ある者は、「とても素晴らしい風景」「今でも私たちの思い出の場所」であると同時に「とてもまがまがしい何かを感じた」と言う。後々に夢であると誤認してしまう程の瘴気、それはこの大地の底に眠る地獄から漏れている。
ジバニャンとゲンシャは、その地獄へ繋がる小屋の前に立っている。
「オレっちたちはあの夏休みにケータと来たことがあるニャンけど……その時とも違うヘンな感じニャ…………」
「……ねえ、ジバニャン。これ……何だろう」
「んニャ?」
ゲンシャが指を向けた先、小屋の戸の鍵穴。何者かの目が、そこからこちらを覗いている。
さっきまではなかったものだ。
「だ、誰ニャン? 中に誰かいるニャン?」
「……チュチュッ」
「ニャンだねずみかニャ〜ン…………じゃニャい! お前は!!」
鍵穴からずるりと抜け出たのは、蛇のようにうねる細長く黒い塊だった。
「かっかかか
負の感情から生まれ、取り憑いた相手に邪念と災厄を与える妖怪、それが怪魔。イカカモネ議長の暗躍を解決した頃から数えて60年前――1950年、人間に対し恨みを募らせた妖怪“トキヲ・ウバウネ”が起こした大事件を機に爆発的に増殖し、解決とともに一部を除いて消滅した存在だ。
塊は丸々とした形へ変わっていき、低身長の人型へ変貌した。こいつこそ、生き残った怪魔のひとり。
「まっ待つっチュ! お前らに嫌がらせする気はないんだチュ!」
「……誰ニャ?」
「はっ!? 忘れたっチュう!? ウバウネ様直属の幹部! ぼくこそが怪魔五人衆の“厄怪”!! 元祖・本家両大将と互角以上に競り合った!」
「あ! ああ〜……! ホースで倒した奴ニャンね、思い出したニャ」
「ム、ムカつくっチュ」
「えー……あの〜、ボクたちに何か……?」
「そうだったっチュ、お前らに伝えてやることがあったんだチュ〜」
いやに協力的、ゲンシャとしては警戒を解けない相手だったが、怪魔五人衆らやトキヲ・ウバウネさえもまたケータに絆された妖怪たちであることを知るジバニャンにとっては信用に足る情報筋だ。
しかし、この情報は簡単に信じてはいられないものであった。
「エンマ大王はもう別行動中っチュね」
「……そうだけど、それが?」
「奴の姿をした怪魔がいるっチュ」
「……………………? え、は?」
「ニャッ!? ニャあんですとォー!?」
「お前らがここにいる理由、案件、そんなの知ったこっちゃないし今でもどうだっていいっチュ。ただそんな得体知れないのを見かけたからどうしようかってとこにお前らが来たから、しゃあなしで共有してあげたんだチュ」
「そんな……そいつは何をしてたの? なぜ偽物とわかったの? なんで見逃したの……!」
「だから待つっチュ!! なんてめんどくさい厄介な女っチュ……?」
鬼気迫る表情で問い詰めるゲンシャに、厄怪は半ば気圧されながらも話を始める。
「本当にただムゲン地獄からこっちに移動してたのを見かけただけなんチュ。それに怪魔はぼくからすれば同族、わかって当然。怪しくはあったっチュけどそこそこ速くって反応する暇もなかったし、ムゲン地獄に戻ってくる気配がなかったからこうやってぼくが出てきたってわけっチュ」
「じゃあそいつはまだ人間界に……?」
「わからないっチュ。さっきお前らと来てたのは本物だったっチュけど」
「あたりまえでしょ」
「……ハァ…………とにかく伝えられるのはこれだけっチュ。ぼくの気が変わらない内にとっとと帰るっチュ〜」
目を覚ました輪廻が言うにはイチジテ石を用いた作戦は完全に成功した、はずがウィルオーウィスプは事実逃げ
糸口は掴めず、また謎ばかりが現れる。しかし確かに一歩進んでもいる。情報を共有された後、バスターズの面々にあるのは辟易ではなく希望だった。
それと同時刻。月兎組により、ウィスパーが消息を経ったと公表された。
バスターズビークルの運転席に座る者はいない。
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