「はふ、はふ……ほれれむぉ、かいきぇふのふぁくはあうお?」

 

 

「…………エンマ大王、彼女の行儀は治せないのですか?」

 

 

「“治す”っつってもなぁ……元が駄目だから」

 

 

「コウちゃぁん?」

 

 

「どーでもいーニャ。それよりウィルオーウィスプ対策ニャン!」

 

 

「対策、できるの? あのバケモノ相手に」

 

 

「数の利は見込めませんね。力及ばぬ者が無謀に手を出したとて消されるでしょう、今回の件のように」

 

 

「少数精鋭、か。だが『覚醒状態の閻魔大王(オレ)と同等以上の実力者』を何人も集められるのか? そこらの奴らじゃあ歯も立てられない」

 

 

「“イチジテ(いし)”で止めた隙に攻撃できないかニャ?」

 

 

「効くかわからないアイテムに賭けるのは危ないですね」

 

 

「だが案はいいな、手段のひとつにはなりそうだ」

 

 

「例の“別世界のエンマ大王”に力を借りることはできないのですか?」

 

 

「世界はそう簡単に繋げられない……あの時はヌー大陸の神秘がもたらした奇跡ってやつだ、頼りにはできない」

 

 

「やっぱりブリー隊長の回復を急ぐべきかな? ロボニャンからの分析も聞きたいね」

 

 

「今以上に強くなって再戦、しか有効打がないのはまずい……」

 

 

「ニャあ! そういえばゲンシャさんが言ってた『調べたこと』まだ聞いてニャい!」

 

 

「あ……そう、そうだ! 忘れてた! ごめんね〜そんな余裕なかったから…………

 

 で、調べると()()()()()新しい情報を見つけたの。ほんと山ほどある言い伝えを記した書の大半漁ったけど、労力に見合わない結果だね……

 

 ひとつは、『()の者、妖魔創生が(はじめ)』――『妖怪(ボクたち)の祖先はウィルオーウィスプである』って話。事実だったら勝てる気しないよ。

 

 もうひとつ、こっちが大事。『(ハク)(タビ)()()()炎魂(エンコン)()(タマ)フ・(サン)(カワ)ラル()(ノケ)()()(ツヅ)キ・人妖(アヤビト)(スベ)余世(ヨヨ)(イシ)()()ク』――つまり、『99回目の死で、魂が3つに分かれて独立して、人と妖怪の力で石に封印された』ってこと」

 

 

「ウィルオーウィスプを何らかの方法で封印することができたことがあるのか……(にわか)には信じられないな。だが肝心なのはその方法だ」

 

 

「そこまではわからなかったけど、ちょっと希望が見えたね」

 

 

「石……ニャぁんか引っかかるぅ……」

 

 

「おや、何か覚えでも?」

 

 

「妖怪が封印されてる石がもンのすごく身近にあった気がするニャンけど、思い出せニャ〜い……」

 

 

「…………そうか! 妖怪ガシャ! あれは石のカプセルに妖怪を封印しているんだ! よく思い付いたな最高だぞジバニャン!!」

 

 

「ニャはは〜それほどでもあるニャ〜♪」

 

 

「では次の目的地は正天寺(しょうてんじ)ですかね」

 

 

「そのお寺ってたしか“全てを見通す水晶玉(りゅーくん)”が名物じゃなかった? ついでにこれからを見通してもらえたら、新しいヒント得れるかも」

 

 

「善は急げ、だな。今すぐにでも行くぞ」

 

 

「食べ終わってからね〜♪」

 

 

 

 対抗の手を求め、方向を固め始める。この手段は吉と出るか、凶と出るのか。

 

 

 どうであれ動かなければ何も起きない。いざ往け、バスターズたちよ。日常・ケータ・コマじろう……返してもらわねばならぬものが多いのだから。

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