妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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6.「世界が大きく動く」

 フユニャン。彼は、約60年前にひとりの少年と生きた妖怪だ。(ひたい)の斜め十字傷は、少年と出会う前に『他の人間からつけられた』傷と『“怪魔”につけられた』傷でできている。本人は「名誉の負傷だ」と言っており、実際その過去を超えて良き今がある。ちなみに時間を行き来できる便利アイテム『マキモド石』で過去と現在を移動するが、これがいずれ重要なアイテムとなることを知る者はいない。

 

 

 彼は何より、バスターズ創設者として名高い。ある事件をきっかけに、街を守る“ガッツ仮面(ヒーロー)”が必要だと考えたフユニャンがその時代に開設した組織、それがバスターズなのだ。今はジバニャンとコマさんが引き継いだ(・・・・・)赤猫団・白犬隊だが、この2つは始めに創られたバスターズチームであり、その話は例の事件について話せばならなくなるが、今はのみ込んでほしい。

 

 

 怪魔は同じく約60年前に存在した妖怪だが、今は全滅している種だ。悪意や恐怖心に取り憑く。これも例の事件が関わっているが以下略。

 

 

 

「フユニャン……どうしてここに?」

 

 

 

 キュウビが、皆の思った疑を問う。

 

 

 

「そこはのみ込んでくれ! と言いたいところだが……いや、今は先に、目の前の敵に集中しよう。話はそれからだ…………」

 

 

 

 「そこはのみ込んでくれ」、いつもフラッとタイミング良く現れるフユニャンの口癖だ。だが、その言葉では解決できない事態があるからこそ話を後にしたのだろう。フユニャンのこの言葉から察するに、極・黒鬼自体が関連することではないがそれに匹敵するほど重要な話だと言うことだろうか。

 

 

 

「クルォォォォォォオ……ッ!」

 

 

 

 砕け折れた金棒を重りのようにして、ハンマー投げの要領で回転する。遠心力でスピードが増し、竜巻のような状態になり突進する技、《金棒トルネード》。高速スピンするあれに突撃されればたまったものじゃない。

 

 

 反撃開始、5人全員が別の方向に散る。黒鬼が標的としたのは、フユニャンだった。

 

 

 通常より動きの早い金棒トルネードはフユニャンを捉え、その衝撃で受け側にできる一瞬の隙を利用した超多段攻撃が襲う。

 

 

 相当量のダメージをフユニャンに与え、黒鬼は動きを止めた。だが瞬間で止まったことにより行き場を失った先程までの運動エネルギーは漆黒の竜巻の波動となり、真逆の位地にいるコマじろうの方向へ向かう。

 

 

 

「《風雷サンダー》!」

 

 

 

 妖力を強力な複数の雷に変換して攻撃するコマじろうの必殺技《風雷サンダー》で相殺を試みるが、圧倒的な力の差により押し負ける。

 

 

 

「くらうズラ! 《ひとだま乱舞》ー!」

 

 

 

 危険を感じたコマさんが追撃に、妖力そのものを青白い人魂の炎型にして攻撃する必殺技《ひとだま乱舞》で波動を塞き止めようとするが、それでも威力の差は埋められない。コマじろうは、助けに入ったコマさんもろとも大通り突き当たりの建物に吹き飛ばされた。ネオンの輝く巨大な看板に2人して突撃するが、背中に背負う風呂敷で衝撃が吸収されたことにより大事には至らなかった。それでも小さくないダメージは負ってしまっただろう。

 

 

 窮地に立たされ、敗北の可能性がまたもや大いに出てきたその時、無駄にエンジンを噴かせる音が鳴り響く。

 

 

 ウィスパーの運転するビークルが、黒鬼に猛突進する。奴が気づいた時にはもう遅く、強大なその突撃は、今まで蓄積されていたダメージのダムを決壊させた。

 

 

 

「グ……ロォォォゥウ…………」

 

 

 

 黒鬼は崩れ落ちるように倒れ、巨大な煙とともに消えた。これにて討伐、完了。

 

 

 

「ニャんか……珍しくウィスパーに美味しいところを取られた気分ニャン……っと」

 

 

 

 煙の晴れた場所に残されていたのは、ツノが2本ある橙色の大きな球体、“鬼玉”だ。ビッグボスを討伐した際に現れる、妖気の塊であり、バスターズ内では通貨や武器の素材など様々な用途で使用される。バスターズスコア及びランク上昇の条件としても、一定以上の鬼玉総合入手量などがある。バスターズにおいて重要なアイテムだ。

 

 

 敵の強さからも予想はできたが、今回のはその予想以上の大物であり、通常時の平均が10だとすればこれは1000を超えるだろう。赤猫団・白犬隊・ナインテイルズで3等分しても充分なほどで、さすがは極ビッグボスだと言うしかない。

 

 

 ジバニャンはランチャーの側面の数字ダイヤルを『3』に設定し、丸いボタンを押す。ボタンが鮮やかなオレンジ色に蛍光してから鬼玉に銃弾口を近づけ引き金を引くと、鬼玉が3分の1だけ吸収され、繋がったゴムパイプを通って背中の鬼玉収納かばんに送られる。コマさんとキュウビは専用の小箱に入れ、各々風呂敷の中や尻尾の中に保存して持ち帰るようだ。

 

 

 赤黒い空は元の透き通る青に戻り、灰色の街も彩りと人を取り戻した。鬼時間が閉じた、終わったのだ。

 

 

 解散直前、フユニャンが全員を引き留める。

 

 

 

「待ってくれ、話があるんだ。全妖魔界……いや、人間界をも含む全世界が大きく動くほどにまずい話が…………」

 

 

「なっなにがあったんでうぃす……?」

 

 

 

 ギリッと擦る音が聞こえるほどに歯を強く噛み締め、深く呼吸してから声を引き出す。

 

 

 

「落ち着いて聞いてくれ……会長が、“マスターニャーダ”が先の戦闘で……亡くなったんだ…………ッ」

 

 

「「!?」」

 

 

 

 全員が絶句した。その字の通りに言葉を失い、開いた口が塞がらない。

 

 

 マスターニャーダ……彼はフユニャンと同じ時代に生きた黒茶斑柄の猫妖怪であり、バスターズ協会会長。元は最強の猫妖怪やら伝説の猫妖怪と言われていたが、60年前の時点でヨボヨボおじいちゃんであり、全盛期の本気モードを出すのは10秒間が限界で以降バテてしまうほどだ。それでもその10秒で半端な敵はなぎ倒せる確かな実力もあった。

 

 

 バスターズ協会会長を失う。それはこの妖魔界だけでなく人間界にも影響を与える。当然だろう、鬼時間が起きるのは人間界でもあり、それを解決に導く団体の最高責任者の消失は多大な混乱を招くことにも繋がりかねない。

 

 

 野放しになった鬼時間は時間が経つほど人々を飲み込んで、閉じるまで永遠に出れなくなってしまう。新たな会長、と言っても、初代会長でありながら今の今まで勤め続けていたマスターニャーダ以上の適任がそうそうおるわけもなく、どうにもならない。

 

 

 とにかく、早急に対処のできない大事態なのだ。

 

 

 フユニャンは事の経緯を、少しずつ丁寧に話し始めた。

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