「この地を、調べてください……“平釜平原”と呼ばれていた……その頃を知る妖怪を…………」
輪廻は、そう言って意識を失った。直後病院へ担がれるが、幸いというか流石というか、死に繋がるような重篤さはなく、動ける状態ではあるらしい。しかし、動ける=動いても良い、ではない。無理は控えるべきだとされた。
それが、2日経った現時点の話である。
「ワシには思うところがある……ウィルオーウィスプ、野郎はわざと面倒なマネをしおっとるんじゃあなかろうか」
「親方もそう思う? 私も似た意見かな〜。いちいちクソダサウィスパーの名前騙ったり、ケータを出す目的がわからないわ」
「ジバニャンたちが動いてるのとは別で、こちらからも情報を煮詰めるべきボーノ……」
「さて、どうすべきかしらね……」
潔白の一室。点滴に甘んずるでんじん親方、思考を砥いで澄ますふぶきちゃんとホノボーノさんが会し、憶測を組み立て始める。
「輪廻は、あの場所に特別な何かを感じ取っていたが」
「あそこの直下にムゲン地獄があると思えば不思議でもないボーノー」
「ふぶきは何かあるか?」
「……ウィスパー、あれから態度塞ぎっぱなしだけど、そこも片付けたほうがいい気はするわ。謎も多いし」
「ボノ〜……仲間の過去を洗うようなことになってほしくはなかったボーノ…………」
「仕方ないわよ、『わからない』がある内はね。でも……それをわかるようにするのも、私たちの役目」
一退はあれど一進すら難しい。帰ってきたでんじん親方も敵の情報は持たず、マイナスからひとつ戻ったに過ぎない。プラスへ乗るには、あとどれくらいの犠牲が必要なのだろうか。
そこに、傷舐め治療を得意とする看護師のなめこ妖怪“キズナース”が入る。
「皆さん、ブリーさんが目を覚まし……あっでんじんさん勝手に点滴外さないでください! はしっ走ってはいけません〜!」
3人は反射的に部屋を出て、廊下を駆け抜ける。
「隊長っ!」
押し入った個室の中では、ブリー隊長が腹筋をしていた。1分70回の記録を誇った全盛期と比べると半分未満のペースで、付き合いの長い彼らには運動能力の低下を痛感できた。
しかし当の本人は、それによる気分の落ち込みを感じさせない雰囲気だ。
「おお、待たせちまったな!」
「よ、良かった……」
「なんだかどっと疲れが出てきたボーノー…………」
「ハハハ! ……親方も」
「…………ああ、ブリー、本当に申し訳なかった……! この件が終わったら必ず償う!」
「何だ何だ、水臭いじゃないか? ん? ……おかえり、親方」
「……おう……!」
「隊長あんたもでしょ?」
「ハッハッハ! そうだな! みんな『ただいま』!
さァて……現状を聞こうか」
ブリー隊長が倒れていた10日間で起きた情報をすべて共有する。ミツマタノヅチ掃討戦の結末、輪廻への協力要請、コマじろうの存在消滅とコマさんの失踪、水晶玉を通じたウィルオーウィスプの主張、輪廻とでんじん親方が見たケータらしき人影。
「コマさんは月兎組が、コマじろうについてはエンマ大王さまたちが調査中ボーノ」
「平釜平原跡はジバニャンらが行っているぞ」
「奴の話も気になるな……姫、どう考える」
「あ、私? 繰り返しってゆーのは、どんどろの封印が弱まっていたのが原因とされてたあの時のことかしら。ウィルオーウィスプは、運命に恐怖を感じていたと聞くわ。……まるで、余命宣告に怯える患者みたいにね」
「運命か……奴はなぜそこまでするんだ? 『改変される変えられない運命』とはどういうことだ? 不明な点ばかりだが……『わからない』をわかるまで足掻くのも、オレたちバスターズの役目だな。そうだろうお前ら!!」
「! ……ヘェ? ふぶきも熱心なこったな〜」
じとり、とふぶきちゃんを横目に見るでんじん親方。ホノボーノさんも、ようやく追いついたキズナースまでもがにやけ笑っている。ついさっき似たような言葉を、おそらくここからの受け売りであろう言葉を彼女から聞いていたからだ。
「うっ……うるさいわね……!」
「ボーノボーノ〜! 笑っていられるうちに笑うのはいいことボーノ〜!」
「よ、よくわからんが……大変らしいな、姫」
「〜〜〜〜〜っ!!!」
「ガハハハハハ!」
「まったく! 水を差すようで悪いですけどでんじんさん、せめて点滴ごと移動してください! ブリーさんに関してはしばらく安静に! 筋トレもだめ、絶対にですよ!!」
「それはいつまでだ?」
「3日は様子を見たいので……具体的な判断はその後に」
「よしわかった、ならば明日から!」
「え゙っ゙」
「特攻野郎Bチーム! 復・活・だァーッ!!」
「「「応!!!」」」
「何も! わかってない! じゃないですかあぁ〜っ!!」
キズナースもまた彼らと同じ、救う側の者。しかし今は、休むべき患者に対して、怒りの業火を焚き上げるのみであった。
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